イベントレポート
半導体設備投資額で台湾・米国を抜き2位に躍り出る中国
~世界最大の半導体製造展示会「SEMICON CHINA 2018」レポート
2018年3月16日 18:40
半導体の製造技術と材料技術に関する世界最大の展示会「SEMICON CHINA 2018」が中国の上海ではじまった。会期は2018年3月14日~16日、会場は上海新国際展示場である。
主催者発表の速報値によると、来場登録者の数は約7万人で、前年の約69,000人を早くも突破した(いずれも併催の展示会を含む)。初日である14日の開場直後には、セキュリティゲートの前に数多くの人が待機列を作るとともに、セキュリティゲートを通過した直後にある来場者登録所は大混雑となった。
中国の半導体産業に注目が集まる理由
エレクトロニクス産業における中国の勢いは凄まじい。コンシューマ製品では世界最大の生産国であり、その反映として、世界最大の半導体消費国となっている。半導体市場の統計で最も信頼性が高いとされるWSTS(世界半導体市場統計)の公表データによると、昨年(2017年)に金額ベースで中国の半導体需要は世界全体の31.5%を占めた。もちろん単一市場では群を抜いてトップに付ける。金額は1,297億ドル、成長率は23%である(参考記事「2018年も半導体は面白い(後編)」)。
しかし世界最大の半導体消費国であるにも関わらず、中国のローカル企業は世界の半導体市場であまり大きな地位を占めていない。それどころか、中国は半導体需要の大半を、輸入で満たしている。輸出はごくわずかで、極端な輸入超過の状態にある。
そこで最近になって中国の中央政府や地方政府などは、半導体産業に積極的に資金を投入することにより、半導体の生産力と技術力の向上を支援している。たとえば最近では、世界の国・地域別の半導体設備投資額で、中国は台湾や米国などを抜いて第2位に躍り出た。トップの韓国に迫る勢いである。
設備投資額が急増したことで、中国では20件を超える生産ライン(ファブと呼ばれる前工程のライン)が今後3年間で新規に立ち上がると言われている。そのほとんどは300mmウェハを扱う大規模なファブである。世界の半導体メーカーの中で、追加投資ではなく、新規の投資によって工場をゼロから建設している地域は、ほぼ中国だけだと言われれている。
中国資本のファウンダリ企業とOSAT企業が出展
設備投資の効果が実際の半導体生産となって現れるのは、3年後くらいだ。将来の話である。それでは中国の半導体製造は「今」、「現在」、どのようになっているのか。SEMICON CHINA 2018の展示会場には、その一端が明らかにされていた。中国資本のシリコンファウンダリ(半導体の前工程を請け負うサービス)企業と、中国資本のパッケージング請け負い企業(「OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)企業」とも呼ぶ)が、出展していたのだ。以下はこれらのローカル企業による出展概要をご紹介していく。
最初は中国資本のシリコンファウンダリ企業である。最大手企業のSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corp.)、大手企業のHLMC(Shanghai Huali Microelectronics Corp.)、中堅企業のHHGrace(Shanghai Hua Hong Grace Semiconductor Ltd.)などが展示ブースを構えていた。
量産の先端プロセスは28nm、将来は14nmへ移行
SMICは、世界のファウンダリ企業の売上高ランキングでは、2016年に第4位に付けた(市場調査会社IC Insightsの2017年1月12日発表データ)。中国のローカル企業としては、最大規模で最先端の半導体製造ラインを備える。最先端の技術世代は28nmの多結晶シリコンゲートによるCMOSプレーナプロセスである。高誘電率メタルゲート(HKMG)のプロセスはまだ、提供していない。シリコンウェハの大きさでは300mmの生産ラインと200mmの生産ラインがある。
展示ブースでは、半導体メーカーでは馴染み深いシリコンウェハの実物展示のほか、技術ロードマップや提供可能な製造技術、中国内外の生産ラインなどをパネルや液晶ディスプレイなどでアピールしていた。
続いてHLMCとHHGraceである。両社はHuahong Group(华虹集团)と呼ぶ半導体製造の企業グループに所属している。Huahong Groupのファウンダリ事業は、2016年に世界の売上高ランキングで第8位に付けた(市場調査会社IC Insightsの2017年1月12日発表データ)。
HLMCとHHGraceは、SEMICON CHINAに共同で出展していた。展示ブースでは生産ラインの現状と将来のパネル展示、ユーザー事例の実物展示、シリコンウェハの実物展示などを見せていた。
生産ラインは最先端ノードが28nm、シリコンウェハは200mmと300mmであり、SMICとほぼ変わらない。2018年には28nmノードから14nmノードまでをカバーする、最先端の300mmウェハ工場(第6工場)を新しく立ち上げる。そして2019年には、成熟している技術世代の300mmウェハ工場(第7工場)を新しく竣工する計画である。
世界第3位と世界第7位の中国OSAT企業
中国資本のパッケージング請け負い企業(OSAT企業)では、JCET(Jiangsu Changjiang Electronics Technology Co., Ltd.)と、TFME(Tongfu Microelectronics)が出展していた。
JCETは中国で最大規模のOSAT企業であり、OSAT企業の売上高ランキングで2017年に世界第3位に付けている(市場調査会社TrendForceの2017年10月18日公表データによる)。JCETは2015年にシンガポールのOSAT大手STAS ChipPACを買収したことで、2016年に世界第3位のOSAT企業となった。
JCETは展示ブースで、提供している主なパッケージング技術や生産拠点などをパネルで説明していた。
そしてTFMEは中国で第3位のOSAT企業であり、売上高ランキングでは2017年に世界第7位につける(同上)。同社も展示ブースでは、提供しているパッケージング技術や企業の沿革などをパネル展示していた。