イベントレポート
【詳報】Intel、ボタンサイズのウエアラブル用モジュール「Curie」
~ファッションブランドOakleyとの提携を発表
(2015/1/8 09:00)
IntelのCEO ブライアン・クルザニッチ氏は、1月6日~9日(現地時間)米ラスベガス市で行なわれているInternational CESの基調講演に登壇し、2015年のコンシューマ向け製品のビジョンや新製品を発表した。
2014年のCESの基調講演では、「Edison(エジソン)」と呼ばれるIoT(Internet of Things)向けのSDカード大のボードを発表し、2014年の後半に出荷開始したが、今年(2015年)はボタンサイズにまで小型化したウェアラブル機器用のモジュール「Curie(キュリー)を発表した。
Curieは特定用途向けの「Quark SE SoC」、384KBのフラッシュメモリ/80KBのSRAM、DSPとよびセンサーハブ、Bluetooth LE、各種センサー、バッテリ充電回路などをボタンサイズのモジュールに集約しており、オープンソースのリアルタイムOSを利用してプログラムを走らせることが可能だ。このCurieは今年の後半に投入する予定。
同時にクルザニッチ氏は、サングラス、ゴーグル、アパレルなどのブランドとして知られているOakley(オークリー)との提携を発表し、ウェアラブル機器の開発で協力していくことを明らかにした。IntelはすでにFossilなどの一般商社向けブランドとの提携しているが、Oakleyとの提携はより、IoTやウェアラブル市場におけるIntelのプレゼンスを上げる戦略を加速していくものとなる。
Marriottが所有する複数ブランドのホテルで無線給電の実証実験が行なわれる
今回の基調講演でクルザニッチ氏は、Computing Unleashed(次世代のコンピューティング体験)、Intelligence Everywhere(あらゆるものにインテリジェンスを提供)、The Wearable Revolution(ウェアラブル革命)という3つを大きなテーマに掲げ、それぞれのテーマ毎にIntelのビジョンやソリューションなどを説明した。
最初に説明したのは、Computing Unleashed(次世代のコンピューティング体験)で同社の本業とも言えるPC向けの新しいソリューション。この中でクルザニッチ氏はDellの「Venue 8 7000」(別記事参照)などのRealSense対応のデバイスを紹介し、RealSenseをデモ。RealSenseの機能を利用して、撮影後にピントの位置を変えたり、ジェスチャーでPCを操作した。
「RealSenseを搭載したPCやタブレットは既にいくつかのベンダーから発表、販売が開始されているが、この春にはさらに製品が増えるだろう」と述べ、Lenovo、HP、Dell、ASUS、AcerなどのグローバルなPCブランドに加え、富士通やNECパーソナルコンピュータなどの日本のメーカーの会社名も挙げた。
また、WiGigや標準化団体A4WPによる無線給電(Rezence)を紹介し、「世界的なホテルブランドのMarriottと提携し、世界各地にあるホテルでRezenceの実証実験を行なう。さらにその後はHilton、サンフランシスコ国際空港、Jaguar、LandRoverなどとも協業し、無線給電の普及を目指す」と述べ、Rezenceの普及を目指すとした。
このほか、HPのプリンタ/パーソナル システム事業担当上席副社長 ディオン・ワイズラー氏を壇上に呼び、同社が今後発表する予定のHP Multi Jet Fusionという3Dプリンタに、IntelのCore i7が採用される予定であることなどが語られた。
RealSenseの技術を利用してAscending Technologiesのドローンをデモ
次いでクルザニッチ氏はIntelligence Everywhere(あらゆるものにインテリジェンスを提供)のテーマへと話を進めた。このテーマにおいては、Intel Security(Intelが買収したMcAfeeが社名変更した会社)の技術などを利用したデモが行なわれた。
最初に行なわれたのは、顔認識によりドアの鍵を開ける技術で、顔認証だけでドアが開く様子がデモされた。さらに、Intelがロボット技術で、iRobot(掃除ロボット「ルンバ」のメーカー)と今後協業していくことを明らかにし、RealSenseを活用していくことを検討していることなどが語られた。
そして、Ascending Technologiesが開発したRealSenceを利用したドローン(無人マルチコプター)が紹介され、RealSenseの技術を利用することで、人や同じドローンにに近づいたら自動で避けたり、障害物を避けて自動で飛べる様子などがデモされた。
クルザニッチ氏は「ロボットやドローンで重要なことは“安全”であり、それをIntelはさまざまな形で提供できる。今後はこうした技術を農業や医療などさまざまな形で発展させていくことができる」と述べ、こうしたRealSense、Intel Securityの技術を、PCやタブレットなどのコンピューティングユーセージだけでなく、日常用途にも活用させていきたいと説明した。
ボタンサイズにすべてを詰め込んだCurieを発表、出荷予定は今年の後半に
そして、話は3つ目のテーマとしてThe Wearable Revolution(ウェアラブル革命)へ移っていった。Intelは2014年のCESで、ウェアラブル市場へと参入することを大々的に表明し、その後ブレスレットのMICA、SMS Audioの脈拍が測れるBluetoothヘッドセットなどいくつかの製品がリリースされた。また、SDカード大のコンピュータとなるEdisonは、SDカードサイズからは若干大きくなったものの、2014年の後半から市場に出回っている状態だ。
今回は、ウェアラブルにも利用可能な「Curie」と呼ばれるボタンサイズのハードウェアモジュールを紹介した。IntelはこうしたIoT向けのブランドには、歴史上著名な科学者の名前をブランドにしており、Arduino互換の開発ボードは「Galileo」(地動説を提唱したガリレオ・ガリレイ)、IoT向け小型ボードは「Edison」(19世紀のアメリカの発明家トーマス・エジソン)だった。今回は、ポーランド出身の科学者で19世紀にフランスで活躍し、放射線の研究でノーベル賞を受賞、日本ではキュリー夫人として知られるマリー・キュリーから来ている。
Curieには、Quark SE SoCというIntelが特定用途のために開発した32bit CPUを内蔵しているSoCが搭載されており、384KBのフラッシュメモリと80KBのSRAM、DSPやセンサーハブ、Bluetooth LE、モーションセンサーなど各種センサー、バッテリ充電用の回路などを内包、それら全てをボタンサイズに収めた。オープンソースのリアルタイムOSも入っており、Intelから提供される「IQ Software Kit」開発キットを利用することで、アプリケーションの開発が可能になるという。Curieは今年後半に出荷が予定されている。
続いて、2014年発表したSMS AudioやFOSSILといった、これまでITとは縁が薄かったコンシューマ向けのブランドとの提携が成功を収めたことに触れ、今後もそうした提携を強化するとした。その具体例として、スポーツ選手がよく利用していることで知られているサングラスのメーカーOakleyとの提携を明らかにした。壇上にはOakley CEOのコリン・バーデン氏が呼ばれ、今後スポーツ選手向けのウェアラブル機器を開発し、今年の後半から提供開始する予定であることが明らかにされた。
また、盲目などのハンディキャップがある人向けに、RealSenseを利用して周囲の様子を伝える上着の技術や、2014年Intelが行なった“Make it Wearable チャレンジ”というIoT機器のコンテストで上位になった飛行型ウェアラブルカメラなどをデモした。
さらに、Intelが女性と、英語でマイノリティと表現される少数派の雇用促進を業界を挙げて行なう取り組みを紹介した。クルザニッチ氏によればこの取り組みに対して、Intelは3億ドルの投資を行なっていくという。
そして講演の最後に、クルザニッチ氏の先輩に当たり、かつてのIntelの社長兼CEOで、現在は名誉会長になっているゴードン・ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」(半導体の性能が18カ月で2倍になるという法則)が、1965年に提唱されてから50年になることを祝福するビデオを流した。この中には、ムーア氏自身が登場し、「法則を提唱した時にはまさかこんなに長い間それが実現し続けられるとは思っていなかった」などと語った。
最後にクルザニッチ氏は「1995年はデジタル業界にとって記念すべき年になったが、2015年もそれに匹敵する年になるかもしれない」と述べ、同社がこれからもウェアラブルなどに力を入れていくのだと強調して、基調講演を締めくくった。