レビュー

新世代CPUと旧世代マザーを通販で購入。未対応BIOSをUSBメモリで更新してみた

Z690 UD

第13世代CoreにZ690マザーボードで安く上げたいが……

 IntelとAMDの新たなCPUが相次いで発表されたのにあわせて、そろそろ新しい自作PCを組もうと思っている人もいるはず。筆者もまさにその1人で、先日、IntelのCore i5-13600Kが通販で安くなっているのを見つけて、CPU単体で即購入した。

 ほかのパーツも買わねばならないが、コロナ禍は未だ収まらず、第8波に入ったとの声も聞こえる昨今、秋葉原まで出かけて余計な感染リスクは負いたくない。……というのは建前で、巣ごもり生活に慣れ切った筆者は買い物のために遠出するのが面倒で、「通販でセール品を買えばいいじゃない?」という気分である。

 理由はともかく、通販で安く買いたい筆者は、マザーボードも最新のZ790チップセット搭載の製品ではなく、1世代前のZ690を搭載した製品を買うことにした。ソケットは前世代と共通のLGA1700なので問題なく利用できる。ハードウェア的には。

 問題はソフトウェア側だ。マザーボードのBIOSが第13世代Coreに対応していなければ、電源を入れてもうんともすんとも言わない。新世代CPUにあわせて旧世代のマザーボードを購入する際には、製品パッケージに新世代CPU対応の表記があるか確認したり、店員に対応の可否を尋ねるなどする必要がある。

 ところが通販だとそうもいかない。実店舗を持つようなショップならオンラインでも聞けば教えてくれるかもしれないが、Amazonのサポートに聞いても答えてくれるとは思えない。かといって「対応していればラッキー」などと期待して買うものでもない。

 そこで今回の主題。対応するCPUがなくてもUSBメモリ経由でBIOSをアップデートできる機能だ。今回はあえて何も確認せずに旧世代マザーボードを購入し、BIOSを新世代CPUに対応させて動かすことにした。

まずは対応製品を探す

 この機能は、マザーボードに電源を接続し、USBメモリなどのストレージからBIOSのファイルを読み込んで更新するもの。動作にCPUを必要とせず、マザーボードと電源さえあれば使える。購入時のマザーボードのBIOSが新世代CPUに対応しているかどうかに関係なく、最新のBIOSにアップデートできるわけだ。

 事前準備として、あらかじめ別のPCで新世代CPUに対応したBIOSをダウンロードし、USBメモリに入れておく必要がある。BIOSのファイルはせいぜい数十MB程度なので、USBメモリは小容量で問題ない。また新世代CPUに対応したBIOSが配布されているのも前提なので、購入前にマザーボード製品の対応CPUリストを確認しておこう。

 筆者は今回、GIGABYTE製の「Z690 UD」を購入した。Z690チップセットを搭載した製品の中では、実売2万6,000円程度と比較的安価だったが、16+1+2フェーズの贅沢な電源回路や、DDR5、2.5Gigabit Ethernetにも対応している。筆者はメモリの容量を増やすついでにDDR5を選んだが、同社はメモリの仕様がDDR4に変わっただけの「Z690 UD DDR4」もラインナップしているので、好みで選ぶといいだろう。

Z690 UDの対応CPUリスト。バージョンF20bでCore i5-13600Kに対応していた

 GIGABYTEの場合、「Q-Flash Plus」という名前で同様の機能を提供している。メーカーによって呼び名が違うため、製品の仕様をよく調べるようにしたい。主要なメーカーでは以下のように呼ばれている。各社の名称を並べてみると、GIGABYTEだけ気づきにくい名前な気もする。

  • ASRock:BIOS Flashback
  • ASUS:USB BIOS FlashBack
  • BIOSTAR:SMART BIOS UPDATE
  • GIGABYTE:Q-Flash Plus
  • MSI:Flash BIOS

 以前はこのような機能を搭載している製品は、ハイエンドのものに限られていた。今もそういうメーカーはあるが、GIGABYTEのように比較的安価な製品にも搭載しているメーカーもある。ゆえに製品のセールスポイントになっている場合もあり、製品情報サイトのどこかに記述があることも多いだろう。また、マニュアルを確認すれば手順解説の有無でも確認できる。

Z690 UDの製品情報サイト。Q-Flash Plusをセールスポイントの1つに挙げている

早速BIOSをアップデート……の前にCPUを入れてみる

Core i5-13600KとZ690 UD。「Support 12th Gen Intel Core Processors」としか書かれておらず、第13世代Coreに関する記述はない

 通販で筆者宅に届いたZ690 UDのパッケージを眺めてみたが、第13世代Coreに対応したというような文言は見当たらない。これは非対応の可能性が高そうだ。

 ここですぐに最新のBIOSに更新したいところだが、まずはCPUやメモリなどを装着して、物理的には動作するであろうところまで組んでしまう。企画的に本当に動かないかを確認したいという気持ちもあるが、BIOSはアップデートに失敗するとマザーボードが動作しなくなる場合もあるだけに、むやみにアップデートするのは避けたい。Q-Flash PlusはCPUが未装着でも動作するが、装着後でももちろん使える。

Z690 UDを開封。付属品は少なくシンプルな内容
マザーボード本体。ここにも「Support 12th Gen Intel Core Processors」の文字が
動作するかわからないがCPUを取り付けてしまう
そのほかのパーツも装着し、ケースに組み付けてとりあえず完成

 ざっと組み上げたところで電源オン。想定どおり、ディスプレイには何も出力されず、うんともすんとも言わない。今回組み付けたFractal Design製のPCケース「Define 7 Compact White Solid」にはビープ音用スピーカーが搭載されていないので、PCからはCPUクーラーやケースのファンが回る音がするだけだ。

 Z690 UDにはマザーボード上にステータスLEDが用意されている。動作不良の際の原因を示してくれるもので、今回はDRAMとCPUの点灯を交互に繰り返していた。マニュアルでこのステータスLEDが示す意味を調べたが、「光っている部分に問題がある」という以上の説明は見つからなかった。

マザーボードの角にあるステータスLEDは、DRAMとCPUが交互に点灯

 普通の自作PCユーザーなら絶対に遭遇したくない絶望的シチュエーションなのだが、今回は「うっかり普通に起動してしまったら記事にならないので、起動しなくてよかった」という余裕の気分である。ステータスLEDでCPUだけでなくDRAMも点灯しているのは気になるが、状況的にBIOSが怪しいのは疑いない。

いざ、「Q-Flash Plus」を実践

 いよいよ今回の本題である「Q-Flash Plus」を試す。手順は製品情報サイトにあるマニュアルのうちの「Unique Features Introduction」に書かれている。

 まずは製品情報サイトから、第13世代Coreに対応したBIOSをダウンロード。ZIPファイルを解凍し、中にあるBIOSのファイルをUSBメモリにコピー。続いてBIOSファイルの名前を「GIGABYTE.bin」に変更する。なおUSBメモリはFAT32でフォーマットしたものが必要だ。この手順はメーカーや製品によって異なるので、必ずその製品のマニュアルを確認する。

製品情報サイトから新BIOSをダウンロード。この時点ではバージョンF20bが最新
ZIPファイルの中にあるBIOSのファイルをコピー
USBメモリに入れて、マニュアルの指示どおりにリネームする

 次に作成したUSBメモリを、決められたUSBポートに挿入する。Z690 UDの場合、背面パネルの最上段にあるUSBポートにBIOSの文字があり、そこが指定のUSBポートとなっている。

PS/2ポートの右側に、BIOSと書かれたUSBポートがある(赤枠部分)

 この状態で電源ユニットの主電源をオンにし、すぐにマザーボード上にある「Q-Flash Plus」ボタンを押す。するとボタンのすぐ横にあるLEDが黄色く点滅し始めた。BIOSの更新作業が始まったのだろう。

 マニュアルによると、この状態で6~8分間待機するとBIOS更新が完了し、LEDの点滅が止まるという。実際にやってみたところ、1分ほどで点滅が止まってしまった。大丈夫なのかと不安になるが、USBメモリの読み出し速度によっては遅くなる可能性もあるだろうし、PC関連ではそういう点を見越して時間を極力長めに書いてあるものだ。

マザーボードの下方に「Q-Flash Plus」ボタンがある(赤枠の白いボタン)。押すとすぐ右側にある動作ランプ(QFLED)が点滅する

 ともかくこれで作業は完了。USBメモリを抜き、意気揚々とPCを起動する。……動かない。

 ディスプレイ出力はされず、ステータスLEDも先程までと全く同じ状態だ。今度こそ正しく絶望的シチュエーションである。DDR5メモリを挿し直したり、スロットを変えて1枚だけにしたりしてもダメ。さすがに2枚とも初期不良ということはあるまいが。

 と、そこでステータスLEDのCPUのランプも点灯したままなのが気になった。ここでようやく「もしかしてBIOSの更新に失敗したのでは?」と思い、BIOSを入れてあったUSBメモリをほかのPCに挿してみると、無反応。何度か挿し直すと認識した。どうも接触不良のようだ。BIOSの更新が1分程度で終わったように見えたのも、USBメモリからBIOSのファイルの読み込みができずに終了しただけの可能性がある。

 改めて、きちんと認識する別のUSBメモリを用意して、更新作業をやり直す。すると今度は「Q-Flash Plus」のLEDの点滅速度が変わり、消灯するまで約6分かかった。やはり前回の作業は更新できていなかったようだ。

 再起動すると、ついにディスプレイにBIOSの画面が出力された。CPUやメモリなどのデバイスも全て問題なく認識されていた。

 この作業について1つ余談だが、64GB以上のUSBメモリはWindowsから普通にフォーマットしようとしてもNTFSかexFATしか選べない。FAT32にするにはボリュームサイズを縮小するなど手間が要るので、最初から32GB以下のUSBメモリを用意した方がいい。今回の場合だとBIOSのファイルサイズは約30MBなので、古いUSBメモリで問題ない。接触不良さえなければ。

マザーボードを通販するならCPUなしでBIOS更新できる製品が安心

 以上で作業は終了となる。本来なら旧世代のCPUを用意してBIOSのアップデートをしなければならないところが、Q-Flash Plusのような機能に対応する製品ならCPUなしで、かつ簡単な手順でBIOSをアップデートできるのが確かめられた。

 これさえあれば、通販でも中古でも、安心してマザーボードを購入できるというのは大きい。IntelでもAMDでも対応製品なら使えるので、新世代CPUと旧世代マザーボードという組み合わせで使いたい時には、ぜひとも覚えておきたい機能だ。