レビュー

スマホで回転速度や発光をカスタマイズできるファン「GAMER STORM MF120」

MF120

 中国DEEPCOOLは、Android/iOSスマートフォンから回転速度や発光をカスタマイズできるファン「MF120」をGAMER STORMブランドで近日中にも国内に投入予定だ。海外での推奨小売価格が109.99ドルのため、日本国内では1万円を超える実売価格が想定される。

 じつは、MF120は昨年(2018年)より海外で販売されていたのだが、合法的に日本国内でWi-Fi機能を使用するための技適を取得していなかった。このため、マザーボードの機能を使って制御するモデル「MF120S」が先んじて投入されていた。このたびMF120が技適を取得できたので、ようやく日本国内での販売の準備が整った、というわけである。発売を控え、サンプルを入手したので、簡単にご紹介したい。

こだわりのデザイン

 製品のパッケージはケースファンとしては異例なほどに豪華だ。2段重ねとなっていて、上段にファン2基、下段にファン1基とコントロールユニット、そして緩衝材の裏側にケーブル類を収納する。上段は左右に観音開きで開く仕組みとなっているなど、かなりのこだわりようだ。

 MF120シリーズの特徴はなんと言ってもその独特なデザイン。一般的なファンはブレード周囲をフレームが囲む構造となっているが、MF120は大胆にもそれを省き、シンプルにネジ止め部とハブをブリッジでつなげる構造としている。そしてそのブリッジにアドレサブルRGB LEDを仕込むことで、ほかのファンとは一線を画すスタイリッシュな外観を実現している。

 一連のWi-Fi経由のファン制御は、専用のコントロールユニットを介して行なう。このユニットは、マザーボードのPWMファン用4ピンと接続し、回転数を検出させるためのコネクタ、SATAから電源を取るためのコネクタ、そして3基のファンに接続するためのコネクタを備えており、内部にWi-Fiモジュールおよびコントローラを内蔵することで、制御を行なっている。

 ファンとユニットの接続には5ピンの専用ケーブルを用いるが、ファン側はMicro USBコネクタを採用しているのは、ユニークな点だと言えるだろう。LEDつきファンとしては、かなりスマートに配線できる部類に入る。

製品パッケージ
内箱が用意されている
内箱は2段重ね。上の段はファンを2基格納
観音開きに左右に開く
下の段にファン1基とコントロールユニットを格納している
内容物
ファン本体
フレームレスの独特なデザイン
コントロールユニット
回転数検出用にマザーボードと接続するピン、SATA電源入力、ファンへの接続ピンを容易
ファンとコントロールユニットは専用のケーブルで接続するが、ファン側にはMicro USBコネクタが用いられている
実際に接続して光らせているところ
コントロールユニット部も光る

Wi-Fiは2.4GHz帯のみ対応

 制御は専用アプリ「MF Control」から行なう。iOSの場合はApp Storeからダウンロードできるが、Androidの場合はホームページからAPKをダウンロードしてインストールする。今回はAndroid版を使ってセットアップを行なうことにした。

 アプリを起動すると英語のチュートリアルがはじまるのだが、ややわかりにくいので、仕組みを説明しておこう。MF120は、Wi-Fi Directのように直接スマホと接続するのではなく、スマートフォンと同じアクセスポイントに接続し、同じネットワークセグメントを介して設定を行なう仕組み。このため最初は、アクセスポイントのSSIDとパスワードをMF120に「教えてあげる」必要がある。

 これがMF Control起動直後の右上にある「Scan」ボタンの役割だ。Scanボタンを押すといきなりSSIDとパスワードを聞かれるのだが、これはMF120にSSIDを伝えるために使われる。SSIDとパスワードを入力するとMF120を自動的に探し、設定を転送したあとに接続をしてくれる。

 しかし、アプリがどうやってSSIDとパスワードをMF120に教えているのか、説明書などには解説がなかったため、DEEPCOOLに確認したところ、MF120は初期状態ではつねにWi-Fiを発していて、アプリ側でそれを認識して接続し、SSIDとパスワードを転送しているとのことだ。

 ただ、この仕組みは2.4GHz帯のみに対応しているのこと。パッケージなどに2.4GHz帯のみの対応とは一言も書かれていなかったので、試用当初は5GHz帯のアクセスポイントで試行錯誤してしまい、かなり苦労をさせられた。

 ちなみに本体内蔵のアンテナは利得があまり高くないようで、SSIDが近くないとダメそうな雰囲気である。海外のAmazonの製品ページのレビューで、アプリがうまく接続できないというフィードバックが多いのは、2.4GHz帯専用であることにユーザーが気づかなかったのと、電波が比較的弱いためだと思われる。

最初はScanボタンを押すようガイドされる
SSIDとパスワードを入力
対応は2.4GHz帯のみ。これが仕様として書かれていないため、5GHz帯でスキャンを繰り返しても認識されなかった
いったん認識すれば、個別もしくは全体のコントロールが行なえる

いったんつなげてしまえばラクラク設定。ファンとしての性能も悪くない

 セットアップに苦労したものの、いったん接続できてしまえばそのあとは難しくはない。発光色をカラーパレットから自由に選び、発光モードを10種類のなかから選択。ちなみにカラーパレットでは設定した色より明るい色は選択できるものの、暗い色はできず、その設定はモードのほうの明るさで設定する。

 一方のファン速度は「Powerful」、「Regular」、「Silent」の3つのプリセットか、速度を自由に選択するDIYモードから選ぶ。こちらもプリセットの制御に関する仕組みに関する説明がないのだが、コントロールユニットで取得できた温度をもとにファン速度を調整している可能性は高い。

発色の設定
発光モードと明るさの設定
回転速度のプリセットは3種類
ユーザーが設定することもできる

 ファンは流体軸受を採用。回転速度は500±200~2,200±10%rpmと、回転速度の上限は120mm角ファンとしては高速な部類に入る。このため回転速度を上げるとそれなりの騒音はする。ただ、風量は56CFMとさほどハイスペックではない。ちなみに駆動電圧は7Vから13.2Vとされているので、PWMではなくDCによる回転制御の可能性はある。

 本製品はフレームレスゆえ、吹付け側の抵抗が大きいと空気が側面から逃げてしまう。このため静圧に関しては過度な期待できない。ただ、ブレードの先端が二重になっているなど、風量を補うための工夫が見られる。よって、CPUクーラーに取り付ける冷却ファンや、排気ファンとしてはあまり適切ではないかもしれないが、吸気ファンとしての性能は期待できるだろう。

 本製品は「魅せる」性質が強いので、ケースの前面に取り付ける吸気ファンに適している。ただ、本製品は排気側にしかネジ穴を用意しておらず、ケースによっては希望どおりの向きに取り付けられないことも考えられるので、購入する前にケースの構造をあらかじめ調べておいたほうがいい。

ファンブレードは二重で風量を稼いでいるが、フレームがないため排気ファンなどには向かないだろう。また、ネジ穴は排気側にしかないため、取り付け場所に注意したい

 MF120は吸気用のケースファンとしては優れている。そして何より世界で唯一無二のデザインが最大の特徴。独特な外観に惹かれるのであれば、試してみる価値はあるだろう。マザーボードがRGB LEDの制御に対応するのであれば、MF120Sもあわせて検討してもらいたい。