イベントレポート

Windows 10フォトアプリが機械学習対応でより賢く。第10世代CoreのDL Boostを活用

~クラウドとエッジの接続を容易にする「Azure IoT Plug and Play」なども発表

WinMLに対応したWindows 10のPhotoアプリ、検索などが高速になる

 COMPUTEX TAIPEI 2019の基調講演の1つとなる「Microsoft Keynote Forum」にて、米Microsoft 執行役員 ニック・パーカー氏、同執行役員 ロアンヌ・ソンズ氏、同IoTセールス担当副社長 ロドニー・クラーク氏などが登壇し、Windowsプラットフォームの進展や、同社のクラウドベースのIoT向けソリューション「Azure IoT」関連の発表を行なった。

 このなかでMicrosoftは、今後Windows 10に実装する機能などを説明したほか、エッジIoTデバイス向けに簡単にクラウドに接続する機能を提供する「Azure IoT Plug and Play」を紹介し、台湾のハードウェアメーカーなどに採用を呼びかけた。

ゲーミングPCや薄型ノートPCが引き続き成長中、2023年にはゲーミングPCが全PC市場の21%になる

Microsoft 執行役員 ニック・パーカー氏

 基調講演に登場したMicrosoft 執行役員のニック・パーカー氏は、「インテリジェントエッジやインテリジェントクラウドがこれからの成長の基礎となる」と述べ、同社がここ数年推進している、マシンラーニング(機械学習)ベースのAIを利用してインテリジェントな機能を実現したクラウド(インターネットに置かれるサーバー群)とエッジ(インターネット経由してクラウドにアクセスする端末などのこと)という仕組みが、今後の成長モデルになると協調した。

Microsoftの現状とこれからの予想

 Microsoftのインテリジェントクラウド、インテリジェントエッジの具体的な成長について、同社のクラウドサービスではAzureはFotune500企業のうち95%が利用しており、Azureの年々の成長率が75%、オンプレミスのサーバーとクラウドを合わせた成長率が24%、Windows 10のアクティブデバイス数が8億台、ビジネス向けOffice 365のアクティブユーザー数が1億8,000万ユーザー、2019年のゲーミングPCが3,560万台などと現状を説明した。

Windowsのアクティブデバイス数は8億台に

 その上で、今後の機会として、いわゆるコネクテッドデバイス(何らかのインターネットへの接続機能を持つ機器)が2020年までに200億台、2025年までに生成されるデータが175ZB(ゼタバイト)、2024年に製造業で使われる産業IoTの市場規模が1,200億ドル、IoT機器の予想出荷台数が59億台(32%の成長)、2018年~2023年にかけてのPCゲーミングの成長率が51%、2018年~2023年にかけてのPCにおけるdGPUのアタッチレートの成長率が28%、2023年にPCのうちゲーミングPCが占める割合は21%、2019年第1四半期から2020年第1四半期への薄型PCの成長率が9%という予測を明らかにした。

Windows 10のPhotoアプリがWinMLによる推論機能を実装、Windows 10もインテリジェントになる

Microsoft 執行役員 ロアンヌ・ソンズ氏

 その後、Microsoft 執行役員 ロアンヌ・ソンズ氏にバトンを渡し、今後Windows 10でサポートされる新機能の説明が行なわれた。

 具体的にはPhone Apps(日本語版ではスマホ同期)、Photo Apps(日本語版ではフォト)、さらにWindows Ink(Windows 10のデジタルペン機能)の3つだ。

Phoneアプリのデモ

 Phone Appsには、現在Androidスマートフォン上の写真とSMSメッセージをクラウド経由で同期する機能が用意されているが、今後発表される予定のプレビュー版では、スマートフォンの通知とスマートフォンの画面をPC上に表示する機能が追加される。

Photoアプリ

 また、Photoには写真の検索をより高速に、インテリジェントに行なう機能が追加されることがアピールされた。これはWindowsの機械学習の推論を利用したアプリを作成する場合のAPI「WinML」により実現する。

 Intelが第10世代Coreに実装した「DL Boost」(AVX512のVNNI命令を利用して推論を高速に行なう機能)を利用して、Photoで高速に推論できる様子などを公開しており(Intel、第10世代Core発表。10nmプロセスで、L1が1.5倍、L2は倍増に参照)、今後、第10世代Coreを搭載したPCなどがリリースされれば、機能が利用できるようになる。

Windows Inkのデモ。アジア言語の認識に対応

 Windows Inkの機能拡張では、ペンによる文字入力時に、従来は英語などの欧米の言語しか文字認識ができていなかったが、今後はアジア言語を利用しても入力した文字が認識されるようになると説明した。

台湾のOEMメーカーにAzure IoT Plug and Playの採用を呼びかける

Microsoft IoTセールス担当副社長 ロドニー・クラーク氏

 講演の後半では、Microsoft IoTセールス担当副社長 ロドニー・クラーク氏によるAzure IoTを利用したソリューションが説明された。このなかでクラーク氏は、同社が「Azure IoT Plug and Play」と呼んでいる、IoT機器をネットワークに簡単に接続できる仕組みの説明に多くの時間を使った。

 Azure IoT Plug and Playは、Microsoftが提供しているIoT器機向けのAzure IoTと、エッジIoTデバイスを接続するための仕組みを用意するものになる。通常、エッジIoT機器、クラウドのサーバーアプリケーションの双方が、それぞれの接続を考慮した設計にしておく必要があり、プログラマへの負担は大きくなる。

Azure IoT Plug and Playの説明
Azure IoT Plug and Playのデモ
デモで利用されたAzure IoT Plug and Playに対応したエッジデバイス
Azure IoT Plug and Playに参加を決めた企業

 そこで、Microsoftがその中間のエージェントとのようなものとして動作するAzure IoT Plug and Playを用意することで、機器の違いなどをAzure IoT Plug and Playが吸収できるようになる。このため、WindowsでUSB機器を接続すればドライバなどが自動でインストールされて使えることを「Plug and Play」と呼ぶことにあやかって、Azure IoT Plug and Playと呼んでいるのだ(実際にはIoT機器はワイヤレスで接続されるのが一般的で、Plug=挿すという行為はないのだが、ネットワークにPlugする、つまり接続するという意味で使われていると考えられる)。

 クラーク氏は、「Azure IoT Plug and Playを利用することで、顧客が容易に利用することができるようになる」と述べ、IoTで顧客に難しい設定を強いることがないように、Azure IoT Plug and Playを採用してほしいと呼びかけた。

新規発表

 なお、講演の最後に、今回新規発表される案件として、Windows IoTでのAzure IoT Edgeが一般提供開始、さらにNXPのSoCを利用したWindows IoTの一般提供開始、Linux向けAzure IoT EdgeにおけるArm64サポートのプレビュー提供、Azure IoT Plug and Play認証プログラムなどが開始されると説明した。