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2024年もAMD Ryzenがアツい!Ryzen AI搭載ノートPCに注目が集まる理由

 高性能CPUの「AMD Ryzen プロセッサ」。PCを含むガジェットに詳しい方ならもちろん、一般の方でも耳にする機会が増えているのではないだろうか。たとえば将棋棋士の藤井聡太名人が日頃、将棋の研究に用いているPCのCPUはAMD Ryzen Threadripper プロセッサ。また、世界のスーパーコンピューターの性能ランキングTOP500の1位、米国オークリッジ国立研究所の「Frontier」には、AMD Ryzen プロセッサとアーキテクチャが同じスパコン向けCPUである「AMD EPYC プロセッサ」が採用されている。

 一方で、Ryzenはコンシューマー向けにも、そしてビジネス向けにはAMD Ryzen PRO プロセッサとして展開されており、ビジネスノートPCの世界でも存在感を増してきている。本稿では、最新のZen 4世代、ビジネスでもっともニーズの高いモバイルノートPC向け製品「AMD Ryzen PRO プロセッサ」を中心に説明し、ビジネスノートでAMD Ryzen プロセッサ搭載機を選ぶべき理由を解説していく。

優れたアーキテクチャと先端プロセスルールの両方を採用するAMD Ryzen プロセッサ

 なぜAMD Ryzen プロセッサが優れているのか? それは優れたアーキテクチャである「Zen」、台湾の半導体製造企業TSMCの「先端プロセスルール」によって製造される点、そしてこの組み合わせによる高い「電力効率」が挙げられる。

 CPUのアーキテクチャは性能を決定付けるものだ。この良し悪しは重要で、AMD Athlon プロセッサの頃の「K8」アーキテクチャは64bitコンピューティングを普及させた画期的なアーキテクチャだったが、その後の世代であるAMD FXの頃の「Bulldozer」アーキテクチャでは苦戦をしたこともある。

 主にCPUの性能は、コア数と動作周波数(クロック)、そして1クロックあたりの命令実行数(IPC)によって決まる。Zenはコンパクトな設計でありながらライバルに比肩するIPCを実現し、以降、コア数の増加に加えてアーキテクチャ側でも改良を加えながらIPCをさらに向上させてきた。現在ではAMD CPUは、コンシューマー、ビジネスクライアントのAMD Ryzen プロセッサからスーパーコンピューター、サーバーに用いられるEPYC プロセッサまで、すべてZenアーキテクチャのコアで統一されている。

 昨今のCPUの性能を語る上でもう1つ重要なのが、消費電力あたりの性能だ。そして、消費電力低減において非常に影響が大きいのがプロセスルールの微細化。微細化が進めば同じ性能を出すための電力が引き下げられる、または同じ電力を使うと、より性能を引き上げられる。とはいえ、それも性能あってのこと。AMD Ryzen プロセッサはZenアーキテクチャと先進的なプロセスルールの組み合わせにより、優れた電力効率(電力あたりの性能)を実現しているのだ。

 プロセスルールというのは「ナノメートル」(nm)で表される。数値が小さくなればなるほど、単位面積あたりに実装可能なトランジスタ数が増えていくわけだが、実際の配線幅を指す数値ではないので、意味合いとしては世代を示すものと捉えればよい。Zenは14nmからスタートし、12nm、7nm、6nm、そしてZen 4は4nmで製造されている。

 こうした現在でもAMDをいまだ競合の後追いと捉えている方がいるが、現実は異なる。32bitまでの命令セットアーキテクチャ(ISA)「x86」は競合が開発したものだ。しかし、現在は64bitの時代。x86の流れをくむ初の64bitプロセッサは2003年のAMD Opteronであり、そこでAMDが開発したISAがAMD-64だ。これは後に「x86-64(x64)」として標準化され、現在も採用されているという背景がある。

 つまり、AMDはCPUの技術をけん引しており、x64用に書かれた膨大なアプリがx64本流のAMDのCPU上で安定動作するのは当然なのである。

AMD Ryzen プロセッサ+強固なセキュリティ=AMD Ryzen PRO プロセッサ

各プラットフォームでのバッテリ駆動時間の比較。AMD Ryzen 7 PRO プロセッサ搭載機が圧倒的に長い

 特にノートPCにおいては、電力あたりの性能が重要だ。薄型、軽量を求められるモバイルノートPCでは、搭載できるバッテリ容量にも限りがあり、省電力であるほど長時間駆動を実現できる。

 また、薄型軽量化においても、冷却機構の小型化という観点から、やはりCPUが高効率で発熱が小さいことが重要だ。AMD Ryzen プロセッサは省電力というだけでなく、その上で高いパフォーマンスを実現するモバイルノートPCを可能にする。

 そういったことを受け、Zenアーキテクチャ投入以前はゼロに近い状態だったビジネス向けノートPCでのAMDシェアがAMD Ryzen プロセッサ登場以降順調に拡大している。現時点でのラインナップは、こちらの公式サイトにリストがあり、Dynabook、Lenovo、Dell、NEC、Giga Computing、HPといったメーカーから多数の製品が投入されている。

AMD CPU搭載の法人向けシステムは2022年時点でも100機種を超える

 企業活動では地球環境に優しいことが求められているが、個人的な問題として電気代の高騰もある。AMD Ryzen プロセッサならCO2排出量を削減でき地球環境に貢献するとともに、電気コストも抑えられる。AMDの試算によると、ノートPC 2万5千台を抱える企業の場合、AMD Ryzen 7 プロセッサ搭載を採用すると4年間で電気代を7,300万円抑えられる計算になるという。

ノートPC 2万5千台を抱える企業の場合、AMD Ryzen 7 プロセッサ搭載を採用すると4年間で電気代を7,300万円抑えられる計算に

 これらはAMD Ryzen プロセッサに共通した特徴だが、ビジネス向けとなる「AMD Ryzen PRO プロセッサ」は、コンシューマー向けAMD Ryzen プロセッサと何が異なるのか? 大きな違いはビジネスに求められるセキュリティ機能が搭載されている点だ。

 AMD Ryzen PRO プロセッサは、CPU内に「AMDセキュアプロセッサ」 を内蔵しており、各種セキュアキーの生成管理が行なえる。このセキュアキーを用いて「AMDメモリーガード」と呼ばれるメモリの暗号化機能を備え、働中もスリープ中もデータを保護する。この2つのレイヤーによる強固な守りで、ビジネスシーンでも安心して使えるというわけだ。

AMDセキュアープロセッサーの概要
AMDメモリーガードの概要

x86プロセッサとして世界初のNPUを搭載しAI時代もAMD Ryzen プロセッサがリード。AMD XDNAでビジネスの課題をAIが手助け

 そんなAMD Ryzen PRO プロセッサの中でも注目は「AMD XDNA」搭載モデル。AMD XDNAとは、いわゆるNPU(Neural Processing Unit)で、AIに欠かせない推論処理を高速に、効率よく行なう演算ユニットだ。

 MicrosoftのCopilotに代表されるように、ビジネスでAIを活用する取り組みが活発化している。課題に対峙した時、その解決策(やヒント)をAIから得ようというものだ。また、クリエイティブ分野でも、静止画や映像から背景を切り抜く、不要箇所を自然に消すといった処理でAIを活用し、生産性を高めているソフトが数多く登場している。

 現在、AIの多くはクラウドAIとしてインターネットを介して利用する。一方、ローカルで処理するAIをクライアントAIと呼ぶ。クライアントAIは社内向けなどパーソナライズされたモデルの推論、トレーニングでの利用を想定している。PC上でAI処理を実行できれば応答速度も早く、何よりもプロンプトやデータがローカルで完結するためセキュリティも高い。

 とは言え、実際には、複雑なモデルの推論/学習、汎用の大規模言語モデルのクラウドAIが必要なシーンも考えられ、今後はクラウドとクライアント、両方を使い分けるハイブリッドAIが主流になると予想されている。そこで重要となるのがAI処理を高速化できるNPUだ。

 ここで、AMD Ryzen プロセッサにおけるAIは「AMD Ryzen AI」として統合されている点に触れておこう。AIではNPUだけでなく、GPUがよく用いられる処理もあれば、CPUが適している処理もある。NPU(XDNA)、CPU(ZEN)、GPU(RDNA)のトータルでAMD Ryzen AIが構成される。たとえばAMD Ryzen 8040 シリーズ プロセッサで8コア16スレッドのモデルを例に挙げると、XDNAのみは16Tops(1秒間に16兆回のAI処理)のパフォーマンスだが、AMD Ryzen AIとしては最大39Topsのパフォーマンスを実現する。

 AIソフトウェア開発者はPyTorch、TensorFlow、ONNXなどでトレーニングされたモデルをデプロイ、Vitis AIとONNX Runtimeを用いてAMD Ryzen AI搭載PC上で実行できる。AMDでもAMD Ryzen AIのドキュメントを提供しているほか、オープンソースコミュニティに対してコミットするエコシステムを拡大しているので開発者も手軽にAMD XDNAに対応したアプリを開発できる。

すでに100オーバーのAI対応ソフトがAMD Ryzen AIに対応している。

 NPUをCPUに取り込む動きにおいてもAMDは競合に先行しており、x86プロセッサとして世界で初めて、2023年にAMD Ryzen 7040 シリーズ プロセッサ(コードネーム: Phoenix)、そして同年末にはAMD Ryzen 8040 シリーズ プロセッサ(コードネーム: Hawk Point)と相次いでAMD XDNA搭載プロセッサを投入している。

 そして2024年後半、次世代のAMD XDNA2を搭載するコードネーム「Strix Point」の投入も予告されている。XDNA2では生成AI向けのNPU性能が3倍以上になるとされる。

AMD Ryzen AIのロードマップ

ワークステーション、スパコン、そしてゲーム機でも採用のZenアーキテクチャ

 ここまで、モバイルノートPC向けAMD Ryzen PRO プロセッサを中心に紹介してきたが、ワークステーション向けやサーバー向け製品も軽く紹介しておきたい。これらも同じZenファミリだ。

 AMD Ryzen Threadripper PRO 7000 WX シリーズ プロセッサは最大96コア/192スレッドに対応するワークステーション向けのプロセッサだ。TDPは350Wと大きいが、ユニプロセッサであるため冷却や電力の負担を抑えられる。Zenアーキテクチャにより同コア数でも性能でライバルに勝り、一方で96コアから12コアまで、マルチスレッドを重視するニーズからコアライセンスのコストを抑えつつ最大のパフォーマンスを求めるニーズまで幅広く対応する。

 そしてPCI Express 5.0を最大128レーン利用でき、マルチGPUを活用したAI開発といったニーズにも最適だ。

 AMD EPYC プロセッサは冒頭の通り現在Top500(2023年11月)で首位のスーパーコンピューター「Frontier」にも採用されているサーバー向けCPUだ。そしてそのFrontierは電力効率Green500でも8位にランクインしており、Zenアーキテクチャの電力あたりの性能の高さがうかがえる。EPYCも最大96コア/192スレッドで、大容量L3キャッシュを備える3D V-Cacheテクノロジ搭載モデルも用意されている。

 そして、もっと身近なところにもZenアーキテクチャのCPUが使われている。現行の2大コンシューマーゲーム機はともにZenアーキテクチャのCPUコア、RadeonベースのGPUコアを採用している。

ビジネスシーンでさまざまなメリットを備え持つAMD Ryzen プロセッサ プラットフォーム製品

 AMD AMD Ryzen PRO プロセッサを搭載するノートPCは、スーパーコンピューターに用いられるものと同じ高性能Zenアーキテクチャを採用しており高性能かつ電力あたりの性能に優れ低発熱、静音、スリム、軽量、長時間駆動を実現する。また、AMD AMD Ryzen PRO プロセッサはセキュリティ機能も備わり、ビジネスに最適な製品と言える。これに加えてAMD Ryzen 7040/8040 シリーズ プロセッサではAMD Ryzen AIによって次の時代のコンピューティングも可能になる。

 冒頭でも述べた通り、AMD Ryzen プロセッサ、AMD Ryzen PRO プロセッサを搭載するPCは増えている。主要なブランドからはすべてリリースされていると言ってよい。AMD Ryzen プロセッサ搭載ノートPCをご検討の方は、こちらの公式サイトのリストを参考にしていただきたい。