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既製品はしっくりこないから自分らで作った。バッファロー製トラックボールが生まれたワケ
2026年9月4日 06:07
PC周辺機器メーカーのバッファローが、初のトラックボール「BSTBB700X」シリーズを9月2日に発売した。マウス製品は多数取り扱ってきた同社だが、トラックボールは完全にゼロからの開発だ。
一見するとオーソドックスな見た目のトラックボール。しかし既存他社製品への不満を解決すべく、形状、ボタン配置、安定したボール挙動など、各部にさまざまなこだわりが詰め込まれているという。
トラックボール初参入となるバッファローとして、どんな製品を目指したのか。企画および開発に携わった同社担当者に話をうかがった。
従来のトラックボールにおける3つの課題
――そもそもなぜトラックボール製品を企画したのか、教えてください。
根本氏(以下敬称略) マウスをそれなりに売ってきている当社ですが、トラックボールは今まで一度もやっていませんでした。我々のメイン商材の価格帯よりもトラックボールはどうしても高くなるから、というのがその理由です。
ただ、その一方で私自身、数年前に他社のトラックボールを買って使ってみたのですが、すごくよくできているとは思うものの、自分としてはあまりしっくりこなかったんです。手で握ったときの感触、操作の感覚が合わなかったんですね。
ECサイトで売れ筋のトラックボールのレビューを読んでみても、いいところ、よくないところを指摘するユーザーのコメントがやっぱりたくさんあって、そこをバッファローとしてきちんとフォローすれば意外と勝ち筋はあるのかも、と思うようになりました。
――既存製品のどのあたりに不満を感じていましたか?
根本 改善すべきポイントとしては主に3つあると考えました。1つ目はサイズが大きいこと。2つ目はワイヤレスのトラックボールで操作対象の切り替えに対応していても、本体をひっくり返さないとそのスイッチにアクセスできないこと。3つ目はホイールです。
サイズについては、他社製品を例にとると、手の大きさによってかなり印象が変わるんですね。手が大きい私は問題なく使えても、今回開発を担当した伊藤は手が小さいので使いにくいと。
伊藤 親指でボール操作するポジションに手を置いたとき、ホイールまで指が遠いんです。ホイールを動かそうとすると持ち替える必要があって、このワンアクションが回りくどいなと思っていました。
根本 3つ目のホイールに関しては、当社のマウス製品が採用している「高速ホイール」をトラックボールに搭載できたらおもしろいのではないかと思いました。この慣性で回り続けるホイールは一度使ってみると快適で、手放せなくなるんですよ。
試作を繰り返し、手の大きさに左右されないベストな握りを追求
――その後の企画、開発はどのように進めていきましたか?
根本 実はトラックボールの企画をスタートした直後のタイミングで、この高速ホイールを一緒に作ったパートナー企業が「トラックボールを作ってみたい」と話を持ちかけてきたんです。
そのパートナー企業もトラックボールはやったことがなくて、これから作るんだと。そこで3Dスケッチを最初に見せてもらったのですが、たとえば「進む・戻る」のショートカットボタンがマウスと同じ親指操作前提の位置になっていたりして、ありえないなと。
これまでマウスをたくさん製造してきたパートナーなのでそのノウハウはある。けれど、トラックボールに関してはやはり慣れていなくて、「とりあえずマウスにボールをつけました」みたいな感じだったんですよね。
一緒に作ってみよう、ということになりましたが、通常は意見交換しながら何度かモックを作ってもらって細部を調整していくところ、その往復を繰り返していると時間がかかり過ぎるので、形状を決めるところまでは我々の社内で3Dプリントして試行錯誤していきました。
――形状としてはマウスにも似ていて、最初の段階からかなりコンパクトですね。
伊藤 ベースの形状がマウスに近いのは、トラックボールであっても持ち上げて移動させやすくする、という考え方からです。ただ、コンパクトにしていることで薬指と小指をどこに置くべきかが問題になりました。
既存製品のユーザーレビューでも話題に上がっている部分で、社内のヘビーユーザーも「指の置き場所」が欲しいとのことでした。そこで、右側に指を置ける握りの部分を設けることにしました。これがあるのとないのとでは、ずいぶん感触が違うんですよね。
根本 実際に握りの部分を作って、手の大きい私と小さい伊藤とで試してみたところ、2人ともしっくりきました。ただ、それにはもう1つ要因があって、既存のトラックボールに比べると前後の奥行きがずいぶん短くなっているのが効いているんですよね。
通常、トラックボールに手を置くときは親指でボールを回しやすいところにすると思います。ところが、従来のトラックボールの大きさだと同時に手首のポジションが決まってしまうので、手の大きい私はフィットしても、手の小さい伊藤は指がボタンに届きにくくなる。
それに対して前後の短い我々のトラックボールだと、手首の位置を固定されずに済むので、ボタンに指が届きやすいポジションを取りやすい。手の大きさの違いを自然に吸収できるデザインにすることができた、というのはある意味発明的な発見だったかも、と自画自賛しています(笑)。
伊藤 全体的なボタンの配置にもこだわっています。まず持ったときにホームポジションとして指の位置が自然に決まるようにする。そこから握り直すことなく、左右クリック、ホイール、進む・戻るのボタンすべてにアクセスできるようにしています。
細かな部分では、たとえばショートカットボタンは山型にしながらも奥側のボタンを少し盛り上げて、手前側のボタンは反対に下げています。さらに2つのボタン間に谷型のへこみも設けることで「奥側は指先で押し、手前側は指の腹で押す」といった操作をできるようにしました。
根本 正直、私としてはそこまで細かく調整しなくても使いやすさはあまり変わらなかったのですが、やはり手の大きさによって感覚が異なるんですよね。伊藤や社内のほかの人に試してもらうと、調整した後の方がしっくりくると。
その意味では、私1人の感覚だけでなく、みんなの意見を集約できたこと、そして我々のこだわりを知ってパートナー企業が本気で作り込んでくれたことで、いいものに仕上がったのではないかと思います。
ゲーマーでなくても高速に回転させるボール周りの工夫
――握りやすさはもちろん大事だと思いますが、トラックボールはボール部分の操作性も重要に思います。
根本 そうなんですよね。その意味ですと、ボールの動かし方が人によって大きく異なることがある、というのが難しいところでした。センサーICでトラッキングするのはマウスとトラックボールとで技術的な部分に大きな違いはないのですが。
本体ではなくボールを動かす構造。その上でゲーマーではない普通のビジネスユーザーでも高速にボールを回転させることがある。そこに対応するにはマウスとは違ったノウハウが必要だな、というのが今回やってみて改めて気付いたところです。
マウスは読み取り面の素材が何になるか分からないのに対し、トラックボールは必ずボールの表面になるので、ピンポイントで調整できるのは有利です。ただ、高速に動かす分トラッキング性能は十分に高くしなければいけない、という点には注意する必要がありました。
――ボール周りについて、ハードウェア面での工夫はありますか?
根本 形状確定後の1つ目のモックで操作を試してみると分かるのですが、穴形状がぴったり過ぎて、メンテナンスしたいときにボールをなかなか取り出せないんですよね。それと、ボールを激しく回転させて操作すると少し浮くような感じになって暴れたりもします。
伊藤 これを解決するために、ボールを収める場所の形状やボールを支持する人工ルビーの位置を調整していきました。本当にコンマ数mmの差で変わってきますし、余裕を持たせ過ぎて軽くつまんだだけでボールを取り出せてしまうとそれはそれで問題です。金型が絡んでくる部分でもあるので、調整にはずいぶん時間がかかりました。
根本 その後も何度かモックを作り直しましたが、最後の方は見た目の微調整ですね。本体手前のBUFFALOロゴや操作対象を切り替えるボタンのシルク印刷の入れ方とか。今回カラーバリエーションはブラックとホワイトの2種類ですが、このカラー違いでも見え方が変わってくるので、特にホワイトの方は最後まで調整に手間取りました。
――ちなみにボールの交換は想定していますか?
根本 すでにユーザーのみなさんに支持されている大きさを採用するのがベターだと考えて、34mmのサイズにしています。交換用ボールとしても34mmのものがたくさん存在しますから、それらのボールでカスタマイズを楽しんでいただくのも良いかと思います。
我々自身が交換用ボールを出すかどうかは、可能性はゼロではないですが……。すでに高く評価されているメーカーさんもありますから、我々として独自性のある何かを提案できる形であれば、というところでしょうか。
約7,000円はバッファローでは「チャレンジングなプライス」
――感度の切り替えは500/800/1200dpiの3段階となっています。この設定値はどのように決めたのでしょうか?
根本 最初の案では等間隔の5段階にしていたのですが、そうすると1段階下げたいときに4回もボタンを押さないといけないので、さすがにそれは大変だなと思いやめました。かといって2段階だと少な過ぎるので、一般的に使いやすい設定を中央値にして、その上と下はほかのメーカーの製品の数値も参考にしながら決めました。
――USBドングルを使った2.4GHzとBluetoothでワイヤレス接続でき、最大3デバイスを切り替えられる仕様です。有線接続は検討しなかったのでしょうか?
伊藤 操作対象となるPCの切り替えを容易にしたい、という思いもありましたから、USBドングルとBluetoothで接続できるようにする、というのは既定路線ではありました。ただ、社内から電池なしで動く有線版も欲しいという声も出ていますので、人気が出てユーザーの方からもそういう要望が寄せられるようなら検討したいですね。
――電源は単3形乾電池1本ですが、充電式にしなかった理由はありますか?
伊藤 充電式も検討はしましたが、リチウムイオンバッテリになると小容量でも安全性の問題が出てきます。また、基本的には買った直後がピーク性能で、そこからは低下していくことになります。稼働時間が短くなり、充電時間もかかってしまうのが弱点です。
それに対して乾電池は、安全性が高いうえに電池が切れても新しいものに入れ替えるだけで済みます。ニッケル水素などの充電式乾電池も使用可能です。低消費電力のセンサーを採用したことで十分な稼働時間が見込めますから、頻繁に電池を交換する必要もないはずです。
あと、トラックボールは動かさないものなので、軽量な充電式バッテリより重い乾電池で安定させた方がいい、という側面もありますね。
――製品を実際にお借りして使ってみましたが、最初にいいなと思ったのが静音設計でした。
根本 既存のマウスやトラックボールでも、カチカチ音が気になるというユーザーの声は多いですし、我々自身、フリーアドレスのオフィスで仕事しているので、できるだけ操作音が響かないようにしたいと思っていました。
唯一、ホイールを左右に倒すとき(チルトホイール)のクリック音だけは仕組み上静音にできなかったのですが、できる限りすべてのボタンを静音にしよう、ということで開発しています。静音であってもクリック感はしっかりしていますから、質の高さを感じていただけると思います。
――実売価格は6,990円です。他社のトラックボール製品と比較して抑えられているように思いますが。
根本 同等クラスのライバル製品が約8,000円と考えると、それよりは少し抑えられているかもしれません。ただ、当社のマウスを含めた製品の中ではぶっちぎりで高いんですよね(笑)。なので、私達からするとチャレンジングなプライスなんです。
最初は公式ストアでの直販からスタートしますが、バッファローでは1,000円以下の製品も少なくない中、この価格帯のものを本当に買っていただけるのか、という点では不安もあります。ですが5,000円を大きく超える製品でチャレンジする、というのはぜひやってみたいところでしたし、その価格からくる期待に応えられるようなものを作らなきゃ、とがんばりました。
今までのトラックボールに違和感があった人にこそおすすめしたい
――初のトラックボール製品となりましたが、開発していく中でバッファローの強みとして感じるところはありましたか?
伊藤 社内では耐久性について一定の基準を定めてテストしていますが、それがすごく厳しい。基準自体は過去のノウハウから生まれたもので、バッファローでは必ずそれをクリアしないと製品化できないんです。
今回のトラックボールも、初めてのカテゴリだからといってそこから除外されることはなく、従来製品と同様に厳しく見ています。電池を使う製品ではユーザーのあらゆる使い方を想定し、ショートしないようにこういう構造にしなければいけない、みたいな細かな決めごとまであります。
むしろそれを守ることによってバッファローというブランドを背負い、信頼される製品に求められる品質基準を保証できる状態になっているわけですから、これは我々の強みともいえるのではないかと思っています。
――最後に読者にメッセージをいただければ。
根本 トラックボールに興味はあっても今まで手を出せなかった人、私のように今までのトラックボールにしっくりきていなかった人、サイズが大き過ぎて使いにくかったという人に、ぜひ使っていただきたい製品です。きっと満足していただけると思います。
実際、マウスしか使ったことがない社内メンバーの1人が「トラックボールってすごくいいですね」といってくれました。何がいいのかというと、楽に持ち上げられて、向きや置き場所を変えながら使えるのが1つ。
あとはマウスと違ってトラックボールはキーボードのすぐ近くに置けてすばやく操作できたり、ノートPCの上に載せて持ち運ぶときにも滑り落ちなかったりするのがいいと。そういったささいな違いの部分でも感動してくれて、企画した側としてもトラックボールの良さに改めて気付くことができました。
「これが最高の、万人向けのトラックボールです」というつもりはありません。それでもサイズ感や手で握ったときのフィーリングには自信があります。今までのトラックボールに違和感があった人にはおすすめできるものになっているのではないかな、と思います。
伊藤 ショートカットボタンの操作割当などをカスタマイズできる「マウスカスタム+」というアプリにも力を入れています。管理者権限不要でインストール・実行でき、ファイルサイズもコンパクトなのが特長です。
最近は専用ユーティリティが用意されているマウス製品がほとんどです。多機能なものも多いですが、そのぶんファイルサイズやメモリ使用量が大きいのがネックなんですよね。マウスカスタム+はそうではなく、軽量なつくりですので、当社のマウス製品や今回のトラックボールとともに試してみていただければと。
macOS版のマウスカスタム+も現在開発を進めていますので、みなさんの声を集めてどんどんブラッシュアップしていければと思っています。


































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