【Intelネットブック/タブレット記者会見編】
2011年後半から32nmプロセスのAtomを投入
Intelは、COMPUTEXの会場に隣接するホテルで記者会見を開催し、同社のネットブック、タブレット向けプロセッサに関する戦略などについての説明した。この中でIntelは同社が現在タブレットやネットブック向けに開発しているプロセッサや、OSへの対応状況などに関する説明を行なった。
●ムーアの法則を前倒し、他社の差別化を図るAtomIntel 副社長 兼 ネットブック&タブレット製品 事業部長 ダグラス・デイビス氏 |
冒頭でIntel 副社長 兼 ネットブック&タブレット製品 事業部長 ダグラス・デイビス氏は「パーソナライズされたデバイスを持ち歩くコンパニオンコンピューティングの時代がやってくる。現在はまだスタート段階に過ぎない」と述べ、スマートフォンやタブレットなどを持ち歩き、それらを活用して生活を豊かにしていく時代がすぐそこまで来ているとした。
デービス氏は「そうした時代にはユーザーはお仕着せのデバイスでは満足できない。男性と女性が同じ服を着たりすることが無いように、皆が同じ車では満足しないように、そうしたコンパニオンデバイスにもさまざまな種類のデバイスが必要になる」と述べ、デバイスにもさまざまなフォームファクタ、OS、アプリケーションソフトウェアが選択できるようになっている方が望ましいとした。デービス氏は、そうしたユーザーのニーズに応えるためには、「シリコン、プラットフォーム、OS、アプリケーションの各層で選択肢を検討していく必要がある」と複数のレイヤーでチョイスを提供すべきだと指摘した。
コンパニオンコンピューティングはよりパーソナルになる必要がある | 形状、OSの選択、アプリケーションの選択などがユーザーの個々人のニーズに応じてできる必要がある | 現時点では長い道のりの入り口にすぎない |
皆が同じ服だと奇妙な印象を受ける。コンパニオンデバイスもそれと一緒だとデービス氏 | それぞれ異なるユーザー体験を実現するにはシリコン、プラットフォーム、OS、アプリケーションの各層で選択肢を提案する必要がある |
シリコンのレイヤーでは、Intelの強みとしてムーアの法則をさらに強力に推し進めていくことをアピールした。ムーアの法則とは、2年に1度のペースで半導体の最小単位であるトランジスタを微細化することで、1つの半導体によりたくさんのトランジスタを詰め込めるようになることで、これに従って半導体メーカーは新しい製造装置などを導入することで、半導体の性能を大幅に引き上げることができる。
現在Atomプロセッサの製造は、最先端プロセスから1世代前のプロセスルールを利用している。例えばメインストリームPC用のプロセッサを製造するには32nmプロセスルールを利用しているのに対して、Atomには45nmプロセスルールを採用している。これを、2014年に導入する予定の14nmプロセスルールに向けて、差を縮めていくことを、5月のアナリスト向けの説明会において発表した。
デービス氏は「Atomのプロセスルールはムーアの法則を超える進化を遂げ、性能向上と消費電力の低下を同時に実現していく」と述べ、今後はIntelが他社より進んだプロセスルールを製造できることを武器にAtomの製品展開を早めていくと説明した。
そして現行の45nmプロセスにも、ネットブック向けのAtom Nシリーズに新製品のAtom N435を投入したことを明らかにした。Atom N435は発展途上国向けのネットブック向け製品となり、ASUSのEee PC X101などの低価格ネットブックなどに搭載されることになると述べた。
Atomプロセッサではムーアの法則を超えて製品を投入していく | IntelのAtomプロセッサのコア開発ロードマップ。2014年には14nmプロセスルールでPC向けのプロセッサに追いつくことになる |
Atom N435という発展途上国向けの製品を投入する | デービス氏が手に持つのはASUSがCOMPUTEX前日に発表したEee PC X101 |
●32nmプロセスルールの製品を今年後半から来年にかけて投入
デービス氏は、Atomプロセッサの出荷数が、今四半期の終わりに累計で1億台に達したことを明らかにし、その達成に大きな貢献を行なった台湾のOEMメーカーやODMメーカーの関係者に感謝した。
そして、次にプラットフォームのレイヤーに話を移し、Atom Z670+SM35 Expressとして発表済みのOak Trailプラットフォームに関して話を移した。「Oak Trailでは複数のOSからベンダーが好きな製品を選択することができる。すでに複数のOEMメーカーから製品が発表されている」と述べ、Oak Trailが搭載されたスレート端末を公開した。
その中には、富士通、東芝などの日本メーカーの製品が含まれていたほか、この四半期で新たに対応されたAndroid 3.0(Honeycomb)搭載のデバイスなどが紹介され、日本の富士通が企業向けに販売しているスレート型の端末も紹介された。
続いて、話題は32nmプロセスルールで製造される次世代のプラットフォームに関しても話がおよび、今年(2011年)後半に出荷が予定されているネットブック向けのCedar Trail、来年(2012年)の初頭に出荷が予定されいるSoCのMedfieldの紹介が行なわれた。「Cedar Trailは32nmプロセスルールで製造されることにより、性能向上と消費電力の低減が実現される。特にグラフィックスはN455に比べて2倍の性能向上を実現し、TDPも55%ほど低く、より薄型のネットブックを製造することができる」とし、同社が開発コードネームでKeeley Lake(キーリーレイク)と呼ぶ薄さ19mmのネットブックのリファレンスデザインを公開し、Cedar Trailを採用することでこうした製品を製造できるとアピールした。
また、同じく32nmプロセスルールで製造されるスマートフォンやタブレット向けの製品となるMedfield(メッドフィールド)について「Medfieldは競合製品と比べてスタンバイパワーも低いだけでなく、性能が高いのにアクティブパワーを同じレベルに抑えている」と述べ、Medfieldでタブレット端末を製造するメリットを訴えた。一方Windowsをサポートする予定のClover Trailについては「翌年リリースする予定だ」とだけ述べ、詳しく触れることは無かった。
Atomプロセッサの累計1億個出荷を今四半期に実現 | Atom Z670+SM35 Express(Oak Trail)はすでに多数のOEM/ODMを獲得 | Oak Trailを搭載したIAタブレット |
32nm世代にはCedar TrailとMedfieldの2製品 | Cedar Trailを説明するスライド |
Keeley Lake(キーリーレイク、開発コードネーム)。薄さ19mmのネットブックのリファレンスデザイン | |
Cedar Trailを搭載したネットブック。CPUコアはデュアル(HT対応で論理4コア)で、1.5GHzで駆動されていた |
デービス氏が公開したのはMedfieldのウェハ | Medfieldの消費電力は他社製品と比較しても十分競争力がある |
●Android対応には力を入れる
会見の後半では、ソフトウェアビジネスを担当するIntel ソフトウェア&サービス事業本部 副社長 兼 システム・ソフトウェア事業部長 ダグラス・フィッシャー氏が登壇し、先ほどの4つのレイヤーのうち、OSとアプリケーションについて語った。
フィシャー氏は「IntelはOSに関してはOEMベンダーに選択肢を示すというのが立場だ。例えば、ここにハードウェアはまったく同じタブレット端末があるが、それぞれAndroid 3.0、Windows 7、MeeGoが動いている。また、1つのハードウェアでそれらを同居させることも可能だ」と述べ、同じハードウェア上で複数のOSが動き、OEMメーカーが目的に応じてOSを選択できるのがIAのメリットであると強調した。
それぞれのOSとの関係についても説明し、Androidに関しては今一番力を入れており、オープンソースと協力してIA版の開発を急ピッチで行なっていると述べたほか、Microsoftとの関係では次期Windowsとの開発に力を入れていること、MeeGoに関しても引き続きオープンソースコミュニティと協力して開発を続けており、OEMメーカーとの強力も続けており、AcerがMeeGoを搭載したタブレットを開発したことなどが明らかにされた。
また、ソフトウェア開発者へのアプローチも引き続き行なっていることを明らかにし、Androidに関してはIA版の開発を加速していくことと、ソフトウェア開発者に対して働きかけてIA版でも性能が向上していくように最適化を行なってもらえるように努力を続けていることなどを説明した。
(2011年 6月 2日)
[Reported by 笠原 一輝]