イベントレポート
ワコム、HTC VIVE上の編集とCintiqの編集をシームレスに連携するデモ
~Magic Leapと共同でMR環境でペンが使えるソリューションも開発中
2019年1月13日 10:00
ワコムはCES 2019に出展し、パートナーと開発中のペンを利用したVR、MRのソリューションを展示した。
このVRのソリューションは、パートナーのGravity Sketchと協同で開発しているもの。昨年(2018年)の日本やカナダで行なわれたSIGGRAPHで展示されたものは、ペンの替わりにコントローラを利用してVR空間でイラストを描くというシステムだったが、今回はそれに加えて、ペンタブレット“Cintiq”を利用した2Dでのペン描画と、VR空間での3Dのペン描画を相互に行ったり来たりできるデモを行なった。
また、ワコムはMR用ヘッドマウントディスプレイを開発・製造するベンチャー企業Magic Leapと協同で、MR空間でペンを利用することができるデモも行なった。
HTC VIVEでの編集とCintiqでの編集を行ったり来たりできる
ワコムが参考展示したのは、VR空間でスケッチを可能にするコントローラデバイスと、それと同社の液晶ペンタブレットであるCintiqが連携するソリューションだ。
VR空間でスケッチを可能にするコントローラデバイスは、HTCのVIVEシリーズ向けに開発されたもの。このコントローラデバイスを活用すると、HTC VIVEのHMDを利用して入ったVR空間のなかで、ペンデバイスとして3D空間にイラストを自由に描くことができる。
例えば、これまでは2Dで書いていた自動車のデザインスケッチ、飛行機のデザインスケッチなどを、3DでVR空間に書くことができるので、従来よりも産業デザインなどをより実機に近いかたちでできるようになると期待される。
ワコムではこのデバイスをGravity Sketchと協力して開発しており、昨年の4月に日本で、そして8月にカナダで行われたSIGGRAPHにおいてデザイナーなどに開発段階の製品を公開し、近い将来の商品化を目指している。
今回展示されたのはその進化版で、同社の主力製品の1つである液晶ペンタブレットの「Cintiq」と連携させるデモだ。
具体的にはCintiqとTC VIVE+専用ペンコントローラの操作をシームレスに行ったり来たりできる。例えば、2人で共同してデザインするときに、1人はHTC VIVE+専用ペンコントローラを利用してデザインすると、同じデータがCintiq上に表示される。Cintiqで作業するユーザーはCintiq上で3Dデータを扱うかたち(実際には2Dに表示されるがデータとしては3D)で作業することが可能になる。
ワコムによれば、VRのコントローラなどは若い人などはすぐ使いこなすことができるが、ベテランのデザイナーとなるとやはり2DのCintiqの方が使いやすいという声があり、それに応えてどちらでも使いやすい方を使えるようにしたとのことだった。
今年の後半に予定されている製品化に向けて、VR HMD用のコントローラ、ソフトウェアなどの開発を続けて行くとのことだった。
Magic Leap OneとIntuos Proを組み合わせて、MR/3D空間にスケッチができるデモ
同時に、ワコムはMRの向けのHMDを開発・製造行なうベンチャー企業Magic Leapと共同で、MRでの共同作業で、同社のペンタブレット「Intuos Pro」を利用してMRでもペンが使えるソリューションを参考展示した。
Magic Leapは今米国で急速に注目を集めつつあるMRのHMDを開発するベンチャー企業で、同社は昨年の10月にMagic Leap OneというMR HMDを開発者向けに2,295ドル(税別、1ドル=110円換算で252,450円)を販売開始して注目を集めた。
Magic Leap Oneは、MicrosoftのHoloLensとは異なり、コンピューターユニットを別ユニットにしており、HMD自体がコンパクトになっているのが最大の特徴になる。MRデバイスとなるので、レンズはシースルーになっており、現実の上にARコンテンツを重ねて表示することなどが可能になっている。
Magic Leap Oneを利用すると、複数のユーザーが1つのMR空間をシェアして、同じオブジェクトを現実に重ねて見ることができる。そうしたオブジェクトにMagic Leap One にBluetoothで接続されたIntuos Proを利用して色を付けたり、イラストを描いたりということが可能になる。これを活用すると、例えば、実物を前にしてMR空間で実物をなぞりながらイラストを起こしたり、色を付けたりということが可能になる。
実際筆者も、MR空間に表示されているオブジェクトにペンで色を付けたり、線を引いたりしてみたが、これが発展していくと、さまざまな使い方が可能になると感じた。たとえば、プラモデルのメーカーが自動車をモデル化するときに、これを利用してスケッチを作り、それを元にしてモデルを作っていく、そんな用途が考えられるだろう。