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どこまで進化した?各社の4K Webカメラの画質を比較
2023年3月23日 06:07
PCで動画を撮影したり、配信のワイプ用に使うものとして、使いやすいのはWebカメラ。ただ、扱いやすく、価格も手頃である一方で、画質については、一眼レフやミラーレスカメラはもとより、スマホにも劣るものが大半だ。そういった中、この1年くらいで各社が投入してきたハイエンドWebカメラは、価格こそ2万円から4万円台と、一般的なWebカメラよりかなり高価なものの、それらとは一線を画す画質を実現していると聞く。
そこでは、それらハイエンドWebカメラの内、代表的な4製品をピックアップ。その画質や機能性を比較してみた。本記事は下記レビュー動画から抜粋したものなので、詳しくは下記動画をご覧いただきたい。なお、マイク性能については、こういったハイエンドWebカメラを使う人は内蔵マイクを使うことはほぼないので、比較は行なっていない。
製品紹介
比較の前に、各製品を簡単に紹介する。
AVerMediaの「PW513」は、Sony Exmor 4Kセンサーを搭載。最大記録解像度は4K30fpsかフルHD60fps。対応フォーマットはMJPEGとUYVY。レンズF値は2.8、視野角は対角94度、水平85度、垂直55度。動画作成時の実売価格は2万3,000円。
Insta360の「Insta360 Link」は、モーターを内蔵し、カメラが被写体を追尾し続ける機能を持った特殊な製品。価格帯がほかの製品より上だが、4Kセンサーを搭載するので、比較に入れることにした。なお、今回は、追尾機能回りは掘り下げまない。
1/2インチの4Kセンサーを搭載。最大記録解像度は4K30fpsかフルHD60fps。対応フォーマットはH.264とMJPEG。レンズF値は1.8、視野角は対角79.5度、水平67度。動画作成時の実売価格は4万3,500円。
デルの「WB 7022」は、Sony STRAVIS CMOS大型4Kセンサーを搭載。最大記録解像度は4K30fpsかフルHD60fps。対角視野角は67、78、90度に対応。ちなみにWindows Helloにも対応する。動画作成時の実売価格は2万3,790円。
ロジクールの「BRIO 4Kウェブカメラ」は、最大記録解像度は4K30fpsかフルHD60fpsに加え、HDでは90fpsでの撮影にも対応。対角視野角は65、78、90度に対応。動画作成時の実売価格は2万6,180円。
参考までに、画質については、フルHDセンサーのWebカメラと、スマホ、ミラーレスカメラとも比較した。フルHD WebカメラはロジクールのStreamCam、スマホはPixel 7 Pro、ミラーレスカメラはソニーのα6600を使っている。
なお、Pixel 7 ProはVDO Ninjaというサービス経由でフルHD解像度でインターネット越しに取り込んでいる。α6600はキャプチャユニット経由で4Kで取り込んだ。
画質比較
いずれのWebカメラも4Kで出力し、OBSでフルHDに縮小して録画している。
まずは、電球色のシーリングライトを使い、カメラの設定は自動にした場合の映像を比較した。シーリングライトは、多くの場合、自分の顔に影を作るので、顔が暗くなるか、あるいはそれに引きずられて感度が上がり、背後が極端に明るくなったりする。
また、色合い的にも電球色はカメラの照明として基本的には向いていない。ただ、こういう状況で使う人がとても多いことを考え、あえてこの状況で撮影した。
続いてシーリングライトは使わず、動画用の照明を使い、カメラも手動でISO感度やホワイトバランスなどを調整した状態で撮影した。つまり、そのカメラのポテンシャルをなるべく引き出した状態だ。
こちらでは、余計な周辺をトリミングして引き伸ばす、つまりデジタルズームした状態で比較している。どうしても、Webカメラだとセンサーが小さくなるため、解像度を上げても、画質は頭打ちになることがしばしば。しかし、配信や収録の出力がフルHDなら、WebカメラをフルHD相当にまでデジタルズームしても、その映像はネイティブ解像度で、引き締まったままになるメリットがある。これこそが4K Webカメラのメリットと言える。
画質評価
画質の比較については、Insta360 Linkが頭1つ抜けた印象だった。高精細で、色の再現性も高い。この製品だけ価格が高いので、ある意味当然と言えなくもないが、本製品はモーター駆動による自動追随機能を搭載しているので、それを差し引くと映像回りにかけているコストは、ほかの比較製品とそこまで変わらないと言える。
ミラーレスカメラと比較すると、まだ歴然とした画質の差があり、特に背景のボケなどは難しいが、ゲーム配信などのワイプに縮小するのであれば、Insta360 Linkはミラーレスに近いレベルである。
今回のWebカメラ4製品に共通して言えるのは、従来のフルHDのカメラに比べると、1ランク精細さが向上しているという点。背後に映っているマンガのタイトル部分を見てもらうと、フルHDカメラだとぼやけて読みにくいが、4Kカメラだと難なく読むことができる。
また、電球色のシーリングライトと、オート設定の組み合わせは、ミラーレスカメラを使った場合でさえ、画質は残念なものになっている。カメラの種類を問わず、ある程度の照明を用意したいところだ。
付属ツールについて
カメラの性能を発揮させる上で、付属ツールの機能性も注目したい点。これについても、Insta360 Linkのツールがもっとも優れていた。
このツールは、ISO感度、シャッター速度、色温度でのホワイトバランス指定などミラーレス/一眼レフカメラと同等の調節が可能。知識のある人ならこのカメラで、思い通りの映像を撮影できるだろう。なお、今回は該当製品がなかったので評価していないが、ElgatoのWebカメラもこういった設定が可能だ。
ほかの製品のツールは、ホワイトバランス、明るさ、色味、シャープネスなど、ありがちな設定しかできない。特にホワイトバランスの調節が難しく、動画用の照明を使っても、狙った色味にできなかった。
マウントについて
Webカメラは手軽さがウリの1つなので、設置のしやすさも比較した。4製品とも台座がクリップ式で、モニターやノートPCの天板に引っかけて設置できるが、Insta360、AVerMediaの製品は、カメラ用のネジ穴も付いており、三脚などにも取り付けできる。デルの製品は、クリップ台座にはネジ穴はないが、台座がもう1つのものに取り替え可能で、そちらにはネジ穴がある。
また、AVerMedia製品は、カメラ部分を左右360度に回転できるので、簡単に狙った方向に向けることができる。
総括
今回の比較では、Insta360 Linkが頭1つ抜けた画質を実現していることが分かった。ツールなどを含めた完成度もかなり高い。価格も高いが、それに見合う性能を持っていると言える。従来のフルHDカメラとは一線を画すレベルで、10万円以上するミラーレスまでは手が出ないが、なるべく画質を上げたい人にはお勧めの製品と言える。
ちなみに、Webカメラを手がけるほかのメーカーとしてRazerとElgatoも4Kセンサーの製品をアメリカで発表しているが、日本ではまだ扱いがなく今回は評価できなかった。海外でのレビューを見ると、これらも画質はかなり高いようであり、機会があれば評価したい。