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【PC Watch25周年】レッツノートの歴代製品を振り返る
2021年11月22日 06:55
パナソニックのパソコン事業には長い歴史がある。パナソニックと富士通が合弁で設立したパナファコムが、日本初の16bitマイコンキット「LKIT-16」を発売したのが1977年。その翌年には、16bitパソコン「C-15」を発売している。さらに、その後は、松下電器(現パナソニック)として、ビジネス向けパソコンの「オペレートシリーズ」や、FMRシリーズと互換性を持った「パナコムMシリーズ」、「PRONOTE」を投入。コンシューマ向けパソコンでは、MSX規格のパソコンのほか、テレビ機能をいち早く搭載したマルチメディアパソコン「WOODYシリーズ」などを商品化していた経緯がある。
そうした歴史を持つ同社のパソコン事業において、25年の歴史を持つのが、1996年6月からスタートしたレッツノートシリーズである。
レッツノートの第1号機である「AL-N1」は、当時、「モバイル」という言葉が一般的ではなかった時期に、軽量化と長時間バッテリ駆動という相反する要件を、高いレベルで実現。「ビジネスモバイル」というカテゴリを生み出した。
それから25年を経過した今も、最新四半期のデータを見ると、レッツノートは、法人向けウルトラポータブルPC市場でナンバーワンシェアを獲得している。長年に渡り、ビジネスモバイルのリーダー的存在であり続けている。
開発当初から現在まで一貫しているのは、ビジネスシーンでの使用環境を想定した設計にこだわっている点だ。堅牢性や高性能の追求はもちろん、有線LANポートやミニD-Sub15ピンポートといったビジネスシーンに必要とされるインターフェイスを搭載。25年間変わらない拡張性の高さは、レッツノートの大きな特徴の1つとなっている。
レッツノートの進化は、ユーザーの声を反映し続けた結果だと言える。それは、営業部門やサポート部門だけでなく、事業部長や開発者自らが、顧客のもとに出向き、直接声を聞き、困りごとを解決してきた歴史でもある。そして、課題が生まれるとすぐに実験を始め、解決策を探るのがレッツノートの開発チームの真骨頂だ。
首都圏で最も混雑する私鉄に、圧力センサーを身体中に巻き付けた社員が通勤時間に乗り込み、圧力と振動を測定。そのデータをもとに独自開発した加圧振動試験機を利用して、堅牢性向上に繋げたというエピソードは有名だ。
現在も社内には、防水試験機や熱衝撃試験、キーボード打鍵試験機、開閉試験機など各種試験設備を導入。厳しい試験をクリアしたレッツノートが開発されている。
また、レッツノートを生産する兵庫県神戸市の神戸工場では、基板製造から組立までの一貫生産体制を確立し、高い品質でのモノづくりを実現しているだけでなく、1台からの多品種少量変量生産にも対応。110万通りから選べるカスタマイズも可能だ。
ちなみに、1996年9月に誕生したタフブックも、パナソニックのパソコン事業には欠かせない製品だ。MIL規格の基準をクリアし、耐衝撃、耐振動、防塵・防滴に優れたタフなノートパソコンであり、現場での活用に最適だ。米国では白バイやパトカーなどに搭載。欧州では鉄道の車掌業務に利用されるなど、まさに過酷な現場で利用されている。2002年以降は、国内でもタフブックブランドで展開。2012年からは、派生ブランドとして、タフパッドを製品化していたが、2018年には、これをタフブックに再び一本化している。
レッツノートの変遷
レッツノートとタフブックが、ともに誕生した1996年は、PC Watchが創刊した年でもある。
PC Watchでは、1996年4月の創刊から2カ月後に、初代レッツノート「AL-N1」を記事で紹介している。
AL-N1は、B5サイズで1.47kgの軽量化を達成。リチウムイオンバッテリを2本搭載し、6時間のバッテリ駆動を実現するなど、まさにビジネスモバイルを実現したエポックメイキングな製品だ。発売と同時に、売り切れ店が続出した。
松下電器産業が、サブノートを強化
また、1997年6月には、ポインティングデバイスに光学式トラックボールを初めて採用した「AL-N2」を発売。その後、光学式トラックボールは、レッツノートを象徴する代名詞ともなった。
2002年1月に発売した「CF-R1」は、同社PC事業の軸足を、ビジネスモバイルに改めて置き直した歴史的製品だ。「レッツノート・ライト」という新たなサブブランドを用意。ネットワーク対応や高付加価値化による差別化には限界が生まれつつあった中で、原点回帰を図ったCF-R1はヒット商品となり、「モバイルと言えばレッツノート」というイメージを回復させることに成功した。堅牢性を実現するボンネット型天板や、操作性とデザイン性に優れた円形のホイールパッドも、このときに採用している。
2003年9月に発売した「CF-W2」は、シェルドライブと呼ばれる、パームレスト部が開閉するDVD/CD-RWコンボドライブを内蔵したB5ファイルサイズノートとして登場。このドライブは、薄型化、軽量化を実現しながらも、2スピンドルを実現するレッツノート独自の設計として注目を集めた。
松下、CPUが強化されたLet'snote LIGHT 3機種
さらに、2005年4月に発売した「CF-W4」では、耐100kgf級の頑丈設計を実現。スーパーマルチドライブを内蔵しながら、1,199gと世界最軽量を達成した。レッツノートに「タフ」の要素が組み合わさった新たな時代の製品であった。
松下、12時間駆動の「Let'snote T4」など夏モデル
2012年1月に発売した「SX1」は、レッツノート15周年の集大成モデルの1つとして発売されたパソコンだ。軽量、長時間、頑丈、高性能という強みに加えて、「薄型」という要素を採用。それでいて、光学トライブを搭載したり、スマホ連携機能も実現。「タフクリエイティブモバイル」という新たな提案を行なった。
この頃から、レッツノートは、ビジネスモバイルの用途が拡大し始めたのに合わせて、様々な提案を行なっている。ノートPCとしてもタブレットとしても使えるハイブリットモバイルの「CF-AX2」、10.1型コンバーチブル2in1で世界最軽量の745gを実現した「CF-RZ4」、光学式ドライブ内蔵で世界最軽量となる929gを達成し、バランスの取れた「王道モバイル」として人気を博した「CF-SZ5」、キーボード部を外して、タブレット単体としても使えるタブレットモバイルパソコンの「CF-XZ6」など、どのレッツノートも、新たな提案を行ないながら、ビジネスモバイルとして求められる仕様を高いバランスで実現した製品であった。
初代レッツノートの発売から25年の節目を迎えた2021年は、小型、高性能、高信頼性、モビリティというレットノートが得意とする領域で大きく進化。同時に、コロナ禍における新たな働き方に対応し、あらゆるビジネスワーカーが、モバイルパソコンを必要とする時代に対応した進化が見逃せない。
2021年1月に発表した「SV1」では、Maxperformerの進化により、CPUの性能を高次元に引き出し、ビジネスの生産性を向上。どんな環境においてもビジネスを止めないモバイルパソコンを提案して見せる。
また、2021年6月に発売したFV1では、0.999kgの軽量化を図るとともに、画面比3:2の14型ディスプレイを搭載。大画面でありながら、軽量化、コンパクト化を達成。レッツノートしては、初めて5Gにも対応した。
さらに、レッツノートの製品ラインナップには、Windows 11搭載モデルもいち早く用意されるなど、進化は留まることを知らない。レッツノートは、新幹線の車内シェアや、国内線飛行機でのシェアが圧倒的と言われるように、日本のビジネスを支えるモバイルノートパソコンとして定着している。
パナソニック、Windows 11 Pro標準搭載のレッツノート
「モバイルワーカーが活き活きと働く社会の実現」が、レットノートを通じた同社の事業ミッションだ。ビジネスのためのモバイルノートとしてのこれからの進化も楽しみである。