【CES 2010】【Microsoft基調講演】
タブレット風の新カテゴリPC「Slate PC」やXbox 360の新サービスを紹介

Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏

会期:1月7日~10日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
   Sands Expo and Convention Center/The Venetian



 CES開幕前日となる1月6日の夜は、恒例となっているMicrosoftの基調講演が行なわれた。壇上にはCEOのスティーブ・バルマー氏らが登壇。Windows 7の成功をアピールしたほか、タブレット型の新PCプラットフォーム「Slate PC」を披露。Xbox 360の今年の展開についても紹介があった。

●バルマー氏が、HPなどから発売予定の「Slate PC」を披露

 基調講演の前半に登壇したスティーブ・バルマー氏はまず、「厳しい経済状況だった2009年にも、さまざまな新技術を投入し、世界の人々にインパクトを与え続けた」とアピール。さまざまな技術の革新が人々の生活を豊かにしているだけでなく、エネルギー効率の改善やエイズウイルスの早期発見など、逼迫しているグローバルな問題に対しても貢献している、さまざまな例を紹介した。

 こうした技術は世界各国において浸透し、この数十年で中流層の人々が10億人から40億人に増加。そこへ対応していくことを考えると、自分たちの業界は長期的に見て強気にならざるを得ない、と将来への明るい見通しを語っている。

 2009年に行なったこと、2010年に行なっていくことの概要もいくつか紹介された。1つは「Bing」である。Bingは1,100万人のユーザを獲得し、シェアを拡大。検索ユーザー向けに何をすべきかを考え、BingMap上でのSilverlightを用いたサテライトビュー、Photosynthによる3D画像などのコンシューマ向けサービスの提供を開始した。「Bingはデジションエンジンなので何かを決定するの手助けをするもの。長い旅の始まりでありながら、とても良いスタートを切っている」とバルマー氏は述べている。

 自動車分野においては、「Auto」プラットフォームやフォードの「Sync」が紹介された。フォードのSyncは今年次世代版が登場。CES期間中に行なわれるフォードの基調講演でも紹介される見込みだ。Windows Embeddedで構築されるAutoプラットフォームは、KIAが車内エンターテインメントシステムへの採用を決めたという。音声認識などを持った、UVOブランドの自動車が2011年にも登場する。

 エンターテインメントのジャンルでは、Zune HDを取り上げた。17か国で展開するZune HDはXbox LIVEでビデオを提供。将来的には、ここで提供しているビデオや音楽を、他のプラットフォームに対しても提供するよう、拡張を進めていくという。

 モバイルのジャンルでは、Windows Mobile 6.5を搭載するHTC「HD2」を紹介。高解像度でシャープなスクリーンを搭載するという製品で、これについては、来月行なわれるMobile World Congressにおいて詳しい情報が提供されるとのこと。

Windows 7のPCはさまざまなスタイルのものが発売されており、その範囲に縛られないことをアピール壇上には多数のWindows 7搭載PCが置かれ、1つ1つ紹介されたHPのNV15はDirect X11対応GPUを内蔵。「DiRT2」のプレイデモが行なわれた

 そして、バルマー氏がもっとも時間を割いてアピールしたのがWindows 7である。「800万人のベータテスタ、5万人のパートナー、3,000人のMSエンジニア、そして多くの国で生活するあらゆる人々からのフィードバックを受け、人々が好む形でPCのエクスペリエンスを提供した」というWindows 7を発売した昨年は、PCの売り上げが前年比で63%、昨年のホリデーシーズンに50%以上も増加した、などの数字を挙げて、その成功をアピール。今年はさらにジャンプの年になるとしている。

 このあとは、Windows 7搭載PCや、ソフトウェアのデモンストレーションが行なわれた。ここではそれらすべては紹介せず、新製品・新サービスを中心にピックアップしたい。

 まず、Windows 7を搭載したPCはさまざまなスタイルのものが発売されており、その範囲を選ばないことをアピールしたうえで、採用製品を壇上に展示。そのなかの、「HP NV15」はDirect X11対応のGPUを搭載したノートPCとのことで、実際に「DiRT2」をプレイするデモが行なわれた。同日発表されたAMDのMobility Radeon HD 5000シリーズを搭載すると見られるが詳細な情報はない。

PC上で動作する電子書籍システム「Blio Reader」のデモ。インタラクティブ性や動画を使った図版を紹介したエンターテインメントシステムのMedia Room 2.0をアナウンス。SilverlightによるUIや高品質の動画をアピールWindows Mobile 6.5を採用した「HTC HD2」から、Media Room 2.0を利用しているデモ

 ソフトウェアでは、新しい電子書籍ソフトウェアとなる「Blio Reader」のデモが行なわれた。PC上で動作する電子書籍ソフトウェアのBlio Readerは、まだ正式には公開されていないが、動画による図版や、マーカーを付けるなどの電子書籍ならでは機能をデモしている。

 Microsoftが提供するテレビエンターテインメントシステムの「Media Room」についても、Media Room 2.0でのアップデートが行なわれた。ハードウェアのアップデートなしで提供される新システムで、Silverlightをベースにした開発プラットフォームにより、さらにインタラクティブなUIで高品質なストリーミング配信が可能になるとしている。先に紹介したWindows Mobile 6.5を採用したHTC HD2上で、Media Room 2.0によって配信された映像を視聴するデモも行なわれている。

新たなジャンルのPCとして提唱された「Slate PC」。Windows 7を搭載するHPのプロトタイプを用いたSlate PCのデモ。電子書籍や動画視聴などをデモ本体を横にすると自動的に画面の回転。この状態から動画再生のデモを実施した

 こうしたコンテンツを利用する新しいプラットフォームとして、バルマー氏が降壇直前に示したのが、「Slate PC」と呼ばれるものだ。タブレット型とも電子リーダーとも取れる形状のSlate PCは、HP製のプロトタイプによる動作デモを実施。Kindle for PCによる電子書籍の閲覧や、動画再生を行なっている場面が示された。このSlate PCは今年後半に発売される予定で、「多くのユーザーがこれに興奮するだろう」とバルマー氏は期待を寄せている。

●Project Natalの投入時期など、2010年のXbox 360

 先のバルマー氏は冒頭でXbox 360についても触れていた。2009年にはFacebookやTwitter、last.fmに統合し、Project Natalのコードネームを発表。最初のXbox以来、累計5億本以上が販売され、ゲームタイトルは200億ドルの売り上げを計上。2010年は、Xboxにとっても、これまでにないエキサイティングな年になるとしている。

Microsoftエンターテインメント&デバイスディビジョン・プレジデントのロビー・バック氏

 基調講演の後半は、このXbox 360の今年の動きを紹介するもので、Microsoftエンターテインメント&デバイスディビジョン・プレジデントのロビー・バック氏が登壇した。

 バック氏もやはり「2010年は(Xbox 360にとって)画期的な1年になる」とし、その根拠として、具体的に今年のXbox 360に関する新展開を紹介。

 まず今年は、大ヒットすることが確実されているゲームが多数ラインナップされることを確認している点を挙げた。「MASS2EFFECT」、「Tom Crancy's Splinter Cell Conviction」、「Call of Duty: Modern Warfare 2」、「FABLE III」、「CRACKDOWN2」、「ALAN WAKE」などといったタイトルが今年登場予定であることが紹介された。

 そして、今年最大のタイトルと目されているのが、HALOの続編「HALO REACH」で、今年秋に発売される予定。春には、大規模なβテストもXbox LIVEで展開されるという。

動画配信にも力を入れるXbox LIVEは、「Harry Potter and the Half-Blood Prince」(ハリー・ポッターと謎のプリンス)の配信開始を表明アーケードゲームの旧作をXbox 360ならびにPC上でプレイする「Game Room」サービスの開始をアナウンス。今年春のサービス開始後、3年間で1,000タイトルの提供を予定している

 2つ目の根拠は、Xbox LIVEである。現在2,000万人以上のメンバーがいて活用されているXbox LIVEでは、先述のとおりFacebookやTwitterなどと連携、Zune HDの1080pムービーを視聴できるようになっている。問題は、映画の配信を待つまでの時間にあるとしているが、ここで「Harry Potter and the Half-Blood Prince (邦題:ハリー・ポッターと謎のプリンス)」の配信権利を獲得したことを表明。その待ち時間も短縮されていることをアピールした。

 また、Xbox LIVE上で古いアーケードゲームを配信する「Game Room」サービスの開始がアナウンスされた。これは、ActivisionやAtari、コナミなどのオリジナルアーケードゲームをプレイできるもので、Xbox 360だけでなく、PC上でも実行可能となる。

 サービス開始当初は30タイトルの提供が予定されているが、今後3年間で1,000タイトル以上へ拡充していく予定とのこと。サービス開始は今年の春を予定している。

Natural User Interface(NUI)の提供は大きなトピックとして紹介された。体の動きを3Dカメラで読み取って、ゲームの操作へ反映するXbox 360でNUIを実現する「Project Natal」は、今年のホリデーシーズンにリリースされる予定

 3つ目の根拠として、同社が開発を進めている「Project Natal」を挙げた。Project Natalは3Dカメラや音声入力などによって、コントローラを使わず体の動きでゲームをコントロールできるNUI(Natural User Interface)の一種。

 昨年のE3でプロトタイプを示して大きな反響を得たというProject Natalが、今年のホリデーシーズンに投入されることを表明。既存のXbox 360で利用可能になる。バック氏は、このProject Natalに対して「自然なエクスペリエンスを得るための最後の障壁が取り払われるもの」としている。

(2010年 1月 8日)

[Reported by 多和田 新也]