イベントレポート
Samsung、TVでクラウドゲーミングをプレイできる「Samsung Gaming Hub」をデモ
2022年1月6日 08:43
韓国Samsung Electronics(以下Samsung)は、CES 2022の基調講演に同社 副会長 兼 CEO 兼 DX部門責任者 ジョン・ヒー・ハン氏が登壇し同社が掲げる持続可能なデジタル業界に向けた取り組みや、今度同社がリリースする予定の製品などを発表した。
ハン氏は「Together for Tomorrow」(一緒に素晴らしい明日を迎えよう)という標語をタイトルとして掲げており、気候変動への対応など地球環境の維持のため、カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収のバランスがとれていること)の実現がデジタル業界に置いても重要だということ強調し、リサイクル可能なパッケージや素材の採用、太陽光で動くリモコンなど小さなことから始めることが、総じてデジタル業界も全体で持続可能な産業になっていくとそのビジョンを説明した。
また、今や冷蔵庫、TV、スマートフォンやPCまでといった白物から黒物まで幅広い製品をそろえる総合メーカーで業界のリーダーとなったSamsungの現状を反映し、未来に向けた提案を行ない、最大で100型サイズまで投影でき円筒型のポータブル・プロジェクターとなる「Freestyle」を発表したほか、スマートTVやディスプレイなどからGeForce NOWやGoogleのSTADIAなどのクラウドゲーミングが利用できるようになる「Samsung Gaming Hub」の構想を明らかにし、その専用ディスプレイとして55型のゲーミング用ディスプレイなどを公開した。
Samsungは現在デジタル業界で策定が進む「Matter」(マター、スマートホーム用機器が相互にデータをやりとりするときのプロトコル)の取り組みへの参加を発表しているが、機器同士の接続互換性や顧客データの安全なやりとり、さらには電力効率の改善といった取り組みを業界各社と協力して進めるHCA(Home Connectivity Alliance)への加盟を明らかにし、今後ほかのメーカーとも協調して業界全体でスマートホームの取り組みを進めると強調した。
持続可能なデジタル家電産業を実現するには、1社1社が小さな削減を積み上げることだとSamsungのハンCEO
コロナ禍という状況に加えて、2021年11月~12月に新変異株とされるオミクロン株の急速な感染拡大による影響を受けて、CESも多くの大企業がオンライン・プラットホームでの記者会見や製品展示に切り替えていった中、Samsungは引き続き対面での参加を決めており、今回の基調講演も通常CESの基調講演が行なわれる、ベネチアン・エキスポ(以前はサンズ・エキスポと呼ばれていたコンベンションセンター)の5階にあるボールルーム(日本語で言うと宴会場)で行なわれている。
ただし、例年に比べると席数は明らかに絞られており、会場として使われている場所の面積は例年の半分程度で、さらに席は1つ空きで座る形になっており、実際に収容できた参加者は例年の4分の1程度だと推定できる規模で行なわれた。今回のCESでは全参加者にワクチン2回接種を要件としており、そうした感染症対策なども行なわれながら開催されている。
今回Samsung Electronics 副会長 兼 CEO 兼 DX部門責任者 ジョン・ヒー・ハン氏が行なった展示会開催前日夕方に行なわれるキックオフ基調講演は、複数ある基調講演の中でも最も格式が高いものとされており、歴代の企業の顔ぶれを見ると、Samsung自身も含めて、Microsoft、Intelといったそうそうたる顔ぶれがそろっている。Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏が現役だった頃には、ゲイツ氏の指定席だったことでもよく知られている。
今回の講演をハン氏は「Together for Tomorrow」というタイトルで行なった。地球の気候変動など地球環境を維持するためにカーボンニュートラルへの取り組みが世界各国で進んでいる。二酸化炭素を排出するデバイスとしては自動車がやり玉に挙がることは多く、このため自動車産業はHEV(ハイブリッド自動車)やBEV(バッテリ電気自動車)などのEV(電動化車両)へと急速にかじを切りつつある状況だ。
デジタル家電の業界も、カーボンニュートラルを実現するためにさまざまな取り組みを加速していくべきだとハン氏は指摘し、「Samsungも以前よりさまざまな取り組みを行なっている。例えば、製品のパッケージはリサイクル可能な素材としており、それを今後も加速していく。今後はそれに加えてさまざまな取り組みが必要になると思う。
例えば、TVのような家電機器のリモコンは1つ1つには少ない数の電池だが、それを世界中で換算するとものすごい量になる。ここラスベガスからソウルまで届くぐらいだ。そこで、我々は太陽光による充電モジュールを使ったリモコンを開発し、今後投入していきたい」と述べ、1つ1つの家電が消費している待機電力を極限まで減らすなどの取り組みを行ない、Samsungが示した太陽光充電のモジュール付きのTVリモコンなど、少しずつ電力削減に取り組んでいくと、デジタル家電業界全体で大きな削減を実現でき、持続可能な産業を作り上げることができると詰めかけた業界の関係者にアピールした。
SamsungのスマートTVやディスプレイがGeForce NOWやSTADIAなどクラウドゲーミングのクライアントになる
講演の後半では、Samsungが今年投入する予定の製品などが紹介された。最初に紹介された「Freestyle」で、円筒型のバッテリ内蔵プロジェクタ。最大(8.8フィート離した時)で100型サイズのFHD(1,920×1,080ドット)ディスプレイとして利用可能。スタンドの角度は180度調整できるので、横にして真横に映すこともできるし、真上に向けて天井に映すことも可能。また360サラウンドスピーカーを内蔵しており、視聴者がどこにいても音声を聞くことができる。
USB Type-C/USB PDで電源を供給できるので、外部バッテリと組み合わせると外出先でも利用できる。OSはTizenが動作しており、各種の動画配信サービスなどを利用できる。TVのHDMIポートに接続してAmazon PrimeビデオやNetflixを再生するデバイスのような機能が標準で入っていると考えるとわかりやすいだろう。自宅の好きな場所に移動してコンテンツを表示したり、外に持って行ってキャンプで使ったりなどの使い方が想定されている。既に米国では予約が始まっており、米国での価格は899.99ドル。
また、2022年中に、SamsungのスマートTVやディスプレイに「Samsung Gaming Hub」と呼ばれるクラウドゲーミングや動画コンテンツなどにアクセスできる機能を搭載する計画であることが明らかにされた。Samsung Gaming Hubは、NVIDIAのGeForce NOWやGoogleのSTADIA、Utomikといったクラウドゲーミングがプレイできるようになると明らかにされており、今後はGeForce NOWなどと契約しておくと、SamsungのスマートTVやディスプレイだけでゲームがプレイできるようになる。
また、そうしたゲーミング向けのディスプレイとして、55型の曲面ディスプレイも紹介された。の55型の曲面ディスプレイはOdyssey Arkという名称がつけられており、1000Rという横から見るとかなり大げさに曲がったデザインになっている。マルチビューも用意しており、24型分にゲームを表示して、残りにはZoomの画面やSNSの表示を出す、そうした使い方も可能だと説明された。ただし、残念ながら実物は公開されなかったが、実現可能であるならかなり期待できそうだ。
matterへの対応を強調、エアコンなどとスマートホーム機器の連携を実現するHCAに加盟を発表
また、Samsungはスマートホームの実現に向けて重要な取り組みを明らかにした。既にSamsungは「matter」と呼ばれるAmazon、Apple、Googleなどが中心になって作られたスマートホーム機器向けのプロトコル仕様を策定する業界団体CSA(Connectivity Standards Alliance)にも参加しており、今回のCESの基調講演でもmatterを採用し、自社のスマートホームデバイスだけでなく、業界標準を採用した他の機器とも接続して本物のスマートホームの実現を目指すと強調した。matterに対応した機器は今回のCESでも多くの企業が対応した製品を展示しており、今年のスマートホームのトレンドの1つになりそうだ。
それに加えて今回のCESでは、HCA(Home Connectivity Alliance)にも参加することを明らかにした。CSAがIoT機器のプロトコルなどの技術的な仕様を決める団体であるのに対して、HCAはHAVC(空調機器)などとTVなどで異なるメーカー同士で接続する際に発生する非互換性やクラウドサービス同士の連携などに関しての仕様策定など推進する団体。SamsungはArçelik、The Electrolux Group、Haier、GE Appliances、Trane Technologiesなどの他の加盟メンバーとそうした非互換性やクラウドサービス同士の連携、さらにはユーザーデータの保護などのセキュリティー面などで協力して実装していくと明らかにした。
これにより、例えばSamsungのTVからGE Appliancesのエアコンをコントロールしたりなどが可能になると考えられる。こちらも注目に値する動向だと言えるだろう。