イベントレポート

クレカサイズのモジュラー型PC「Compute Card」は149ドルから

~多彩なデバイスが実現するエコシステム

Compute Card

 Intelは6月1日(現地時間)、クレジットカードサイズのモジュラー型PC「Compute Card」に関するブリーフィングを開催し、その詳細仕様やエコシステムの展開について発表した。ブリーフィングではCompute Card Product OwnerのBruce Patterson氏が解説を行なった。

 同氏はまず、「Compute Cardはこれまでのいかなるコンピューティングデバイスとも競合しない、全く新しいカテゴリの製品」であると説明する。これまでのコンピュータはそのもので機能が完結するが、Compute Cardは“今ある何かにコンピューティング機能を付加するためのもの”をコンセプトに据えて開発されたという。

 もちろん、デバイスメーカーとしては、一体型PCやノートPC、タブレットのようなデバイスの形状を取り、新世代のプロセッサを載せたCompute Cardが出たら、コンピュータ部のみアップグレードすることを目的とすることも可能ではあるのだが、Compute Cardはそのような使い方にとらわれないところがポイントだ。

Bruce Patterson氏
Compute Cardの用途

 例えば、PCの買い替えサイクルは3~5年と短いが、TVや冷蔵庫といった家電の買い替えサイクルは10年~20年と長い。しかしTVや冷蔵庫をIoT化した際に、そのコンピューティング性能が次第に落伍してしまい、例えコンピューティング性能に不満が生じ、本来の機能や性能に不満を持っていない場合でも、本体ごと買い換える必要が生じてしまう。同じことは、高いレベルで統合されたデジタルサイネージといったソリューションにも同様のことが言える。

 Compute Cardであれば、コンピューティングに関わる部分だけをアップグレードできるので、そのようなムダが発生しない、というわけだ。また、Intelがデバイスメーカーに対して設計の仕様などを提供するため、デバイスのデザイン期間を短縮でき、展開や管理もしやすくなる。

 教育現場などでもその特徴が活きる。例えば、生徒一人一人にCompute Cardを持たせておく。教室ではクラムシェルのノート筐体は生徒共通のものを使い、家にもCompute Card対応のディスプレイをおけば、登下校時はCompute Cardだけを持ち歩くだけで済む。学校でもらった宿題を家でやる、といったことも容易に実現できるようになり、個人情報も保護される。

 ちなみに、IntelはCompute Cardのデザインガイドや仕様などをNDAのもとで公開し、デバイスメーカーはその仕様に従えばデバイスを製造できるが、Compute Card自体を製造することはできない。デバイスとCompute Cardの間の通信はキーによって暗号化されており、容易にリバースエンジニアリングによる解析ができないようになっているという。

 現時点でのCompute CardのSKUは4つ。最下位はCeleron N3450/メモリ4GB/64GB eMMC/Intel Wireless-AC 7265+Bluetooth 4.2といった仕様。下位はSoCをPentium N4200に強化。上位は第7世代のCore m3-7Y30/メモリ4GB/128GB SSD/Intel Wireless-AC 8265+Bluetooth 4.2といった仕様。最上位はSoCをCore i5-7Y57(vPro対応)に強化した仕様だ。

 投入はいずれも8月を予定しており、実売価格は下位モデルで149ドル前後、上位モデルで400~500ドルを予定しているという。ちなみにCompute Cardの投入とともに、Compute Cardを装着して小型PCとして使えるドックも、Intelのリファレンスモデルとして一般小売販売するとした。

 なお、Compute Cardとデバイスの接続は、USB Type-Cと独自の拡張コネクタによって行なわれる。USB Type-Cの接続のみで電源供給を含む基本的な機能を実現できる。一方、拡張コネクタでは、PCI Express 2レーンの接続、DislayPort++、そしてUSB 3.0×2の機能を実現しており、デバイスの機能を充実させられる。

名刺との比較
フットプリントのみならず非常に薄型に作られている
5.7型スマートフォンとの比較
コネクタはUSB Type-C(左)と、独自の拡張コネクタ(右)

 装着後のイジェクト動作機構については特に制限をしておらず、デバイスが用途に合わせて自由に設計できるようになっている。例えばECSの一体型PCとして使える製品は、イジェクトボタンが押されたあとOSのシャットダウン動作を自動的に行なわれ、完全にシャットダウンしたあとバネによって自動的に排出するようになっている。ホットプラグを想定したデバイスでは、SDカードのように単純に挿抜しても良い。ロック用のホールも設けているので、例えばネットワーク越しにこのロック機構をリモート制御し、デバイス端では容易に挿抜できず、管理者がロック解除をしてから挿抜を行なうといったことも可能だ。

 すでにシャープやHP、Lenovo、Foxconn、Dellといったおなじみのメーカーが、このエコシステムに賛同しており、ブリーフィングでは一体型PCのようなデバイスやタブレットのようなデバイス、そして組み込み向けや高耐久の製品などが多数展示された。

Compute Cardは8月投入当初、4つのSKUを用意する
賛同メーカー
Intelのリファレンスのドック。Compute Cardを挿入してPCのように使える。これはCompute Cardとともに発売される
レジのプロトタイプ
LG Displayの狭額縁ディスプレイ。Compute Cardを挿入してPCとして使える
フォトスタンドのような製品
病院などで使われることを想定した高耐久モデル
ECS製の一体型PCとして使える製品
Compute Cardを本体上部に装着。装着すると自動的に電源がオンになり、イジェクトボタンを押すと自動的にOSがシャットダウンしCompute Cardが弾き出される
こちらは工場などで使われることを想定した製品
屋外で使われることを想定した製品。リモート制御でCompute Cardをロックし、容易に挿抜できないようになっている
シャープの製品。実はこのディスプレイは既存の製品で、オプションの拡張ボードを利用すればCompute Cardを装着できるようになる
拡張ボード本体
Compute Cardを利用すれば比較的薄い製品も作れる
50℃の環境下でファンレスでも駆動。ヒートシンクはアルミ製で十分だという
こちらはDellの製品。ECSの製品はディスプレイ側に搭載していたのに対し、こちらはスタンド側に内蔵される。そのため、ディスプレイ本体は解像度やサイズなど、好みのものを選べるという
学校などの教育現場で使われることを想定した製品