イベントレポート

Dellの持ち歩けるゲーミングPC「Concept UFO」の狙い

Dell コンシューマ製品担当上席副社長 レイ・ワー氏、ちなみに日本の新しい元号が「令和」だということはご存じなかったそうだが、今日本はあなたの名前と同じ名前の時代だというと喜んでいた

 2015年のCESで発表されたDellのXPS 13(モデル9343)は、今から見れば世界を変えた製品と言える。今や3面狭額縁のノートPCは当たり前になりつつあり、そのトレンドはハイエンドノートPCからタブレット、そしてスマートフォンまで浸透したと言っても過言ではない。

 Dellは今やPC業界のイノベーションリーダーと見なされており、今回発表された「XPS 13」は、ノートPCとしてははじめて16:10の画面比で4面狭額縁のデザインを採用しており、ここCESでも大きな注目を集めている。

 そういったノートPCの革新をリードするDellだが、今回のCESでは変化球を繰り出してきた。PC業界の大きなトレンドになっている、折り曲げ型PCとなる「Concept Oli」、2画面PCとなる「Concept Duet」までは予想できたのだが、もう1つの「Concept UFO」に関しては、想像だにしない製品だった。Concept UFOは、8型ディスプレイと第10世代Coreプロセッサで構成され、筐体の左右にコントローラを装着できるというNintendo Switchのようなゲーミングデバイスだ。

 今回、Dell コンシューマ製品担当上席副社長 レイ・ワー氏に、こうしたコンセプト製品を展示した狙いなどについてお話しをうかがってきた。

コンセプトモデルを持ち込んだ狙い

Dellが公開したConcept UFO、Alienwareのブランドが冠されたコンセプトモデル

 前述のとおり、今回のCESでDellは3つのコンセプトモデルを展示している。2画面PC「Concept Duet」、折り曲げ型PC「Concept Oli」、そして8型のゲーミングPC「Concept UFO」だ。いずれもWindows 10が動作しているが、従来のクラムシェルや2in1とは毛色の違った新しいフォームファクタになっている。

Concept Duet
Concept Oli

 これらのコンセプトモデルを持ち込んだ狙いとしてレイ・ワー氏は、「DellはとくにビジネスPCの分野でリーダーだったが、近年はフォームファクタの革新に力を入れている。ご存じのとおり2015年にリリースしたXPS 13はPCの世界だけでなく多くのデジタルデバイスに狭額縁という新しいトレンドを作り出す製品となった。

 Dellはこれからもそうした限界を超えてゆくようなデザインにどんどん取り組んでいきたいと考えている。今回持ち込んだコンセプトモデルのうち2つはノンゲーミングで1つはポータブルなゲーミングデバイスとなる。

 われわれはこうした製品をここで公開することで、エンドユーザーの皆様や報道関係者の皆様からのフィードバックを得たいと考えている」と述べた。

 もっとも注目の製品となっているConcept UFOに関しては、「Concept UFOの基本的なコンセプトは持ち出せるPCゲーミングだ。PCゲームをもっと簡単に外に持ち出して、いつでも、どこでもプレイできるようにする、そうしたコンセプトで設計した製品になる。コンテンツはすでにユーザーの手元に存在しており、それをプレイできるデバイスとして提案するものだ」とする。

 日本にいるとあまり感じないのだが、グローバルではPlayStationやNintendo Switchのようなコンソールゲーミングよりも、PCゲーミングのほうがマーケットとして大きな賑わいを見せている。

 その要因は1つには、eSportsに代表されるようなプロプレイヤーの存在であり、そのプロが使っているPCやデバイスに強い興味を持つゲーマーが多数いる点。とくに若者にその傾向が強く、PCが最初のゲーム機というユーザーも増えている。

 ゲーマーとしては、Nintendo Switchのように気軽に持って行けるPC向けのゲーミングデバイスがあればといった要望があり、Concept UFOはそうしたニーズを満たす製品になる。

8型のディスプレイと第10世代Coreプロセッサを搭載して強力なポータブルゲーム機を実現

F1 2019が動作しているConcept UFO

 今回公表されたConcept UFOは、8型のディスプレイと、CPUには第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake)を備えている。Ice LakeではGen 11と呼ばれるGPUが内蔵されており、1080p程度のゲームであれば十分にプレイできるだけの性能を備えている。

 実際、展示されていたConcept UFOではF1 2019が1080pの解像度でスムーズに動いており、HDMI経由で外付けディスプレイにも画面を出力していた。

 ワー氏は、「すでに60fpsでスムーズにゲームを実行できている。CPUやGPUの馬力は十分にある」と述べ、ハンドヘルドデバイスとしての形状を実現しながらも、性能はメインストリームのAAAタイトルを実行するには十分だとした。

 コントローラ部分は何度も作り直しをしており、今回実際にエンドユーザーにプレイしてもらった結果をさらなる改良の参考にしたいとのこと。

 また、ユーザーインターフェイスの部分も今後作り込みが必要だとし、「Windows 10のタッチはこうした小さなデバイスの操作には正直十分ではない、そこは今後改善していく必要がある」と述べた。

 専用のユーザーインターフェイスの搭載なども含めて検討するということで、たとえばSteamからゲームをダウンロードしてインストールするのに、専用のソフトウェアを使ってタッチ操作で行なえるようにするなどの改良が予想されるだろう。

コントローラを分離して利用するモードでは、TVに出力するデモも行なわれていた

 また、「ほかのポータブルなゲーミングデバイスはゲームにしか利用できない。しかし、Concept UFOはPCアーキテクチャなので、メールを読み書きしたり、Netflixでビデオを見たり、Officeアプリケーションを使ったりすることができる」と述べ、ゲーム以外の用途にも使えることが強みになるだろうとした。

 ただし価格に関しては、PCベースになると、どうしても専用ハードウェアで、かつ将来的に販売されているタイトルからコストを回収する仕組みになっているゲーム専用機に比べると高くなる可能性がある。

 ワー氏も「おっしゃるとおりコストに関しては、専用機よりも高くなるだろう。しかし、ユーザーの手元にはすでにPCゲームというコンテンツが存在している。それをいつでもどこでもプレイできるデバイスと考えれば、異なる考え方をしてもらえるのではないだろうか」と述べる。

 なお、ワー氏は今回の展示はあくまでコンセプトモデルとしての展示であり即発売につながるものではないとしたが、展示されたモデルを見るかぎり完成度はかなり高かった。

 ワー氏も認めているとおり、コントローラ周りにはまだ改良の余地があるとは思うが、F1 2019をプレイするかぎりでは性能は十分だと感じられた。ただ、内蔵されているファンはずっと回りっぱなしになっているなど、熱設計周りにはまだまだ改善の余地がある。

 この製品が来年(2021年)製品化されると仮定すると、その頃にはIce Lakeの第10世代Coreプロセッサの後継としてTiger Lakeがリリースされている。別記事(Intel、同社初の単体GPU「DG1」搭載ビデオカードを初披露。開発者向けボードは第1四半期中に出荷)でも説明したとおり、Tiger Lakeに内蔵されるXeアーキテクチャの内蔵GPUは、Ice Lakeに内蔵されているGen 11に比べてさらに倍の性能を発揮するという話だ。

 Tiger Lakeが採用されれば、あえてIce Lakeと同じ性能でCPUファンのスピードを落とすといった手段を選ぶことで、高性能なポータブルゲーミングPCが現実的な選択肢となってくるのではないだろうか。いずれにせよ、実際に製品化されることを期待したいところだ。