特集

Windowsおじさん、Windows 10 EoSに備えUbuntuに入れ替えてみる

筆者の第5世代Thinkpad X1 Carbon。CPUが第7世代CoreなのでWindows 11になれない。そこでUbuntuを入れることにした

 2025年のホットトピックの1つが、10月のWindows 10サポート終了だ。性能的にはまだもう少しイケそうなスペックなのにWindows 11のアップグレード要件を満たせないPCを持っているという読者の方もいることだろう。

 筆者の手元にも1台ある。第7世代Coreを搭載する第5世代Thinkpad X1 Carbonが。10月14日を迎えた後、このPCをどうしようか……。「なら別のOSを入れて延命してしまおう」というのが今回の企画だ。

Windows 10のサポート終了は近い
Windows 10サポート終了&Windows 11への更新を警告する全画面ポップアップ。

 そしてもう1つテーマがある。今回ドナーは現在サブ機という位置づけではあるが、メイン機に何かトラブルが発生したら、すみやかに業務を引き継げる状態にしておかなければならない。つまり、Linuxを入れたThinkpad X1 Carbonを仕事ができるところまで仕上げるというのがもう1つのお題だ。

 筆者は過去に玄箱や自宅サーバーなどのLinux企画に携わってきたが、実際のところ日常でLinuxに触れているわけではない。Linux素人と言ってよいレベルだ。

 事前調査は当然行なったものの、実際にインストールしてからも四苦八苦の連続だった。そのため、用語の間違いや誤解しているところもあるかもしれない。とはいえここにデスクトップLinuxの門を叩く新人が加わったということで、温かく見守っていただきたい。

入れるのはUbuntu。素人目線の注意点

 Linuxにはさまざまなディストリビューションがある。Debian、SUSE、Slackware……聞いたことがあるっ!! ……というかDebianは玄箱で一度触れている。まあ、そんなことでディストリビューション選びだが、ここは無難にいった。今おそらく一番ドキュメントが充実しているだろうUbuntuだ。その時の人気ディストリビューションを選んでおけば問題が生じても対処しやすい。

Ubuntu Desktopをダウンロード

 早速「Ubuntu」とWeb検索して公式サイトにリーチ。ダウンロードサイトを開くまではスムーズだった。

 ところが、ダウンロードの「Ubuntu Desktop」のところに2つのバージョンのリンクがあった。1つは「Ubuntu Desktop 24.04.1 LTS」、もう1つは「Ubuntu Desktop 24.10」だ。

 さてどちらをダウンロードするべきか。まあ、そこに記載されているが、「LTSはLong-Term Support(長期サポート)の略称」。1回これを入れておけば、セキュリティアップデートやメンテナンスアップデートが2029年4月まで長期にわたって提供されますよというものだった。

 一方、通常版はバージョンが24.10と、こちらのほうが新しいように見える。今回の企画は無難に前者Ubuntu Desktop 24.04.1 LTSを選ぼうと思っていたが、どうやら自分でも気づかぬままUbuntu Desktop 24.10をインストールしていたようだ。会社で使う、IT管理者がアップデートの管理を行うような場合はUbuntu Desktop 24.04.1 LTSのほうがよいのかもしれない。

今回はUbuntu Desktop 24.10をインストールした(結果的に)

【お詫びと訂正】初出時に、24.04.1 LTSをインストールしたという内容になっていましたが、実際には24.10がインストールされており、それに伴い本文を修正しています。お詫びして訂正させていただきます。

インストールメディアを作成

 リンクをクリックし、ISOファイルをダウンロードできたらインストールメデイアの作成。これは筆者の業務用、Windowsの最新インストーラーを定期的に作成していたのでスムーズだった。いくつか方法はあるようだが、筆者は普段通り「Rufus」で作成した。

Rufusでインストールメディアを作成

 Rufusでの操作は、PCにUSBメモリを挿して書き込み先として指定、ダウンロードしたISOファイルを読み込み元として指定、後は「スタート」を押すだけ。ほかの項目はデフォルトで最適なものが選ばれている(と思われる)。その後いくつかの確認項目に答えていって作業が進む。プログレスバーが最後まで緑に塗り替えられれば作成完了だ。

インストールは難しくない

 インストールについてだが、この部分のキャプチャは、別のデスクトップPCで行なっている。多少の相違はあるが基本部分は同じなのでご了承いただきたい。

 さて、ノートPCに先ほど作成したインストールメディア(USBメモリ)を挿して電源を入れたら、最初にそのノートPCのUEFI(BIOS)セットアップ画面をまず開く必要がある。ブート順を入れ換え、USBメモリから起動する設定に変更するためだ。

 この記事を読んで、自分も試してみようという方の中で、もしもOSの再インストールを経験したことがない方がいたら、ここに注意してほしい。そしてノートPCでUEFIセットアップを呼び出す際に押すキーは製品によって異なるので各々のマニュアルを確認してほしい。

 UEFI設定の保存をすればPCは自動的に再起動する。設定通りUSBメモリが読み込まれればUbuntuのインストーラーが起動する。インストールについては、Windowsとほぼ同じ。もしもWindowsのインストールを経験したことがない方がいても、対話式のインストールなので設問に答えていく形式だ。

 Windowsとは多少違うというところをピックアップして紹介しておこう。まず「言語」のデフォルトがEnglishだったところ。単に候補部分をスクロールして日本語を指定すればよい。画面自体が日本語表記に切り換わるので間違えることもないだろう。

言語の選択
デフォルト言語はEnglishになっているのでリストから日本語を選ぶ

 Windowsユーザーが戸惑うとしたら「推奨するプロプライエタリなソフトウェアをインストールしますか」という設問……というよりも「プロプライエタリ」ってなんだ!? というところ。

 LinuxはオープンソースのOS。プロプライエタリとはオープンソースではないものというニュアンスのようだ。よく例として挙げられるのが(Linux用の)NVIDIAグラフィックドライバ。もしNVIDIA製ビデオカードを搭載するPCならここのチェックをオンにしたほうがよいのだろう。

 今回はIntelの内蔵GPUを搭載するノートPCなのでチェックは入れずデフォルトのまま進めた。それで問題なかった。

ドライバのインストール
「推奨するプロプライエタリなソフトウェアをインストールしますか」という設問。環境に応じてチェックを入れる(今回はチェックなし)

 その後、インストール先のSSDを消去してインストールするか手動でパーティショニングするかどうかの選択、アカウントの設定を経てインストールプロセスが開始される。

インストール方法の選択
SSD中のデータを削除してよいか、パーティションを設定するかの確認画面

 今回、元のSSDを外して新しいものに入れ換えた。PCハードウェア記事がメインの生業ということで、ノートPCのSSD換装は手慣れたもの。何かトラブルがあった時に戻す可能性、使い古したSSDがいつ壊れるかも分からないので、こうした機会に交換しておくのはよい選択だと思う。

 もしもWindows 11にアップグレードできないPCを持っていたとして、すでにその製品は保証が切れているだろうから、自己責任でチャレンジしてみるのも悪くないはず。

インストール完了
すべての設問に答えたらインストールの最終確認

 インストールに要した時間だが、この記事での説明用キャプチャを撮りながらやっていたものの、この段階で5分、この後のインストール(コピー)も約5分で完了した。まあ、10分かからない程度と思っていただいたよいだろう。

 唯一、トラブルがあったとしたらインストールプロセス中のWi-Fiネットワーク接続。Wi-Fiパスワードを入れても接続を試みるぐるぐるがいつまでも終わらなかった。

 ただ、オフラインインストールも可能なので、ネットワーク接続なしでインストールした。そしてOSインストール完了後に改めてWi-Fi接続すると今度は問題なくつながった。筆者のWi-Fi環境かインストーラか、どちらに原因があったかは分からないままだが、インストール自体は問題なく完了した。

Ubuntuが使えるように
インストール、再起動を経てUbuntu Desktopが起動

UIは違っても操作系は似ている。Ubuntuがよいと思った点、これは困ると思った点

 インストール後の初回起動も無事。ただし久しぶりのLinux、初めてのUbuntuということでUI操作は多少の慣れを要した。共通のところはよしとして、Windowsと少し異なる、筆者にとって慣れが必要だったところから紹介しよう。

 まずUbuntuにおいて「Windowsキー」のことを「Superキー」と呼ぶとのこと。以降、このキーについてはUbuntu上での操作はSuperキー呼称、Windows OSでの例を挙げる時はWindowsキー呼称を用いて説明する。

 筆者はライターということもあって、操作をできるだけキーボードのみで完結させたいタイプ。アプリの起動もカーソルを移動してアイコンをタップ……ではなく、キーボードから行なうスタイルだ。

 Windowsの場合、Windowsキーを押してメニューを表示したら、そのままアプリの名前(や実行ファイル名)を入力して絞り込み検索、Enterキーで起動するという流れだ。これをUbuntuでも再現したい。

アクティビティ画面
UbuntuのSuperキーを押すと「アクティビティ画面」が表示される

 UbuntuのSuperキーを押した場合、表示されるのはWindowsでのタスクビュー的な「アクティビティ画面」だ。そして当初は気が付かなかったが、そこに検索ボックスがある。ここでアプリ名や実行ファイル名を入力すると、Windowsのスタートメニュー同様、アプリの絞り込みができた。

アプリの起動などで検索ボックスが使える
検索ボックスにアプリ名、実行ファイル名を入力すると絞り込み検索でアプリ起動までもっていける

 また、「ダッシュ」(Windowsにおけるスタートボタン)をクリックするとアプリケーション一覧が表示される。そしてこちらにも検索ボックスがあり、先と同様、アプリ名や実行ファイル名を入力して絞り込み検索ができた。

ダッシュでアプリ一覧を表示
ダッシュの検索ボックスも機能的に同等

 正直、2つの方法があるというところはWindowsよりも便利だと感じた。当初はUbuntuにも何かテキストランチャーアプリを導入しようと考えていたが、OS標準の機能で結構快適にアプリが起動できる。

 とはいえ落とし穴もあった。ダッシュを押す(アプリケーション一覧を開く)ショートカットキーは「Super+A」なのだが、IME(日本語入力)をオンにした状態だとうまくいかないアプリがあった。

 たとえばFirefox。アドレスバーにフォーカスした状態かつIME オンだと、アプリケーション一覧は表示されたもののアドレスバーに「あ」と入力された。標準のテキストエディタではアプリケーション一覧は表示されずカーソルラインに単に「あ」と入力された。

 Chromeの場合はアドレスバー、検索ボックスとも「あ」が入力されることなく正しくアプリケーション一覧を開けた。このような具合でアプリケーションごとに挙動が異なる。

日本語入力がおかしいことが
日本語入力オン状態からの「Super+A」キー(ダッシュを表示)の挙動が少しおかしい。「あ」と入力されてしまうものもいくつか

 とりあえずアプリの起動はSuperキー1つで開けるアクティビティ画面からをメインに、Super+Aキーは封印、ダッシュはマウス操作で使うものとして慣れることにした。

「Linuxの流儀」を実感するアプリ環境構築。ここが一番苦労した

 さて、いつまでもUI習熟に時間をかけているわけにはいかない。Ubuntuにアプリをインストールして仕事ができる環境までもっていかねば終わらないのだ。

アプリセンター

 この企画の当初、筆者は「アプリセンター」に登録されているアプリ中心に選んでいこうと考えていた。うろ覚えのLinuxでターミナルからコマンドを打つのはやりたくないなと思っていたからだ。

アプリセンター
アプリセンターから使用したいアプリを選べる

 アプリセンターはWindowsの「Microsoft Store」、Macの「App Store」、Androidの「Google Play」(のアプリ)に相当する。ただしオープンソースのアプリが登録されており、「価格」の項目はない(だから「センター」なのだなと実感)、代わりに「ライセンス」(GPLのバージョンなど)の項目がある。

 アプリセンターはカテゴリ分けもされているしおすすめも出てくるし検索もできる。レビューもある。各アプリの詳細画面を見れば、そのスクリーンショットも掲載されている。UIの構成はほかのOSのストアと同じ感覚だ。

 ただしUIこそ日本語化されているものの、各アプリの説明などほぼすべて英語だ。そしてたとえばテキストボックスに日本語で「テキストエディタ」と入力して検索しても「検索結果はありませんでした」が返されるだけだ。つまり英語で「TEXT EDITOR」と入力しなければならない。ある一定以上の英語能力が問われる。まあ、そこはよしとしよう。

アプリセンターでの説明は基本英語
アプリの説明もほぼ英語、検索も英語で入力しないと候補が出てこない

 アプリセンターを眺めてみて感じたが、普段からオープンソースソフトウェアに慣れ親しんでいないと、どれを導入したらよいかなかなか見当がつかない。もちろんWindowsユーザーも、日頃からオープンソースソフトウェアのお世話になっていると思う。筆者もVLCメディアプレーヤーのようにWindowsでもなじみのあるものについてはサクッと検索してサクッとインストールできる。

 筆者が困ったのはオープンソースのテキストエディタ。検索でヒットしたアプリの評価やギャラリーのスクリーンショットを見ても使い勝手まではあまりピンとこない。仕方がないのでブラウザから「Linux テキストエディタ」でWeb検索をし、おすすめされているもの、ユーザーが多そうなもの、ドキュメントが揃っていそうなものを探してみた。

Linuxの"文書作成向け"テキストエディタ選びが難しかった

 先ほどの通り「Linux テキストエディタ」でWeb検索をすることにしたのだが、Linuxでテキストエディタというとまずプログラミング向けのテキストエディタがヒットする。

 たとえばVisual Studio Codeがおすすめ上位に来る。Visual Studio Codeでも原稿は書けるがもっとシンプル&軽量なもので……ということでおすすめ上位の中から「Sublime Text」を試すことにした。これもプログラミング向けのものではある。

 Sublime Textはありがたいことにアプリセンターにも登録されていた。レビューの評価も「優」だ。インストールを済ませ、起動すると英語UIだったが、日本人ユーザー数が多いだけあって日本語化の手順を説明しているサイトも見つかった。

 ところが気になることが1つある。なぜか日本語入力中の文字が表示されない。変換候補は表示されているので原稿執筆できなくはないが、結構気になった。同様のトラブル例がないか検索してみたが特に報告はなく、結局解決しなかった。

Sublime Text
日本語入力時に変換候補は表示されても肝心な入力中のテキストが表示されなかったところが気になる

 その後、これもおすすめで見かけた「Pluma」を試した。このPlumaはアプリセンターに登録されていないアプリだ。コマンドを打ってインストールすることには不安もあったが、参考サイトを頼りにコマンドを入力して実行、インストールはあっけなく行なえた。これでコマンド操作に対する不安はだいぶ和らいできた。こんな感じだったなと思い出した。

 Sublime Textでは日本語入力に問題が生じたが、Plumaではなにも問題なかった。入力、変換……スムーズだ。また、設定画面から「スペース」、「タブ」、「改行」を表示する設定に変更できるところは物書きにとってはありがたい機能だと思う。

Pluma
Plumaは問題なく入力中のテキストも表示、変換候補も表示された

 この記事はPlumaで書いている。シンプル&素直なテキストエディタだと思う。ただ、今後のカスタマイズ、特に誤字脱字チェック用の強調表示などは必須だ。その強調表示設定だが、これについては日本語サイトはあまり見つからず放置している。英語サイトはあったので、時間を見つけてこれを読み解きたい。

 Windowsで使用している秀丸エディタも自分用にカスタマイズしていたわけで、Plumaもカスタマイズしていくことで使いやすくなっていくだろう。

Webブラウザ統一のためChromeを導入

 Webブラウザは「Chrome」を使うことにした。WindowsとLinuxでアプリを統一しておけば慣れに要する時間を短縮、あるいは省ける。ただし、アプリセンターには登録されていない。

debパッケージ形式のファイルをダウンロード

 ChromeはGoogleのChromeサイトからdebパッケージ形式のファイルをダウンロードし、ダブルクリックしてインストールという手順だった。コマンドは不要だった。なお、使い勝手についてWindows版と同じだ。Googleアカウントにログインすればブックマークも同期できた。

Chrome
ChromeにログインすればWindowsで使っていたChromeと同期されるので楽ちん

Excel(表計算)などは移行前に互換性確認と必要ならテンプレート修正を

 表計算はExcelを用いていた。ライターが表計算で何をしているか……筆者の場合はベンチマーク結果を入力し、グラフを作成するというのがメイン。納品はどの編集部もExcel形式のファイルだ。

 また、グラフのテンプレートを指定する編集部もある。Macの時はよかった。Mac版のExcelが提供されているからだ。しかしLinux版のExcelは存在しない。

 まず、有名どころ「LibreOffice」(アプリセンターに登録されていた)をインストールし「Calc」で過去に作成したExcelファイルを表示してみた。

 開いてみると、グラフについてはWindowsのExcelで作成したものと変わらないように見えたのだが……ではグラフの「データの範囲」を表示させてみると#NAMEだったり#REFだったりとエラーで処理できていなかった。CalcでサポートされていないExcel固有の機能を使っていたようだ。

 1つはスピルを用いていた箇所、もう1つはFILTERXML関数だ。CSVやXMLといったベンチマーク結果ファイルから指定のデータを抽出する目的で使用していた。

LibreOffice Calc
WindowsのExcelで作成していたデータがLibreOffice Calcでは読めない……こともある

 次に本家Microsoft 365のブラウザ版なら開けるだろうと試してみた。スピルについては問題なく表示されたのでここは解決。

 一方、FILTERXML関数についてはまだブラウザ版には対応していないとのこと。ブラウザ版の問題なので、Linuxは無関係。ただ、互換性における「奥の手」としてかなり期待していた分、ショックは大きかった。Excelでも基本中の基本の関数のみで作成していれば問題なくこの方法で解決できただろう。

 比較的新しい関数を使っていたりマクロ(筆者は不使用)を使っていたりするとこうした問題が生じやすい。結構難しいところだ。

Web版Excel
Web版Excelで片方は解決したがもう一方はダメ。本家でダメとなるとどうすればよいか……テンプレート修正など対策が必要だ

 対処としては、テンプレートをCalcで動作するよう修正するか、自動化せずコピー&ペーストで作成するかだ。テンプレートの修正には時間がかかるし、その間手作業でデータ集計するのも時間がかかる。業務に関わるExcelファイルの修正は、いざ移行する前にすべて完了させておく必要があるだろう。

GIMPは比較的親しみやすかった

 続いて写真補正。WindowsではAdobe Photoshopをウン十年以上使い続けてきた。しかし、これもLinux版がない。ただ、Web記事についてはJPEG形式での入稿なのでExcelのように互換性については考慮する必要がないのが救いだ。新しいアプリに慣れればよいだけである。

 そこでLinuxでメジャーなところのGIMPをインストールしてみた。もちろんGIMPはアプリセンターに登録されている。

GIMP
GIMPは親しみやすかった

 本格的にGIMPを使ったことはない。ただ、UIこそPhotoshopと異なるものの、ツールのアイコン等はそこまで乖離がないように感じた。筆者がPhotoshopで主に使っていたのはリサイズや色調補正、トリミング……とある程度決まっている。

 ショートカットキーは違うものの、なんとかカバーできそうな印象だ。アクションに相当する「BIMP」というプラグインもあるとのこと。もっと使い込めば、調べなければいけないことや代替の方法を探す必要が出るかもしれない。

Linux版があるなんて神!……と思ったDaVinci Resolveが動かない

 最後、動画編集はドツボにハマったところである。まず、DaVinci ResolveのLinux版があるのを知っていたのでこれに目星を付けていた。DaVinci Resolveもターミナルからコマンドでインストールすることになるが、ここまでいくつかやってきたので、これも大丈夫だろう……と思っていたのが間違いだった。

 まず、インストール中にいくつかのライブラリが不足している旨の警告が出た。ここは幸いBlackmagicのフォーラムに投稿があったのでそれを参考にインストール完了まではもっていけた。

 ところがアイコンをクリックしても起動しない。こちらもフォーラムの投稿を漁って起動画面までは表示できるところまで進めた。しかしその後もまた……今度はGPUドライバまたはコンフィグに問題があるという警告が表示される。

 このあたりどうやらUbuntuというよりはGnome(デスクトップ環境)に起因する問題のようである。

DaVinci Resolve
DaVinci ResolveにはLinux版もある! ということでこれを使うつもりだったのだが……
ライブラリが足りないと警告されコマンドからインストール
それでもGPU関連のトラブルで解決せず

 YouTubeで「DaVinci Resolve on Ubuntu 24」と検索すれば海外の投稿がいくつかヒットする。そのほとんどがターミナルでの作業で、正直なところ初心者にはハードルの高いと感じた。「GnomeなんてやめてKDE(別のデスクトップ環境)を入れたほうがラク」なんてものもある。

 このような具合で今回、DaVinci Resolveはあきらめ別のアプリを探してみた。代替に選んだのは「Shotcut」。アプリセンターに登録されていて評価も「優」だ。

Shotcut
Shotcutを使うことにした

 動画編集アプリは大体どれも似たようなUIになる。プレビュー画面に素材ファイルのライブラリ画面、タイムライン……といった具合。カット編集やサブタイトルを作成するといった基本的なところは直感的に行なえる。シンプルな動画なら作れそうな印象だ。

 ただ、凝りだしたらその都度調べものをしなければならないのは当然。その点でDaVinci Resolveほどドキュメントが充実しているようには見えないところは少々気になる。個人的な感想としては、問題修正がされればDaVinci Resolveを使いたい。

そのほか

 ほかにもVLCメディアプレーヤーをインストールしたり、RAW現像アプリの「Darktable」をインストールしたりといろいろと環境を整えた。ゲーミングPCではないので、ゲームは入れていないが、Web閲覧やアクションカメラで撮影した動画を見るといったプライベートな用途ではなんら問題ないところまでできている。

前々から計画・準備しておくことが大切

 Linux素人がWindowsノートPCにUbuntuを入れてみた体験談はこのような感じだ。Ubuntu上のChromeで調べ物をし、本稿の一部はPlumaで執筆、一部の写真はGIMPで補正&リサイズをした。今回実感したところを紹介していこう。

 まず、移行を考えるならまだWindowsを使っている段階からどのアプリを使うか検討を重ねよう。もしそのアプリにWindows版があれば、Windows版の段階で操作に慣れておくのがよいと思う。それも候補を2つ3つ用意したほうがよい。1つに絞り込んだそれがLinux上で確実に期待した動作をするかどうかは分からない。

 次に、多くの方が利用されているであろうMicrosoft 365(Office)の各種ファイルの移行先での互換性チェックは早めに、そして必要なら移行前に修正を行なっておきたい。移行してから急遽対応するのでは遅い。さいわい、Libre OfficeにもWindows版がある。Windowsが稼働しているうちに互換性チェック&修正を済ませておこう。

 また、トラブルはつきものだ。あきらめない心を持ち、粘り強くWeb検索をし、英語ドキュメントを訳し……等々していけば解決が見えてくると思われる。Linux開発者の方々はそうした経験の上で現在活躍されているのだと思う。

 これの前にWindows→Mac移行のシミュレーションをしたが、それと比べてWindows→Ubuntu移行は難易度が高い。企業なら、ここまでの苦労をしてLinuxに移行するよりも、Windows 11対応PCを導入するほうが建設的だ。

 今回のように業務をWindows 10→Linuxに移行しようと思って実行できるのは個人事業主やSOHOが中心になると思う一方で、その規模だと移行にかかる習熟などが結構な負担になる。フリーランスの筆者はそう感じた。この矛盾を乗り越えられるとしたら、Linuxに興味がある、PCやソフトウェアが好きといった方だと思う。

 今回構築したUbuntuノートPCはもうしばらく環境構築を進めたい。前回の「Windowsおじさん、MacBookを使ってみる。そして案外代替アプリがあることを知る」のときのMacは編集部の借り物だったが、幸いこのノートPCは自前のものだ。

 今回でLinuxへの興味が戻ってきたのもある。もう少し慣れれば、もう少し煮詰めていけば作業がスムーズにできそうな感触がある。結局ここまでやってあきらめるのはどうしても心残りなのだ。ちなみに前回の締めに書いたMac購入の件はまだ予算的に達成できていない……。