海外で先行発売されていたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の携帯ゲーム機「PSP go」が、11月1日に、ようやく日本でも発売された。
PSPシリーズの特徴であった光ディスクUMDを搭載しないこと、値下げされた現行型PSPより1万円も高いこと、などから、事前の盛り上がりはあまり感じられない。しかし、ネットワークに主眼を置き、ゲームをオンライン配信にするというPSP goのビジネスモデルは、今後のSCEIにとって重要な戦略だ。それだけに、それを支えるPSP goのハードウェアの出来栄えが気に掛かるところだ。
今回は日本国内で予約購入したPSP goを分解し、そのハードウェアの内部を紹介する。
なお、PSP goの使用感などについては、僚誌AV Watchにて、レポートが掲載されているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
●小さくて液晶がきれい配送されてきたPSP goの箱は、とても小さかった。
箱を開けると、ACアダプタとPSP go本体が見える。梱包は簡素化されており、高級感よりはエコ感に振った印象だ。梱包物もごく少ない。
PSP go本体も小さくて、軽い。PSPは代を重ねるごとに軽くなってきたが、飛び抜けて軽い。また、スライド式になった液晶や、各ボタンの操作が軽いのもこの印象を強めている。本体の大きさはiPhone 3GSより、ちょっと大きいぐらいだ。厚みと重さはiPhoneよりもあるが、大きめの操作ボタンを備えていることを考えれば、十分に小さいと思う。
液晶はとてもきれいで鮮やかだ。短時間しか操作できなかったが、メニュー操作などの文字が読みやすく、背景の色彩も通常のPSPより一段明るく見える。
ACアダプタは、コンセントに直結するタイプで、USBコネクタに給電する形になっている。アダプタは、ちょっと大きめだが軽い。付属の給電ケーブルは90cm強の長さがあるし、必要であれば、プラグ部分の代わりにメガネタイプのケーブルを使用して、更に延長することもできる。逆に、給電ケーブルはもう少し短くてもよかったかもしれない。
ACアダプタは棒状で、プラグ部分が分離できる | PSP go本体とほぼ同じ約13cmほど |
ACアダプタと本体間のケーブルは長め | 電源はPSP goの底面に入る |
■■注意■■・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。 |
PSP goの分解は簡単で、見えるネジを順番に外していけばよい。トルクスなどの特殊なネジも使われていない。
SCEIの製品に備えられている分解防止のシールは、裏蓋を外した本体内に貼られていた。PSP goではバッテリが裏蓋の中に入っているが、その端子部分に貼られている。つまり、ユーザーによるバッテリの交換は禁止されていることになる。これは、改造バッテリを使ったハッキングを防ぐための処置だろう。
今回の分解防止シールは、シールにVOIDの文字が浮かび上がるだけではなく、貼られていた場所にもVOIDの文字が印字されるようになっている。
シールを剥がして、どんどん分解していく。
本体内の構造は、基本的には、従来のPSPを踏襲している。PSPの構造の特徴である、フレキシブルケーブルの多用もそのままだが、複雑な部品は少なくなり、分かりやすく組み立てやすそうな構造になっている。また、UMDがなくなり、本体が小さくなったため、本体に対して基板の大きさの比率は高くなっている。全体として、すっきりしたという印象で、操作部分などの強度も高そうだ。
PSP goの特徴である16GBのフラッシュメモリは、基板上にSAMSUNG製のチップが搭載されている。液晶コントローラーはシャープ製なので、液晶もシャープ製と思われる。BluetoothチップはALPS製、無線LANチップはFOXCONN製だった。
スライド式になった液晶との接続部分も、すっきりとした構造だった。ネジ止めもスライド式なのを利用し、本体をひっくり返したりせずに組み立てられる構造だ。
液晶の両脇にあるスピーカーもはめ込み式で、接点もケーブルを使わないようになっており、組み立てが簡単そうだ。
正直に言えば、PSP goは、これが初めての筐体なので、初代PSPのような無理をして詰め込んだ構造になっているのではないかと危惧していたが、現行のPSP-3000と同等か、より洗練された印象の構造だ。
PSP goは、PSPに対し、スライド式液晶、Bluetooth、フラッシュメモリチップの搭載などのコストアップ要因がある一方で、UMDがなくなった分のコストダウン要因もある。一方、コストに直結する製造数はPSP goのほうがずっと少ないだろう。
きちんとコスト計算したわけではないので、単なる印象だが、意外と液晶にコストがかけられているのではないかと感じた。今回は短時間しか使えなかったが、もっと長期にゲームや動画などで使い込んで確かめてみたいと思わせる鮮やかさがあった。
最初に書いたように、PSP goについては、ソフトウェアの販売方式変更による互換性の問題や、PSP-3000との1万円の価格差などによって、否定的な意見もある。しかし、従来のPSPが大きく重く感じる人、液晶の表示品質に不満を持つ人は、1度試してみる価値はあると思う。
少なくとも、内部構造は練れている印象であり、初期型であることへの不安はかなり解消された。
基板詳細写真(表) |
同(裏) |
(2009年 11月 1日)
[Reported by 伊達 浩二]