山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

アップル「iPhone 6 Plus」で電子書籍を試す

~5.5型、401ppiの高解像度で電子書籍の閲覧に最適

「iPhone 6 Plus」。ゴールドのほか、シルバー、スペースグレイの3色展開。容量は16GB、64GB、128GBの3種類が用意される

 アップルの「iPhone 6 Plus」は、同時に発売されたiPhone 6とほぼ同じデザインながら、一回り大きい5.5型という大画面を備えたモデルだ。国内ではNTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルの3社から販売されるほか、AppleからはSIMロックフリーモデルも販売される。

 俗に“ファブレット”と呼ばれるカテゴリに属する本製品について、本稿では基本的な仕様および特徴をざっとチェックしつつ、電子書籍端末として利用する場合の使い勝手を紹介していく。

従来のiPhone 5系列の製品に比べてやや丸みを帯びた筐体デザインが特徴。画面サイズは5.5型と大きい
これまでのiPhoneと異なり、電源ボタンが上面から右側面に移動しており、使い慣れるまではやや戸惑う
背面カメラがわずかに突出しているため、そのまま置くとレンズ周りが机上に触れかねない。置いた際も安定しないので、保護ケースを付けて段差をなくしてやった方がよい
左側面のミュートボタン、音量大/小ボタンは従来と同様の配置
本体下面にはイヤフォンジャックとマイクロホン、Lightningコネクタ、スピーカーを備える
手が大きくても片手で握るのはやや困難なサイズ
iPhone 5s(4型、左)、本製品(5.5型、中央)、iPad mini Retina(7.9型、右)とのサイズ比較。ちょうど両者の間を埋めるサイズということになる
iPhone 5s(左)に比べるとわずかに薄い。側面が角ばっておらず、丸みを帯びていることがよく分かる

電子書籍用の端末としてはスタンダードな画面サイズ

 iPhone 6 Plusの5.5型という画面サイズは、スマートフォンとしては確かに大きめだが、電子書籍を閲覧できる端末としてはそう珍しいサイズではない。比較的新しい製品では、2010年に発売されたシャープ「GALAPAGOS」のモバイルモデルが同じ5.5型だし、E Ink端末ではソニー「Reader」の国内向け初代モデルである「Pocket Edition(PRS-350)」、および楽天「Kobo mini」は5型だ。この2機種は6型モデルと併売されていることから、一回り小さいこのサイズにこだわって企画されたことが分かる。

 さらに、1993年に発売された国内初のストレートタイプの電子書籍端末であるNECの「DB-P1」も、画面サイズは5.6型と、本製品とほぼ同等だ。つまり20年前から、電子書籍を読むのに適したサイズとして(少なくとも製品を企画する側では)認識されていたわけだ。端末の特徴および用途がまったく異なるので同列に語られることはないが、このあたりの共通項はなかなか興味深い。

中央が2010年12月発売のシャープ「GALAPAGOS」モバイルモデル(5.5型、厚み12.9mm、約220g)、右が2006年12月発売のパナソニック「Words Gear」(5.6型、厚み28.4mm、約325g)との比較。メーカーこそ異なるものの、年月の経過による薄型軽量化がよく分かる
ソニー「Pocket Edition(PRS-350)」と楽天「Kobo mini」(いずれも5型)との比較。6~7型では大きすぎるというニーズを狙っているところに共通性を感じさせる
1993年11月発売のNECデジタルブックプレーヤー「DB-P1」(5.6型)およびデータ読込用のFDDと並べたところ。発売時期は20年も離れているが、画面サイズがほぼ等しいのが面白い

 さて、現時点において、本製品を比較する対象となるのは、本製品と同時に発売されたiPhone 6を除けば、iPhoneの1世代前に当たる4型の「iPhone 5s」、およびiPadの小型版である7.9型の「iPad mini Retina」だろう。特に既存ユーザーにとっては、手元にあるこれらの製品との違いについては気になることだろう。

 この4製品に「iPad Air」を加え、本体サイズや重量、解像度などの主要スペックをざっとまとめたのが以下の表だ。価格はいずれもAppleサイトに掲載されているSIMフリー版に基いている。またiPad miniおよびiPad AirはいずれもWi-Fiモデルについて記載している。

iPhone 5siPhone 6iPhone 6 PlusiPad mini RetinaiPad Air
発売年月2013年9月2014年9月2014年9月2013年11月2013年11月
サイズ(最厚部)123.8×58.6×7.6 mm138.1×67.0×6.9 mm158.1×77.8×7.1 mm200×134.7×7.5 mm240×169.5×7.5mm
重量約112g約129g約172g約331g約469g
画面サイズ/解像度4型/1,136×640ドット(326ppi)5型/1,334×750ドット(326ppi)5.5型/1,920×1,080ドット(401ppi)7.9型/2,048×1,536ドット(326ppi)9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi)
無線LAN802.11a/b/g/n802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ16/32GB16/64/128GB16/64/128GB16/32/64/128GB16/32/64/128GB
価格(2014/10/7時点)16GB 57,800円
32GB 62,800円
16GB 67,800円
64GB 79,800円
128GB 89,800円
16GB 79,800円
64GB 89,800円
128GB 99,800円
16GB 38,800円
32GB 48,800円
64GB 58,800円
128GB 68,800円
16GB 48,800円
32GB 58,800円
64GB 68,800円
128GB 78,800円

 本製品はiPhone 5sよりも大きく、iPad mini Retinaよりも小さい、ちょうど間を埋めるサイズだが、こうして並べて見ると、401ppiという画素密度が他のiPhoneおよびiPadをはるかに凌駕していることがよくわかる。同じRetinaディスプレイとしてひとくくりにされているが、実際にはワンランク上というわけだ。

 また、6型のE Ink端末なら200gを切れば軽量、7型の液晶タブレットなら300gを切れば軽量という中、5.5型にして約172gというのは、突出して軽いわけではないものの、バランスとしてはかなり良好な部類に入る。昨今はGALAXY Noteシリーズなど、このクラスの製品は増えつつあるが、電子書籍が読めてとにかく軽量な端末が欲しい、ただしスマートフォンの4~5型では画面サイズが小さすぎるという人にとっては、1つの選択肢となりうる存在だ。

コミックは6型電子書籍端末より小さく表示されることに注意

 ただし注意したいのは、本製品の画面サイズは縦横の比率が9:16と、iPadファミリーやE Ink電子ペーパーを採用した電子書籍端末(縦横の比率が3:4)に比べて縦長であることだ。それゆえコミックなど固定レイアウトの電子書籍では、幅に合わせてページ全体が縮小されることになり、対角線の長さが同等の3:4比率の端末に比べると、かなり窮屈な表示になる。

 前述の5製品と、Kindle Paperwhiteなど6型の電子書籍端末について、画面サイズ(縦×横)を模式化したものを並べたのが以下の図だ。筆者の実測値なので1mm以下の誤差はご容赦いただきたい。

各端末の画面実寸サイズ比較。本体サイズの比較ではない点に注意してほしい。本稿の趣旨上、iPad mini RetinaおよびiPad Airは横向きにレイアウトしている

 上の図で赤く着色しているのが縦横比9:16、青く着色しているのが縦横比3:4の製品だが、iPhone 6 Plusは5.5型ながら、6型のKindle Paperwhiteよりも縦に(わずか1mmではあるが)長いことが分かる。「5.5型ということは6型よりも一回り小さいのだろう」と実物を見ずに想像していると、こうした逆転現象に戸惑うことになる。

 一方、コミックなど固定レイアウトの電子書籍は、その多くが紙の本と同じ3:4に近い比率でレイアウトされているため、これら9:16比率の端末で表示すると、横幅に合わせて縮小されてしまう。そのためiPhone 6 PlusとKindle Paperwhiteで同じコミックを表示すると、天地がほぼ等しいにもかかわらず、幅が狭いiPhone 6 Plusでは一回りどころか二回りものサイズの差がついてしまう。実は5型のKobo miniと並べても、iPhone 6 Plusの方がコミックの表示サイズは小さくなるのだ。

 この現象は、画面を横向きにしたiPad mini Retinaと並べた場合にも発生する。iPad mini Retinaの高さは120mmなので、iPhone 6 Plusの方が画面の天地サイズは大きいのだが、幅を基準に縮小されるため、見開きにしたiPad mini Retinaの1ページ分と比べても、iPhone 6 Plusの方が小さくなる。Appleの電子書籍サービス「iBooks」はコミックの右端もしくは左端に余分なマージンが追加されるため、なおのこと小さく感じがちだ。

Kindle Paperwhite(左)との比較。6型と5.5型ということで数値上はほとんど変わらないのだが、表示サイズはこれだけの違いがある
Kobo mini(左)との比較。画面比率の違いにより、5型のKobo miniの方が5.5型のiPhone 6 Plusよりも大きく表示されるという逆転現象が起こる
iPad mini Retina(左)との比較。見開き状態にしてもなお、iPad mini Retinaの方が1ページのサイズが大きい

 といった具合に、コミックなど固定レイアウトの電子書籍についてはやや注意する必要はあるが、可変レイアウトのテキストコンテンツではこうした問題もなく、縦に長い画面の天地をフルに活用しての読書が楽しめる。各社のビューワごとに余白サイズが違うので一概には言えないが(後述)、一般論として、コミックよりはテキストコンテンツの表示に向いているといってよいだろう。

テキストコンテンツの表示をKindle Paperwhite(左)と比較したところ。こちらは表示領域をフルに使っての読書が楽しめる。ちなみにKindleアプリは他のストアアプリに比べて余白をかなり切り詰めた表示が行なえる
iPad mini Retina(左)との比較。iPad mini Retinaおよそ見開き1ページ分に相当する文章量がiPhone 6 Plusで表示できる

 また、4型のiPhone 5sと比較した場合は、さすがにサイズの差が歴然だ。iPhone 5sなど小型のスマートフォンで電子書籍を読んでいたが、どうにも読みづらさを感じていたという人は、テキスト、コミックを問わず、快適さを感じることだろう。

iPhone 5s(左)との比較(コミック)。さすがにサイズの差は歴然だ
iPhone 5s(左)との比較(テキスト)。こちらも表示領域を有効活用できている

ストアによって差がつきやすい、高解像度ゆえの「読みやすさ」、「読みにくさ」

 さて、電子書籍ストアごとの本製品への対応状況だが、本稿執筆時点ではiOS 8での動作が未確認だったり、あるいはヘッダなどが低解像度のまま引き伸ばされて表示されるといった現象が一部に見られるが、iPhoneという製品のシェアを考えても追って対応されるのはほぼ間違いない。このあたりは心配しなくても良いだろう。

 ストアごとの違いでは、むしろ解像度に起因する問題のほうがクリティカルだ。本製品は401ppiという、従来のiPhone/iPadと比べてもひときわ高い画素密度を誇るが、元データの解像度が低ければ、単に引き伸ばして表示するだけになり、高密度の恩恵が受けられない。2013年のiPad mini Retinaの時と同じく、今回もストアごとの解像度の違いを比較してみよう。元データは前回と同じ、うめ著「大東京トイボックス 1巻」である。

各社ビューワの解像度の比較。今回は新たにhonto、GALAPAGOSの2社を追加し、計8社で比較している。上段左から、iBooks、Kindle、BookLive!、Kobo。下段左から、eBookJapan、honto、GALAPAGOS、紀伊國屋書店Kinoppy

 前掲のiPad mini Retinaの時ほど顕著な違いは出ていないが、キャラクターの髪および首の影の斜線、および瞳の中に注目すると少なからず違いがあることが分かる。ディティールが飛び抜けてはっきりしているのは下段4番目の紀伊國屋書店Kinoppy、次いで下段1番目のeBookJapan、上段2番目のKindleと4番目のKoboといったところだろうか。同じデータなので当然ではあるが、これはiPad mini Retinaとほぼ同じ結果である。

 すべてのコミックのデータが同じ解像度で作られているとは限らないので、あくまでこのデータに限っての格付けであることには注意してもらう必要があるが、仮に全てのコミックが今回と同じクオリティでデータが作られているならば、上に名前が出ていない残り4社については、あまり積極的に選ぶ気になれないというのが筆者の率直な感想だ。1つの参考としてみて欲しい。

ページの上下にできる余白の処理はビューワごとに異なる

 電子書籍ストアに依存する違いとして、ページ上下の余白についてもチェックしておこう。本製品は縦横比が3:4のiPad mini RetinaやiPad Airと違い、コミックなどでページ上下の余白が目立ちやすい。もともとこれら余白の処理は各社のビューワで大きく異なっており、白で塗りつぶす以外にも、グレーや黒で塗りつぶす、影をつけるといった具合に、各社の対応はさまざまだ。

 筆者はこれらのうち「白で塗りつぶす」が、背景と余白が一体化して見えるために好みなのだが、おそらく個人の好き嫌いが出やすい部分であり、一概にどの処理が良い、悪いとは言えない。個人的には、これら余白の処理はビューワ側で複数から選べるようにしておいてほしいと感じるが、今から電子書籍ストアを選ぶ段階にあるのなら、前述の解像度の問題と同じく、こうした点も気にしておいたほうが、ストレスは溜まりにくいかもしれない。

各社ビューワでコミックを表示した場合の余白の比較。白で塗りつぶす以外にも、グレーや黒で塗りつぶす、影をつけるなど各社の対応はさまざま。画面上部にバーが表示されたままのビューワもある
同じ画面で、それぞれメニューを表示させた状態。下段に進捗バーが表示されるのは各社共通だが、タイトルや著者名の表示の有無や、サムネイルの有無など、各社ごとに差が出やすい

 一方のテキストコンテンツについては、コミックほど極端な余白はないものの、ビューワによっては明らかに無駄な余白があるほか、章見出しのサイズ、またタイトル表示の有無などにも違いがある。ユーザー自身で調整できる項目の種類もビューワによって差があるので、調整しようと思ったら項目自体がなかったというケースも起こりがちだ。

各社ビューワでテキストコンテンツを表示した場合の比較。行間や余白、背景色などは原則として初期設定のまま、フォントはなるべくビューワで標準とされる明朝系を用い、フォントサイズのみ極力等しくなるように調整しているが、それでもかなりの違いがあることが分かる
同じ画面で、それぞれメニューを表示させた状態。本文を見ながら文字サイズを調整できる機能や背景色を白/黒/セピアから選べる機能、また行間隔を調整できる機能は、多くのビューワで一般的になりつつある

片手持ちで快適に読書を楽しむための持ち方とは

 ところでこのiPhone 6 Plus、巷では「片手持ちができない端末」という評価が定着しつつあるようだ。実際、iPhone 5sに比べて19.2mmも幅が広くなった本体は、片手でしっかりと握るのは難しく(エッジが丸みを帯びているのも理由の1つだ)、またなんとか握れたとしても、画面の隅々まで指を届かせるのは難しい。

 画面サイズが大きくなった対策として、ホームボタンをダブルタップすることで画面が一時的に下にスライドする機能も用意されているが、これはあくまで縦方向の操作のアシストでしかなく、横方向も含めて快適に利用するには、やはり一方の手で本体を持ち、もう一方の手で操作するのがベターなようだ。電車の中などでユーザーの使い方を観察していても、概ねこの使い方が多いようだ。

 とは言え、電子書籍を読むのであれば、メニューの呼び出しや設定の変更はいざ知らず、ページめくりまではなんとか片手で操作を完結させたいところ。ここでは本製品で電子書籍を楽しむにあたり、ベストな「片手持ちのスタイル」を見ていこう。

人差し指から小指までを広げてiPhone 6 Plusを乗せ、親指でページをめくるスタイル。よくみられる持ち方だが、寝転がった状態や横向きの状態で電子書籍を読むのには使えない

 もっとも一般的なのは、人差し指から小指までを広げてその上に本体を乗せ、親指でページをめくるスタイルだろう。これは電子書籍に限らず、Webのブラウジングなど、多くの用途において標準的な持ち方で、椅子に座った状態や立った状態など、一般的な姿勢で操作する場合に向いている。ただし本体をしっかり握っているわけではないので、ベッドなどに横になって読書をしたい場合や、仰向けになってページを見上げる姿勢で読みたい場合には使えない。

 仰向けになって読む場合に限定すれば、中指、親指、小指で本体を下から支え、人差し指を使ってページをめくる方法もある。握らずに指の上に乗せているだけなので、握力への負担は少なくて済む。もっとも、いかに200gを切る軽さとはいえ、仰向けの状態でずっと上方に掲げているのはそれなりに負担がかかるし、バランスもとりにくい。

仰向けで寝ながら本を読むには、中指、親指、薬指と小指で本体を支え、ページめくりなどの動作は人差し指を用いるという持ち方も考えられる
後方から見た状態。握力は使わないが、バランスが取りづらいのがややネック

 かなりオールマイティに使えるのが、人差し指と中指で画面上のベゼルを挟み、親指でページをめくるという持ち方だ。端末を指で挟んでいるため、ベッドサイドで本を読みながら横を向いたり上を向いたりといった姿勢の変化にも対応できる上、本製品のように上下ベゼルの幅が広い端末ではかなりの安定感がある。画面の下端に指が届かないのでホームボタンを押す場合は持ち直す必要があるが、ページめくりだけを行なうのならとくに問題はない。ちなみに筆者はKindle Paperwhiteなどの専用端末もこの持ち方で使うことが多い。

人差し指と中指で画面上のベゼルを挟み、親指でページをめくる持ち方。本体を裏と表から2本指で挟んでいるので、姿勢を変えても同じ持ち方のまま利用できる
真横から見たところ。人差し指と中指で本体を挟み、薬指で支えている
仰向けに寝転がって、下から見上げる状態でもこの持ち方は使える
スマートフォンのキーボードアプリでは、画面の左右どちらに寄せられる機能を備えたものがある。電子書籍のビューワについても、ボタンを画面の上下左右にやたらと分散配置するのではなく、こうした集約化が求められるようになるのかもしれない

 以上、いくつかの握り方を考察してみたが、端末の薄型軽量化を優先するあまり、どのような持ち方をすべきかがあまり考慮されていない……というのは、昨今のスマートフォンや電子書籍端末ではよく見られる問題だ。LIBRIeや初代Kindleなど過去の端末でよく見られた、左右どちらかの持ち手に特化したデザインは、利き手の問題もあって現在ではなかなか難しいのも承知しているし、利用者数が増えた現在では、タッチパネルを中心にした左右対称なデザインが最適解であろうことも理解できる。ユーザーの側も、持ち方を強制されるのではなく、自由な持ち方をしたいという気持ちはあるはずだ。

 もっとも、自由な持ち方ができるというのと、持ちにくいがゆえに持ち方が定まらないのとは、全く別の問題だ。多少厚く重い端末であってもホールド感の良い製品というのはあるわけで、利用者としては数値上の薄さ軽さだけではなく、そうした点に目を向けるべきだろう。筆者もレビューを書くにあたっては他機種と比べた厚みや重量に目が行くことがよくあるが、実機を用いて評価している以上、そうした点はしっかりと伝えていければと改めて思う次第だ。

まとめ

 以上ざっと見てきたが、画面比率が3:4の端末に比べるとコミックの表示サイズが制限されるという問題はあるにせよ、本体サイズや重量を踏まえた可搬性の高さや、解像度の高さにおいて、電子書籍のビューワとして優れていることは間違いない。持ち方に関してはやや工夫が必要になるが、滑り止め加工が施された保護ケースなどを併用してホールド感を向上させるのも、有効な方法だろう。すでに本製品を購入済みの人も、スマートフォンとしては大きすぎるサイズを持て余しているなら、電子書籍を試してみる価値は十分にありそうだ。

(山口 真弘)