レビュー
Thunderbolt 3接続ポータブルSSD「Samsung Portable SSD X5」実機レビュー
2018年8月29日 00:00
Samsungは8月28日、Thunderbolt 3インターフェイス接続ポータブルSSD「Samsung Portable SSD X5」を発表した。前モデルのUSB 3.1 Gen2対応ポータブルSSD「Samsung Portable SSD T5」の転送速度が最大540MB/s、X5の転送速度が最大2,800MB/sとされているので、理論値では約5.19倍性能が向上したことになる。今回Samsungより本製品の1TBモデルを借用したので、製品詳細、使い勝手、パフォーマンスなどについてレビューしていこう。
500GB、1TB、2TBの3モデルをラインナップ
X5は、NVMe接続のSSDにThunderbolt 3インターフェイスを組み合わせたポータブルSSD。インターフェイス規格をUSB 3.1 Gen2(10Gbps)からThunderbolt 3(40Gbps)に変更することで、前述の通り転送速度を最大5.19倍に向上させている。
対応機種はThunderbolt 3インターフェイスを備えるWindows PC(Windows 10 64bit RS2以上)またはMac(macOS Sierra 10.12以上)。Thunderbolt 3非対応のUSB Type-C、USB Type-A(USB3.0/2.0)インターフェイスはサポートされていない。
X5をThunderbolt 3非対応のUSB Type-C、USB Type-A(USB3.0/2.0)インターフェイスに接続しても、Windowsでは「Thunderboltデバイスの機能が制限される可能性があります」、Macでは「Thunderboltアクセサリを使用できません」という警告メッセージが表示されて、ドライブをマウントできない
T5には250GB/500GB/1TB/2TBの4モデルが用意されていたが、X5は500GB/1TB/2TBの3モデル構成。すべてのモデルで「3-bit MLC V-NAND」と「TurboWriteテクノロジー」が組み合わされており、最大2,800MB/sのシーケンシャルリード、最大2,300MB/sのシーケンシャルライトを実現していると謳われている(500GBモデルのみシーケンシャルライトが最大2,100MB/s)。
本体サイズは119×62×19.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は150g。T5のサイズは74×57.3×10.5 mm(同)、重量は51gだったので、体積は3.22倍、重量は2.94倍に増えたことになる。スーパーカーにインスパイアされたという筐体デザインは好みが分かれそうだ。
筐体は外殻、マグネシウム製フレーム、ヒートシンク、基板、底面カバーで構成されており、可動部分が存在しないため、最大2メートルの高さからの落下に耐えうる堅牢性を備えている。またヒートシンクと、温度管理技術「ダイナミック・サーマル・ガード・テクノロジー」により、内部の過熱を防ぎ、表面温度を45℃以下に保つことで、データの損失や故障を防ぐとのことだ。
Samsung Portable SSD X5 | |
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インターフェイス | Thunderbolt 3 (40Gbps) |
互換性 | Thunderbolt 3端子を搭載したWindows PC(Windows 10 64bit RS2以上)とMac(macOS Sierra 10.12以上) |
容量 | 500GB/1TB/2TB |
サイズ | 119×62×19.7mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 150g |
性能 | シーケンシャルリード:最大2,800MB/s、シーケンシャルライト:最大2,300MB/s(500GBモデルは最大2,100MB/s) |
暗号化 | AES 256bit ハードウェア暗号化 |
セキュリティ | パスワード設定(オプション) |
耐久性 | 温度:動作時0~60℃、非動作時-40~85℃ 湿度:非動作時65℃、95% ショック:非動作時1,500G、持続時間:0.5ms、3軸 振動:非動作時10~2,000Hz、20G 認証:CE, BSMI, KC, VCCI, C-tick, FCC, IC, UL, TUV, CB |
RoHS指令対応 | RoHS 2 |
保証 | 3年限定保証 |
Windows、Mac用ユーティリティソフトが同梱
X5のルートフォルダにはWindows、Mac用ユーティリティソフト「Samsung Portable SSD Software」が収録されている。これはストレージ内のデータを保護するためのセキュリティユーティリティ。4~16文字のパスワードでロックしておけば、ストレージ内のデータへ勝手にアクセスされたり、ファイル操作される心配は少なくなる。ただしパスワードを忘れてしまったさいには、データごとファクトリーリセットするしかないので注意が必要だ。
なおファームウェア、ソフトウェアアップデートの確認、更新にもこのユーティリティソフトを利用するので、X5を主に利用するPCにはインストールしておいたほうがいい。
スペックどおりにシーケンシャルリードで2,820.107MB/sを記録!
さて最後にベンチマークスコアを見てみよう。今回は検証機として「Core i5-8259U」を搭載する「MacBook Pro(13-inch, 2018)」を使用して、Windows 10 Pro バージョン1803、macOS High Sierra バージョン10.13.6上でベンチマークを実施してみた。
Windows環境ではストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.1」、ファイルコピー、「Adobe Lightroom Classic CC」でRAW画像現像、「Adobe Premiere Pro CC」で4K動画の書き出し、Mac環境ではストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」、ファイルコピーを実施している。なお比較対象としてMacBook Proの内蔵ストレージと、手持ちの某社製USB 3.1 Type-C接続のポータブルSSD(シーケンシャルリード/ライト:最大850MB/s)のスコアも計測している。
下記が検証機の詳細な仕様と、ベンチマークの結果だ。
【表2】検証機の仕様 | |
---|---|
CPU | Core i5-8259U(4コア8スレッド、2.30~3.80GHz) |
GPU | Intel Iris Plus Graphics 655(300MHz~1.05GHz) |
メモリ | 8GB LPDDR3-2133 SDRAM |
ストレージ | 512GB PCIe SSD |
OS | Windows 10 Pro バージョン1803 macOS High Sierra バージョン10.13.6 |
【表3】Windows 10環境でのベンチマーク | |||
---|---|---|---|
種類 | 内蔵SSD | Samsung Portable SSD X5 | USB 3.1 SSD |
フォーマット | NTFS | exFAT | exFAT |
SSDをCrystalDiskMark 6.0.1で計測(単位:MB/s) | |||
Q32T1 シーケンシャルリード | 3328.172 | 2820.107 | 491.549 |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1788.801 | 2205.566 | 771.490 |
4K Q8T8 ランダムリード | 1166.794 | 1247.808 | 162.952 |
4K Q8T8 ランダムライト | 198.457 | 1426.495 | 173.962 |
4K Q32T1 ランダムリード | 367.669 | 292.562 | 138.180 |
4K Q32T1 ランダムライト | 263.954 | 271.920 | 137.925 |
4K Q1T1 ランダムリード | 9.566 | 19.728 | 12.788 |
4K Q1T1 ランダムライト | 74.120 | 89.728 | 20.837 |
4156枚(10GB)の画像をファイルコピー | |||
同じストレージ内でコピー | 40秒76 | 21秒31 | 1分17秒90 |
PCからストレージにコピー | - | 18秒73 | 44秒04 |
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像 | |||
7,952☓5,304ドット、カラー-自然 | 11分13秒50 | 13分36秒17 | 13分57秒85 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し | |||
3,840×2,160ドット、30fps | 13分58秒91 | 14分43秒07 | 14分53秒55 |
【表4】macOS環境でのベンチマーク | |||
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種類 | 内蔵SSD | Samsung Portable SSD X5 | USB 3.1 SSD |
フォーマット | APFS | exFAT | exFAT |
Blackmagic Disk Speed Test(単位:MB/s) | |||
WRITE 1回目 | 1,657.2 | 1,838.3 | 605.4 |
WRITE 2回目 | 1,710.9 | 1,839.6 | 765.2 |
WRITE 3回目 | 1,719.2 | 1,840.6 | 767.3 |
WRITE 4回目 | 1,710.5 | 1,839.3 | 829.8 |
WRITE 5回目 | 1,557.4 | 1,832.4 | 829.5 |
WRITE 平均 | 1,671.0 | 1,838.3 | 759.4 |
READ 1回目 | 2,556.3 | 2,489.9 | 867.9 |
READ 2回目 | 2,568.6 | 2,493.9 | 869.5 |
READ 3回目 | 2,574.0 | 2,499.9 | 868.6 |
READ 4回目 | 2,569.3 | 2,496.2 | 869.1 |
READ 5回目 | 2,581.1 | 2,479.3 | 870.6 |
READ 平均 | 2,569.9 | 2,491.8 | 869.1 |
4156枚(10GB)の画像をファイルコピー | |||
同じドライブにコピー | 4秒15 | 23秒25 | 1分38秒32 |
Macからストレージにコピー | - | 18秒78 | 43秒91 |
X5のWindows環境でのベンチマークスコアはほぼスペックどおりで、シーケンシャルリードが2,820.107MB/s、シーケンシャルライトが2,205.566MB/sを記録している。しかしMac環境ではシーケンシャルリードが2,491.8MB/s、シーケンシャルライトが1,838.3MB/sに留まっている。このスコア差はOS、ベンチマークソフトの違いによるものだ。
顕著な違いが現われたのはファイルコピーの所要時間。USB 3.1 Type-C接続のポータブルSSDとX5を比較すると、同じストレージ内のファイルコピーはWindows環境では73%、Mac環境では77%の短縮、PC内蔵SSDからそれぞれのストレージへのファイルコピーはWindows環境では59%、Mac環境では58%の短縮となった。内蔵SSDからX5にファイルをバックアップするさいには、大幅な時間短縮となるわけだ。
ただ、それぞれのストレージ内に保存したRAW画像と4K動画を、同じストレージ内に書き出す所要時間は、内蔵SSD、X5、USB 3.1 Type-C接続ポータブルSSDで極端な違いはなかった。ストレージ速度はファイルの読み書きには大きな効果があるが、重い処理を実行するさいにはプロセッサーパワーがボトルネックとなり効果が限定的となる。
なおCrystalDiskMark実行時のX5の表面温度と内部温度をチェックしてみたが、表面温度は表面が最大43.8℃、裏面が44.6℃、内部温度が39℃となった。X5は温度管理技術「ダイナミック・サーマル・ガード・テクノロジー」で表面温度が45℃を超えないように調節されているとのことだが、ぎりぎりそれを達成できたわけだ。
複数のPCで大容量ストレージを「高速」に共有!
最近1~4TBのSSDを搭載できるノートPCが増えてきたが、たとえば「MacBook Pro(13インチ 2018)」で128GB SSDから1TB SSDにアップグレードするとカスタマイズ価格は88,800円(税別)とかなり高価だ。ましてやデスクトップPC、高性能ノートPC、薄型軽量ノートPCなどを用途ごとに使い分けているのであれば、それぞれに大容量SSDを搭載するのはかなりの出費となる。
その点、X5などのようなポータブルSSDを導入すれば、大容量ストレージを複数のPCで共有できるので、それぞれのPCの内蔵SSDを欲張る必要はない。もちろん高速なThunderbolt 3インターフェイスの恩恵を受けて、従来のUSB 3.1 Type-C対応ポータブルSSDよりはるかに高速にファイル操作が可能だ。
X5の1TB、2TBモデルはまだまだ高価だが、複数のPCで適切な容量を高速に共有できることを考えれば、トータルではリーズナブルにストレージを運用できるはずだ。