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Windows 11をMacで使う方法。vTPMが標準ONになった「Parallels Desktop 17.1」で、どのアプリが動くのか検証してみた

「Parallels Desktop 17.1 for Mac」。新規ライセンス8,345円、アップグレード5,204円

 Mac向けの仮想環境アプリを提供するParallesは、10月に「vTPM」が標準で有効化され、Windows 11を導入しやすくなった「Parallels Desktop 17.1 for Mac」をリリースした。

 Windows 11の重要なシステム要件として、TPMチップの実装が挙げられている。「Parallels Desktop 17.1 for Mac」はすべてのエディションで、vTPM(Virtual Trusted Platform Modules)が導入。またホストOSとして最新の「macOS Monterey」が正式にサポートされており、Apple M1搭載Mac上のmacOS Montereyで仮想マシンを利用する際に、ユーザー体験が向上すると謳っている。

 M1 Macで動作させられる仮想マシンは、ArmベースのOSとなるが、現在Insider Preview版の「Windows 11 on ARM」がMicrosoftから提供されており、「Parallels Desktop 17.1」にセットアップ可能だ。今回の記事では、インストールの手順と、どのようなアプリが、どのぐらいの速度で利用できるのかレビューしてみよう。

 なおInsider Preview版の「Windows 11 on ARM」は新機能や互換性を確認したり、Microsoftにフィードバックを送るためのものであり、日常的に利用するものではない点には注意してほしい。

Windows 11起動までのセットアップ手順を解説

 Windows 11起動までの大まかな手順は以下の通りだ。

  1. Parallels Desktop 17.1のインストール
  2. Insider Previewへの参加
  3. Windows 11 on ARMの入手
  4. Windows 11 on ARMのインストール

 すべての手順を解説すると煩雑になるので、今回は要所のみを解説しよう。

Parallelsのインストール手順

(1) Parallels Desktopをダウンロード
Parallelsの公式サイトから「Parallels Desktop 17.1 for Mac」の無償トライアル版をダウンロードする。無償トライアル版は全機能を14日間利用可能で、ライセンスを購入すればあとから製品版にアップグレードできる。改めて環境をセットアップする必要はない
(2) Parallels Desktopをインストール
ダウンロードファイル「Install Parallels Desktop.dmg」をダブルクリックしたあと、上記の「Parallels Desktopのインストール」をダブルクリックして、インストールを開始
(3) フォルダへのアクセス許可
「ダウンロード」、「デスクトップ」、「書類」フォルダ内へのアクセスなどを許可する
(4) Arm版Windows 11の入手方法
「Parallels Desktop 17.1 for Mac」のインストールが終了すると、Apple M1チップ搭載Mac向けのインストールアシスタントが表示される。中央のリンク「ARM InsiderPreviewでWindows11をダウンロードする方法」をクリックしよう
「Install Windows on a Mac with Apple M1 chip」という記事がWebブラウザに表示されるので、少し下にスクロールする
(5) Windows Insiderへの登録
ここで、「Windows Insider Program」に登録していない方は「Register for the Windows Insider Program」をクリック。すでに登録している方は「Download the installation file」をクリックする
この画面から、「Sign in now」→MicrosoftアカウントのIDとパスワードを入力……と進んでいき、最後に「Start flighting」という画面が表示されたら、「Windows Insider Program」への登録は完了だ
(6) Windows 11 on ARMをダウンロード
先ほどのWebブラウザに戻り、今度は「Windows 11 on ARM」を入手するため、「Download the installation file」をクリックする
右上の「Sign in」からMicrosoftアカウントでサインインする
下の「Windows Client ARM64 Insider Preview – Build 22483」(※時期によってビルド番号は変わる)をクリックして、「Windows 11 on ARM」をダウンロードする
(7) ダウンロードしたVHDXファイルを実行
ダウンロードファイル「Windows11_InsiderPreview_Client_ARM64_en-us_22483.VHDX」(「Vitual Hard Disk」と呼ばれる)をダブルクリックする
(8) ParallelsへのWindows 11のインストール
すると「Parallels Desktop 17.1 for Mac」のインストールアシスタントが起動するので、以降は指示に従う。今回は汎用的なテストを実施するために「業務用ツール」を選択した
最後に、仮想マシンの「名前」と「保存先」を設定し、「作成」を押せば「Windows 11 on ARM」のインストールが始まる。構成(ハードウェア)はあとから変更できるので、ここではチェックを入れる必要はない
この画面が出ればインストール完了
(9) 英語から日本語環境に変更
なお最初は英語環境になっているので、「Settings→Time&Language→Language&region」で適宜日本語環境に変更したい。しかし、執筆時点では「Windows display language」で「日本語」を選択すると、スタートメニューが表示されない、「設定」が開けないなどの不具合が筆者の環境で発生した。「Windows display language」は「English(United States)」のまま利用することをおすすめする

どのようなアプリが、どのぐらいの速度で利用できる?

 さて、M1 Macの「Parallels Desktop 17.1 for Mac」にインストールした「Windows 11 on ARM」で、どのようなアプリが利用できるのだろうか? 今回、Apple M1を搭載した「13インチMacBook Pro」(メモリ16GB)で実際に試してみた。

 なお、「Parallels Desktop 17.1 for Mac」ではハードウェア構成を細かくカスタマイズ可能だが、今回は「業務用ツール」の構成でテストを実施して、動作しなかった場合のみプロセッサ数とメモリ容量を増やした設定も試している。

【表1】ハードウェア構成ごとのプロセッサ数とメモリ容量の違い
プロセッサメモリ
業務用ツール4CPU6GB
ソフトウェア開発4CPU6GB
ソフトウェアのテスト4CPU6GB
設計4CPU8GB
ゲームのみ4CPU8GB
用途に合わせた構成の設定
「一般」タブの「仮想マシンの構成」で、「業務用ツール」、「ソフトウェア開発」、「ソフトウェアのテスト」、「設計」、「ゲームのみ」と目的に合わせた構成を選べる。ちなみに、「ゲームのみ」に設定した場合は、プロセッサ数、メモリ容量を増やした上で、Windows 11を全画面表示するように設定される

 Windows 11の起動と標準WebブラウザであるEdgeの利用の様子は以下の通りで、快適に動いている。

【Windows 11の起動時間】
「Parallels Desktop 17.1 for Mac」の起動からWindows 11のデスクトップが表示されるまで、約12秒しかかからない
【Webブラウザの動作の様子】
Arm 64bitの「Edge」は快速そのものだ

 標準アプリ以外として、まず「Microsoft Office」では「Word」を試用してみたが、概ね正常に動作しているようだ。画像や表が含まれるドキュメントでも破綻はない。ただし、以降のアプリも含めて長時間利用したわけではない。筆者や編集部が動作を保証するものではない点には注意してほしい。

画像が貼られているドキュメントでも描画が乱れるようなことはなかった
【Wordの動作の様子】
素早い動きに描画がやや追いついていないが、レスポンス自体はよいので待たされ感はない

 つぎに主要なアプリケーションとして、「Adobe Creative Cloud」に含まれる「Photoshop」と「Lightroom」をインストールしようとしたが、Adobe Creative Cloudインストール中に「CRLogTransport.exe」がアプリケーションエラーを起こして、Photoshop、Lightroomはインストール自体できたものの、同じエラーコードが出て起動できなかった。

Adobe系のアプリでエラー発生
「Adobe Creative Cloud」インストール中に「CRLogTransport.exe」がアプリケーションエラーを起こしてしまう
Adobe Creative Cloudに含まれる「Photoshop」でもエラー
「Lightroom」のインストール自体は完了するが、どちらも同じエラーコードが出て起動できない

 「Dropbox」はインストールすらできなかった。どうしてもDropboxを使いたい場合には、現時点ではSモード版を利用するしかない。

Dropboxはインストール不可
「Dropbox」はインストールが中断され、Sモード版のインストールを促される

 「秀丸エディタ」については、32bit版、64bit版の両方を試してみたが、どちらも正常に動作しているようだ。ただし、しつこいようだが保証するわけではないので、もし購入する際にはじっくり試用してから決めてほしい。

秀丸エディタは問題なく動作
「秀丸エディタ」では32bit版と64bit版の両方で動作することを確認した
快速動作に定評がある「秀丸エディタ」だけに、素早くスクロール可能だ

 ゲームは筆者の「Steam」のライブラリから4本インストールしてみた。「ARCADE GAME SERIES:PACMAN」、「Brut@l」は快適にプレイできたが、「Space Channel 5:Part 2」、「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」は起動途中で終了してしまった。ハードウェア構成を「ゲームのみ」に切り替えても動作しなかったので、処理性能ではなく、なんらかのシステム要件を満たしていないのだと思われる。

ゲームが動くか検証
2Dアクションゲームの「ARCADE GAME SERIES:PACMAN」はストレスフリーで懐かしのプレイを楽しめる
「Brut@l」は「Rogue」をモチーフにした3Dアクションゲームだ
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」と「Space Channel 5:Part 2」は起動途中で終了してしまった。「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」は「BattleEye Service」のインストールの時点でエラーが発生している
多少コマ落ちしているようだが、プレイに支障が出るほどではない
【表2】「Parallels Desktop 17.1 for Mac」上でのアプリ動作可否リスト
アプリ名種別動作可否補足
Microsoft Office32bit-
Adobe LightroomArm 64bit×エラーが出て起動できない
Adobe PhotoshopArm 64bit×エラーが出て起動できない
Dropbox32bit×インストールできない
Evernote64bit-
秀丸エディタ32bit-
秀丸エディタ64bit-
Steam32bit-
ARCADE GAME SERIES:PACMAN64bit-
Brut@l64bit-
Space Channel 5:Part 232bit×起動しない
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS64bit×起動しない

まとめ - WindowsだけでなくLinux用の膨大なアプリ資産が利用可能となる

 Apple M1チップ対応アプリは続々と増えている。「Apple M1 Proチップ」、「Apple M1 Maxチップ」搭載MacBook Proもリリースされており、システム本来のパフォーマンスを最大限に引き出すためにはネイティブアプリを使うべきなのは言うまでもない。しかし現状、「秀丸エディタ」のようにWindowsだけで利用できるアプリも存在する。そのようなアプリを利用するためには「Parallels Desktop 17.1 for Mac」は有用だ。

 また、Insider Preview版の「Windows 11 on ARM」だけでなく、「Ubuntu Linux」、「Fedora Linux」、「Debian GNU/Linux」、「Kali Linux」などの様々なOSを「Parallels Desktop 17.1 for Mac」は仮想マシン上で利用可能だ。できるだけ多くのアプリケーションを利用するために、「Parallels Desktop 17.1 for Mac」が重宝することは間違いない。

「Windows 11 on ARM」だけでなく、「Ubuntu Linux」、「Fedora Linux」、「Debian GNU/Linux」、「Kali Linux」なども手軽にインストールできる