イベントレポート

AMD、HBM搭載のGPUコア「Fiji」を発表

~シングルGPU最上位モデルを24日に出荷。コンセプトPCも紹介

「Fiji」を搭載する「Radeon R9 Nano」を紹介するPresident兼CEOのLisa Su氏

 米AMDは6月16日(現地時間)、ロサンゼルスで開催中のE3(Electoronic Entertainment Expo)の開幕に合わせて、製品発表イベント「The New Era of PC Gaming」を開催した。会場は、E3会場から数ブロック離れたBelasco Theatre。イベントの模様は、ゲーム実況映像の配信サイトであるTwitchのチャンネルで、ストリーミング中継も行なわれた。

 発表の中心となったのは、開発コードネーム「Fiji」として知られるハイエンドのGPU。既存の製品ではグラフィックカードのPCB基板上に配置されていたGDDR5などのビデオメモリをGPUダイに搭載する。これにより4,096bit幅という超広帯域で、低消費電力を実現する。技術はHBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリ)として紹介されている。

 グラフィックスメモリの実装面積が最大で94%減ったことで、ハイエンドグラフックカードとしてはこれまでにない6インチ(約15cm)サイズの製品「Radeon R9 Nano」、また液冷ユニットを搭載する「Radeon R9 Fury X」などを発表した。

製品ラインは4モデルとなっており、最初にシングルGPUでは最上位に当たる「Radeon R9 Fury X」が6月24日出荷予定
デモンストレーションに登場したEAの「STAR WARS : Battle Front」のPC版は11月17日に発売。プレイアブルデモはサンディエゴで開催されるコミックのコンベンション「ComicCon」で実施予定
2スロット幅の「Radeon R9 Fury X」。水冷のためスロットカバー部分にはスリットがない。インターフェイスはDisplayPortが3個とHDMIが1つだが、仕様詳細は後日

 GPUコアは単一の仕様だが、冷却の方法により動作クロックの上限が異なる。シングルコアでは、6インチサイズの空冷モデル「Radeon R9 Nano」、7.6インチ(約19cm)サイズで空冷の「Radeon R9 Fury」、7.6インチサイズで水冷の「Radeon R9 Fury X」の順に性能が向上。最上位にFijiをDualで搭載して水冷モデルの“Dual Fiji”(仮称)モデルが位置付けられる。それぞれの性能詳細は6月24日に公開される見通し。搭載メモリ量などの仕様も同日に明らかにするとしている。

 もっとも早く発売されるのが「Radeon R9 Fury X」で6月24日、続いて「Radeon R9 Fury」の7月14日と続く。「Radeon R9 Nano」は今夏、Dual Fiji(仮称)は今秋を予定している。価格はFury XとFuryのみ発表されており、それぞれ649ドルと549ドル(いずれも税別)。

シングルGPUとして現行最上位のR9 290 Xと比較して、Fury XはシェーダプロセッサにあたるStream Prosseserを4,096基搭載。89億トランジスタを集積する
消費電力あたりの性能は前世代と比較して、Fury Xでは約1.5倍、Nanoでは約2倍に達する
HBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリ)のアドバンテージ。GRRD5など現行のGPUに使われているグラフィックメモリに対して、消費電力あたりの効率が約3倍。GPUダイに搭載することで、PCB基板のメモリ実装面積を最大94%削減する
従来のGDDR5を搭載するグラフィックカード(手前)と、HBMを採用した「Fiji」(奥側)によるメモリ実装面積の比較
「Radeon R9 Nano」(手前)、と「Radeon R9 Fury X」(奥)。Fury Xには専用の水冷ユニットが付く
FijiのGPUダイ。搭載される積層型のHBMの容量は仕様発表時に明らかになるが、GPUダイの周囲に4チップ存在するのが分かる
ステージに設置されていたデモ機。搭載されているのは「Radeon R9 Fury X」。RadeonのロゴがLEDで光るほか、補助電源付近にもLEDが設置されている
「Radeon R9 Fury X」。補助電源は8ピン×2本
「Radeon R9 Fury X」の水冷ユニット内側

 また、リビングルームに4K対応TVが増えていくことを背景に、コンソール型ゲーム機と同じ程度のフットプリントを持つ、PCゲーミングの「Project Quantum」も発表、公開された。上下2つのユニットを中央部の支柱で支える個性的なデザインとなっている。構造的にも二分しており、下部にはPCを構成するパーツのほぼ全てが収納される。APUのほか、最大2基の「Fiji」を搭載可能。冷却機能は水冷仕様となっており、上部のユニットに水冷ユニットや冷却ファンを備えている。中央にある支柱に通っているのは水冷パイプと言うことになる。発表されたのはコンセプトモデルという位置付けで、最終製品ではない。

コンパクトなゲーミングPCのコンセプトモデル「Project Quantum」
「Project Quantum」のフットプリントは、コンソール型ゲーム機とほぼ同等
上下のユニットを中央部の支柱で支える構造をしている。PCの本体は下部ユニットに、上部ユニットには冷却機能を備える。上に手をかざすと、ほのかに暖かい風がファンで送られてくる。
「Project Quantum」には最大で2基の「Fiji」を搭載する

 イベントの冒頭では、既存のRadeon R7およびR9シリーズを一新して、従来の200番台から300番台へ現行製品を移行した。早い製品は木曜日から出荷が始まる。

現行のR7 2xx、R9 2xxの製品ラインは、いずれも3xx番台へと一新される。全部で5モデルを更新
最廉価モデルとなる「Radeon R7 360」。参考価格は109ドル(税別)
「Radeon R7 370」。参考価格は129ドル(税別)
「Radeon R9 380」。参考価格は199ドル(税別)
「Radeon R9 390」。参考価格は329ドル(税別)
「Radeon R9 390 X」。参考価格は429ドル(税別)

(矢作 晃)