イベントレポート

Dell、「Inspiron 27 7000 AIO」は世界初の8コアCPU搭載一体型とアピール

~XPS 13 2-in-1の赤外線カメラはMicrosoftの対応待ち

Dell 上席副社長 兼 コンシューマ&スモールビジネス製品事業部 事業部長 レイモンド・ワー氏

 Dellは、COMPUTEX TAIPEIで記者会見を開催し、同社のInspironブランドの新製品3製品を発表した。発表されたのは27型と24型の液晶一体型PC(別記事参照)と、AMD Ryzenを搭載したInspironブランド初のゲーミングデスクトップPC(別記事参照)。

 日本の報道陣には、Dell上席副社長 兼 コンシューマ&スモールビジネス製品事業部 事業部長 レイモンド・ワー氏が会見に応じた。

DellがRyzenを選んだのは高性能を評価したから

 ワー氏は「これまでもAMD製品は採用してきたが、今回はAMDがRyzenをプッシュするタイミングに重なったため、一緒にやろうということになった。採用する大きな動機になったのは、AMDのマルチコア戦略が我々の製品にマッチすると考えたからだ」とAMDとの協業について説明する。

 ワー氏も言うとおり、これまでもDellはAMDのCPUやGPUなどを搭載した製品をラインナップしてきた。しかし、ことCPUに関してはIntel CPUがラインナップのほとんどを占めており、Intel製品が用意されているノートブックPCの低価格SKUとしてAMDのCPUが搭載されている製品が用意される状況だった。だが、今回のInspiron 27 7000 AIO、Inspironゲーミングデスクトップは、メインストリーム市場という製品の量が出る新製品にAMDの製品が採用されており、その位置づけは全く異なると言ってよい。

Inspiron 27 7000 AIO

 「AMDはよく知られているブランドで、今回はRyzenで大きなイノベーションを起こすと知ってチャンスがあると考えていた。Dellは常にイノベーションを製品に取り入れたいと考えていた。ここ数年PC向けのプロセッサはクアッドコアやデュアルコアで何も変わってこなかったが、AMDは8コアや6コアの製品を出すと知り、それをお客様に提供したいと考えた」と述べ、従来のPC用のCPUにはなかったマルチコアのラインナップを用意していることを評価したと説明した。

Ryzen 7-1700Xは8コア/16スレッドに対応

 「Inspiron 27 7000 AIOは世界初の8コアCPUの一体型となる、そうした製品をお客様に提供できることを喜ばしく思っている」と述べ、Ryzenの8コアで高い性能を実現していることがInspiron 27 7000 AIOの特徴だとアピールした。

Ryzen 5とRadeon RX 580以上搭載のInspiron 27 7000 AIOはVR対応

 Inspiron 27 7000 AIOのもう1つの特徴はVRへの対応だ。「一体型でVRでサポートする意味は2つある。1つはスペースが限られた住宅でもVRを楽しみたいというニーズで、もう1つはSOHOや小売り店などでやはりスペースが限られている環境でVRの体験を顧客に提供したいというニーズに応えるためだ」と説明する。

 日本の家庭はその最たる例だと思うが、特に都市部ではマンションやアパートといった面積が狭い住宅が多い。そうした家庭では、ディスプレイと本体が分離しているデスクトップPCをというのはなかなか難しいだろう。また、例えば自動車ディーラーで自動車のプレゼンテーションにVRを使いたいと思っても、ディスプレイにデスクトップPCはやや大げさすぎる。そんな時にディスプレイ一体型であれば壁に寄せておけば場所も取らないというニーズは当然想定される。

 そのため、日本を初めとしたアジア各国ではデスクトップPCの代わりに一体型が売れているという現状があるのだが、これまで一体型でVRに対応した製品というのはあまり多くなかった。そこで、Dellは今回Inspiron 27 7000 AIOをVR可能な一体型として位置づけてメッセージを発信している。

 ただし、Inspiron 27 7000 AIOでVRが可能なのはあるスペック以上の構成となる。Dell クライアントプロダクトグループ担当シニアコンサルタント マット・マクゴワン氏によれば「Inspiron 27 7000 AIOのGPUにはRadeon RX 580とRadeon RX 560の2つの選択肢があるが、VRを利用するためにはRadeon RX 580が必要になる。このため、1,299ドルのRyzen 5とRadeon RX 580の組み合わせが最小構成になる」とのことだ。

 なお、サポートするHMDは「Oculus Rift」と「HTC VIVE」の2製品で、Dellが今年(2017年)末までに投入すると意向表明が行なわれたWindows Mixed Realityヘッドセットに関しても利用できるようになるという。

Inspiron 27 7000 AIOの排気口

 マクゴワン氏によれば、こうしたRyzenとRadeon RX 500シリーズを利用可能にするには、熱設計がかなり大変だったという。CPUが65W、GPUが100W超という消費電力から発生する熱を排熱していかなければならないからだ。「底面から吸気し、上から抜けていく熱設計を行なっている。CPU、GPU、チップセットをファンによって冷やすことで実現している」とのことで、課題は液晶一体型というコンパクトな筐体に、RyzenとRadeon RX 500シリーズを放熱できるだけの熱設計をすることだったとした。

Inspiron 27 7000 AIOは液晶の角度が調節可能
Inspiron 24 5000 AIOは2軸のヒンジで液晶面を平行にできる

 なお、24型のInspiron 24 5000 AIOに関しては2軸ヒンジによる可動式、Inspiron 27 7000 AIOでは角度の調節だけとヒンジの構造が違っていることに関しては「24型のモデルに関してはタッチモデルがあり、27型はノンタッチだけなのでこうした構造にした」とのことだった。

XPS 13 2-in-1の赤外線カメラのWindows Hello対応はOSの対応待ち

 Dellのワー上席副社長は、筆者のXPS 13 2-in-1の赤外線カメラは何のためにあるのか?という疑問にも答えた。

 詳しくはXPS 13 2-in-1のレビュー記事(別記事)を参照して欲しいのだが、XPS 13 2-in-1には前面のカメラに、赤外線照射が可能なカメラが用意されている。不思議なことにこの赤外線カメラ、赤外線照射が可能であるのに、現状Windows環境では唯一のアプリケーションと思われるWindows Helloの顔認証には対応していないという不思議な仕様になっている。

Dell XPS 13 2-in-1
Dell XPS 13 2-in-1の赤外線カメラ

 このことをワー氏に問うと「XPS 13 2-in-1のWindows Helloに関しては指紋センサーでサポートしている。IRカメラに関してはご指摘の通り現在は何にも使われていない。これは、OSベンダーの対応を待っている状況だ」と説明した。つまり、将来Windows 10の大規模アップデートなどで機能が強化された際に、XPS 13 2-in-1の赤外線カメラがWindows Helloで使えるようになる可能性があると示唆した。

 これ以上の詳しい説明はしなかったのだが、台湾でODMメーカーなどに取材してみると、次期Windows大規模アップデートとなるWindows 10 Fall Creators Update(開発コードネーム:RS3)で、Windows Helloの顔認証に関しては変更があり、赤外線照射への要求などが若干変更されるという。おそらく、ワー氏の言うOSの対応待ちというのはそのことを意味しているのではないかと思われる。

 既に出荷されているXPS 13 2-in-1にRS3配信されると赤外線カメラでWindows Helloが使えるようになるかは定かではないが、そうした可能性もあると考えられるだけに、XPS 13 2-in-1ユーザーはRS3での対応に要注目だ。