会場で見かけた印象的なPCパーツ
GeForceシリーズのマルチGPUカードは、伝統的に2枚のPCBを用いる構造となっているのは周知のとおりだ。現行のGeForce GTX 295も、2枚のPCBにGPUとビデオメモリを1セットずつ搭載し、GPUクーラーを挟み込むような構造を採っている。
このCOMPUTEX TAIPEIでは、こうした構造ではなく、1枚のPCBを用いたGeForce GTX 295を3社が展示していた。InnoVisionブースに、このビデオカードの構造を示したパネルが掲示されているが、まずボード上に2基のGT200チップを搭載。この動作クロックはコア576MHz、シェーダ1,242MHzでGeForce GTX 295の標準クロックだ。
このGPUの周囲に、それぞれ896MBずつのGDDR3を搭載。動作クロックは2,000MHzとなっており、やはり標準クロックで動作。メモリインタフェースは448ビットとやはり2PCB版と同じ。14枚のメモリチップを実装するはずだが、パネルの写真では各GPUに7枚しか接続されておらず、おそらく裏面にも同様に、各GPUに対して7枚のメモリチップが実装されているはずだ。
そのほかのチップは、各GPUをリンクしたうえでスロット側へインタフェースを供給するブリッジチップとなるNF200、ディスプレイインタフェースの入出力を行なうNVIO2が搭載されている。
消費電力は289Wとされており、やはり2PCB版GeForce GTX 295と同等。電源端子も6ピン+8ピンの構成になっている。
価格は449ドルとなるそうで、単純にデザインのみが異なるGeForce GTX 295といった雰囲気の製品。発売はまもなく開始されるとのこと。
NVIDIA製品では、このところ秋葉原でZOTAC製品が順次投入されているIONマザーも展示されている。ZOTAC以外のメーカーでは、Manli TechnologyとInnoVisionが展示した。ただ、いずれの製品もZOTAC製品と同じMini-ITX製品で、ボードのデザインも同じ。現時点では致し方ないのかも知れないが、今後は各社のオリジナル設計のボードにも期待したいところだ。
●PineView搭載のMini-ITXマザーも気になる存在
Atom関連の話題としては、今回のCOMPUTEXでは次世代AtomのPineViewのほうが高い注目を集めたわけだが、そのPineViewを搭載するMini-ITXの登場にも期待がかかる。Intelブースでいくつかの製品が展示されたほか、Jetwayのブースでも同社製品が展示された。
いずれの製品もTigerPointと見られるチップを組み合わせた構成となっており、CPUにはヒートシンクが載っているのに対し、そちらにはヒートシンクが載せられていない点で共通している。
各製品ともメモリスロットを2基備えているのも大きなポイントだ。PineViewはCPUにメモリコントローラが統合されるわけだが、このメモリコントローラはDDR2のデュアルチャネルインタフェースとなる。Jetwayの説明員によれば同社製品はDDR2-800まで対応できるとのこと。CPUの仕様としてか、という点は不明だが、グラフィック側とも共用されるメモリだけに帯域幅が広がることは素直に歓迎できる。
●Marvell、PromiseがSATA 6Gbpsコントローラを展示
ASUSTeK、GIGABYTE両社がSATA 6Gbpsに対応したマザーボードを展示したことは既報のとおり(ASUSTeK、GIGABYTE)。この両社の製品ではSATA 6GbpsコントローラとしてMarvell製チップを使用しているが、本家となるMarvellのブースでも、このチップのデモが行なわれている。
同社が量産を開始しているSATA 6Gbpsコントローラ「Marvell 88SE91xxシリーズ」は、2ポートの6Gbps対応ポートを備え、RAID0/1に対応。オンザフライでのAES256暗号化も可能となっている。チップ面積は9×9mmで、消費電力は1W未満。システムとはPCI Express x1で接続される。
ブースでは、このチップのサンプルボードと、Seagateの対応ドライブを組み合わせてベンチマークテストを実施するデモを行なっていた。それによれば、シーケンシャルアクセスの平均読み出しレートが120MB/sec弱。バースト速度は300MB/secを超えた結果となっている。
ちなみに、対応HDDについては、現状ではSeagateのみがサンプルを出荷している状態だが、Marvellブースの説明員によれば、ほかのHDDメーカーからも2009年後半には提供すると伝えられているとのこと。
Marvell以外のコントローラ、ボードメーカーの情勢だが、唯一、Promise Technologyが、対応RAIDボード「SuperTrak EX8760」を展示していた。これはSAS対応のRAIDカードでサーバー向けとなるが、SATA 6Gbpsへの対応も可能という。説明員は、ほかの製品の6Gbps対応化もそれほど難しくはないので順次投入していきたい、としており、PC向け製品の6Gbps化にも期待がかかる。
Marvellと並んで、PC向け製品では採用例が多いSiliconImageは、会場近くのホテルにスイートルームを設けたが、こちらではCOMPUTEX TAIPEIのタイミングに合わせて発表した、SATA 3Gbps対応のPort Multiplierチップ「SteelVine Series 3」のデモを行なっていた。
写真撮影が一切許可されなかったので文章で紹介するが、このチップはICH10RなどのSATAポート×1から2基のSATAポートへ分岐させ、ハードウェア処理によるRAID機能をサポートするというもの。チップセット内蔵RAIDコントローラよりもCPU負荷の低いRAID処理が可能というのが売りだ。
第3世代となる本チップでは、従来製品が80ピンだったものを40ピンのパッケージへシュリンクしたほか、破損したRAID1アレイのリビルドを高速化。また、SMBusを介して提供されるGUIのマネージメントソフトウェアはシンプルで簡単に使えるのを特徴とする。例えばRAIDを構築するメニューでは一般的に”RAID0”、”RAID1”といった言葉が表示されるわけだが、”Performance”、”Protect”といった表現に置き換えている。こうしたことから、ユーザーは、得られるエクスペリエンスから直感的に操作できることをアピールした。
とはいえ、SATA 6Gbpsに関しては、6Gbps対応コントローラの投入は検討しているものの現時点でアナウンスできるプランはない、としている。次世代テクノロジである6Gbpsへの対応よりも、現在普及している3Gbps製品を強化していくことを優先しているとのことで、慎重なスタンスを示したものといえるだろう。
このほか、HighPoint Technologiesのブースにも、6Gbps対応品は展示されていない。こちらのブース説明員からは製品化の予定も含めてコメントを得られなかった。
このように、SATAの6Gbpsに関しては、とくにMarvellとSeagateの積極性が目立つ状況といえるが、対応HDDが他社からも登場すると見られる今年後半以降、もう少し違った動きが見られることに期待したい。
●OCZが3.5インチSSDやIONネットブックを展示
OCZ Technologyは毎年、会場近くのホテルにスイートルームを設けるのが恒例となっており、今年も同様のスタイルで新製品の展示を行なった。
注目は最大容量1TBという3.5インチタイプのSSD「Colossus」だ。本来はエンタープランズ分野で使われるような製品をPC向けに投入する、というもので、INDILINX製のコントローラとMLCチップを使ったSSD×2台でRAID0を構築するという仕様。RAIDコントローラはJMicron製コントローラが使われている。
容量は500GBと1TBがラインナップされ、公称速度は読み書きともに256MB/sec。製品出荷は7月を予定しており、日本では7月中旬から下旬にかけて発売されることになるだろうとした。価格は未定で、説明してくれたエンジニアの”予想”では、安くても1500ドル以上するだろう、とした。
OCZでは数年前よりノートPCのベアボーン製品を「DIY Notebook」ブランドで展開している。なかでもAtomを使った10型クラスの製品は「Neutrino」というサブブランドも冠せられており、そのラインナップに加わるION製品が展示されていた。Atom 230とIONチップセットを組み合わせた10.1型(1024×600ドット)液晶搭載の製品で、メモリとHDDをユーザー自身の手で取り付けて完成させる。
ただし、本製品は日本での発売はないそう。日本ではネットブックの競争が激しく、この製品で食い込める確信がないのが理由。日本で発売するとなると日本語キーボードの用意もしなければならず、それもネックになるという。とはいえ、IONのパフォーマンスを活かし、もう少しワイドな液晶を搭載した製品なども検討しており、そうした製品が日本へ投入されることはあるかも知れないとしている。
同社はこのほか、同じくIONのHTPC製品や80Plus Gold認証電源などを展示している。写真で紹介する。
●XFXが電源ユニットを投入
例年、会場内にブースを設置し華やかなイベントを催す、XFXことPine Technology。今年はOCZと同じ、会場近くのホテル内にスイートルームを設けて、新製品の紹介を行なっている。
同社はこれまでマザーボードやビデオカードのメーカーとして活躍してきたが、新たに電源ユニットを投入すること表明。その第一弾製品となる「850 Black Edition(XPS-950W-BES)」を展示した。
同社のイメージカラーである緑色のファンや、どことなくミリタリーな雰囲気を感じるデザインが印象的な製品となっている。スペック面では、シングル12Vライン仕様である点や、ケーブル着脱方式の採用を特徴としており、80Plus Silver認証を受けている。
本製品の日本発売は未定だが、次期製品として1200Wの80Plus Gold認証電源を予定しており、日本でも発売される可能性が高いとした。
XFX初の電源ユニット製品となる「850 Black Edition」 | 850 Black Editionの仕様。12Vラインは70Aの1系統となっている | XFXはNVIDIA専業メーカーとして知られてきたが、昨年末よりAMDとも提携。(NVIDIAカラーでもある)緑と赤いビデオカードの組み合わせが面白い |
(2009年 6月 8日)
[Reported by 多和田 新也]