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水拭きもできる「ルンバ コンボ j7+」。パッドを天面まで持ち上げる変形機構と「iRobot OS」を搭載

 アイロボットジャパン合同会社は、2022年11月1日に「アイロボットジャパン 新製品プレス発表会」を開催し、ロボット掃除機「ルンバ」の最新モデル「ルンバ コンボ j7+」を発表した。掃除機能と水拭き機能を1台に搭載した2in1モデルで、天面に水拭きモップを持ち、水拭き時にはアームを下ろして一定圧をかけながら水拭きができる。そしてカーペットを認識すると、水拭きモップを天面まで持ち上げて濡れないようにする独自の「パッドリフティングシステム」を備えた。

 従来機種「j7」シリーズ同様、ロボット前方に搭載しているカメラで、コードや靴下、スリッパやリュックサック、ペットの食器や排泄物などの障害物を識別して回避する「PrecisionVisionナビゲーション」を搭載する。クラウド経由でユーザーからのフィードバックによって機能を向上させる「ユーザー参加型AI」だとしている。

 また、iRobot独自の「iRobot OS」を搭載する。以前は「iRobot Genius」と呼ばれていたソフトウェアで、iRobot Homeアプリを通してロボットを使用するための各種機能を提供する。

「ルンバ コンボ j7+」。外形寸法は「 j7」シリーズと同じ
正面のライトとカメラで物体を認識、室内をナビゲーション
パッドにより水拭きも一台で同時に可能に
カーペットを濡らさないよう独自の「パッドリフティングシステム」を備えた

 自動ゴミ収集機のクリーンベース付きで、公式ストア価格は15万9,800円。11月11日から公式ストア、認定販売店で販売する。

クリーンベース(自動ゴミ収集機)付きで、公式ストア価格は159,800円(税込)
オンライン登壇のアイロボット会長兼CEO コリン・アングル氏(左)とアイロボットジャパン 代表執行役員社長 挽野元氏(右)

アイロボットの世帯普及率は2023年には10%に到達見込み

アイロボットジャパン 代表執行役員社長 挽野元氏

 「ルンバ」は2022年で発売から20周年を迎える。発売当初から、円形のスタイルや段差センサーなどの特長を受け継ぎつつ、ナビゲーションや清掃能力などは向上させてきた。アイロボットジャパン 代表執行役員社長でアイロボット・コーポレーション アジア太平洋地区統括副社長の挽野元氏は、まず現在の日本市場でのビジネス状況を紹介した。

ルンバとブラーバの世帯普及率は2023年に10%に達する見込み

 「そろそろルンバ」というキャッチフレーズでキャンペーンされた普及価格帯の「ルンバi2」は前掃除機市場で販売台数2位、ロボット掃除機内での台数シェアでは24.7%を獲得。ロボット掃除機自体のカテゴリ別台数成長率も高く、ロボット掃除機内のアイロボットの台数シェアは2022年に72%となった。「ルンバ」と「ブラーバ」を合わせた世帯普及率は2022年9月に9%。まもなく10%に達しようとしている。

普及価格帯の「ルンバi2」は好調
2022年の掃除機市場でのアイロボットのシェア

未来を語る人間から「未来を作る」人間へ

アイロボット会長兼CEO コリン・アングル氏はオンラインで登壇

 会見にはアイロボット会長兼CEOのコリン・アングル氏もオンラインで登壇した。アングル氏は「ルンバの歴史を振り返ると圧倒される。もっとも強い思い出は2002年のこと。当時は家庭用ロボットはファンタジーだった。最初は記者たちも懐疑的だった。私が持参していたシリアルの袋の中身をカーペットの上に撒き散らし、ルンバに掃除させたら彼らの表情が徐々に変わった。それは私が未来を語る人間から未来を構築する人間へ移行した瞬間でもあった」と当時を振り返った。

最初のルンバを販売開始したときには多くの人が懐疑的だったという

 挽野氏は「私の好みのルンバは2019年に発表した『i7+』。これは私にとって大きなイベントであり、クリーンベース(自動ごみ収集機)を持った初めてのルンバだった。お客様からは非常にポジティブなフィードバックを頂いた」と述べると、コリン・アングル氏は「わたしたちは真のイノベーションを提供できた」と受け、続けて「iRobot OS」を紹介した。

ルンバでは初めてクリーンベースを付けた「ルンバ i7+」
2019年当時掲げていた目標が2023年世帯普及率10%達成だった

ロボット掃除機も、まずOSを選ぶ時代の「iRobot OS」

かつてはハードウェアが王様だったが時代は変わった

 アングル氏は「かつてはハードウェアが重要だった。しかし、それは全て変わった。今はまずOSを選ぶ。ロボットも同じ。かつてはハードウェアを選んだ。だが今はソフトウェアがより重要」と述べて、「iRobot Genius」からアップデートされた「iRobot OS」の機能を紹介した。

 アングル氏によれば「iRobot OS」によってルンバは「お客様が望む場所と時間で掃除をする。ペットの場合、環境をしっかり理解し、ボールやおもちゃを回避する。自動的にトイレ周辺はより頻繁に掃除するようになる。忙しい家族の場合、ルンバを使った掃除前に片付けをしなくてもルンバが動かせるように、80以上の異なる障害物を回避する。ロボットがリュックや靴、イヤフォンやヒモなどを踏みつけることなく掃除でき、食洗機周辺は重点的に掃除する。指定した部屋の清掃を省略したり、スマートスピーカーともより深く連携できるようになり、物体認識機能の向上において貢献できる」という。

ペットを飼育している家でもペットのおもちゃや排泄物を自動認識
散らかっている家でもそのままルンバを動かせる

 「iRobot Genius」と「iRobot OS」の違いについては、物体認識能力の向上、ナビゲーション能力の向上を上げた。また「単にルンバだけではなく、その他のスマートデバイスもつないでいきたいと考えている。名前の変更の背景には非常に大きな野心、AIの適用範囲の変更がある」と語った。

 カメラを持ったロボットがクラウド上にデータをアップロードすることに伴うプライバシーへの懸念については「ユーザーのデータプライバシーを尊重する」とアピール。第3者認証としてドイツのTUV認証と、TRUSTによるオンラインプライバシー認証を取得した。

 また、ロボットは情報をどんどん蓄えていくのではなく、理解するために用いるのだと述べた。物理的な部屋の体裁や床上の物体のかたちを認識するために暗号化してクラウドに上げ、それをロボットのナビゲーションや認識モデルの学習に用いる。

プライバシーを重視

 そして「エントリーレベルからハイエンドモデルまで、どれでも同じOSで動作する」と紹介し、最新モデル「ルンバ コンボ j7+」を紹介した。吸引による除塵型の掃除機能と、水拭き機能を1台に搭載した2in1モデル。カーペットは水拭きせずに両方の機能を搭載するには苦心があり、アングル氏は「モップを天面に持ってくる」というアプローチについて熱弁を振るった。

どのロボットでも同じ「iRobot OS」で動作する
モップでカーペットを濡らさないようにするため苦心したとのこと

生活に寄り添って機能が設定できる「iRobot OS」

アイロボットジャパン マーケティング本部 執行役員 山田毅氏

 アイロボットジャパン マーケティング本部 執行役員の山田毅氏は、「雑巾掛けができるルンバは日本に適した製品。水拭きロボットの『ブラーバ』シリーズは素足で生活し、床拭きが好きな日本では特に人気がある。しかしルンバに床拭き機能を搭載するならシンプルな機能でなければいけないと考えた。似たコンセプトの製品はあるが扱いが難しい。『ルンバ コンボ j7+』は一度で掃除が完了する」と語った。

ブラーバシリーズは日本では人気
独自のパッドリフティングシステムを搭載

 そして「世界初のパッドリフティングシステムでモップパッドを天面まで持ち上げるので、カーペットを濡らすことがない。クリーンベースは室内で程よい存在感でマッチする。さまざまな家庭環境に対応できるので操作はクリーンボタンを押すだけ。簡単操作ができるのはiRobot OSが搭載されているから」と続けた。

 「j7」シリーズから搭載された「PrecisionVisionナビゲーション」は家の中のさまざまな障害物を回避する。これは「1,300万台のコネクテッドロボットを持つiRobotならではの機能」であり、「ユーザー参加型でより賢くなっていく」という。特定エリアの掃除をスキップしたり、子供やペットによる誤作動を避ける「チャイルドペットロック」などの機能も備える。生活に寄り添って機能が設定できる点が「iRobot OS」の機能だという。なお米国では『ルンバ コンボ j7+』は既に先月から販売されており、好評とのこと。

散らかった床でもルンバが動かせる
「PrecisionVisionナビゲーション」が回避できるもの
ユーザーからのフィードバックで進化し続けるAI
さまざまな家庭環境に合わせた自動清掃が可能

カーペットぎりぎりまで水拭きし、決して濡らさない

アイロボットジャパン プロダクト&マーケティングストラテジー シニアマネージャー 山内洋氏

 「ルンバ コンボ j7+」機能の詳細はアイロボットジャパン プロダクト&マーケティングストラテジー シニアマネージャーの山内洋氏が紹介した。外形寸法はj7と全く同じ。天面の一部分を削ったかたちでパッドが搭載されているので、重量も同じとなっている。

 清掃機能は「j7+」のものを引き継いだ3段階クリーニングシステム+拭き掃除機能。ルンバ600シリーズに比べると10倍の吸引能力を持ち、1台で拭き掃除までできる掃除機となった。

3段階+拭き掃除で4段階のクリーニングシステムを搭載

 独自のモップパッド持ち上げ機能により、実際の家庭環境でも実用的な2In1を実現したと山内洋氏は語った。「カーペットぎりぎりまで水拭きしつつ、決して濡らすことがない高度な機能を実現した」とのこと。なおカーペットは段差2cm弱までは乗り越えられる。

カーペットぎりぎりまで拭き掃除し、カーペット上ではパッドを天面に上げる

 本体下面には超音波センサーが3つ搭載されており、カーペットに乗り上げたことを検知する。これにより、前面部分でカーペットに乗り上げても本体後部のモップ部分まで乗り上げることはないという。なお、畳は拭き掃除禁止エリアとして設定することを推奨する。

本体裏側のセンサーでカーペットに乗り上げたことを検知
タイヤも水拭き対応のため新しくなった

 ダスト容器と210mlの水タンクは一体型。パッドの水分量はアプリから調整できる。水がなくなった場合は通知がくるし、水拭きなしで掃除を行う。モップパッドの取り付け部は持ち上げられるので、交換のために本体を裏返す必要はない。本体に2枚付属し、別売りアクセサリも販売される。なお平均的な使い方では2回に1回くらいのペースで交換して洗浄するのが望ましいとのこと。

タンクとダスト容器は一体型。ダストボックスの後ろに水が入る
モップパッドは取り付け部が持ち上げるので着脱が簡単

 乾拭きには対応しておらず、使い捨てパッドもない。これは「ブラーバ」のユーザー調査によるもので、圧倒的に水拭きニーズが高かったことと、吸引清掃で乾拭き部分はほぼ代替可能と考えたため。

 クリーンベースは紙パックを内蔵。「最大1年間、ゴミ捨て要らず」だという。クリーンベースから本体に水を供給する機能はない。

クリーンベースは最大1年間ゴミ捨て要らず

 水拭き専用の「ブラーバ」シリーズは併売される。徹底的に清掃したい顧客には「j7」と「ブラーバ」の併用を、リビングに2台を並べておくスペースがない家庭には「コンボ j7+」をすすめるという。

ブラーバシリーズも併売
家庭環境に合わせて使い分けてほしいとのこと
会場にはルンバ20周年を振り返るパネル展示も
初代ルンバ