特集

東芝フラッシュメモリ事業を継承するキオクシアが個人向けSSD市場に参入。今後の展開を聞く

~高速NVMe製品も投入する積極展開に

キオクシアの製品ラインナップ

 2019年10月に東芝メモリから現在の社名へと変更を行ったキオクシア。同社は、今年4月に「キオクシア(KIOXIA)」ブランドを立ち上げ、メモリカードやUSBフラッシュメモリ、SSDなどの消費者向け製品の国内展開を本格的に開始した。

 なかでも国内の消費者向けSSD市場への参入は、同社が東芝だった時代から含めて初となる。国内唯一のフラッシュメモリ製造・開発メーカーであるだけでなく、世界有数の半導体メーカーでもあるキオクシアの今後の個人向け製品の国内展開について、営業本部 SSD営業推進統括部 統括部⻑の⾼橋俊和⽒、営業本部 販売推進統括部 参事の伊藤美和⽒、SSD事業部 SSD応⽤技術部 参事の間渕英氏に話をうかがった。

左から間渕英氏、高橋俊和氏、伊藤美和氏

東芝のフラッシュメモリ事業を継承。社名変更を機に消費者向けの事業に本格参入

――読者のなかには御社の事業内容を知らないユーザーも多くいると思います。最初に御社の事業内容をお聞かせください。

高橋氏

高橋氏:弊社は、2018年6月に東芝から「東芝メモリ」として独立し、2019年10月に社名を現在の「キオクシア」へと変更しました。東芝から継承した事業は、フラッシュメモリの開発・製造とそれに関わる製品群です。

 たとえば、フラッシュメモリそれ自体のほか、その応用製品として、スマートフォンなどに使われる組み込み向けのコントローラつきのフラッシュメモリ(UFSやeMMC)、SSD、SDメモリカード、USBフラッシュメモリというのがおもな取扱製品となります。SSDは、クライアント向けからエンタープライズ向けまで手掛けています。

 工場は三重県四日市市と岩手県北上市にあり、弊社が製造しているフラッシュメモリについてはすべて日本製です。

――これまでも個人向け製品の販売は要望が高かったと思いますが、今回、SSDの国内市場参入を決めた経緯をお聞かせください。

高橋氏:弊社は、東芝時代からSDメモリカードとUSBフラッシュメモリを日本国内では個人向けに販売していましたが、SSDの個人向けの販売は行なっていませんでした。ただし、海外向けでは、以前から個人向けのSSDの販売を行なっていました。

 今回、キオクシアに社名を変更したのを機に、弊社のことをより多くの個人の皆さんにも知っていただこうということで、SSDも国内の個人向けに販売することを決めたという感じです。

間渕氏

伊藤氏:ご指摘のように以前から個人向けSSDの販売を行なってほしいというお声を多くいただいていることは承知していました。キオクシアブランドのSSDを国内で販売開始するならと、バッファローさんという非常に力強いパートナーから声をかけていただいたことも、個人向け製品を販売するきっかけになったと思います。

伊藤氏

――個人向けSSD市場は参入メーカーも多くありますが、御社の強みをお聞かせください

高橋氏:弊社はフラッシュメモリの開発・製造メーカーであり、自社製のフラッシュメモリの特性を熟知しています。たとえば、自社製のフラッシュメモリをどのようにコントロールすればよいかといった"ノウハウ"を製品に活かすことができます。

 SSDにとってコントローラは重要な部品ですが、コントローラはフラッシュメモリを熟知しているところが、一番うまく作ることができます。さまざまなノウハウを注ぎ込み、自社製のフラッシュメモリに最適化したカスタマイズを行なえるからです。これは大きな強みだと思っています。

 また、弊社は、SSDがここまで普及する以前の黎明期からSSDのOEM向けのB2Bビジネスを広く⾏なっていることもあり、知見を数多く蓄積しています。それを活かした製品開発を行なえるという強みもあります。ほかにも、PCIeやNVMeといった業界の先端規格、あるいは、マーケティングの最新情報を取り込んだ上で商品企画や、開発を行なっていますので、その時々でマーケットから求められる最適な製品を開発できるというマーケティング力としての強みもあると考えています。

搭載フラッシュメモリチップは、国産自社製

――SSDのB2Bビジネスを長く行なってきたことによる強みを具体的にお聞かせください

間渕氏:先程マーケティング力が強いという話をしましたが、SSDの場合は、とくに互換性が重要だと思っています。B2Bのビジネスをやっていますと、各社色々なプラットフォームがありますが、弊社ではそのような多種多様なデザインに対応した開発を行なってまいりました。それらの経験や知見を活かして、互換性などを含めた開発を当初から行なえますし、互換性などを含めた開発を当初から行なえます。新しく出てきたものだけで評価をしていくと、色々な不具合がでて、相性問題も起きやすいのですが、そういう面でいろんな知見が溜まっているなかでの評価ができるのは、弊社の大きな強みだと思います。

NVMe SSDのEXCERIA NVMe SSDと上位モデルのEXCERIA PLUS NVMe SSD。いずれもすでに流通が始まっており、入手可能だ。以前から大手メーカー製PCを含むB2B供給を大規模に行なっていたキオクシアだけに、実績、信頼性は十分。パワーユーザーからの期待値は高い
SATA対応 SSDのEXCERIA SATA SSD。DRAMレス構造でコストダウンを図っている
EXCERIA PLUS NVMe SSDのベンチマーク結果。PCI Express 3.0世代としては最速クラスの高い実力を持つ。【ベンチマーク環境】CPU:AMD Ryzen 7 3700X(8コア16スレッド)、ASUSTeK ROG STRIX B550-F GAMING(AMD B550)、メモリ:PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2、ビデオカード:NVIDIA GeForce GTX 1650 、システムSSD:CFD販売 S6TNHG6Q CSSD-S6T256NHG6Q Serial ATA 3.0、MLC、256GB 、OS:Windows 10 Pro 64bit

 ただ、OS側のアップデートもありますし、相性問題というのはストレージの開発における永遠のテーマだと考えています。想定できることは対応できますが、もちろん想定できないこともあるからです。そこは、やはり、経験して、いかに減らしていくかだと思います。

 B2Bを長くやっていますと、こういう条件でこういう状態になりやすいとか、そういう知見が数多く溜まっていきます。それをどんどん評価項目として増やしていって、それを製品開発に活かしています。SSD黎明期だった東芝時代にSSDを開発しており、インターフェイスはSATA、NVMeと変化していっていますが、その土台を引き継いでSSD開発をしています。

 当たり前のことをカタログに書いても、なかなか魅力的には伝わりませんが、当たり前のことをちゃんとやるというのが、実はひじょうに難しいことです。弊社は、それにずっと力を掛けてきています。カタログを見た限りではわかりませんが、ちゃんと動くという、当たり前のことをしっかりやるということを頑張っていきたいなと考えています。

長く続くブランドに育てあげる。今後はラインナップを拡充し、販路拡大も目指す

――7月1日に買収されたLITE-ONテクノロジーのSSD事業について、今後の方針などが決まっていればお聞かせください。

高橋氏:LITE-ONテクノロジーのSSD事業については、現状のビジネスはそのまま継続し、今後どうしていくかは、まだ、決まっていません。今後の展開などは、これから話し合って決めていくことになりますが、お互いのいいところを活かしながら、相乗効果を出していきたいなとは考えています。

――御社の今後の製品展開についてお聞かせください。

間渕氏:現状のSSDは、NVMe SSD 2製品、SATA SSD 1製品ですが、外付けのUSB接続SSDの製品も今後計画しています。内蔵SSDに関しても、2021年以降、PCI Express Gen 4の製品が増えてきますので、そういったSSDも今後出していくという計画ももちろんあります。

 また、USBメモリに関しても現在は少なめのラインナップですが、日本市場だけでなく、ワールドワイドで要望があるということは認識していて、社内で話をしています。

――これから国内で個人向け製品を展開していく上で、読者にメッセージがあればお聞かせください。

伊藤氏:待ち望んだ日本でのブランド展開になります。まだ、はじまったばかりですので、なにかを見通せているわけではありませんが、とりあえず、最初の一歩を踏み出すことができました。これから、製品展開も厚くして、お客様に知ってもらえるようなブランドになれるよう努力して参りたいと思います。

 弊社は、「記憶」で世界をおもしろくする、というミッションを持っています。製品につけられたカラーには、ワクワクするような期待を込めています。製品のグレードによって色分けするというわけではなく、ポップな色の製品ってキオクシアだよねと感じで覚えていただければと思っています。

 また、SSDが購入できるのは、今のところ、Amazonのみですが、今後は販売チャンネルも広げていきたいです。販売元のバッファローさんは国内に強力な販売網をお持ちですので、より多くの方に当社ブランドを知ってもらえるよう、協力して活動をしていきたいと思います。

高橋氏:ブランドを作るというのは、ずっと続けないとダメなんだと思っています。そうしないと信頼されないというか、皆さんの心に浸透していかないと考えています。はじめた以上は、続けていくというか、歯を食いしばって頑張るというか、そういう感じでやっていくことで得られていく、勝ち取れる信頼みたいなものがあるので、しっかりやっていきたいと思います。そして、皆さんにもっともっと認知されるように頑張っていきたいと思います。