「PlayStation Vita」ハードウェアレポート

「PlayStation Vita」

12月17日 発売
価格:29,980円



 ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE)の新型携帯ゲーム機「PlayStation Vita」(以下、PS Vita)が、12月17日ついに発売となった。実機を入手したので、内部のハードウェア構造をチェックしていこう。

 なお、ゲーム機としての使い勝手や、SCEのVita戦略などについては、僚誌「GAME Watech」、「AV Watch」などの関連記事をご覧いただきたい。

 PS Vitaは、従来のPSPを置き換える、SCEの新世代携帯ゲーム機だ。ディスプレイは5型の有機ELでタッチパネルを備える。従来通り十字キーやボタン類も用意され、アナログスティックも左右に2本用意されているが、有機ELディスプレイのタッチ操作に加えて背面にもタッチパネルが用意され、従来とは全く異なる操作性を実現した。

 また、PSPシリーズで採用されていた光ディスク「UMD」の採用を取りやめ、対応ゲームソフトは「PlayStation Vitaカード」と呼ばれる専用カードでの提供、またはダウンロード販売になるとともに、拡張メモリーカード「メモリーカード」も専用のものを採用するなど、従来のPSPから大きく仕様が変更されている。アーキテクチャもPSPとは異なり、完全な新プラットフォームとなっている。ただ、エミュレーションによるPSP用ゲームの動作も確保されている。

 今回入手したのは、3G通信に対応する、「PlayStation Vita 3G/Wi‐Fiモデル 初回限定版 PCH-1100 AA01」だ。同時に、専用のメモリーカード(4GB、32GB)と、ゲームソフト「みんなのゴルフ 6」も購入した。

「PlayStation Vita 3G/Wi‐Fiモデル 初回限定版 PCH-1100 AA01」パッケージ。かなりコンパクトだパッケージを開けた様子。まず説明書が現れるパッケージには、PS Vita本体とACアダプタ、電源ケーブル、専用USBケーブル、各種説明書が含まれている
PSP-2000と並べてみるとPS Vitaはやや大きく感じる高さは、PSP-2000とほぼ同じだ重量は実測で280.5gだった

 製品パッケージには、PS Vita本体とACアダプタ、ACアダプタやPCなどと接続する専用USBケーブル、電源ケーブルと、数種類の説明書が入っていた。説明書は、クイックスタートガイドとアプリケーションガイド、セーフティーガイド、NTTドコモの3G通信プランの説明書などと最低限で、詳しい取扱説明書は付属せず、オンラインマニュアルによる提供となっている。また、3G接続用のSIMカードは、本体に内蔵されていた。

 PS Vitaの本体サイズは、約182.0×18.6×83.5mm(幅×奥行き×高さ)。PSP-2000の約169.4×18.6×71.4mm(同)と比べてみると、奥行きこそ同じだが、幅が約12.6mm、高さが約12.1mm大きくなっており、双方を並べてみるとかなり大きくなったという印象を受ける。また、重量もPSP-2000が約189gだったのに対しPS Vitaは約279gと90gも重くなっている。実測での重量は280.5gだった。ただ、PS Vitaの重量は、初代PSPであるPSP-1000とほぼ同等であり、手にしても特に重いと感じることはない。

 ゲームのパッケージは、PSP用のゲームパッケージよりかなりコンパクトになっている。ゲームカードのPS Vitaカードは、UMDよりも大幅に小さいのはもちろんだが、SDカードよりもわずかに小さい。メモリーカードはmicroSDカードよりわずかに大きい程度で、こちらも非常に小さい。双方とも、なくさないように取り扱いには注意が必要だろう。

 有機ELディスプレに表示される映像は、さすがに非常に鮮やかだ。視野角も広く、ゲームも快適にプレイできる。初起動時には、言語や時間、PlayStation Networkへの登録などを行ない、一連の設定が完了するとメインメニューが起動する。メインメニューは、基本的にタッチで操作する。スクロール操作やタッチレスポンスは良好で、快適に扱える。Webブラウザやカメラなど、標準でインストールされているアイコンが登録されており、ゲームがなくてもいろいろと楽しめそうだ。

専用USBケーブルは、本体下部側面の「マルチユース端子」に接続して利用するACアダプタは、PSP用のACアダプタ(左)よりやや小さいACアダプタの給電コネクタは、USBコネクタとなっている
付属の専用USBケーブルをACアダプタに接続することで充電が可能。一般的なUSB充電アダプタを利用した充電も可能だった底面側の側面には、マルチユース端子とヘッドフォン出力があるヘッドフォン出力の横のフタを開けると、メモリーカード用のスロットが現れる
左側面。側面は左右とも丸いデザインだ左側面のフタを開けると、3G用のSIMカードスロットが現れるSIMカードは、標準でスロットに取り付けられていた
上部側面には、電源ボタンとボリュームボタン、L/Rボタンが見えるフタを開けると、PS Vitaカードスロット(右)とアクセサリー端子が現れる右側面には、端子類は用意されていない
ディスプレイ面には、十字キーと○×□△ボタン、左右に1つずつ2個のアナログスティックが見える。ディスプレイは5型の有機ELパネルを採用し、静電容量式のタッチパネルも搭載する十字キーの使い勝手はPSPとほぼ同等。アナログスティックの下にはPSボタンがあるアナログスティックはPSPのスライド式からスティックになったことで扱いやすくなっている
右にはPSP同様○×□△ボタンを用意するとともに、新たにアナログスティックも配置。アナログスティックの下にはSELECTボタンとSTARTボタンがある□△ボタン左上には前面カメラが配置されている裏面には、メインカメラや静電容量式のタッチパッドを搭載。左右にグリップが用意され、しっかりホールドできる。バッテリは内蔵式で、フタなどはない
裏面の、○×□△が記されている部分がタッチパッド領域だ裏面上部には背面カメラを配置。解像度は前面・背面ともVGAだ裏面下部には、内蔵無線LANや3Gモジュールの技適マークが記されている
メインメニューを表示している様子。タッチ操作が基本となるNTTドコモの3G回線に接続されると、画面にDOCOMOの文字と感度が表示される。その横には、無線LANとBluetoothのマークも表示される詳しい取扱説明書は、オンラインで提供される
PS Vita用のゲームパッケージは、PSP用のゲームパッケージよりも高さが低くコンパクトだPS Vitaカードは、もちろんUMDより圧倒的に小さく、SDカードよりもわずかに小さいPS Vitaカード裏には10本の端子が用意されている
PS Vitaカードは、本体上部のPS Vitaカードスロットに取り付けて利用する専用のメモリーカードは、microSDカードよりわずかに大きい程度で非常に小さいメモリーカードの裏には、9本の端子が用意されている
メモリーカードは本体下部のスロットに取り付ける。メモリーカードがないと利用できないサービスやプレイできないゲームがある発売直後だが、いきなりシステムアップデートが用意されている
【動画】メインメニューを操作している様子
【動画】WebブラウザでPC Watchにアクセスしている様子

■■注意■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害は筆者および、PC Watch編集部、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 本体の分解は、底面と側面のネジを外して進めていく。利用されているネジは、ごく一部を除いて通常のプラスネジで、先端の細いプラスドライバーがあれば分解可能だ。以降はキャプションで紹介していこう。

本体を開けた状態。裏面と側面のネジを外すと本体が開く。封印シールなどは見あたらなかったバッテリは裏面側に固定されている。電圧は3.7V、容量は2,210mAhだった裏面上部には、3GとGPS用のアンテナが取り付けられている
裏面下部にも3G用のアンテナがある側面側には、スピーカーユニットを搭載スピーカーは左右に取り付けられている
裏面タッチパッドから伸びるフレキケーブルは、本体表側の基板につながっているSIMカードスロットを搭載するサブ基板は、斜めに取り付けられている。メイン基板とフレキケーブルで接続され、ケーブルを外すと簡単に取り外せた本体表側には、メイン基板や3Gの基板などが搭載されている
3Gモジュールは、ミニPCI Expressタイプのモジュールを搭載。アンテナケーブルは3本のびている3Gモジュールはソニー製。無線LANやBluetoothはメイン基板側に搭載3Gモジュールのシールドを外すと、Qualcomm製のHSPA+対応の3Gモジュール「MDM6200」が搭載されていた
左側十字ボタンとアナログスティック部の基板を外した様子。3本のフレキでメイン基板、アナログスティック、Lボタンと接続されている。また、無線LANのアンテナケーブルも接続されている基板裏面には、十字ボタンやPSボタンのスイッチがある裏面のメインカメラはメイン基板とフレキケーブルで接続されている
右コントローラ部の基板を外した様子。こちらも、メイン基板やRボタン、アナログスティックにつながるフレキケーブルが接続されている基板裏面には、○×□△の各ボタンと、SELECT、STARTのスイッチがある十字ボタンと○×□△などの各ボタンは、シリコンに固定されている
アナログスティックはユニットになっており、2本のネジで本体に固定されていたメイン基板の裏には、有機ELディスプレイにつながるフレキケーブルが接続されているメイン基板を取り出した様子
専用メモリーカードスロットやヘッドフォン端子、マルチユース端子は基板に直接搭載されている金属製のシールドカバーを外した様子。SCEI製のカスタムチップが見えるメイン基板裏面。主要チップは全てシールドカバーで覆われている。初期ロットながら、集積度に優れた、完成度の高い基板といえる
シールドカバーを外した様子。SCEI製チップ「CXD5315GG」と、東芝製のフラッシュメモリチップ「THGBM3G5D1FBAIE」などが見える。SCEI製のチップと、その下のカスタムチップには、プロセッサやGPUが内蔵されているものと思われる。また、SCEI製チップ右にある金属シールドのチップは「WYSBMVDXA-1S」で、無線LAN+Bluetoothモジュールと思われるPS Vitaカードスロットとアクセサリー端子も基板に直接搭載液晶面のサブカメラもフレキケーブルで接続されていた
有機ELディスプレイは、表面パネルと一体構造で、強力な粘着テープで本体に固定されているフレキケーブルにSAMSUNGロゴが見えることから、有機ELパネルはSamsung製と思われる本体から無理にはがしたら、有機ELパネルが割れてしまった
パーツ一覧。細かいパーツも多いが、構造はシンプルで、新規のゲーム機としてはかなり洗練されているという印象を受ける

 PS Vitaの内部構造は、基板に搭載されているチップ数もかなり少なく、新規の携帯ゲーム機の初期ロットとしては非常に洗練された構造で、かなり完成度が高いと言える。PSPシリーズで積み上げた経験やノウハウが随所にいかされているのだろう。これなら、初期ロットといえども安定して動作すると考えて良さそうだ。

(2011年 12月 17日)

[Reported by 平澤 寿康]