【IFA 2012レポート】
ソニー、Android 4.0搭載「Xperia Tablet S」を発表
~Sony Tabletの後継

ソニー株式会社代表執行役社長兼CEO平井一夫氏

会期:8月31日~9月5日(現地時間)
会場:Messe Berlin



 ソニーはIFA 2012の開幕を前に記者会見を開催し、いくつかの新製品に関する発表を行なった。同社のPCであるVAIOシリーズの新製品に関しては別記事で説明した通り。本記事ではそれ以外の新製品、特にXperiaブランドで発表されたタブレットとスマートフォンに関してお伝えする。

 今回最大の発表は、従来は「Sony Tablet」の名称で呼ばれていたソニーのタブレットがXperiaブランドに変更された点。9.4型の液晶ディスプレイを搭載した第2世代の製品が、「Xperia Tablet S」として発表された。

 Xperia Tablet SはSoCをTegra 3へと変更するなどハードウェア周りの強化だけでなく、従来製品にはなかった周辺機器を多く用意するなどユーザー体験の向上を目指した。また、ソフトウェアでXperiaとの一体感を出すことで、Xperiaユーザーの取り込みを目指すなど、よりカジュアルなユーザー層に振った製品に仕上がっている。

 また、ソニーはスマートフォンでもXperiaの最新グローバルモデルとして、Xperia T/TX、Xperia V、Xperia Jの各モデルを展示し、今後順次投入していくことを明らかにした。

●SoCはTegra 3へ、ストレージの選択肢に64GBが追加されたXperia Tablet S

 記者会見に登場したソニー株式会社代表執行役社長兼CEO 平井一夫氏は「モバイル機器はソニーのさまざまなサービスのゲートウェイとして重要な位置を占めている。今年(2012年)初頭に行なったソニーモバイルコミュニケーションズ事業本部の統合は、弊社にとって大きなステップとなった。今年ソニーブランドとして初めてXperia NXを投入し、コンシューマがソニーのサービスをいつでもどこでも楽しめる環境を作り上げた。そして、今日ここで、Xperiaブランドがタブレットのエリアにも拡大されることを発表したい」と述べた。

ソニーモバイルコミュニケーションズの統合により、Xperiaはソニーにとってより重要なブランドになった平井氏は、Xperiaシリーズの新しい仲間としてXperia Tablet Sを発表

 Xperia Tablet Sは、今からちょうど1年前に発表されたSony Tablet S seriesの後継となる製品。具体的には以下のようなスペックになっている。

【表1】Xperia Tablet SとSony Tablet S seriesのスペック上の違い(ソニーヨーロッパ発表の資料と現地での取材を基に筆者作成)
ブランド名Xperia Tablet SSony Tablet S series
OS初期導入OSAndroid 4.0(Ice Cream Sandwich)Android 3.1(Honeycomb)
アップグレード可能なOSAndroid 4.1(Jerry Bean)対応予定Android 4.0(ICS)まで公表済み、以降未発表
SoCブランド名NVIDIA Tegra3NVIDIA Tegra2
CPU4コア2コア
メインメモリ1GB1GB
ストレージ64/32/16GB32/16GB
液晶9.4型(1,280x800ドット)9.4型(1,280x800ドット)
無線WWANオプション(3G)オプション(3G)
Wi-FiIEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11b/g/n
Bluetooth3.02.1
カメラフロント100万画素VGA
リア800万画素500万画素
I/Oポート新端子-
microUSB-A+B
SDカードスロット
内蔵マイク
ヘッドフォン出力
スピーカーステレオステレオ
センサー環境光センサー
ジャイロセンサー
コンパス
加速度センサー
GPS
バッテリー公称駆動時間10時間5時間
バッテリー容量6,000mAh5,000mAh
サイズ240mm241.2mm
174.2mm174.3mm
厚さ18.8mm10.1mm
厚さ211.85mm20.6mm
重量570g(Wi-Fi)/585g(3G)598g(Wi-Fi)

 強化点で目立つ点は、SoCがNVIDIAのTegra 2からTegra 3へと変更された点。Tegra 3は、Tegra 2に比べてARMプロセッサのコアがデュアルからクアッドになり、GPUも8エンジンから12エンジンに増強されるなど、CPUもGPUも演算性能が強化されている。一方で、クアッドコアに加えて忍者コアと呼ばれる低クロックかつ低消費電力で動く5つ目のコアが用意されており、省電力になっているのが特徴だ。

 従来製品ではストレージとして16GBと32GBのモデルのみとなっていたが、Xperia Tablet Sでは64GBのモデルも用意された。ソニーヨーロッパの発表によれば、16GB/Wi-Fiのみモデルの店頭での想定小売価格は399ユーロ(日本円で約39,800円)だが、32GBモデルは+100ユーロ、64GBはさらに+100ユーロ程度の価格になることが想定されているという。

 無線関連は、従来モデルは2.4GHzのIEEE 802.11b/g/n+Bluetooth 2.1となっていたが、Xperia Tablet Sでは2.4GHz/5GHz両対応のIEEE 802.11a/b/g/n+Bluetooth 3.0となっている。なお、オプションで3Gモデムが入った製品も用意されるが、日本で販売されるモデルにも入るのかどうかは現時点ではわからない。

 カメラも大きな強化点の1つだ。従来製品では前面カメラがVGA、背面カメラが500万画素だったが、Xperia Tablet Sでは前面カメラは100万画素、背面カメラは800万画素になった。

●従来よりも薄く軽く、なのにバッテリ容量は増えて駆動時間も倍に

 Xperia Tablet Sのデザインは、従来モデルのそれを継承しつつも、ブラッシュアップする形となっている。従来モデルの底面上部がやや膨らみ、ユーザーが落としにくいデザインは、Xperia Tablet Sでも継承されている。ただし、全体的な厚さは薄くなっており、従来モデルが10.1~20.6mmだったのに対して、8.8mm~11.85mmと、最厚部で比較するとかなり薄くなっている。

 これを実現できた要因の1つは、底面の素材が従来製品ではプラスチックによる成形だったのに対して、Xperia Tablet Sではアルミニウムに変更されたこと。ただ、素材をアルミにすると薄さは実現できるのだが、素材の重さは増えてしまう。そのため、その他の部分で軽量化を図っており、同じWi-Fiモデルの比較で、重量は598gから570gへと減っている。

 もう1つデザイン面での大きな変化は、IPX4の防滴機能が追加されていること。各コネクタなどには蓋が追加されており、飛沫程度の水が当たったぐらいでは浸水しないようになっている。実際ソニーブースでは流水をXperia Tablet Sに当てても壊れないというデモを実地していた。

 バッテリ駆動時間は、従来モデルがWeb閲覧で公称5時間とされていたのに対して、Xperia Tablet Sでは公称10時間と倍に伸びている。この背景には、バッテリそのものが従来モデルの5,000mAhから6,000mAhへと増やされていることと、システム全体で消費電力が下がっていることなどが寄与しているものと考えられる。

 なお、初期導入されているOSはICS(Ice Cream Sandwich)ことAndroid 4.0になっている。ソニーの説明員によれば、しかるべき時期にJerry BeanことAndroid 4.1へバージョンアップすべく鋭意努力中とのことだったので、時期に関しては未定だが、安心して購入することができるだろう。

Xperia Tablet S従来モデルに比べて薄く軽くなっている持ちやすいように裏面に突起があるデザインは継続、底面の素材はアルミニウムに変更されている
スピーカーは裏面にあるが、かなり開口部が取ってあるので、タブレットにしてはかなりいい音がでるIPX4の防滴を実現しているので、SDカードスロットなどには蓋がついているお約束の防滴性能デモ。見ていてちょっとドキドキするが、もちろん問題なく動作していた

●カバーキーボードやドックスピーカーなど多数の新しい周辺機器

 もう1つの大きな変化は、従来製品では充電は専用のACアダプタ、PCとの接続はMicro USB(A端子+B端子の両方の機能)という形になっていたのを、1つのマルチポートケーブルにまとめたことだ。このため、充電もPCとの同期も1本のケーブルで行なうことができるようになった。また、マルチポートケーブルを使った、HDMI出力も追加されている。ソニーの説明員によれば、USB充電にも対応しているとのことで、時間はかかるがPCからでも充電できるというのは嬉しい改善点と言える。

 この新しいマルチポートに併せて、対応周辺機器を多数投入する。IT系のユーザーであれば気になるのは、キーボードが内蔵されているカバーキーボードだろう。カバーの内側にキーボードが用意されており、マルチポートに接続することでキーボード機能が利用できる。

 ただし、キースイッチがないので、打鍵感は全くない。どちらかと言えばソフトウェアキーボードを外に追い出したという感覚のキーボードで、長時間にわたって高速に入力するためのキーボードというよりは、ソフトウェアキーボードだと画面の大部分をソフトウェアキーボードが占めてしまって見えにくくなるのでその代替とするという趣のキーボードだ。

 この他にも、カラフルなカバーやレザーケースなど、カバーキーボード以外の純正ケースも用意されている。

 また、クレードルやスタンドも複数用意。標準的なクレードルのほか、回転式のドッキングスタンド、電気的な機構は何も無いものの本体のデザインとマッチしたシンプルなスタンド、さらには10W+10Wのハイパワーアンプを内蔵したドックスピーカーなど多彩な周辺機器が用意されている。これらの想定価格は以下の通り。

【表2】周辺機器の小売りにおける想定価格(単位:ユーロ)
カバーキーボード99
レザーカバー79
カラーカバー59
クレイドル39
回転スタンド99
ドックスピーカー129
スタンド29

 なお、本体および周辺機器の日本における販売時期、スペック、価格などは一切未定ということだったので、近日中と思われる正式発表を待ちたいところだ。

マルチポートケーブルの接続部分本体の下部に見えるのが新しいマルチポートケーブルHDMIへ出力するオプションケーブルも用意されており、このようにTVに出力したりも可能
カバーキーボード。通常はカバーとして使うが、このように本体を立てるとキーボードとして利用できる。ただし、キートップなどはないため、打鍵感はない。このため、ソフトウェアキーボードの替わりというとらえ方が正しい複数のカラーバリエーションが用意されているカバー
回転スタンドは、本体をがっちり固定して回転することができる。机の上で電子書籍などを読むときなどに便利電気的機構はないけど、本体をがっちりホールドできるスタンド。フィット感は純正品ならではドックスピーカーは、専用のリモコンを利用してコンテンツの再生が可能になる。寝室とかにおいておくと、便利そうだ。ドックスピーカーでコンテンツを再生する時専用のUIも用意されている

●XperiaのグローバルモデルとしてT、V、Jの3製品が発表される

 また、Xperia Tablet Sの発表に併せて、ヨーロッパを含めた全世界で展開するスマートフォンXperiaグローバルモデルの新製品を発表した。Xperia T、V、Jの3機種がそれで、あわせてTの派生品としてTXも発表された。OSはいずれもAndroid 4.0。

【表3】IFAで発表されたXperiaのスペック(ソニーモバイルコミュニケーションズが発表した資料より筆者作成)
 Xperia TXperia VXperia J
カラーブラックブラックブラック
シルバーピンクゴールド
ホワイトホワイトピンク
  ホワイト
SoCQualcomm MSM8260(DC、1.5GHz)Qualcomm MSM8960(DC、1.5GHz)Qualcomm MSM7227A(1GHz)
メモリ最大16GB最大8GB最大4GB
メモリカードmicroSDHC(最大32GB)microSDHC(最大32GB)microSDHC(最大32GB)
背面カメラ1,300万画素1,300万画素500万画素
液晶パネル4.55型HD(1,280x720ドット)4.3型HD(1,280x720ドット)4型FWVGA(480x854ドット)
高画質化エンジンモバイルBRAVIAエンジンモバイルBRAVIAエンジン2-
ネットワークLTE-Band I, Band III, Band V, Band VII-
3GHSPA+ 850 (Band V), 900 (Band VIII), 1700 (Band IV), 1900 (Band II), 2100 (Band I)HSPA+ 850 (Band V), 900 (Band VIII), 2100 (Band I)HSPA 900 (Band VIII), 2100 (Band I) or HSPA 850 (Band V), 1900 (Band II), 2100 (Band I)
GMSEDGE 850, 900, 1800, 1900EDGE 850, 900, 1800, 1900GPRS/EDGE 850, 900, 1800, 1900
NFC-
重量139g120g124g
サイズ(幅×奥行き×高さ)129.4x67.3x9.35mm129x65x10.7mm124.3x61.2x9.2mm

 Xperia Tはハイスペックなエンターテインメント向けモデルという位置づけの製品。1,300万画素の背面カメラ、ソニーの液晶TVの技術を利用して動画再生を高画質化するモバイルBRAVIAエンジンなどを搭載しており、SoCはQualcomm MSM8260(デュアルコア、1.5GHz)となる。液晶は4.55型HDパネル。通信はHSPA+に対応。NFCにも対応しており、スマートタグと呼ばれるNFCにより、特定の機能などを呼び出せる。

 Xperia TXは、Xperia Tの派生品という位置づけだが、実際には日本で販売されているXperia GXのNFC対応版となり、グローバルモデルとしてピンクがカラーバリエーションとして追加される。

 Xperia Vは、Xperia Arcのデザインを継承するソニーモバイルのハイエンドモデルという位置づけの製品で、4.3型HDパネル、SoCはQualcomm MSM8960(デュアルコア、1.5GHz)というハイスペックの製品となる。モバイルBRAVIAエンジン2というより進化したものを搭載しており、従来よりもコントラストを正確に再現できるようになっているという。また、複数の写真から最適な写真を作るHDRの機能にも対応しているが、他社製品が複数枚撮影した写真から最高の1枚を取り出すのに対して、Xperia Vでは複数の写真から最高のシーンを合成してよりよい写真を作り出す仕組みになっている。また、IPX5/7の防水、IPX5Xの防塵機能にも対応している。

 Xperia Jはローエンド向けの製品だが、エンターテインメントに向いた製品として位置づけられており、SoCはQualcomm MSM7227A(1GHz)、液晶は4型FWVGAになっているなど、スペック的には最高峰ではないが、SNSでの情報アップデート時にはLEDが光って知らせるなどSNS向けの機能などが充実している。

 また、ソニーは、今回のXperiaシリーズ、およびXperia Tablet Sから、統一されたソニーのエンターテインメントソフトウェアを共通して搭載している。これにより、スマートフォンでも、タブレットでも共通したエンターテイメント体験を提供できるとソニーでは説明しており、そうしたユーザー体験で先行するAppleを追い上げたいと考えているものと思われる。

 なお、今回発表されたXperiaのグローバルモデルは、日本市場向けの機能(おサイフケータイやワンセグ)などが実装されていないことからもわかるように、すぐには投入されない可能性が高い。ただし、過去にはXperia Arcのようにグローバルモデルがそのまま日本でキャリアから販売された例も無いわけではないので、Xperia Vなどのフラッグシップモデルが日本で販売される可能性ゼロないだろう。そうした意味では、日本のキャリアの秋冬モデルの発表を待ちたいところだ。

Xperia Tはエンターテインメント向けモデル。SoCはQualcomm MSM8260(デュアルコア、1.5GHz)、液晶は4.55型HDパネル、HSPA+、NFCに対応Xperia Jは普及価格帯向けのモデル、SoCはQualcomm MSM7227A(1GHz)、液晶は4型FWVGAXperia TXは日本のXperia GXのNFC対応版

(2012年 8月 30日)

[Reported by 笠原 一輝]