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不要になったHDDを手放す場合の処理方法まとめ。譲渡に際してのデータ完全消去から物理的な破壊まで
2023年4月19日 06:02
さまざまなデジタルデバイスの中で、バッテリと並んで処分が面倒なのは、HDDやSSDといった記憶媒体だ。分別上はそのまま不燃ゴミなどに出せる場合も少なくないが(自治体による)、問題となるのは中に保存されたデータだ。
HDDのデータは消去したつもりでも、市販の復元ツールなどを使えばあっさりと読み出せることも少なくない。業務用ではない個人利用のPCであっても、クレジットカードの情報などが含まれている場合もあるので、油断は禁物だ。
今回は、こうした場合にユーザーが取るべき対策として、「データの完全消去」および「ドライブの物理的な破壊」という2つの手法を取り上げ、それぞれどのような場合に向くのか、具体的な手法についても見ていく。
(1) 譲渡や転売にあたってはデータの完全消去が必須
(2) 専門店のHDD破壊サービスを利用する
(3) 電動ドリルを使って自力で穴を開ける場合の注意点
譲渡や転売にあたってはデータの完全消去が必須
まずはHDDのデータ消去について。HDDを手放すにあたって、廃棄するのではなく、継続して使ってもらうことを前提に譲渡もしくは買取に出すのならば、ユーザーが行なうべきなのはデータの完全消去だ。
HDD内のデータは、OS上でフォーマットしただけでは完全に消えないことはもはや常識だ。本にたとえると、目次や索引の部分を破り捨てただけにすぎず、本文にあたるデータそのものは変わらず存在しているので、ツールを用いれば簡単に復元できてしまう。
特にHDDを中古品として買取に出す場合、専門業者だと自社でデータ消去を行なってから再流通させることが多いが、専門知識のない一般の古物商だと買い取った状態のまま販売することも少なくない。個人間売買も同様で、入手した第三者が興味本位で復元を行なう可能性は捨てきれない。
従ってHDDを第三者に譲渡する場合は、専用ツールを用いて無意味なデータを上書きするなどし、データを完全に消去することが不可欠だ。
こうしたデータの消去には、市販のデータ消去専用ソフトや、「CCleaner」のようにドライブ消去機能を備えたフリーソフトを用いる。
ただ、確実性を高めるべく上書き回数を増やしたり、高度な上書き方式を選択すると、24時間で作業が終わらないのもざらだ。PCをそれだけの時間ずっと占有され、かつ電源をオフにできないのは困りものだ。
個人的にオススメなのは、スタンドアロンで動作するデータ消去専用デバイスを用いることだ。
たとえばタイムリーの「UD-3101CLER」は、SATA接続のHDDに接続するアダプタ型の製品で、PCがなくとも単体でドライブの消去が行なえる。
これならばPCで別の作業をしながら並行してデータ消去を行なえるので、時間がかかっても何ら問題ない。価格も数千円程度だ。
ちなみにこうした製品は、Amazonで「データ消去 デュプリケータ」などで検索すると大量にヒットするが、PCなしでデータ消去を行なえる製品だけでなく、PCにインストールして使うデータ消去ソフトを同梱されているだけの製品もあるので、説明をよく読んで目的に合致する製品を選ぶことをおすすめする。
専門店のHDD破壊サービスを利用する
一方で、HDDを譲渡するのではなく廃棄する場合は、ドライブを物理的に破壊するのが手っ取り早い方法だ。
というのも、そもそも継続して使用しないのであれば、時間をかけてデータを消去するよりも物理的に破壊したほうが確実だからだ。HDDが見るからに変形したり、穴が開いているなどすれば、興味本位でデータ復旧を試そうとする輩も減るだろう。
また物理的に破壊するのであれば、HDDが完動品であろうが故障品であろうが無関係に対応できるのも大きい。
故障で動かなくなったHDDであっても、プラッタと呼ばれる内部のデータ保存領域を乗せ替えれば読み取れる場合があるが、物理的に破壊すればそうした心配も不要になる。
さてHDDを物理的に破壊すると言っても、ユーザー自らその作業を行なうのはかなりの手間だ。具体的な作業方法は次章で紹介するのでそちらをご覧いただくとして、現時点でもっとも手っ取り早いのは、専門店が提供しているHDDの破壊サービスを利用することだ。
これはHDDを店舗に持ち込むと、専用のHDD破壊装置を使って穴を開けてくれるサービスだ。価格はまちまちで、ドライブを引き取ることを前提に無償で行なってくれる業者もあれば、数千円程度の手数料を必要とする業者もある。
今回試しに、ほぼ同一形状のHDD3台を、各社のHDD破壊サービスに出し、結果を比較してみた。比較した3社は以下の通り。
結論から言うとどの業者も、プラッタと呼ばれるデータを記録する円盤部分に穴を4カ所空けることで、ドライブの認識および読み取りを不可能にしてくれる。処理が完了したHDDを見ると、裏面まで貫通こそしていないものの、破壊されていることは見た目に明らかだ。
ただし処理後のHDDをよく見ると、穴周辺のへこみが大きいものとそうでないものがあるなど、少なからず差異がある。ほぼ同型のHDDでありながら、これは何が違うのだろうか。
これは破壊装置のモデルの新旧に依存しているようだ。実は今回の3社はいずれも、日東造機のHDD破壊装置を用いている。
つまり処理方法は3社とも同一なのだが、1社だけ採用していた新モデル「DB-60PRO」はそれまでのモデルの倍以上の圧壊力があり、それゆえへこみ方に違いが発生したようだ。
データを読み取れなくする目的は3社ともきちんと果たせているので、どれも合格は合格なのだが、悪意ある第三者にデータ復元をあきらめさせるには、見た目が派手に壊れているほうが望ましく、そうした意味では新しいモデルであることに越したことはない。
ちなみに新しいモデルを導入していたのは「秋葉原最終処分場。」で、「PCコンフル」と「ビックカメラ」は(今回申し込んだ店舗に関しては)従来モデルに当たる「DB-35III」を使用していた。
もっとも「秋葉原最終処分場。」は秋葉原にしか店舗がなく、地方在住者が気軽に持ち込むのは難しい。
これに対して「PCコンフル」と「ビックカメラ」は各地に支店があり、特にビックカメラは郊外店でもサービスを提供している場合が多いので、地方在住者にはありがたいはずだ。前述の各店舗のリンク先も参考にしてほしい。
電動ドリルを使って自力で穴を開ける場合の注意点
さて最後になったが、HDDの破壊はもう1つ、自力で電動ドリルを使ってプラッタに穴を開ける方法がある。
前述の専門店が提供しているHDD破壊サービスは、近隣に店舗があるのが前提で、地方ではなかなか難しい。自力で行なうならばこうした問題はクリアされる。
自力でのHDD破壊に必要なのは、電動ドリルのほか、鉄工用のドリルビット、さらにHDDを乗せるための適当な木の板、および挟んで固定するための万力といったところだ。
木の板がなぜ必要かというと、電動ドリルの先端がHDDを貫通した時、下の床やテーブルに穴を開けてしまわないためだ。破片を撒き散らさない効果もある。
また万力は、これらHDDと木の板、テーブル天板を挟み込み、作業中にドリルビットが食い込んだ状態でHDDが回転しないよう押さえ込むのに使用する。手や足で押さえつけなくともドリルが使えるので、作業が圧倒的に楽になる。
このように準備さえきちんとしておけば、作業そのものは簡単だ。HDDのプラッタがある位置(前述の専用装置が空けた4つの穴の位置が参考になるだろう)を特定し、電動ドリルで本体を貫通するよう穴を開ければよい。
ちなみにHDDは、データが書き込まれているプラッターを外装が覆った状態になっているので、ドリルで穴を開けると「表面」「プラッタ」「裏面」の計3層を貫くことになり、それぞれを貫通した時点で手応えがある。
以下の動画を音量を上げて再生してもらえれば、なるほどそういうことかと理解してもらえるはずだ。
注意点として挙げられるのは、少なからず破片が出ることだ。HDDを貫通させた穴から、金属や樹脂の破片がポロポロとこぼれ出るので、それらが飛び散らないよう、事前に周囲を段ボールで囲ったり、新聞紙などを敷いて回収しやすくしておくとよい。
また、以下の記事で紹介しているのように、ガラス製のプラッタを採用したHDDもある。この場合、プラッタに穴が空かず、粉々に割れてしまうので、それらの破片に注意する必要がある。
HDD本体に空いた穴は、セロハンテープを貼ってふさいでおけば、その後不燃ゴミなどに出す場合も、内部から破片がこぼれ落ちるのを防ぐことができる。
以上の手順を守っておけば、失敗することはまずないのだが、たとえばHDDの固定をおろそかにしたり、電動ドリルを使わずに釘とハンマーで代用しようとするなど、手近にある工具だけで済まそうとすると失敗の確率が上がり、下手をすると自身の怪我につながりかねない。
今回の筆者のケースでは、電動ドリルはすでに所有していたこともあり出費も最小限で済んでいるが、人によってはコスト面がネックになることもあるはず。
さらに不慣れな作業によるリスクなどを総合的に勘案すると、前述のような専門店が提供しているHDD破壊サービスに依頼できるのであれば、それに越したことはないというのが個人的な意見だ。
以上、ざっくりとHDDの廃棄にまつわる処分方法について紹介した。なおこうしたHDDの処分とデータ消去については、JEITAが「パソコンの廃棄・譲渡時におけるハードディスク上のデータ消去に関する留意事項」として、Windows上で利用するデータ消去コマンドなどにも踏み込んで詳しい手順を紹介しているので、詳しく知りたい方はそちらも参考にしてほしい。