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注目の“ノート版GeForce RTX 3070”搭載機を使って分かったゲーミングノートの新基準
~レイトレ対応タイトルもバリバリ遊べる「MSI GP66 Leopard 10U」を検証
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- エムエスアイコンピュータージャパン株式会社
2021年2月1日 11:00
2020年秋に登場したNVIDIAのGPU、GeForce RTX 30シリーズは、前世代から飛躍的な性能を遂げたことから大きな人気を呼び、同シリーズを搭載したビデオカードは8万円、10万円と高価なものでも好調に売れている。そして2021年に入って、ついに同GPUのノートパソコン向け版が投入された。
ゲーミングノート市場は拡大を続けているだけに、高い性能へのニーズも日に日に増している。それだけにノートパソコン向けのRTX 30シリーズは目が離せない存在だ。各社から搭載製品が登場しているが、MSIの「GP66 Leopard」は、「GeForce RTX 3070 Laptop GPU」の“フルパワー”を発揮できる設計が最大の見どころに仕上がっている。
Max-Qではなく“全力仕様+α”でRTX 3070を搭載
まずは、ノートパソコン向けGeForce RTX 3070について簡単に触れておく。アーキテクチャはAmpere、製造プロセスは8nm、ビデオメモリはGDDR6の8GB、メモリバス幅は256bitと、ここまでの仕様はデスクトップ版と同じ。CUDAコア数は5,120基(デスクトップ版は5,888基)、RTコア数は40基(同46基)、Tensorコア数は160基(同184基)で、デスクトップ版から若干減っている。
ポイントになるのは、「ブーストクロック」とGPUの消費電力を示す「GPU Subsystem Power」だ。スペックを見るとブーストクロックは1,290~1,620MHz、GPU Subsystem Powerは80~125Wとなっている。つまりメーカーの設計によって、この数値は大きく異なるということ。また、高度な電力管理の「Dynamic Boost 2.0」や動作音管理の「WhisperMode 2.0」を含む第3世代“Max-Qテクノロジ”に対応するかもメーカーに委ねられている。
ノートパソコン向けGeForce RTX 3070を搭載していると言っても、ブーストクロックやGPU消費電力、Max-Q対応などの組み合わせにより性能は大きく変わり、ここが製品選びのポイントと言える。ここで紹介するMSIの「GP66 Leopard」は“フル仕様”とでも言うべきスペックで、Max-Q非対応のGeForce RTX 3070、1,620MHzのブーストクロック、GPU Subsystem Powerはリファレンス仕様を超える130W設定と、まさにモバイル版RTX 3070の性能を最大限引き出せる設計に仕上がっている。実際に使ってみると、高性能ゲーミングノートにありがちなファンが爆音というわけでもなく、性能と使いやすさも兼ね備えていることがすぐに分かった。
そのほかの基本スペックもチェックしておこう。CPUは、Intel第10世代Coreプロセッサ「Core i7-10870H」を搭載。8コア16スレッドで動作クロックは最大5GHz(TurboBoost時)とノート向けのCPUとしてはトップクラス。コア数が効く処理、動作クロックの高さが効く処理のどちらにも強い。ノートパソコン用としては第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake)も登場しているが、あちらは4コア8スレッドのCPUが最大でモバイル性能に力点を置いた仕様。Core i7-10870Hの採用は、シンプルなCPU性能を重視した結果の選択だろう。
メモリは16GBと大容量で、ストレージもNVMe SSDが1TBとこちらも十分。CrystalDiskMark 8.0.0ではシーケンシャルリードが3,429.27MB/s、シーケンシャルライトが2,977.59MB/sとPCI Express 3.0接続のNVMe SSDとしてはハイエンドクラスの性能だ。
ディスプレイは15.6型で解像度はフルだ。表面は映り込みのないノングレア仕様で、リフレッシュレートはゲーミングノートらしく144Hzと高め。RTX 3070の高い性能が活きるスペックで、FPSやTPSなど描画の滑らかさが勝敗に影響するゲームにも対応できる。
サイズは358×267×23.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.38kg。ハイエンド仕様だけに、ACアダプタは大きめだ。インターフェイスは背面に2.5Gの有線LAN、USB 3.2 Gen2のType-C(映像出力対応)、HDMI出力、左側面にUSB 3.2 Gen1 Type-A×1とヘッドセット端子(ハイレゾ対応)、右側面にUSB 3.2 Gen1 Type-A×2を備えている。無線はWi-Fi 6とBluetooth 5.1に対応だ。
キーボードは、ゲーミングデバイスで有名な「SteeleSeries」ブランドとのコラボレーション仕様。日本語配列で、ノートパソコンでは軽視されがちな矢印キーも大きいのがポイント。軽快なキータッチでゲームだけではなく普段使いとしても良好だ。RGB LEDも内蔵されており、付属のアプリで発光パターンをコントロールできるほか、すべてのキー動作のカスタマイズも可能。自分がメインでプレイしているゲームに合わせてこだわりの調整を行なえる。
旧世代のデスクトップ版アッパーミドルGPUを超える性能を発揮
それでは、気になるパフォーマンスをチェックしていこう。本機にはMSI独自の総合ユーティリティ「Dragon Center」に、パフォーマンス設定のプリセットが用意されている。今回は、標準的な設定の「Balance」、オーバークロック動作の「Extreme Performance」、動作音を静かにする「Silent」の3段階でテストを行なった。
また、性能の比較用として3Dベンチマークやゲームに関してはデスクトップ版のGeForce RTX 3070、GeForce RTX 2070でのスコアも掲載する。テスト環境は以下の通りだ。
カテゴリ | 製品名 |
---|---|
CPU | Intel Core i7-10700K(8コア16スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFI(Intel Z490) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL (DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2933で動作) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 3070搭載カード、 NVIDIA GeForce RTX 2070搭載カード |
SSD | Corsair Force Series MP600 CSSD-F2000GBMP600 [M.2(PCI Express 4.0) x4、2TB、 ※PCI Express 3.0 x4で動作] |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
まずは、定番の「PCMark 10」、「CINEBENCH R20」から見ていこう。
スコアは高い順に「Extreme Performance」、「Balance」、「Silent」と順当な結果だ。とくにCINEBENCH R20は「Silent」でCPUのスコアがガクッと落ちている。CPUだけに負荷がかかる処理では、プリセットの違いが大きく出るようだ。
次は、ゲーミングPCでもっとも重要と言える定番3Dベンチマーク「3DMark」、実ゲームのテストを見ていこう。
3DMarkを見る限り、デスクトップ版のGeForce RTX 3070に対して2割から3割スコアが落ちるようだ。その一方で、デスクトップ版のGeForce RTX 2070に対しては本機のExtreme Performanceがすべての項目で上回っており、とくにレイトレーシング環境の性能を測定するPort Royalでの性能差が大きい。
新世代ゲーム機がレイトレに対応していることからも、この部分の性能は気になるところ。実際のゲームにおけるレイトレ性能は、このあとじっくり検証してゆく。ノートパソコンで、前世代のアッパーミドルを上回れる性能を実現したのは素直に喜ばしいところだ。
「アサシンクリード ヴァルハラ」はパフォーマンスのプリセットに関係なく、平均fpsはすべてデスクトップ版のRTX 2070を上回った。しかも、最高画質で平均60fpsを大きく上回っており、重量級ゲームもフルHD解像度なら十分快適にプレイできるのが分かる。
「ウォッチドッグス レギオン」は、レイトレーシングを有効/無効、両方の状態でテストした。このゲームでは、すべてのフレームレートでデスクトップ版のRTX 2070を上回った。
注目すべきはレイトレーシングを有効にした状態だろう。DLSSを使うのが前提になるとは言え、レイトレーシングの画質を最大に設定しても平均60fps以上をキープ。ノートパソコンでも、フルHDなら画質を気にせずリアルタイムレイトレーシングを用いたゲームを存分に楽しめるようになった進化には驚きさえ覚える。RTX 20シリーズに比べ、RTX 30シリーズがいかにレイトレーシングへの対応が強化されているのもよく分かるところだ。
続いて、FPS/TPSで144Hzの高リフレッシュレート液晶が活かせるのかチェックしてみたい。根強い人気のFPS「レインボーシックス シージ」と世界的ヒットのバトルロイヤルTPS「フォートナイト」を用意した。
レインボーシックス シージは、デスクトップ版のRTX 3070やRTX 2070に比べてほかのゲームでは見られないほどスコアがガクッと落ちている。とはいえ、それでも平均フレームレートは200fpsを超えており、十分144Hz液晶を活かせているので、パフォーマンスとしては必要十分。勝ちにこだわる人も満足できる性能だろう。
フォートナイトも最高画質で平均140fpsオーバー。144fpsには届いていないが、それでも高リフレッシュレートを十分活かせるフレームレートだ。このゲームでは、デスクトップ版のRTX 2070を上回っている。
ゲーミングノートにおいて重要な冷却性能についても触れておこう。本機は、冷却システムとして薄型ファン2基と6本のヒートパイプで構成される「Cooler Boost 5」を採用。これはなかなか優秀で、負荷がかかった状態でも静かではないが、決して爆音ではない動作音で収めている。高負荷時は冷却のため、ファンが爆音になるゲーミングノートもあるだけに、ここは進化を感じるポイントだ。
今回は、3DMarkのTime Spy Stress Testを10分間動作させたときのCPU/GPU温度、CPU/GPUクロックをフリーソフトの「HWiNFO」で追っている。
ここでもパフォーマンス設定を切り替えて計測しているが、クロックの推移を見ると、Extreme PerformanceのCPUクロックは4GHz動作に届く回数が多い、Silent時はGPUクロックが微妙に低い、といった差が見られるが、大きく差が出るほどではなかった。
しかし、温度推移ほうはガラリと様子が異なっている。Extreme PerformanceとBalanceのGPU温度は71℃以上にならないようコントロールされているのに対して、Silentは最大83℃にまで上昇、CPU温度もSilentが一番高い結果となった。Silent設定は、許容する温度をほかの2つよりも高く設定し、ファンの回転数が上がらない(=騒音が増えない)ようにしているようだ。Silent設定でもベンチ結果があまり下がらなかったのはこの挙動が理由だろう。
パソコンは冷えているほうが安定動作するもの。もちろん、今回のテスト結果で測定された温度は通常動作上問題があるレベルではないが、Silent設定は夜中や近くにほかの家族がいて気を遣いたい時など、パソコンの動作音を大きくしたくないシチュエーション限定で使ったほうがよいだろう。