イベントレポート

VAIO Z Canvas米国モデル発表会がAdobe MAXに併せてロサンゼルスで開催

~全米のMicrosoft Storeで販売、海外販売へ再進出

Adobe MAX 2015の展示会場のVAIOブース

 VAIO株式会社は、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催中のAdobe MAX 2015にゴールドスポンサーとして参加しており、Community Pavilionと呼ばれる展示会場に出展中だ。その場で、同社はAdobe MAX 2015の初日となる現地時間の10月5日より販売を開始したVAIO Z Canvasの展示を行なっている。

 VAIO Z Canvasは米国での同社の総代理店となるtranscosmos America経由で、VAIOの米国サイトで直販されるほか、米Microsoftが運営するMicrosoft Store(オンラインストア、リテールストア)でも販売される。それに併せ、Adobe MAX 2015が行なわれているLos Angels Convention Center(LACC)に最も近いMicrosoft Store Westfield Century Cityで販売に関する記者会見も行なわれた。

ソニー/VAIO時代から続くAdobeとの良好な関係、今年もAdobe MAXに出展

 VAIOとAdobeとの関係は、実はかなり長い。古くは、ソニー時代のIEEE 1394ポートが搭載されたVAIOにPremiere Proをバンドルしていた時代があり、その後もPhotoshop ElementsやPremiere Elementsをバンドルするなど、常に良好な関係にあった。

 近年では、VAIOが搭載しているデジタイザペンを、両社協力の下、PhotoshopやPhotoshop Elementsなどで利用できるようにしたということもあった。このデジタイザペンは、イスラエルのN-Trig(現在はMicrosoftに買収されている)のタッチセンサーとデジタイザが一体になったものだ。ワコムのデジタイザは、Wintab APIというペンAPIにも対応しているのだが、N-Trigのデジタイザは当初はTablet APIというMicrosoftがWindows向けに規定したAPIだけに対応していたため、Wintab APIのみに対応していたAdobeのアプリケーションでは筆圧検知が効かないなどの課題があった。そこで、ソニーとAdobeが協力して対処した結果、AdobeアプリでTablet APIもサポートされるようになり、VAIOでも、Adobeアプリ上で筆圧検知などを利用することができるようになったのだ。

 VAIOがソニーから独立した後も、VAIOとAdobeの良好な関係は続いており、2014年のAdobe MAXには、後にVAIO Z Canvasとして正式発表された製品のプロトタイプを展示し、大きな注目を集めた。そして、今回も、その延長線上にある活動として、VAIOはAdobe MAX 2015のゴールドスポンサーになり、Adobe MAXの展示会場となるCommunity Pavilionに出展しており、今年はVAIO Z Canvasの製品版を展示したのだ。

展示されているVAIO Z Canvasの米国向けモデル
VAIO Z Canvasのカタログ
Adobe MAX 2015の展示会場、会場には多数のクリエイターが詰めかけている

Adobe MAXで揉まれ、より完成度が高くなったVAIO Z Canvas

 既にVAIOは、8月12日に東京で行なった記者会見で、VAIO Z Canvasを米国で発売する予定であることを明らかにしていたが、Adobe MAX 2015の実質的な初日となる10月5日に、Microsoft Store Westfield Century Cityにおいても記者会見を開催した。

 会見に登壇したのは、VAIO株式会社執行役員の平内優氏、transcosmos Americaのタイ・タカヤナギ氏、Microsoft OEM部門本部長のビル・マニオン氏。米国でVAIOの総代理店となるのは、日本のトランスコスモス株式会社の米国法人となるtranscosmos America。transcosmos Americaは、同社が運営するVAIOの米国向けサイトを通じた直販、そしてMicrosoftのリテールショップとなるMicrosoft Storeを通じてWeb販売とリテールでの販売を行なう。その発売日がこの10月5日となる。

 会見では冒頭で、transcosmos Americaのタカヤナギ氏が、VAIO Z Canvasについての概要を説明した。タカヤナギ氏は「VAIOが米国にもう1度戻ってくるということは記念すべき事。Adobeによれば、全世界に800万人のクリエイターがおり、その多くが米国にいる。VAIO Z Canvasはそのクリエイターに向けて、GT3eを内蔵した45WのCore i7、97%のAdobe RGBをカバーする液晶、1,024段階筆圧検知のペンなどを搭載しており、まさにクリエイター向けの仕様と言える」と述べ、VAIOの米国再上陸を歓迎した。

 続いて登壇したVAIOの平内氏は、今回実現した米国での発売や、ブラジルのトップPCメーカーであるポジティーボが生産するVAIO PCの販売といった海外事業の開拓を担当してきた。平内氏は「VAIO Z Canvasは2014年のAdobe MAXで初めて試作機を公開し、その時に頂いたフィードバックを製品にも取り込んだ。その意味で、米国発と言っても過言ではない製品。VAIOが海外に再進出するのには2つの課題があった。1つは販売チャネルで、もう1つがサポート。そこで、販売とサポートで実績があったtranscosmos Americaと代理店契約を結び、さらにMicrosoft様のご協力でMicrosoft Storeでの販売が実現できたことは嬉しく思っている」と述べた。

 最後にMicrosoftのマニオン氏が登壇し「MicrosoftとVAIOは長年の関係がある。そしてVAIOにはブランドがあるだけでなく、このVAIO Z Canvasのような強力な製品を持っていることを高く評価している。そのVAIOが、米国市場に戻ってくるにあたり、弊社ストアで販売できるということを嬉しく思う」と語った。

transcosmos Americaのタイ・タカヤナギ氏がVAIO Z Canvasを手に持って製品説明
VAIO株式会社執行役員の平内優氏はVAIO Z Canvasを米国で販売するに至った経緯を説明
Microsoft OEM部門本部長のビル・マニオン氏
カリフォルニア州ロサンゼルスのショッピングモールWestfield Century CityににあるMicrosoft Store Westfield Century City
Microsoft StoreはこのようにSurface製品やその周辺機器などが販売されている、Windowsプラットフォームの総合的なストアだ
もちろんVAIO以外のOEMメーカーのマシンも販売されている
10月5日はVAIO Z Canvas販売開始初日だったこともあり、このような特別な看板やサイネージ表示がされていた

細かな部分は米国向けになっているVAIO Z Canvas

 今回VAIOの米国サイトとMicrosoft Storeで販売が開始されたのは、日本で販売されているVAIO Z Canvasと基本的には同じモデルだが、若干の差異がある。CPUはCore i7-4770HQ、ディスプレイは12.3型 2,560x1,704ドットで、16GBメモリ+1TB SSD、16GBメモリ+521GB SSD、8GBメモリ+256GB SSDという3つの選択肢の中から選ぶことができるのは同様になっている。

 違いは、OSがWindows 10 Pro英語版になっていることと、MicrosoftがSignature Editionと呼んでいる、PCメーカーによる独自ソフトウェアが搭載されていないシンプルな状態で販売されている点だ。また、細かい点ではキーボードの無線関連の認証がFCCのみとなっており、日本向けのいわゆる技適マークなどはない点、標準のキーボードが英語配列になっていることも違いになる。

 価格は8GBメモリ+256GB SSDのモデルが2,199ドル、16GBメモリ+512GB SSDが2,499ドル、16GBメモリ+1TB SSDが3,099ドルとなっている。

 VAIO平内氏によれば、Microsoft Storeのうち約110店で展示され実際に触ってから購入できるようになり、残りのお店では注文をできるようになる予定だということだった。

Microsoft Storeで販売されているVAIO Z Canvas
ワイヤレスキーボードの規制表示部分。米国の規制に対するマークが表示されている
Microsoft Storeでもかなり期待の製品として扱われているようだ
今回取材したMicrosoft Store Westfield Century Cityでは3台の展示機が表示されていた
価格は2,199ドルからで、3つのモデルが用意
米国モデルでのキーボードはもちろん英語配列のキーボード

著名クリエイターレイス・バード氏による実演

 記者会見終了後には、米国の著名なクリエイターであるレイス・バード氏による、VAIO Z Canvasを利用した実演が行なわれた。バード氏は、VAIO Duo 13の時代から、VAIOのデジタイザペンとPhotoshopを利用した創作活動を行なっており、Adobe MAXにもPhotoshopのセッションなどに講師として招かれている。

 今回は、VAIO Z Canvasを利用してモンスターのCGを、1時間半で仕上げるという実演を行なった。バード氏は、左側にVAIO Z Canvasのキーボードを、右側にVAIO Z Canvasの本体を置き、左手でタッチパッドやキーボードのショートカットを操作しながら、右手のペンで素早くイラストを描き上げていくという形で作業を進めた。この左手でPhotoshopのショートカットを操作しながら、ペンで書くというのは、VAIO Z Canvasの使い方のイメージそのままだが、実際これはバード氏のフィードバックにも基づくのだという。

 ほぼゼロから書き始めて、約1時間半で画像が完成すると、Microsoft Storeにいたスタッフや顧客から拍手が起こった。

VAIO Z CanvasでCGの描画をライブで行うレイス・バード氏。左手の位置に注目
スタート段階ではほとんど輪郭ぐらいしかない状態からスタートした
徐々に描き足されていく
左手はパッドやキーボードショートカットを活用しながら操作していく様子がとてもテンポよかった
どんどんリアルになっていくモンスター。目などを丁寧にペンで描いていく
肌は、バード氏があらかじめ設定したおいたブラシなどを利用して作業していく
最後にバード氏のシグネチャーを入れて完成
完成したCGをVAIO Z Canvas上で見る

(笠原 一輝)