トピック

vTuberの制作や利用に必要なPCのスペックとは? vTuber「ゆっちょ」協力のもと検証してみた!

~クリエイティブにも最適な16型ゲーミングノート「ROG Zephyrus M16」

 動画配信が盛んな昨今、多種多様なジャンルが賑わう中で、配信者が“Vtuber”に扮して配信を行なうスタイルが人気を集めている。ここでは、そんなVtuberのモデリングを手掛けているクリエイター「夜八」(よるはち)氏にお話を伺うとともに、最新世代のASUS製ゲーミングノートPC「ROG Zephyrus M16」(アールオージー・ゼフィルス・エム16)を使ってもらい、キャラ製作の快適さを体感してもらった。

 また、Vtuberモデルの製作例として、夜八氏がデザインした「ゆっちょ」を用いて紹介している。ゆっちょは格ゲー界で有名なプロゲーミングチーム「忍ism Gaming」にゆかりのあるVtuberで、以前からTwitchの配信で登場することがあったものの、今年(2021年)の3月から夜八氏のデザインが起用され、本格的に配信活動を開始している。

 今回は、夜八氏によるゆっちょのデザインの話のほかに、実際にゆっちょにも参加してもらい、ROG Zephyrus M16を使ってゲーム配信が快適にこなせるかなどを検証してもらっている。

ゆっちょTwitter
プロゲーミングチーム「忍ism Gaming」のオーナー夫妻の家に居候しているという格ゲー好き JK。今年の3月から本格的にVtuberで活動開始。当初はTwitchのMomochocoチャンネルで配信していたが、最近はゆっちょ専用チャンネルで生配信中。YouTubeのチャンネルも新しく開設された。ゲーム、料理、雑談などを配信している

数々のVtuberを世に送り出している夜八氏

夜八(よるはち)
Twitter】【pixiv
岩手県出身、神奈川県在住のイラストレーター。ゲーム会社でグラフィッカーとして勤務した後にフリーランスに転向。ゲーム会社時代には、UIやキャラクターデザイン、衣装デザイン、ゲームエフェクトなど、色々と担当。現在はVtuber関連での仕事が多く、企業と個人から国内外問わず依頼を受けており、すでに何十体ものVtuberキャラを世に送り出している

 今回は夜八氏がデザインを含めて一から製作を行なった「ゆっちょ」を作例として紹介しているが、以下に例で示しているように、夜八氏はこのほかにも多数の女性/男性キャラのVtuberモデルを手掛けている。

 夜八氏が、Vtuberのモデリングに使用しているのは「Live2D Cubism Editor」(以下、Live 2D)だ。Live 2Dを使えば、平面で描かれたイラストを3Dでモデリングすることなく、作者の意図したイメージのままにアニメーションさせることができる。サブスクリプション契約方式で月額2,288円から利用可能。フル機能が42日間使える体験版も用意されている。

 Live 2D以外にも、オープンソースでフリーの3D CG制作ソフトである「Blender」が有名だが、夜八氏はLive 2Dであれば3Dモデリングの知識がなくても作れることに加え、公式が使い方に関する情報を積極的に提供しているので、初心者でも非常に取っつきやすいという。実際に夜八氏もLive 2Dを使い始めたのは、比較的最近だそうだ。

 夜八氏がVtuberを作る場合、CLIP STUDIO PAINTでイラストを起こし、Live 2Dでパラメータを与えてアニメーションするモデルを作っていくとのことで、作り込む内容にもよるが製作には大体1カ月を要するという。

ゆっちょの配信イメージ。夜八氏はキャラクターだけでなく、こういったロゴやUIもデザインしている
夜八氏が製作したVtuber達の例
鳳りゅか
YouTube】【Twitter
担当部分:イラスト
ZT-03(ゼロサン)
YouTube】【Twitter
担当部分:イラスト、Live2D、ロゴ
Mink-Chan
YouTube
担当部分:イラスト、Live2D
秋水たご
YouTube】【Twitter
担当部分:イラスト
サーレ・エル・アルバ
YouTube】【Twitter
担当部分:イラスト、Live2D、ロゴ
瑮水チルト
YouTube】【Twitter
担当部分:イラスト、部屋背景イラスト
綾瀬結
YouTube】【Twitter
担当部分:イラスト
ノ事くろえ
YouTube】【Twitter
担当部分:イラスト

ROG Zephyrus M16でVtuberキャラ製作を試す

 現在、夜八氏は、4年ほど前に購入したWindowsのデスクトップ機を仕事に使用しており、今のPCの基準からすると、それほど高性能なものではないという。ただ、Live 2Dの仕様要件は結構優しく、Windowsであれば以下に挙げたスペックで動作する。

  • CPU:Core i5以上(i7推奨)
  • メモリ:4GB以上(8GB以上推奨)
  • ストレージ:約400MB
  • GPU:OpenGL3.3以上
  • ディスプレイ:1,440×900ドット以上(1,920×1,080ドット推奨)

 そのため、当初は「今のところ性能的に特に困っているということはありませんね」とのことだったが、最新の環境を体感してもらうべく、今回用意したASUS製のゲーミングノートPC「ROG Zephyrus M16」でゆっちょのイラストの変換や、Live 2Dへの書き出しなど、製作における一部作業を試してみてもらった。

ROG Zephyrus M16

 ちなみに、ROG Zephyrus M16は今年(2021年)7月に発表されたばかりの最新モデルだ。第11世代のCore i7-11800H、メモリ16GB、SSD 1TBまたは512GB、GPUにはGeForce RTX 3070/3060/3050Ti Laptop GPUのいずれかを搭載。ディスプレイは16型と大きく、解像度はWQXGA(2,560×1,600ドット)またはWUXGA(1,920×1,200ドット)と、表示領域も一般的なフルHDより広くなっている。

 ROG Zephyrus M16はいわゆるゲーミングノートで、本来は3Dゲームをゴリゴリと遊ぶための製品なのだが、昨今はクリエイターによるゲーミングノートのクリエイティブ用途での活用は珍しいことではない。

 と言うのもゲーミングノートは基本的に高性能であるし、GeForceシリーズといったディスクリートGPUを搭載することで、3Dモデルの滑らかな表示、レンダリングや画像処理、動画変換の高速支援機能などを利用できるからだ。

キーボードにはRGB LEDが組み込まれており、写真の赤色以外のも、様々な色で光らせることができる。赤→青→緑……など、時間経過で色が変化するようにカスタマイズも可能
ゲーミングノートとしては比較的シンプルなデザインだが、天板には無数の穴が空いており、その中が見る角度によってかすかにキラキラと光って見えるさり気ない装飾を施している。悪目立ちしないクールなデザインだ

 ROG Zephyrus M16のゲーミングノートとしての性能は、以下のレビュー記事に詳しく書かれているので、ゲームでどのくらい遊べるのか気になる方はそちらを参照いただきたい。

 早速、夜八氏にROG Zephyrus M16を触ってもらい、印象を聞いてみた。

 まずは、ROG Zephyrus M16を起動。夜八氏はほとんど数秒でWindows 10が立ち上がる様子を見て「家のPCよりもずいぶん速いですね」と一言。それもそのはず、ROG Zephyrus M16には、PCI Express 4.0 x4(双方向16GB/s)接続の高速SSDが実装されているからだ。読み込み速度の実測値は最大7GB/sを超えており、最近のノートPCの中でも突出して速いのである。

CLIP STUDIO PAINTで描かれた「ゆっちょ」。Live 2Dでの動作用にかなり細かくレイヤーが分かれている。例えば、頭を振った時の髪の動きを再現するためだけでも、複数の髪のパーツが用意されており、全体では100パーツ以上もあるそうだ

 夜八氏がVtuberのキャラクターを作る場合、まずCLIP STUDIO PAINTでイラストを描き、そこからLive 2Dに落とし込んで動きのあるVtuberモデルを作っていく。最も時間が掛かるのはイラストの部分だそうで、と言うのもVtuberキャラクター化するために、表情として出る眼や口の変化、演者が動いたときの頭の上下左右の動き、それに連動する髪の動きといった部分を個別に描く必要があるからだ。

ゆっちょの初期案。何パターンかを用意して、そこから依頼主の好みに応じて微調整を施す
ゆっちょの三面図。配信で側面と背面が見えることはないのだが、二次創作でイラストを描かれることや3D化も想定して、どのキャラもしっかりとデザインされている

 CLIP STUDIO PAINTでゆっちょのイラストデータを操作してもらったのだが、Live 2Dでアニメーションを付けることを踏まえ、CLIP STUDIO PAINTでのレイヤー数は相当なものになっている。以下の画像はゆっちょのパーツをLive 2D用に書き出したものだが、かなり細かく構成されていることが分かる。

ゆっちょを構成する各パーツ。見えない部分まで用意されている。これをさらにLive 2Dで連動させる必要がある

 CLIP STUDIO PAINTの操作はあまり性能が必要とされるものではないが、夜八氏によると、イラストのレイヤー数が増えてくると特定の処理に時間が掛かるようになるという。分かりやすい例としては「ベタ塗り」がそれで、レイヤー数が膨大な場合、通常は一瞬で終わる作業でも、数秒待たされてしまうそうだ。

 また、CLIP STUDIO PAINTで描いたイラストをLive 2Dで表示させる際には、いったんPhotoshopでCLIP STUDIO PAINTのファイルを開き、公式のスクリプトを使ってLive 2D用に書き出しを行なう。この処理では、線画と色レイヤーを分けるといった細かい作業が自動で行なわれるのだが、これもそれなりの時間要するとのこと。

 ROG Zephyrus M16でこの手の処理を合わせて実行してもらったところ、一瞬で終了。これには夜八氏も感心して「これだけ速いとまったくストレスがないですね」と、色々と作業を行ない、各処理の高速っぷりを体験してもらった。ROG Zephyrus M16が搭載する高性能CPUの底力が見せた結果と言えるだろう。

Live2D Cubism Editorに読み込まれたゆっちょのイラストデータ。今回は特別に天使の輪っかと羽を付けてもらった

 次に、Live 2Dにゆっちょのイラストデータを読み込み、一通り作業をしてもらった。今回は既存のゆっちょのモデルに天使の輪っかと羽を付けてもらい、まばたきする際に連動して羽がピコピコ動くようにしてもらった。Live 2Dではデフォーマといった機能を使って、イラストを変形させ、さながら3Dモデルのようにキャラクターを動かすことができる。ちなみにこのデフォーマの設定も細かくやろうとすると、非常に時間が掛かるとのことだった。

 Live 2Dでの作業が完了したら、後は「FaceRig」といったWebカメラで顔や表情の動きを読み取るフェイストラッキングソフト用に出力を行なうだけ。「OBS」などの配信用ソフトで仮想カメラを設定すれば、Webカメラで写している自分を、あたかも別のキャラクターであるかのように投影できる。これでVtuberの誕生だ。

FaceRigに読み込んだゆっちょ

 既に述べたように、Live 2Dは3Dモデリングを行なうわけではないので、ハイエンドクラスのスペックを必要としない。しかし、ROG Zephyrus M16は、CPUからストレージまで、全てのレベルが高いため、総合的なパフォーマンス――つまり使い勝手の面で大きな恩恵を受けることができる。

 実際に夜八氏は、製作ソフトを開いたり、ファイルを読み込んだり、Webブラウザを使ったり、といった作業で反応の速さを体感できたという。また夜八氏自身はメインでは使用していないが、Blenderを試したりすることもあるそうで、「十分速いのですが、3Dモデルの製作ならもっと有効性を体感できたと思います」と述べていた。

夜八氏の作業環境。24型のディスプレイが2台と、液晶タブレットが1台。デスクの下にPCが置いてある

 最後に、ROG Zephyrus M16の使い勝手について、夜八氏に伺った。前述した通り、夜八氏は自宅の作業場でデスクトップPCを1台使用しており、これに24型クラスのディスプレイを2台、そして液晶タブレットを接続している。画面を複数開いて、キャラクターの資料などを見ながら入念に作業するため「マルチディスプレイは必須です」という。

 ROG Zephyrus M16は、Thunderbolt 4(USB Type-C)、USB 3.2(Type-C/Gen2)、HDMIがそれぞれ1基ずつあり、全て同時に画面出力できる。そのため、ノートPCのディスプレイを合わせれば、実に4画面出力が可能であり、デスクトップPCクラスのマルチディスプレイを簡単に構築することができる。しかも全て左側面にポートが揃っているため、ケーブルマネジメントがしやすいという点も見逃せない親切な設計だ。

左側面にインターフェイスが集中しており、左から順番に、ACアダプタのコネクタ、HDMI、有線LANポート、USB 3.2(Type-A/Gen2)、Thunderbolt 4、USB 3.2 Gen(Type-C/Gen2)、3.5mmヘッドセット端子
右側面は、USB 3.2(Type-A/Gen1)、microSDカードスロット
4画面出力が可能

 また、ROG Zephyrus M16を使ってもらった際に、「ディスプレイ色味が綺麗」との評価も頂いた。それは、ROG Zephyrus M16は国際的な色見本帳として提供されている「PANTONE」の認証を受けていることに加え、モデルにもよるが映像業界での色再現性を示す「DCI-P3」のカバー率が100%となっていることが大きい。

 さらにディスプレイについて言えば、4辺狭額なので枠のギリギリまで画面が表示されており、かなり広々としている。上位機の解像度はWQXGA(2,560×1,600ドット)なので、十二分の広さで作業できるのは大きなメリットだろう。

4辺狭額縁設計のため、画面のフチからフチまで表示できる

 夜八氏は、仕事ができれば、デスクトップでもノートPCでもとくにこだわらないとのことだが、朝からずっと座りっぱなしで作業しているため、身体をほぐしたり、気分転換にちょっと家の中で場所を変えて作業してみたいと思うことも。

 「たまには家ではなく“スタバ”とかで仕事をしてみたいです。ROG Zephyrus M16はゲーミングノートの割にはデザインがシンプルで良い意味で目立たないですし、重量が2kgということで持ち運びも大丈夫そう。性能も高いのでクリエイターが使うPCとしてお薦めできます」とのことだった。

16型のゲーミングノートとしてかなり薄型で、最薄部は19.99mm

 ROG Zephyrus M16のバッテリ駆動時間はモデルにもよるが、高性能パーツが搭載されたものでも約8.6時間となっており、性能を落として動作させる「サイレント」モードで実行すれば、バッテリを長く持たせるとともに、喫茶店などの屋内でも大きなファン音を出さずに作業できるはずだ。

F5キーにあるファンのマークのボタンを押せば、「Turbo」、「パフォーマンス」、「サイレント」の3種類のモードに切り換えられる
ファンの排気は左右側面部と上部側面部から行なわれる。「サイレント」モードにすれば、ファンの回転数が下がる

ゆっちょにROG Zephyrus M16でゲームをプレイしてもらった

OBSを使ってゆっちょを透過表示。これでゲーム配信や録画が行なえる

 夜八氏からお墨付きを頂いたところで、実際にVtuber「ゆっちょ」に、ROG Zephyrus M16を触ってもらうことにした。ROG Zephyrus M16を紹介しつつ、FPSゲームのApex Legendsで遊んでもらったので、以下の動画をご覧頂きたい。

 前述した通り、ROG Zephyrus M16は、CPUに第11世代のCore i7-11800Hと、GPUにGeForce RTX 3070/3060/3050Ti Laptop GPUのいずれかを搭載したハイエンドなゲーミングノートPC(スペックはこちら)。ちなみに今回は、GeForce RTX 3070 Laptop GPUを搭載する最上位モデル(型番:GU603HR)を使用しており、ディスプレイのリフレッシュレートも165Hzと、ノートPCながら非常に高速な画面描画を行なえる。

 ROG Zephyrus M16は、本来のゲーミングでも満足のいくプレイが可能なだけでなく、クリエイティブとゲームとが融合するVtuberゲーマーの方にも強くお薦めできる。そしてクリエイティブ用途においても、プロが存分に性能を活かせる新進気鋭のハイスペックな一台だ。