トピック

自作一発撮り出演で人間はテンパったが、CPUは冷えていた。PC Watch編集長の「冷や汗」とCore Ultraの「温度」を比較検証

「THE FIRST TAKE CUSTOM PC」本番中の若杉編集長

 PC Watch編集長である若杉氏が、アスキーの動画コンテンツ「THE FIRST TAKE CUSTOM PC」に出演した。この動画は、PCを組み立てていく様子を一発撮りで紹介していくというシリーズ。PCパーツメーカー関係者のほか、伊織もえさんや瀬戸弘司さんといったインフルエンサーも出演している。

 PC専門媒体の編集長なので、若杉氏は業界関係者でこそあるものの、アスキーとインプレスは一種のライバル関係。若杉氏が出演すると聞いて、はたしてこれはいやいやながらも呉越同舟なのか、それとも昨日の敵は今日の友なのか?などと思ってみたりもしたが、実は8年前にも若杉氏はアスキーの動画に出演しているそうなのだ。意外と以前から仲良しなのかもしれない。

 筆者もこの収録に立ち会った。収録の開口一番、若杉氏が宣言したのが「ライバルに見られている手前、ネジ1つ落とすミスもしない完璧な自作をする」というものだった。

 実際どうだったかは動画をご覧いただきたいのだが、自作した回数では若杉氏を遙かに上回る筆者の目はごまかせない。致命的ではないものの、いくつかのミスを発見した。収録中、平静を装っていた若杉氏だが、本当に落ちついていたのか、後日Fitbitのログを見せてもらったところ、しっかり心拍数が急上昇していた。

口では余裕ぶっていたが……
撮影当日の若杉氏の心拍データを見せてもらうと、撮影が行なわれた夕方頃は明らかに心拍数が高かった

 今回、若杉氏が組み立てたPCを評価することになったので、まずは僭越ながら筆者が再度組立直した。これは若杉氏のミスを指摘するというよりも、自作経験者でも見逃しがちな細かい注意点について読者諸兄と共有したいという意図がある。また、動画では空冷ファンを取り付けているが、簡易水冷クーラーを取り付けたパターンでも評価した。

 動画のリンクは記事末尾に掲載している。

使用したコネクタやケーブル処理が気になる……

 若杉氏が組み立てた自作PCは一発でUEFI画面まで到達できた。その時点で成功とはいえるが、細かな部分での処理が気になったのでまずは指摘しておきたい。

 一番のポイントはファンの電源コネクタの接続位置だ。空冷のCPUクーラーはマザーボードの「CPU_FAN」コネクタに接続したので問題なし。しかし、背面ファンのケーブルは取り付けやすい位置にあったこともあり、「AIO_PUMP」コネクタに接続してしまった。水冷クーラーのポンプ用コネクタは多くのマザーボードで回転数が100%で動作するように設定されている。

 UEFIなどで手動で回転数を変更すればいい話ではあるが、今回使用したPCケースの「be quiet! DARK BASE PRO 901 Black」は、ファンコントローラが標準搭載されており、それと連動するファンコネクタが天面に用意されている。ファンの制御しやすさを考えれば、天面のファンコネクタに接続するべきだ。

 さらに、PCケースのファンコントローラはマザーボードのファンコントロール機能(今回のマザーボードではQ-Fan Control)に制御を変更するためのファンコネクタが用意されているが、それを「CPU_OPT」に接続してしまった。このコネクタは「CPU_FAN」コネクタの制御と連動してしまう。これは2基のファンを搭載するCPUクーラー用のコネクタだからだ。ケースファンを別に制御したい場合は、「CHA_FAN1」から「CHA_FAN5」のどれかに接続する必要がある。

若杉氏は背面ファンのケーブルを「AIO_PUMP」コネクタ、ファン全体の制御用ケーブルを「CPU_OPT」コネクタに接続してしまった
「AIO_PUMP」コネクタは水冷ポンプ向けなのでファンの回転数は基本的にフルスピードに設定される

 PCケース前面にあるオーディオコネクタを有効化するためのケーブルはマザーボードの「F_AUDIO」コネクタに接続するが、若杉氏はビデオカードの下側に入る形で接続してしまった。ケースの裏面(左側面)にケーブルを回して底面から出すようにすれば見た目はかなりスッキリできる。また、裏面ケーブルの処理も甘かったのでそこは時間をかければ美しくまとめることが可能だ。

 ただ、THE FIRST TAKE CUSTOM PCは一発撮りという緊張感の中で行なわれる。組み立てパーツに触るのも収録がスタートしてからだ。事前の練習もない同じ状況になったら、ある程度は配信やイベント出演に慣れている筆者でも冷静に組み立てられるか怪しいものではあることも申し添えておく。

PCケース前面のオーディオケーブルがビデオカードの下に入ってしまっている
裏面配線はある程度はまとまっているがEPS12V電源ケーブルなど処理が甘い箇所も

インテルCore Ultra 9 プロセッサー 285のパワフルなプラン

 今回若杉氏が組み立てた自作PCのパーツ一式を紹介する。高性能なCPUとビデオカード、大型のPCケースにCPUクーラーでハイスペックなゲーミングPCに仕上げ、冷却力、静音性も高いと予算が許すなら、こんなPC組みたいよなと思わせる内容になっている。

 CPUはインテル Core Ultra 9 プロセッサー 285だ。パフォーマンス重視のEコアを8基、効率重視のEコアを16基備え、合計24コア24スレッドというメニーコア仕様。末尾に「K」が付かない無印のモデルなのでオーバークロック(倍率アンロック)には非対応だが、その分PBPは65Wと低消費電力、低発熱と扱いやすいのがポイントだ。

CPUはインテル Core Ultra 9 プロセッサー 285」。24コア24スレッドでPBPは65Wと扱いやすいのが特徴だ

 マザーボードはASUS ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI。ASUSのゲーミング向けとなる「F GAMING」シリーズのZ890チップセット搭載モデル。電源回路は16+1+2+2フェーズでCPU用の16フェーズについては110A SPSと大規模で堅牢なものを搭載。5基のM.2スロット、2基のThunderbolt 4ポート、2.5Gの有線LAN、Wi-Fi 7など拡張性やインターフェイス類も充実している。

マザーボードはZ890チップセットを搭載する「ASUS ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」。電源回路、拡張性も充実
バックパネルには2基のThunderbolt 4、30WのUSB PDに対応したType-C、2.5Gの有線LANなど豊富なポート類が用意されている

 ビデオカードはGeForce RTX 5080を搭載するハイエンドのASUS GeForce RTX 5080 16GB GDDR7 Noctua OC Edition。10,752基のCUDAコアに16GBのGDDR7メモリを搭載するモンスターGPUに、高冷却、低騒音で定評のあるNoctuaの冷却ファンを組み合わせているのが最大の特徴。静かで高性能なカードを実現している。その分、4スロットの厚みがあるという大型カードだ。

ビデオカードは「ASUS GeForce RTX 5080 16GB GDDR7 Noctua OC Edition」。GPUにRTX 5080を搭載するハイエンド仕様だ
Noctuaの冷却ファンを採用し、高冷却と高い静音性を両立。ただし厚みは4スロット分に達する

 CPUクーラーは「be quiet! DARK ROCK ELITE BK037」。135mm角のデュアルファンを搭載する大型空冷クーラー。7本のヒートパイプによってTDP 280Wに対応する強力な冷却力を持ちながらサイレントファンによって高い静音性も実現する。天面にはARGBを内蔵し、ライティングも楽しめる作りとなっている。

CPUクーラーは「be quiet! DARK ROCK ELITE BK037」。大型の空冷クーラーだ
135mm角の大型ファンを2基搭載している

 電源ユニットは「be quiet! Pure Power 13M 1000W」。ハイエンド構成なので1,000Wの大出力モデルを選択している。ATX 3.1/PCIe 5.1規格に準拠しているため将来のアップグレードも安心だ。ほぼ無音レベルの静音性が求められるLambda A++認証を取得しているのも大きな特徴。フルモジュラー仕様なので必要なケーブルだけを取り付けられる。

電源ユニットは「be quiet! Pure Power 13M 1000W」。ATX 3.1/PCIe 5.1規格に準拠する大出力モデル
フルモジュラー仕様なのでケーブル接続は最小限にできる

 PCケースは「be quiet! DARK BASE PRO 901 Black」。be quiet!の最上位フルタワーケースで、スタンドを含むサイズは275×604×569mmという大型仕様だ。それだけに標準で2.5インチシャドウベイ6基、3.5インチシャドウベイ2基、5インチベイ1基を備え、420mmサイズの水冷クーラー、最大で長さ495mmのビデオカードにも対応と高い拡張性を持つ。ファンコントローラやARGBコントローラを内蔵、Qi対応デバイス用のワイヤレス充電器まで搭載されている。

PCケースは「be quiet! DARK BASE PRO 901 Black」。高い拡張性を持つフルタワーケースだ
下段には近年では珍しく5インチベイを用意。カバー付きなので使わないときは隠せるようになっている
SSDはPCIe 5.0対応の高速な「Micron Crucial T710」の1TBモデル(CT1000T710SSD8)を採用
メモリは「Micron Crucial Pro CP2K32G56C46U5」。DDR5-5600の32GBを2枚セットにしたモデルだ

 筆者が組み立て直したのが以下の写真だ。配線を美しく仕上げ、ファンの電源コネクタ類もPCケースのファンコントローラで制御できるようにした。

オーディオケーブルやファンのケーブルを底面側から出して可能な限りスッキリさせた
裏面配線も用意された穴やケーブルをまとめるためのスペースをうまく活用してより美しく仕上げた
内部もスッキリ見えるようにケーブルをまとめている
PCケースとCPUクーラーのARGBがよいアクセントだ

4Kゲーミングも快適な性能かつ激冷えでも超静か!

 ここからは全体としての性能や冷却力、静音性をチェックしていこう。まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」から。

Cinebench 2024の結果

 Cinebench 2024のMulti Core、Single CoreのスコアともCore Ultra 9 285として順当といえる結果だ。24コア24スレッドのメニーコア仕様だけにMulti Coreのスコアは非常に高い。CPUパワーを求める処理も快適にこなせる。

 続いて、実ゲームに移ろう。フルHD/WQHD/4Kの3パターンの解像度でフレームレートを測定した。ビデオカードがGeForce RTX 5080だけに4Kでどこまで快適にプレイできるかに注目したい。テストしたゲームと条件は以下の通り。

  • オーバーウォッチ2: 画質“エピック”で、練習場の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • マーベルライバルズ: 画質“最高”、DLSS“バランス”、フレーム生成4xでゲーム内のベンチマーク機能を利用
  • サイバーパンク2077: 画質“レイトレーシング: ウルトラ”、DLSS“バランス”、フレーム生成4xで、ゲーム内のベンチマーク機能を利用した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • モンスターハンターワイルズ: 画質“ウルトラ”、レイトレーシング“高”、DLSS“バランス”、フレーム生成4xでベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
オーバーウォッチ2
マーベルライバルズ
サイバーパンク2077
モンスターハンターワイルズ

 オーバーウォッチ2やマーベルライバルズといった軽めのFPSなら、4K解像度かつ最高画質でも平均200fpsオーバーを記録。フルHDなら平均400fpsを超えており、高リフレッシュレートのゲーミングモニターと組み合わせ快適なプレイを行なえる。

 モンスターハンターワイルズやサイバーパンク2077もマルチフレーム生成に対応するDLSS 4の威力もあって、4Kでも平均150fpsを超えてきた。特にサイバーパンク2077は、描画負荷が強烈に高いすべての光源の経路(パス)を再現するパストレーシングを有効にしての結果なので、さすがGeForce RTX 5080といえる。

 次は、冷却力と動作音だ。今回は、サイバーパンク2077を10分間動作させたときのCPUとGPUの温度推移を「HWiNFO Pro」で測定している。CPUが「CPU Package」、GPUが「GPU Temperature」の値だ。

 合わせて、動作音を正面、天板、背面のそれぞれ10cmの位置に騒音計を置いて測定している。また、PCケースにはファンコントローラが搭載されていることもあり、フルスピードである1,900rpm設定と800rpm設定の2パターンで測定を行なった。

空冷時の動作音
空冷時の温度

 動作音はさすがに1,900rpm設定だと“グオー”とファンが回ってる感じはあるが、800rpm設定にするとほとんど気にならないレベルまで静かになる。耳をPCケースに近づけないとファンの音を認識できないほどだ。

 温度はどうなのか。もちろん1,900rpm設定の方が冷えているが、800rpm設定でもCPUは56.5℃、GPUは58.6℃とガッツリ冷えているといってよい温度だ。GeForce RTX 5080は70℃でも十分過ぎるほど冷えている。それが60℃を切っているので800rpm運用でもまったく問題がない。静かで冷える環境だ。

360mmクラスの簡易水冷クーラーならCPUはもっと冷える

 次は、CPUクーラーを360mmクラスの簡易水冷クーラー「be quiet! SILENT LOOP 3 360mm」に交換した場合の冷却力、動作音をチェックしてみよう。be quiet! SILENT LOOP 3 360mmは、Silent Wings 4 120 mm PWMハイスピードファンを3基搭載し、高い冷却力と静音性を両立。クーラントが付属しており、ラジエータ側面のネジを外すことで補充できるのが簡易水冷クーラーとしては非常に珍しい。長く安心して使えるクーラーといえる。

360mmクラスの簡易水冷クーラー「be quiet! SILENT LOOP 3 360mm」
簡易水冷クーラーとしては珍しくクーラントの補充が行なえる
簡易水冷クーラーは天面に取り付けた
空冷のCPUクーラーよりも内部はスッキリとした印象に

 空冷のCPUクーラーと同じ条件で、冷却力と動作音を測定してみよう。どこまで変わるのか注目したい。

水冷時の動作音
水冷時の温度

 動作音に関してはあまり変わらなかった。空冷のCPUクーラーはデュアルファン、簡易水冷クーラーは3連ファンになるので、その分ちょっとだけ動作音が大きくなる場合があるという程度だ。

 その一方で、CPU温度はしっかりと下がっている。空冷のCPUクーラーも超ハイエンドといえるモデルだが、それでも360mmクラスの簡易水冷クーラーには敵わないのがよく分かる結果だ。

 ただ、GPUについては今回天面に取り付けた簡易水冷クーラーよりも近い位置にある空冷のCPUクーラーの方が排熱に役立つようで、若干温度は高くなった。それでも800rpm設定でGPUは61.6℃とまったく問題のない温度だ。今回の構成なら、空冷でも水冷でも静かで冷える環境を作り出せる。

編集長は組み立てで焦ったがCPUはバッチリ冷えていた

 インテル Core Ultra 9プロセッサー285は、高性能と静音性を両立した自作PCを目指す上で非常に相性のよいCPUだ。24コア24スレッドと個人向けとしては最上位クラスのメニーコア仕様でPBP 65Wなので発熱控えめと、静音性の高いクーラーやファンのよさを生かしやすい。

 今回の構成はそれを見事に実現しており、GeForce RTX 5080も搭載するかなりのハイエンド構成ながら、ファンの音がほとんど聞こえないレベルに抑えても問題なく運用できる温度となっている。若杉氏は一発撮りでかなりの焦りを見せ、心拍数も上昇していたが、自作PCの方は着実に冷やせる構成だった。

 また、動画の方もぜひご覧いただきたい。