レビュー

もうビデオカードの取り外しでケガすることはない。「ROG CROSSHAIR X670E EXTREME」のギミックが素晴らしい件

ROG CROSSHAIR X670E EXTREME

 ASUSから、最新のRyzen 7000シリーズに対応するSocket AM5マザーボードが複数発売開始となった。この記事では、最上位となるExtended ATXフォームファクタの「ROG CROSSHAIR X670E EXTREME」を、写真を中心に見ていきたい。

 実売価格は15万円前後となっており、コンシューマ向けマザーボードとしては過去に類を見ないほど高価なのだが、その分装備や機能も最高級。付属品もかなり豪華で豊富だ。ちなみにパッケージを体重計で計測したところ6kgと出た。これはXbox 360初代のパッケージ(6.2kg)に匹敵する。その昔、Xbox 360を新宿ヨドバシカメラから家に持って帰るのは相当大変だったと記憶している。腕力に自信がないユーザーは通販で購入することをおすすめしたい。

 この重さの大半は金属製のバックプレートやヒートシンクによるもの。マザーボード本体だけでも、そこらへんのゲーミングノートPCを凌駕する3kgあるのだ。もちろん、本体はバックプレートで堅牢性が高まっているとは言え、きちっと支えるため、剛性の高いケースを選びたい。

製品パッケージ。体重計で測ってみたら6kgだった
パッケージを開いたところも凝っている
製品は静電気防止袋などに入っておらずむき出しのままだ
本体背面は大型のバックプレートで支えられている

 機能面では、やはりVRMに装備された、ケース内を彩る「ANIME MATRIX LED DISPLAY」が特徴的。ミニLEDによるテキストやアニメーション表示が行なえる。チップセットヒートシンク部は「AURA SYNC」に対応したLEDイルミネーションを備える。

 CPUソケットと最上段PCI Express x16スロットの間には、「LIVEDASH OLED」があり、CPUの温度監視やBIOSアップデート進捗状況の表示といった実用的な使い方から、好みのアニメーションの表示といったアクセサリ的な使い方が可能。まさに“自作PC”そのものの行為の楽しさが味わえる。

VRMヒートシンク上部はANIME MATRIX LED DISPLAY。CPUソケットとPCI Expressスロットの間は「LIVEDASH OLED」、そしてチップセットヒートシンク部はAURA SYNC対応のLEDイルミネーション

 「EXTREME」と冠した製品は、オーバークロック競技用としても使われるのだが、その点本製品も抜かりなく、LN2オーバークロック時に使える「LN2 MODE」ジャンパー、-120℃以下でもPCの起動を可能にする「RSVD SWITCH」、すぐに安全なモードで起動できる「SAFE BOOT BUTTON」を始め、ベースクロック調整やスローモードも、ボード上にあるスイッチ類で行なえる。

ベースクロック調整用のボタン
BIOSの切り替えやRETRY BUTTON、SAFE BOOT BUTTONなど
電源ボタンやPOSTコード表示、電圧テスターポイントも用意されている

 もちろん、CPUへの電源供給を行なうVRM回路も抜かりはなく、20+2フェーズデザインとなっている。なお、こうしたマルチフェーズデザインは一般的にフェーズダブラーを採用するが、本製品はフェーズダブラーを使わずに“チーム化”されており、2フェーズが同時動作する仕組みとなっている。

CPUソケット周り
CPUソケット。CPUを装着してからカバーを外すよう指示している
VRMは20+2フェーズ
12V補助電源コネクタは2基。こちらも金属で強化されている

 このほか付属品としては、メモリスロット付近にM.2 SSDを垂直に装着し、大型のヒートシンクで冷却を行なう「GEN-Z.2」や、PCI Express 5.0のM.2 SSDに対応し、大型のヒートシンクを備えたPCI Expressスロット用の拡張カード、多数のLED制御を行なうための延長ケーブル、多くのARGB対応ファンの接続を1カ所にまとめられる「ROG FAN CONTROLLER」、ビデオカードを支える「GRAPHICS CARD HOLDER」など、豊富に用意されている。

マザーボード上のM.2スロットに大型ヒートシンク
M.2 SSDはQ-Latchと呼ばれる機構で、ツールレスで着脱可能
背面インターフェイス
M.2 SSDを垂直に装着できる「GEN-Z.2」
超豊富な付属品。ファンのハブや、ビデオカードホルダーなども別途購入不要だ
PCI Express 5.0 SSD対応の拡張カード
ヒートシンクを外したところ

長年欲しかったのがコレ→PCIE SLOT Q-RELEASE

 さて、特徴を挙げたらキリがないROG CROSSHAIR X670E EXTREMEだが、筆者が開封して「おおっ!」と思ったのは、最上段のPCI Expressスロットのラッチを、ワンプッシュで解除できる「PCIE SLOT Q-RELEASE」だった。

この丸いプッシュボタンが「PCIE SLOT Q-RELEASE」

 言うまでもないが、近年のハイエンドビデオカードは巨大化が進んでおり、ヒートシンクが重くなっている。そのため、ビデオカード基板のたわみを抑えバックプレートの装備が流行っているのだが、このバックプレートによってPCI Expressスロットのラッチにアクセスしにくくなっている。

 そしてCPUクーラーを装着したままにすると、さらにアクセス性が悪くなり、基板破損覚悟で割り箸で突くか、ケガ覚悟で指を入れるか……となる。そして、このままでは埒が明かない(ラッチが開かない)と踏ん切りつけて、結局いったんCPUクーラーやメモリを外すハメになったりする。外したいのはビデオカードだけなのに、だ。

 PCIE SLOT Q-RELEASEは、マザーボードの前方の離れたところにあるプッシュボタンを押すことで、ワイヤーがラッチを下に引っ張って、ビデオカードのロックを解除する。たったそれだけなのだが、これならほかのパーツを一切取り外さずにビデオカードを容易に取り外せるわけだ。

プッシュボタンを押下するとワイヤーがラッチを下に引っ張ってロックを解除する
このようにバックプレートが装着されているビデオカードでラッチに届かなくても大丈夫。広いスペースのところに指を入れて解除できる

 ちなみにこの機能、現時点ではROG CROSSHAIRおよびROG STRIXの上位モデルのみ実装されている。他社ではGIGABYTEが上位モデルに「PCIe EZ-Latch Plus」として搭載されている(GIGABYTEの下位モデルは出っ張りを大きくした「PCIe EZ-Latch」)程度である。

 ビデオカードの新製品が出るたびに買い替えたいといった新しいもの好きな自作ユーザーは多いだろうし、AMDのプラットフォームではソケットが長い間使われる傾向にあり、その間にビデオカードだけを刷新したいというニーズもあるだろうから、このギミックはそのユーザーたちにはもってこいだろう。個人的には10年早く実装されてたらなぁと思わなくもないが、今からなら下位モデルでもぜひ実装してほしい機能だ。