レビュー

意外にも? 完成度が高い純正オプション品「ThinkPad X1 ワイヤレスタッチマウス」

ThinkPad X1 ワイヤレスタッチマウス

 ヘビーモバイラーにとって、マウスも一緒に持ち歩くことが欠かせない周辺機器である。もちろんテキストを打つだけならマウスなしでも問題ないが、画像編集などの作業が少しでも加わった途端、マウスが欲しくなる。筆者のような写真も含めた編集業ではなおさらだ。

 しかし、持ち運びに特化した薄型のマウスはさほど多くない。大手のロジクールで言えば「Ultrathin Touch Mouse T630」、日本マイクロソフトで言えば「Arc Touch Mouse」や「Designer Bluetooth Mouse」などがあるが、エレコムやバッファロー(の現行品)に該当製品はない。世の中これだけノートやタブレットが薄型化されているのに、薄型マウスの選択肢が少ないのはいかんともしがたい。

 もちろんマウスの場合、薄型化するとフィット感がスポイルされてしまうので、薄ければ薄いほどよいというわけではない。しかし薄い本体を持っているのに、マウスが分厚いのは、モバイラーとしてのセンスを問われるところである。

 薄型軽量のモバイルノートをリリースしているレノボも、そのニーズをよく分かっているのか、今回の「X1」シリーズの全ラインナップ刷新に合わせて、「ThinkPad X1 ワイヤレスタッチマウス」(以下X1マウス)という純正オプションのマウスを投入した。先に挙げたロジクールや日本マイクロソフトの製品に真っ向から対抗する薄型のマウスだが、ほかのマウスにはない特徴をいくつも備えている。早速見ていこう。なお、直販価格は9,720円だ。

所有欲を満たす製品パッケージとデザイン

 「えっ、9,720円!?」とまず驚かれるだろうが、X1マウスは価格に見合うだけの価値はある。まずは製品パッケージ。ThinkPadでお馴染みとなった黒と赤で構成された厚紙の箱はマットな仕上げで、iPhoneをも彷彿とさせる質感。開くと、まずはチーフデザイナーのDavid Hill氏のメッセージが同梱されている。クッションを1枚取って、ようやく本体と対面となる。パッケージは2層構造で、上にマウス本体、下にケーブルや説明書類が入っている。筆者はマウスのパッケージをすぐに捨てる派だが、X1マウスのパッケージは捨てずにとっておきたくなる。

 本体はThinkPadと同じようなマットな仕上げだが、X1マウスの方がプラスチック感が強い。右下の方に大きくThinkPadのロゴが入り、中央には赤いラインがある。この辺りはThinkPadの流れを汲んでおり、純正アクセサリとしては当然だが、本体と一緒に並べてもまったく違和感がない。

 本体は前にかけて薄くなっていくくさび形。高さはもっとも高いところで20.4mmとなっており、残念ながら最新の「ThinkPad X1」シリーズのいずれのモデルと比較しても厚みがあり、これはロジクールのT630と比較しても厚い。しかしマウスはむやみに薄くしたところで使いやすいものでもないので、妥当な線だろう。一方重量は公称で58.5gとされており、持ち運びに関して苦になることはないだろう。

製品パッケージ
フタを開けると、デザイナーからのメッセージが
もう1枚めくって製品と対面
パッケージは2層
内容物
本体

とにかく豊富なギミックと機能

 ここまで書くと単なるThinkPadブランドを冠した薄型マウスなのだが、X1マウスの特徴はギミックと機能の多さだ。

 まず電源スイッチだが、これがセンサーレンズのカバーと兼用となっており、電源オフ時にはセンサーを保護する役割も果たす。電源をオンにすればレンズが必然と現れるという一石二鳥のデザインで、なかなかスマートでかっこいい。

 本体は2層構造で、上部と下部がスライドして少しズレるようになっている。スライドするとレシーバが収納できるスペースと、充電用のMicro USBコネクタ、そして無線切り替え用のスイッチが見える。とここまで書けばネタバレしているようなものだが、X1マウスはUSBドングルを使うモードと、Bluetoothを使うモードを切り替えられる、デュアルモードを備えた充電可能なマウスなのだ。

 USBドングルモードでは、スイッチをドングル側に設定しておき、USBドングルをPCに挿せばそのPCでマウスが使える。一方Bluetoothモードは、まずBluetoothモードから先のペアリングモードにスイッチをスライドさせ、ペアリング状態に入れてからペアリングしたいPCで設定、その後使える。2モード備えているので、例えば据え置き用のデスクトップPCにUSBドングルを挿して使い、外出する時は本体と、Bluetoothでペアリングしたほかのデバイスと一緒に持ち運ぶ、といった使い方が可能だ。つまり、使い慣れたマウスを使い回せるわけである。

くさび形のデザイン
本体左側面
本体後部
斜め前から見るとくさび形がよく分かる
本体底面
レンズカバーを兼ね備えている電源スイッチ
本体は上下2層で、スライドしてずらせる
ずらした部分にUSBドングルを収納。また、Bluetoothモード切り替えスイッチや充電用Micro USB端子などが見える
付属のUSBドングルが小型タイプ
付属ケーブルのほか、一般的なMicro USBケーブルも利用可能だ
ずらした上面には、各種認証ロゴが入っている

 付属のUSB充電用ケーブルは、コネクタがL字型となっており、不格好とはなってしまうが、PCに接続して充電したままマウスを使い続けることが可能。このためケーブルさえ忘れなければ、バッテリがなくなって使えなくなるという心配はない。余談だが、スライドして見える上面には、各国の認証ロゴが入っており、本体のデザインが損なわれないよう配慮している。

L字型のMicro USBコネクタで、一応充電しながら使える

 ちなみにマウスとしての機能を説明しておくと、左クリックと右クリックがあるほか、中央の赤いラインはなぞるとスクロールするタッチセンサーとなっている。

 ちなみにボタンはボディ一体成型だが、各々が独立したスイッチとなっている。この点は、同じくタッチセンサーを採用し、ボタンがボディと一体成型の日本マイクロソフトのマルチタッチ対応マウス「Touch Mouse」と大きく異なる。Touch Mouseはボタンが1つのみで、タッチセンサーで指の位置を検出して左右クリックを判断するのだが、この仕組み上、右クリックするためには左ボタンから指を離さなければならない。また、左右の同時クリックもできない。一方X1マウスはあくまでもスイッチで左右クリックを判断するため、上記のような制限はない。

 Touch Mouseにはマルチタッチに対応した各種ジェスチャ機能があり、この点X1マウスには不可能なのだが、純粋なマウスとしての機能を追求するのであれば、X1マウスの方がシンプルで理想的ではある。

 もう1つユニークな機能は、本体をひっくり返して使うプレゼンターモードである。このモードでは、底面の手前側がタッチパッドとなり、指でなぞってポインタ移動ができる。また、中央の左右の矢印は、PageUpとPageDown、つまりPowerPointで言う前のスライド、次のスライドの動作が可能だ。別途プレゼンター用デバイスを用意しなくともスムーズにプレゼンテーションが行なえるのは、さすが生産性向上に配慮したレノボならではの機能だと言えるだろう。

 なお、このモード利用時はGセンサーが働き、自動的のマウスの左右クリックボタンやレーザーセンサーが無効となる。タッチパッドをタップして左クリックを行なうことは可能だが、右クリックは封印される。

底面はタッチパッドとなっているほか、PageUp/PageDownでスライド送り/戻しが可能
プレゼンターとして使っても違和感のない大きさ
さり気なく用意されたインジケータ。バッテリ残量とペアリング状態を教えてくれる

 ちなみに、左クリックの横には、4つのホワイトLEDインジケータも備わっている。電源オン時にはバッテリの残量を4段階に表示してくれるほか、Bluetoothペアリング時はインジケータで待機中であることを知らせてくれる。とにかく、このサイズにタッチパッドやらGセンサーやらバッテリ残量LEDやら多数の機能やギミックを搭載していることに感心させられる。

値は張るが、ThinkPadユーザーのみならずモバイラーに広くおすすめできる

ThinkPadと組み合わせてみた

 このようにX1マウスは、薄型で持ち運びに特化しながら、ビジネスシーンに求められる多くの機能を凝縮している。デザインがマッチするThinkPadユーザーはもちろんのこと、汎用品なので、ThinkPadのロゴが入っているのが気にならないのであれば、他社の製品と組み合わせても使いやすいマウスである。

 唯一のネックと言えば価格だが、それもデザインや機能を理解すれば納得できるだろう。ThinkPadの純正オプションが普通に使いやすいというのは意外かも知れないが、「薄型ノートと一緒に持ち運べるマウスが欲しい」ユーザーは、検討してみてはいかがだろうか。

(劉 尭)