レビュー

Razerの無線給電ゲーミングマウス「Mamba+Firefly HyperFlux」を試す

~価格も高いが性能も高い、次世代のゲーミングマウス

Razer Mamba HyperFlux

 Razerは8月31日、ゲーミングマウスとマウスパッドのセット「Mamba+Firefly HyperFlux」の国内発売を開始した。直販価格は33,880円(送料別)。

 1月の「CES 2018」にて発表された製品で、セットで利用することで、マウスとの通信と給電をワイヤレスで行ない、“軽量かつケーブルレス”のゲーミングマウスを実現しているのが特徴の製品。

 無線マウスでは、本体からケーブルが伸びておらず、マウスバンジーなどでケーブルが引っかかるのを防がなくとも、快適にマウスを動かせるため、よりゲームプレイに集中できる。これまでは、バッテリの搭載による重量増、接続の安定性などから、ゲーマーは有線マウスを使っていたわけだが、本製品では、無線給電と独自技術でそれらの問題を一挙に解決している。

 今回は、Razerより機材をお借りできたので、レビューしていきたい。なお、機材は国内発売発表以前に借用したもので、技適などはすでに取得されていたが、国内発売製品と一部仕様が若干異なる場合があることをあらかじめお断りしておく。

製品の仕様と外観

 製品のおもな仕様は以下のとおりだ。

Razer Mamba HyperFlux
ボタン数9
スイッチRazerメカニカルマウススイッチ / タクタイル・スクロールホイール
センサーRazer 5G 光学センサー
最大読み取り解像度True 16,000dpi
最大速度450ips
最大加速度50G
ポーリングレート1,000Hz
接続インターフェイス2.4GHz無線 / USB Micro-B
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)70.1×124.7×43.2mm
重量96g(ケーブル除く)
その他Razer Chroma、HyperFlux対応
Razer Firefly HyperFlux
マット表面クロス(布)とハードのリバーシブル
接続インターフェイスUSB Micro-B
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)355×282.5mm×12.9mm
重量643g(ケーブル除く)
USBケーブル長さ2.1m
その他Razer Chroma、HyperFlux対応

 製品の箱は、ゲーミングマウスであることを考えても巨大だが、Mサイズのマウスパッドとセットなので、仕方ないサイズだろう。

マウスパッドのセットなので、箱が大きい
開封したところ
Razer Mamba HyperFluxとケーブル
Firefly HyperFluxは下に梱包されている

 同梱品はMamba HyperFluxとFirefly HyperFluxに、2.1mのUSB Micro-Bケーブル、取扱説明書。

 まずFirefly HyperFluxから見ていくと、オリジナルのFireflyもRazer Chroma対応でLEDで光る仕様ということもあり、見た目はFireflyからほぼ変わっていない。

 しかし、Firefly HyperFluxではベース部分とマット部が独立しており、マットがクロス/ハードのリバーシブル仕様になっている。ベースのマット接地面には粘着シートが配置されており、ゲーム中にマットが外れないよう工夫されていた。

製品一式
クロス面
ハード面
滑り止めの粘着シートが配置されている

 Mamba HyperFluxも、有線モデルの「Mamba Elite」、無線モデル「Mamba Wireless」と変わらず、メインボタンとホイール(左右チルト対応)、サイドボタン×2、dpi変更ボタン×2のプログラマブルボタン9個が用意され、形状も右手用のエルゴノミクスデザインで変わっていない。

前面。Micro USBがある
後面。最後部の切り欠きはLEDのスリットで、マットと無線接続されていると光るインジケータとして機能する。RazerロゴはChromaに対応
天面
底面。技適マークが印刷されている
左側面。サイドボタンは2つ。前方の小さなボタンは内蔵プロファイルの切り替えボタン。LEDがプロファイルを示している
右側面。グリップ部は強化ゴム製

 サイズもほぼ共通だが、重量はMamba Wirelessが106gなのに対し、 Mamba HyperFluxは96gで、Mamba Elite(ケーブル除く)と同じ重さを実現。実測値でも96gを記録した。

 Mamba HyperFluxでは、HyperFlux非対応マウスパッドでの利用を考慮して、USB Micro-Bでの有線接続も対応しており、こちらの実測値は101gと、わずかではあるが100gを超えた。

マウス単体は実測96g
ケーブル接続時は101gだった

 本製品では、Razerの独自ユーティリティ「Synapse 3」で設定の変更が行なえる。マウスボタンの機能割り当て、マクロ、dpi設定、ポーリングレートのほか、マウスの使用感に大きく関わる、リフトオフディスタンスの設定も変更可能だ。

 ちなみにリフトオフディスタンスを最低に設定してみたところ、1円玉を挟んでも反応しなくなったため、1.5mm未満にまで下げられることは確実のようだ。

Razer Synapse 3でのボタン設定
詳細設定
LED制御
マウスマット表面校正。Razer製ではない、筆者の手持ちのマウスパッドも校正に登録できた

本製品特有の注意点

 HyperFluxは、いわゆる電磁誘導方式による無線給電技術で、常時給電し続けることで、Mamba HyperFluxではバッテリを省いて軽量化を実現している。

 無線接続には2.4GHz帯が利用されているが、ミリ秒単位で周波数チャネルをスキャンして、電波干渉など必要に応じて接続に使うチャネルをシームレスに切り替えるという、「Adaptive Frequency Technology (AFT)」と称する独自技術により、遅延のないデータ転送を謳っている。

無線で給電と通信を行なう
マウスとパッドどちらもChromaに対応する

 実際に無線給電/接続で利用してみたところ、いくつか注意するべき点があった。

 1つ目は(製品情報にも注意書きはあるが)、金属製の机を利用している場合、HyperFluxが使えないことだ。電磁誘導の仕組み上、磁気フィールドが形成できずに給電が行なえないため、スチール製のデスクなどを使っているユーザーは、肝心の無線給電が使えず有線で使うしかなくなってしまう。

 もう1点は、マウスマットから給電がしばらく行なわれないと、一定時間は動作が不安定になることだ。

 筆者の環境ではスリープ時にPCがUSBへの給電を遮断するため、マウスへの給電も止まる。すると、スリープから復帰時にしばらく動作が不安定になった。

 マットから持ち上げられても無線接続を維持できるように、ごく小さな容量のバッテリが内蔵されているようで、そちらが空になったあと、充電される前に持ち上げてしまうことで「HyperFluxでの給電が切断→バッテリを使い果たし無線接続も切断」という動作になってしまうようだ。

 これについては、1分も待てばすぐに充電されて安定動作するので、PC起動時などにだけ気にすれば良いだろう。

 また、前述のとおり、無線接続は2.4GHz帯なので、できるだけ電子レンジの近くや無線LANルーター(アクセスポイント)などの近くでは使わないほうが、より安定した接続を維持できるだろう。

 マウスパッドがFireflyに限られるという点から、そもそもこのサイズのマウスパッドを置くスペースがない場合や、逆にもっと大きなマウスパッドを使いたい場合には、本製品は購入候補から外れてしまう。なお、マウスパッドのサーフェスが限られる点については、後述するが回避策がある。

有線と遜色ない性能

 さて、本製品で気になるのは、無線接続/給電であることによる、遅延などのマウス性能の変化だ。

 筆者が「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」や「Overwatch」、「Quake Champions」などのFPS/TPSタイトルで、有線接続と無線接続を切り替えながら何度かプレイしてところ、体感できる差はまったくなかった。

 マウスの移動だけでなく、クリック遅延も体感できず、ゲームのスコアも同等か、むしろ無線時のほうが優秀という結果だった。

 しかし、あくまで筆者の体感であるため、今回は有志開発のソフト「MouseTester Software Reloaded」を利用して、センサーのトラッキング性能に差が生じるかを検証してみた。

 以下の図は左右にマウスを振ったさいのX軸(横方向)のセンサーデータを示している。図の簡単な見方は、正規化されて描かれている曲線に、実測のカウント(点)が近ければ、良い成績ということになる。

 センサーのdpiは、実際に設定しているゲーマーが多いと思われる400/800/1,600/3,200dpi設定でそれぞれ測定している。レポートレートは1,000Hzの設定だ。

MouseTester測定結果
400dpi設定時/無線
400dpi設定時/有線
800dpi設定時/無線
800dpi設定時/有線
1,600dpi設定時/無線
1,600dpi設定時/有線
3,200dpi設定時/無線
3,200dpi設定時/有線

 結果はご覧のとおりで、どちらもネガティブアクセルやカウントの飛びなどはほとんど見らない。少なくともセンサーの読み取り性能については、接続方式による有意な差はないと言って良いだろう。

 加えて、筆者の手持ちのマウスパッドをFirefly HyperFluxに載せて、無線給電/接続をためしてみたところ、とくに問題なく動作したことを記しておきたい。筆者のマウスパッド(Artisan製)は、下層のウレタン部の密度が高く、SteelSeriesの「QcK」などよりも厚いが、正常に動作した。よほど分厚いパッドでなければ給電できるようだ。

 当然、上記の利用方法はメーカーの動作保証の対象外ではあるが、“マイマウスパッド”を愛用しているゲーマーには朗報だろう。ただし、金属製のマウスパッド利用者は、前述のとおり無線給電が使えなくなるため要注意だ。

すべてはお財布次第

 以上、Mamba+Firefly HyperFluxのレビューをお送りしたが、性能面では有線と変わらず高い性能を発揮し、ゲーミングマウスとして高い水準にある製品だ。

 そのため、万人にオススメしたい……と言いたいが、問題は価格だ。

 直販価格が33,880円、執筆時点でAmazon.co.jpで33,564円という、高価格化が進んでいるゲーミングマウス製品にあっても、トップクラスと言えるド級の価格のため、購入に踏み切るには財布との相談が必須になるだろう。マウスパッドとマウスのセットであるため、マウス単体と比較するのも酷ではあるが、高いことにかわりはない。

 しかし、機能や性能、使用感を考えれば、ほかにない製品であり、次世代のゲーミングマウスを体感したいゲーマー諸氏は、財布が許すのであれば、購入をオススメしたい。

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