イベントレポート

HuaweiがCESでフラグシップスマホ「Mate 10 Pro」をアピール

 CES 2018が開幕した。初日の基調講演の1つがHuaweiコンシューマービジネスグループCEOのリチャード・ユー氏だった。ユー氏がCESの基調講演に登壇するのは、昨年(2017年)のCESに続き2度目となる。1993年にHuaweiに入社したユー氏は、6年前にコンシューマー事業に係わるようになり、手探りのなかでHuaweiの端末ビジネスを現在の状況まで昇華させた人物だ。そして、いよいよ北米において本格的なビジネスを立ち上げようとしている。

 主催のCTA(Consumer Technology Association)のプレジデント&CEO、ゲリー・シャンピオ氏の紹介によってステージに立ったユー氏は、まず、Huaweiという企業にさほどなじみのないであろう北米中心の聴衆に向けて同社がこれまでたどってきた歩みについて紹介した。CEOの輪番制度をとっていること、研究開発費に利益のなかから大きな割合を投入していること、グローバル化に熱心であるといったHuaweiを象徴するさまざまな事実を挙げていく。

HuaweiコンシューマービジネスグループCEO リチャード・ユー氏

 その上で、ICTが生まれて30年がたった今、完璧なマシンとしてのスマートフォンが接続された世界に置かれることで人々をつなぐハブとして機能するようになったとする。

 この10年、スマートフォンについては、大きくいろいろなことが変わってきた。おそらく次の10年間はAIが中心になる世界が繰り広げられるだろうとユー氏。同氏は、今のスマートフォンはもっとインテリジェントになるという。

 Huaweiは、AIを搭載した世界最初のスマートフォンとして、昨年(2017年)秋に、ワールドワイドで同社フラグシップ機となる「Mate 10 Pro」をリリースした。そのAIスマートフォンを北米に投入するために今日持って来たとポケットから端末を取り出すユー氏。各方面から絶賛されている評価の高いスマートフォンだ。

北米におけるMate 10 Proの発売がアナウンスされた

 今のスマートフォンを取り巻く状況として、価格が高すぎることをはじめ、いろいろな問題が消費者の間で指摘されている。ビデオの問題点、デザインの好き嫌い、通信速度が遅いこと、バッテリがすぐに切れること、カメラの画質が悪いなどなどだ。

 そこでMate 10 Proとユー氏は切り出す。そして、そのデザインをしらみつぶしに自画自賛していく。ベゼルの狭さによる斬新なデザイン、手に持ったときのもちやすさ、3Dカーブを持つ背面デザイン、シンメトリックな美しさと……。

 今回の北米投入では、チタングレー、モカブラウン、ミッドナイトブルーという3色が揃うことがここで明らかになった。

 それに加えてポルシェデザインだ。限定版となるポルシェデザインバージョンも、2月の終わりにリリースされることが決まり、ゲストとしてポルシェデザインCEOも登場、今後も、引き続き、Huaweiと密なコラボレーションを続けていくと宣言した。

 これを受け、ユー氏も、Porsch 911のスピードに感化された美しいボディガラスの背面パネルがもたらすファーストクラスエクスペリエンス、そしてまさにポルシェのスピードで充電ができる高速なチャージャーなどを褒め称える。

 さらに、Mate 10 Proの紹介が続く。非常に高速なチップセットとしてKirin 970を搭載、加えて最新のモデムを搭載することで最速スマートフォンとなったMate 10 Proだが、NPU(Neural network Processing Unit)によるAIパフォーマンスがその高速さをさらに加速する。例として、Mate 10 Proでは100枚の写真を認識するためには6秒しかかからないが、これはiPhone xの9秒やNote 8の100秒よりもはるかに高速だということを名指しで指摘する。

 LTEは1Gbpsのテクノロジで完成され、4x4 MIMOや5キャリアアグリゲーション、256QAMといった技術を集結することで、超高速なギガビットLTEを実現しているという。ここでは、ダウンロードテストとして、サンフランシスコでの速度テストの結果が公表され、Galaxy Note8やiPhone Xに対する圧倒的なスピードが誇示された。

 また、ユー氏はプライバシーとセキュリティがつねにファーストプライオリティであるという。現在、Huaweiは、170の国でビジネスを展開する世界トップ3のベンダーだが、セキュリティのフレームワークを持ち、ソフト、ハード、チップセット、クラウドの面からセキュリティを担保することを強調する。

 その一方で、今、半分以上のユーザーがバッテリに不満を持っていることから、Mate 10 Proは大きな4,000mAのバッテリを搭載、チップセットが低消費電力であることも功を奏してヘビーユーザーでも丸1日、普通のユーザーなら2日バッテリが持つという。

 しかも、高速充電を担保するSuperChargeシステムは、iPhone Xのスタンダード充電より300%、高速充電よりより50%速くバッテリをフルにできると、ここでもiPhone Xが標的にあげられる。速いだけではなく、ドイツのTUV認定を受けている安全性などについても言及された。

 不満の1つであり、スマートフォンを選ぶ理由の1つにもなっているカメラについては、こちらもAIエンジンが支援することで、デュアルカメラが世界一のf1.6レンズを駆使し、あらかじめエンベッドされた知識情報を元に絵作りをする。じつに、1億枚の画像が学習済みで、それによって13種類のオブジェクト、たとえば、花、草、食べ物、低光量といったシーンを認識する。

 ユー氏は30年前からの大学生以来の友だちが撮ったものだと前置きして、さまざまなシーンの写真を紹介した。おそらくはプロの写真家でない素人でもすばらしい写真が撮れるということを強調したかったのだろう。

 ユーザーからのフィードバック証言として長いビデオも紹介された。iPhoneはもう使わない、ラップトップも入らない、世界中をこの電話だけで旅できる、このなかにすべてが入っている、片手で作業できる大きなスクリーンと絶賛の言葉が並ぶ。

 また、iMAXの体験ができる最初のスマートフォンとして、HUAWEI VRが紹介され、まさにWAO WAY = HUAWEIのオンパレードだ。

 Mate 10 Proの絶賛はとどまることなく続くが、もっとも強調されていたのがセキュリティとプライバシーだ。これからいろんなものがつながっていく。今IoTはスマートホームとなり、さまざまな問題も指摘されている。いろいろなテクノロジが入り交じり、OSもまちまちだ。

 だが、HuaweiにはHiLinkがある。LiteOSとしてのIoT OSであり、そこにはすでにエコシステムがあるとユー氏。50のカテゴリで500の製品がすでに存在するという。

 たとえば、EMUI 8.0とHiLinkを統合し、部屋の管理や睡眠管理をすることで、生活をよりよくすることに貢献できる。

 また、スマートライフによりよいネットワーク接続は不可欠だが、今、家庭のWi-Fiには問題があることを指摘、家全体を完全にカバーするために、PLCとWi-Fiを統合したWi-Fi Q2もあわせて紹介された。設定も既存のどんな製品よりはるかに容易だという。

ホームIoTを実現する可能性

 ここで、Googleのスコット・ハフマン氏(エンジニアリング/Googleアシスタント担当VP)がゲストとして登壇し、Googleアシスタントによる自然の会話ができる環境を、さらに多くのデバイスに提供するつもりであり、今4億台近い環境で使えるGoogleアシスタントを、Android 8.0ことOreo搭載のMate 10 Proをはじめとしたデバイスで最先端のアプリが使えるように、今年(2018年)もHuaweiといっしょに開発を進めていくと協調関係が親密であることを匂わせる応援の言葉を述べた。

Googleアシスタント担当VP スコット・ハフマン氏
お話したいこととは……

 このあとも、PC Modeやゲームモード、シアターモード、カスタマイズドUIモードなどが紹介されたほか、セキュリティ面でのGoogle、Mobileiron、SOTIといったMDM対応などがデモを交えて紹介された。もっともデモではWi-Fi接続でちょっとした接続失敗のハプニングもあったのはご愛敬だ。

 北米におけるMate10 Proは6GB+128GB版で799ドル、ポルシェデザインバージョンは256GBで1,225ドルであることが明らかになった。2月4~17日が予約期間であり、BestBuy、Amazon、Microsoftといった大手で販売される。早期予約特典として150ドルのギフトカードがプレゼントされるようだ。

 そして基調講演もそろそろ終わりに近づいたころ、ユー氏は「ちょっとお話したいことがあります(Something I want to share)」と切り出した。「ニュースでご存じだとは思いますが、いろいろな理由で、今回のMate 10 Proはオープンな市場で販売することになりました」とユー氏。同氏によれば、世界におけるスマートフォンの9割はキャリア経由で売られているそうだが、北米ではオープンで出すことになったようだ。

 このニュースというのは、いったん決まっていた米大手通信キャリアAT&Tを通じてのキャリア販売が理由こそ定かではないが白紙に戻ったことを受けてのものだということは想像に難くない。もちろんこの基調講演の場でも理由が明らかにされたわけではない。

 ユー氏はキャリアだけではなくコンシューマーのためにベストチョイスのためにもオープンで売るという。そして、Huaweiを少しでも多くの人々に知ってほしいという。Huaweiはとても小さな会社からはじまったが今は世界最大のテレコム企業となった。いろいろなことを飛び越えてやってきた、とも。

 さらに市場を開拓したいという気持ちでいっぱいで、世界の3分の1をとった今、ひとりひとりがしっかり働くHuaweiの企業文化のなかで、顧客を中心にした考えのもとに積極的に研究開発に投資、消費者のためにグローバルに伸びていくために、今後も、いろいろな分野にチャレンジして最高の技術、イノベーションを提供していくと。

 「自分たちは中国の企業だがオープンであり透明だ。隠すものはなにもない。それがHuaweiだ」。

 ユー氏はそういって基調講演を結んだ。