特集
パイオニアの世界初の無線対応BDドライブ「BDR-WFS05J」を試す
~タブレットからも無線でBDを視聴可能に
(2013/9/27 06:00)
コンテンツのデジタル配信の興隆により、音楽であれ動画であれ、光学メディアの必要性は徐々に薄れつつある。PCハードウェアにおいても、薄型化の要請に応えるため、光学ドライブはノートPCから姿を消しつつあり、今後コンシューマでは中心的なデバイスになるであろうタブレットに至っては、当然のごとく光学ドライブを搭載しない。
だが、国内で動画コンテンツというと、セル/レンタルとも、DVD/BDといった光学メディアが依然として現役であり、主流を占める。そのため、それらを最近のPC/タブレットで楽しむには、外付けの光学ドライブを別途用意する必要が出てくる。
あまりスペックにこだわらず、とりあえずBDが視聴できればいいというのであれば、外付けポータブルドライブは5~6,000円台で入手できるし、DVDだけでいいのであれば、3,000円台で購入できる。
だが、外付けドライブの問題は、価格ではなく、嵩張る点だ。特にソファやベッドの上などで、タブレットを腿の上やお腹の上に置いて視聴した場合に、光学ドライブを外付けで繋いでおくのは、かなりうっとうしい。
そういったニーズに応える製品としては、ロジテックが2012年11月にWi-Fi機能付きポータブルDVDドライブ「LDR-PS8WU2BKW」を発売し、大きな注目を集めた。そして、この度、パイオニアから、無線LAN対応のBDドライブ「BDR-WFS05J」が発表された。
発売に先立ち、本製品を試用する機会を得たので、簡単なレビューをお届けしたい。なお、試用したのは評価版であり、特にソフトウェアの内容など、製品版とは異なる可能性があることをお断わりしておく。
セットアップはWi-Fiルーターのそれと同じ
通常の光学ドライブを使うにあたっては、基本的なデバイスドライバはOSが持っているため、線を繋げば、即使えるようになる。一方、本製品では無線接続を行なうため、最初の設定が必要となる。基本的な内容は、Wi-Fiルーターと同じだが、一般的な使い方をする限り、Wi-Fiルーターよりも設定はずっと簡単だ。
本製品は、一般的なポータブル光学ドライブと、無線AP機能を搭載するワイヤレスドックで構成される。ドライブはドックに嵌め込むように立て掛けられるが、ドックの上に横置きしてもいい(そのための傷防止シールも付属する)。光学ドライブをUSBでワイヤレスドックに繋ぐことで、光学ドライブが無線化されるわけだが、最初は、光学ドライブだけをPCにUSBで繋ぎ、ユーティリティやアプリをインストールする。なお、対応OSはWindows XP/Vista/7/8で、Mac OSには対応しない。
まず、セットアップCD-ROMで、動作に必要なソフトをインストール。含まれるのは、「ドライブユーティリティ(Pioneer BD Drive Utility)」、「ワイヤレス対応USB高速化USBドライバ」、「接続アプリケーション(PioneerWirelessConnect)」の3つだ。
いずれも、「次へ」ボタンを押していくだけでインストールは完了する。順番としては、無線化の後でもいいのだが、せっかくなので、このタイミングでサイバーリンクの各種アプリも入れておくといいだろう。
付属するのは、「InstantBurn 5」、「LabelPrint 2.5」、「MediaEspresso 6.5」、「Power2Go」、「PowerBackup」、「PowerDirector 10」、「PowerDVD 10」、「PhotoDirector 4」、「PowerProducer 5.5」となっており、BDの視聴や、動画作成、データ保存、バックアップなど、一通りのことを行なうのに必要なソフトが全て揃っている。
ユーティリティのインストールが終わったら、光学ドライブをPCから取り外し、ワイヤレスドックに繋ぐ。
続いて、無線の設定だが、ワイヤレスドックには、アクセスポイント(AP)モードと、ステーションモードの2つのモードがあり、本体底面のスイッチで選択できる。APモードでは、ワイヤレスドックとPCを1対1で繋ぐ。一方、ステーションモードは、別の無線LANルーターを仲介して接続する。後者の場合、PCから本製品にアクセスしながら、インターネットにも接続できるので便利なのだが、この場合、PC-本製品間の転送速度が半分になり、BDの再生が追いつかない場合が出てくる。ステーションモードでも、PCと無線LANルーターを有線で繋げば、本来の速度が出るのだが、そもそも線を繋ぐのなら、BDドライブを直結してしまった方が早い気がするし、タブレットではこの方法は使えない。BDのタイトルによっては、特典でネットコンテンツにアクセスするようなものもあるが、基本的に映画を観る際は、ネット接続は不要だと思うので、割り切ってAPモードにするのが良いだろう。
無線での接続方法だが、PCからはワイヤレスドックが普通のAPとして見えるので、ドック底面のラベルに書かれた情報を参照して、SSIDとキーを入力する。この段階ではまだ無線LANの接続が確立されただけで、光学ドライブは利用できない。タスクバーに、PioneerWirelessConnectのアイコンがあるのでこれをクリック。すると、光学ドライブが「接続可能です」という状態になっているハズなので、表示欄ダブルクリックすると、晴れて光学ドライブが接続され、マイコンピューターにもドライブが追加される。
基本的には設定は以上で終了で、これで通常のローカルの光学ドライブとして利用できるようになる。ただし、より細かい設定を行ないたいユーザーのために、設定項目などが用意されている。例えば、本製品は標準では2.4GHz帯を利用するが、5GHz帯にも対応している。一般的に、5GHz帯の方が利用する機器が少ないため、電波の干渉が少なく、よりスムーズにアクセスできる。
実際、編集部で試した際、2.4GHzで接続していると、10mくらい離れると、電波受信強度はアンテナ5本中4本以上の状態にも関わらず、断続的にコマ落ちが発生した。これを5GHzで繋ぎ直すと、コマ落ちは全て解消された。
5GHzへの変更方法だが、PioneerWirelessConnectを起動し、ドライブの表示欄を右クリックしプロパティを表示し、「設定ページを開く」をクリックする。するとブラウザが起動し、ワイヤレスドックの詳細な設定画面が表示される。これはまさに無線LANルーターの設定画面そのものだ。
かなり細かな設定ができるが5GHzへの変更に必要なのは、▼アクセスポイント設定→無線LAN→通信チャネルを「36」以上にするだけ。設定すると、ワイヤレスドックが再起動され、以降は5GHzで繋がる。
実際にBD映画を視聴した感想だが、ローカルドライブと全く変わらない操作性を実現している。5GHzであれば全く転送にも問題なく、無線の干渉が少ない環境なら2.4GHzでも問題なく再生できるだろう。
本体の騒音については、シーク時に若干のモーター音が聞こえるだけで、映画再生では特に振動なども発生しない。また、無線化されており、離れて使うため、検証した環境では事実上の無音状態となっていた。これは、標準で「アドバンスド静音機能」がオンになっており、「静音モード」になっていることもあるのだが、BD Drive Utilityを使うと、「常時静音モード」にもできるし、逆に「パフォーマンスモード」にすることもできる。このほか、LEDの明るさや点滅周期なども細かく指定できる。
自分の機器が完全に対応できるかのチェックが必要
以上、ごく簡単にではあるが、無線BDドライブBDR-WFS05Jを実際に接続し、BDで映画を観るまでを検証してみた。初期設定はソフトのインストールをしたことのあるユーザーなら簡単にでき、以降は特に設定などを意識せず、無線接続だけを行なえば、ローカルドライブと全く同じように利用できる。また、細かい設定変更も可能で、初心者から上級者まで満足させられる製品と言える。
ただし、1点注意する必要がある。それは、無線でBDを見るには、300Mbps、つまりIEEE 802.11nの2x2での接続が要求される点だ。自分の持っているPCやタブレットが11nに対応しているかどうかは、マニュアルや仕様書を見ればすぐ分かるだろう。しかし、一口に11nと言っても、接続が1x1だと150Mbpsになるのだが、製品によっては1x1なのか2x2以上なのか明記してない場合がある。これは、本製品の問題ではないが、購入を検討しているユーザーは、場合によっては、PCメーカーに問い合わせをする必要があることを覚えておこう。
価格が2万5千円というのは、一般的なドライブの3~4倍程度だが、家の中でリラックスしてタブレットだけでBD映画を楽しみたいという人には、唯一無二の選択肢となるので、納得できる価格なのではないだろうか。
要望としては、AndroidやiOSへの対応を挙げたい。DVDだがロジテックの製品ではできているので、BDでも著作権周りの問題を回避しつつ再生できる方法はあると思われる。Apple製品ではMac含めBDをサポートしてないので、これが実現すると喜ぶユーザーは多いだろう。