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RTX 3080で4K/120Hzを乗りこなす50万円級ゲーミングノート「ROG Zephyrus S17」レビュー
2021年7月16日 06:50
ASUSは7月15日に国内発売が発表されたASUSの17.3型ゲーミングノートPC「ROG Zephyrus S17」。発売は8月中旬を予定しており、店頭予想価格は49万4,800円前後。CPUに「Core i9-11900H」、GPUに「GeForce RTX 3080 Laptop」を搭載し、ディスプレイは4K(3,840×2,160ドット)かつ120Hz駆動に対応するなど、現時点で最高級のスペックを採用するのが大きな特徴だ。
この記事では「ROG Zephyrus S17」の製品サンプルをもとに、特徴や使い勝手などのインプレッション、およびベンチマークによる性能チェックを実施していく。
4K/120Hz液晶採用、ノートPC最高峰の豪華スペックを実現
【表1】ROG Zephyrus S17の主なスペック | |
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CPU | Core i9-11900H (8コア/16スレッド、2.5GHz~4.9GHz、24MBスマートキャッシュ) |
チップセット | Intel HM570 チップセット |
GPU | GeForce RTX 3080 Laptop GPU(16GB GDDR6) Intel UHD グラフィックス |
メモリ | 32GB (DDR4-3200、16GB×2) |
ストレージ | 2TB (M.2 NVMe SSD) |
ディスプレイ | 17.3型4K(3,840×2,160ドット)非光沢液晶、リフレッシュレート120Hz |
OS | Windows 10 Pro |
インターフェイス | Thunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.1×3、92万画素Webカメラ、HDMI、SDカードスロット、指紋認証センサー、音声入出力端子など |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 394.9×264.3×19.99~22.5mm |
重量 | 約 2.75kg |
店頭予想価格 | 49万4,800円前後 |
「ROG Zephyrus S17」は、ASUSの高級ゲーミングノートPCブランドとしてすっかり定着した「ROG Zephyrus」シリーズの最新製品だ。店頭予想価格49万4,800円前後という強烈なプライスレンジが目を引くが、本体スペックを細かく見ていくと、その高値にも納得がいくほど妥協のない構成を採用していることが分かる。
冒頭で述べた通り、本製品はCPUに8コア/16スレッドの「Core i9-11900H」、GPUに「GeForce RTX 3080 Laptop」を搭載する。CPUは今年(2021年)5月に発表されたTiger Lake世代の上位モデルであり、推定消費電力やCPU温度に余裕がある場合に最大動作クロックを引き上げる「Turbo Boost Max Technology 3.0」に対応。条件が整った環境においては、動作クロックが4.9GHzに到達する。
GPUの「GeForce RTX 3080 Laptop」は、NVIDIAの現行ノートPC向けGPUとしては最上位に位置付けられるモデルだ。
GPUコアはデスクトップ版の「GeForce RTX 3070」などにも使用されている「GA104」のフルスペック版であり、演算ユニットであるCUDAコアの総数は6,144基、ビデオメモリはGDDR6 16GB。定格動作クロックが低めであるといったノートPC向けの調整はあるものの、ゲーム性能のパワフルさは並みのデスクトップPCを寄せ付けない。
ノートPC向けながら、タイトルによっては4K(3,840×2,160ドット)解像度でゲームを快適にプレイできるほどの性能的な余裕があるのは魅力的だ。実際のゲーミング性能については、後半のベンチマークパートで紐解いていこう。
CPUとGPU、いずれも高いポテンシャルを備えた「ROG Zephyrus S17」は、ディスプレイとして120Hzの高リフレッシュレート表示に対応する17.3型4Kパネルを採用する点にも要注目だ。
ここ最近のゲーミングノートPCではもはや搭載が当たり前になりつつある高リフレッシュレートディスプレイだが、極めて解像度の高い4Kパネルでそれを実現した製品はごくわずかなモデルに留まる。
ASUS製品に限って言えば、過去に2画面ゲーミングノート「ROG Zephyrus Duo 15 SE」で15型の4K/120Hzパネルが採用された例はあるものの、17.3型サイズは今回が初めてだろう。結果的に、リッチなグラフィックスのAAA級タイトルからeスポーツ系の競技色が強いタイトルまで、あらゆるジャンルのタイトルをプレイしやすい懐の広さを獲得していると言っていい。
加えて豪華なのがストレージ。本製品はPCI Express 4.0接続の2TB NVMe SSDを搭載しており、シーケンシャルリードで7,000MB/s前後、シーケンシャルライトで5,000MB/s前後の超高速データ転送が可能となっている。
PCI Express 4.0接続のSSDは発熱の大きさが問題になりやすいが、本製品のような冷却に配慮した大型のゲーミングノートPCであれば比較的採用しやすい。速度はもちろん、近年のゲーム容量の大容量化に悩まされずに済むのも大きなメリットになるはずだ。
なお、メインメモリの容量は32GB(DDR4-3200、デュアルチャネル)で、ゲーム用途であれば容量不足に困ることは考えにくい。
ネットワークは本体側面に用意されている有線LANコネクタのほか、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)無線通信にも対応。製品自体に重量があり頻繁な移動には向かないため、ドックなどを利用せずとも有線LANコネクタが使えるのはありがたい。
キーボード部分がせり上がる独特の冷却ギミックを採用
続いて、本体の外観やインターフェイス類などをチェックしよう。
本体カラーはブラック一色で、デザイン自体はシンプルだが、ディスプレイを開いて接地した状態ではキーボード部分が斜めにせり上がる独特のギミックを採用している。
これは、キーボード部分とその下の基板や冷却ファン間に隙間を開け、エアフロー空間を物理的に拡大させることで冷却力を強化するクーリングシステム「Active Aerodynamic System Plus(AASPlus)」の採用によるものだ。
ギミック自体は過去にも例があるが、この世代からは新設計により冷却性能を強化。システムのエアフローを25%改善し、表面温度を25%低下させつつ、ファンノイズを5dBほど抑制するといった静音性についても寄与するとしている。
また、デスクトップPC向けのCPUグリスとして定評のあるThermal Grizzly製の液体金属グリスを採用することで、一般的なシリコングリスよりも熱伝導率を高めているとのこと。いずれもハイエンドCPUやGPU、PCIe 4.0 SSDなど多くの高発熱パーツを搭載するため、冷却に対する細やかな配慮がなされているのがポイントだ。
本体サイズはおよそ394.9×264.3×19.99~22.5mmで、本体重量は約2.75kg。電源アダプタと一緒に持ち運べば総重量は4kg近くになるため、先に述べたように持ち運びにはそれほど向かない。一定の堅牢性は確保されていると思うが、キーボード部の可動ギミックもあるため、仮に持ち運ぶ際は一般的なPCよりも慎重に扱うほうがよさそうだ。
インターフェイスは、Thunderbolt 4ポート、USB 3.1(Type-A)ポート×3、USB 3.1(Type-C)ポート、HDMI映像出力ポート、2.5Gigabit Ethernet、SDXCカードリーダ、オーディオジャック。USBポートはType-A形状のものだけでも3つ用意されており、ゲーミングマウスなどの周辺機器を接続する上では大きな問題はない。右側面にフルサイズのSDカードリーダが用意されていることもあり、高い本体スペックを活かしたクリエイティブ用途での利用にもマッチするだろう。
キーボードはテンキーありの英字配列を採用。特徴的なのが、キースイッチとして独自の光学メカニカルスイッチを採用している点だ。
光学式の採用により押下時の反応速度を0.2msまで高速化し、通常のメカニカルキーボードよりも150倍速いレスポンスと打鍵テスト1億回の合格を謳っており、競技ゲーム向けの軽快さと耐久性を両立させたとしている。
打鍵時にははっきりしたクリック感があり、カチカチという高めの小気味良い打鍵音が鳴る。いかにもゲーム向きのキーボードといった印象だ。
配列自体は英字ではあるものの、キーの間の距離に余裕がある上、それほど変則的なキーの配置はなく扱いやすい。ゲーム用途に限定するのであれば、日本語配列のキーボードしか触ったことがないというユーザーでも慣れるのはさほど難しくないように感じた。
ガラス素材製のタッチパッドは実測で130×90mm(幅×奥行き)と広めに作られており、操作感も良好だが、ゲームをプレイするのであれば別途ゲーミングマウスを用意するのがベターだろう。
キーボード左上に用意されたマルチホイール、電源ボタンに内蔵されているWindows Hello用の指紋認証センサー、専用ユーティリティ「Armoury Crate」の起動ボタンなどもあって、全体的に取り回しがいい印象だ。
サウンドに関しては、Dolby Atmos対応のマルチスピーカーシステムを搭載。2ツイーター、4ウーファーの計6スピーカーを内蔵しており、ウーファーは不要な振動を相殺することで安定した低音再生を実現する「デュアルフォースキャンセリングウーファー」となっている。
ゲーム中は内蔵ファンがノイズを出すためにスピーカーの音は損なわれてしまうため、どちらかと言えばビデオ作品などの鑑賞向けだろう。とは言え、ノートPCのスピーカーとは思えない奥行きが感じられる音場と迫力の低音はインパクト大なので、映画などエンタメコンテンツの再生時には一聴の価値アリだ。
「ROG Zephyrus S17」の性能をベンチマークでチェック
では、「ROG Zephyrus S17」の性能をいくつかのベンチマークで計測してみよう。
今回は「3DMark」および「FINAL FANTSY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK」といったベンチマークアプリに加え、「Apex Legends」、「Horizon Zero Dawn」、「Cyberpunk 2077」などの実ゲームタイトルでもフレームレートを計測した。
ちなみに計測時の本体動作モードは、最も性能を発揮できるプリセット「Turbo」を適用している。また、GPUドライバのバージョンは執筆時点で最新の「471.11」だ。
【表2】3DMark v2.17.7137 | |
---|---|
Time Spy Extreme score | 5,859 |
Time Spy Extreme Graphics score | 5,923 |
Time Spy Extreme CPU score | 5,526 |
Time Spy score | 11,084 |
Time Spy Graphics score | 11,791 |
Time Spy CPU score | 8,276 |
Fire Strike Ultra score | 7,999 |
Fire Strike Ultra Graphics score | 7,861 |
Fire Strike Ultra Physics score | 25,433 |
Fire Strike Ultra Combined score | 4,219 |
Fire Strike Extreme score | 14,370 |
Fire Strike Extreme Graphics score | 14,988 |
Fire Strike Extreme Physics score | 25,277 |
Fire Strike Extreme Combined score | 7,345 |
Fire Strike score | 23,022 |
Fire Strike Graphics score | 27,159 |
Fire Strike Physics score | 25,384 |
Fire Strike Combined score | 10,089 |
Port Royal score | 7,383 |
【表3】FINAL FANTSY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK | |
---|---|
1,920×1,080ドット 高品質 | 10,519 |
2,560×1,440ドット 高品質 | 8,625 |
3,840×2,160ドット 高品質 | 5,168 |
「3DMark」の総合スコアはいずれも高水準で、CPUスコア・グラフィックススコアともにデスクトップのゲーミングPC顔負けの数値を計測できている。4K解像度で描画される重量級テストである「Time Spy Extreme」においても、テスト中のフレームレートの極端な落ち込みは見られず、かなりの部分で滑らかな画面描画ができていたのは特筆すべきだ。
高負荷タイトルである「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK」においては、「高品質」のフルスクリーン設定でベンチマークを計測した結果、フルHD解像度の判定が「とても快適」、WQHD解像度が「快適」判定で、4K解像度は「やや快適」という結果に。
120Hz液晶を活かしたいのであればWQHD解像度以下でのプレイを推奨するが、4K解像度でも画面が激しく動く一部の戦闘シーンなどを除き、肉眼でもほとんどカクつきのない描画でゲームを楽しめてしまう。画面の精細さに加え、画面サイズが比較的大きいこともあって、ノートPCでプレイしているとは思えないほどのパワフルなゲーム体験ができるだろう。
続いて、実ゲームのフレームレート計測結果を見てみよう。
【表4】ゲームタイトルごとのフレームレート | ||
---|---|---|
平均fps | 最小fps | |
Horizon Zero Dawn | ||
1,920×1,080ドット 最高画質 | 83.0 | 48.0 |
2,560×1,440ドット 最高画質 | 79.0 | 46.0 |
3,840×2,160ドット 最高画質 | 56.0 | 41.0 |
Apex Legends | ||
1,920×1,080ドット 最高画質 | 228.781 | 146.658 |
2,560×1,440ドット 最高画質 | 173.337 | 121.623 |
3,840×2,160ドット 最高画質 | 101.585 | 76.911 |
Cyberpunk 2077 | ||
1,920×1,080ドット 画質:ウルトラ | 79.663 | 57.065 |
2,560×1,440ドット 画質:ウルトラ | 55.056 | 43.003 |
3,840×2,160ドット 画質:ウルトラ | 27.484 | 23.283 |
1,920×1,080ドット 画質:ウルトラ (DLSS有効) | 83.117 | 60.666 |
2,560×1,440ドット 画質:ウルトラ (DLSS有効) | 77.587 | 54.31 |
3,840×2,160ドット 画質:ウルトラ (DLSS有効) | 56.532 | 43.003 |
1,920×1,080ドット 画質:レイトレーシング・ウルトラ | 66.847 | 52.392 |
2,560×1,440ドット 画質:レイトレーシング・ウルトラ | 53.633 | 43.75 |
3,840×2,160ドット 画質:レイトレーシング・ウルトラ | 36.069 | 30.593 |
「Horizon Zero Dawn」では、画質設定を「最高」とし、ゲーム内ベンチマークモードでフレームレートを計測した。AAA級の高負荷タイトルではあるが、フルHD~WQHD解像度の計測では平均60fps超えを達成し、4K解像度でもほぼ60fpsに近い平均フレームレートを計測できている。
後述する「Cyberpunk 2077」のような極めて重いタイトルを除けば、画質設定を最高まで引き上げても、本作のように4K解像度で60fps近い平均フレームレートを計測できるはずだ。
「Apex Legends」および「Cyberpunk 2077」は、NVIDIAの計測ソフト「Frame View」を使用し、どちらもゲーム内の一定コースを移動した際の1分間のフレームレートを計測した。
「Apex Legends」に関しては、フルHDで平均フレームレートが228fps、最小フレームレートが146fpsという結果で、ディスプレイの限界である120Hzを上回る描画性能を発揮できた。
WQHD解像度でも最小フレームレートは120fpsを上回っており、4K解像度でも最小76fps程度は出ることから、あまり解像度にこだわらずゲームをプレイ可能だろう。
いまのところPC向けのディスプレイでも、4K解像度の製品は高いリフレッシュレートを出せないものがほとんどだが、ノートPCでこれだけ小回りのきく性能を備えているのは驚くばかりだ。
「Cyberpunk 2077」は現行タイトルでもトップクラスのヘビー級作品ということもあり、最高画質である「ウルトラ」設定、「ウルトラ」設定のままDLSSを有効化した場合、レイトレーシングが有効化される「レイトレーシング・ウルトラ」設定の3パターンで結果を計測してみた。
まず「ウルトラ」の設定では、フルHD解像度でも平均フレームレートは80fps前後で、最小フレームレートはぎりぎり60fpsに届かない。4K解像度では平均フレームレートが30fps以下に落ち込んでしまい、プレイ中もややカクつきが目立ちやすくなってしまう。
DLSSを有効化した場合、フルHD解像度でのフレームレートはそれほど伸びないが、4K環境では平均56fpsまで改善されるため、プレイ時はDLSSを有効化することをおすすめしたい。
「レイトレーシング・ウルトラ」の設定では自動的にDLSSが有効化されているが、極めて負荷が高くなるため、フルHD以上の解像度では平均フレームレートが60fpsを超えない。
個人的には「ウルトラ」設定でDLSSを有効化するか、「レイトレーシング・ウルトラ」設定のWQHD解像度あたりがビジュアルと快適さを両立させやすいポイントだと感じる。いずれにせよ、本作をこれだけ快適にプレイできるノートPCは稀だ。
本製品の冷却能力も簡単にチェックしてみよう。以下のグラフは「3DMark」の「Time Spy Stress test」中のCPU温度とGPU温度を「HWiNFO 64」で計測したものだ。
こちらも最大性能を発揮できる「Turubo」モードで計測した数値だが、CPU温度は概ね70℃前後、GPU温度は最大で80℃手前まで上昇する。なお、CPUクロックはテスト開始時こそ4.5GHz前後だが、2分ほどすると全コア3.2GHz前後で安定し、GPUクロックはテスト開始から終了までほぼ1,620~1,680MHzを維持していた。GPUパフォーマンスが安定しているため、長時間の負荷によるゲーム性能への影響はそれほど大きくないと言えそうだ。
最後に、ストレージ系のベンチマークも確認してみよう。
データサイズ1GiB、テスト5回の条件で計測を実施。スペック解説でも述べた通り、本製品のSSDはPCIe 4.0接続のため、シーケンシャルリードでは毎秒7,000MB前後、シーケンシャルライトは毎秒5,000MB前後の凄まじい速度が出る。
実際のところ、これだけの速度の恩恵を受けられる場面が多いわけではないものの、データコピーやゲームの読み込みといったシーンでは速度のメリットが感じられるはずだ。
最高峰のゲーミングノートPCを求めるヘビーユーザーに
「ROG Zephyrus S17」は、ノートPCでありながら4K解像度でゲームを快適にプレイできるだけの卓越したパフォーマンスの実現に加え、120Hz駆動の4Kディスプレイ、PCIe 4.0接続のSSDといった隙のない豪華スペックを採用するモンスターゲーミングノートPCだ。
総合スペックは現行ノートPC随一であり、基本的には様々なジャンルのゲームを高解像度でリッチにプレイしたいヘビーユーザーにおすすめできる。
一方、購入のハードルになりそうなのは言うまでもなく実売50万円近い価格の高さだ。本製品は総合性能や機能面の付加価値が高い反面、CPUやGPUの基礎的なスペックのみを追求したいというユーザーにしてみれば、ほかに手頃な選択肢がいくらもあるというのが正直なところ。
あくまでも最上級のゲーミングノートPCを手にしたい、という選ばれたハードコアゲーマーにとって、「ROG Zephyrus S17」はかけがえのない1台となってくれるはずだ。