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メルコ、2015年度に減収増益も、経営体質の転換を完了へ

~シマダヤへの出資理由についても説明

メルコホールディングスの松尾民男取締役副社長

 バッファローや、玄人志向のシー・エフ・デー販売などを傘下に収めるメルコホールディングスは、2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績について説明した。

 売上高は前年比3.0%減の800億4,000万円、営業利益は同24.0%増の43億5,400万円、経常利益は同18.4%増の52億9,400万円、当期純利益は同18.0%増の37億3,500万円。創業から40年目を迎えた2015年度の業績は減収増益となった。

 メルコホールディングスの松尾民男取締役副社長は、「スマートフォン市場の縮小に合わせて、スマートフォン関連アクセサリの整理、海外事業における不採算製品や地域の縮小といった、3カ年の構造改革の最終年度として実施した施策により減収。低収益製品はブレーキを踏んだ。一方で、高付加価値製品や法人向けカスタム製品、自社サービスの拡大、販間費削減により、3期連続の増益となった」とし、「部門経費の削減、製品供給体制の強化、在庫の効率化など、低成長時代に利益を生み出す体制を構築。経営体質の転換が完了した」と位置付けた。

サプライ、メモリやNASが縮小

 事業別の連結業績は、周辺機器の売上高は前年比3.6%減の762億6,400万円、営業利益は11.6%増の32億5,200万円となった。

 その内、メモリの売上高は前年比14.6%減の42億2,700万円。販売台数は12.3%減となった。法人向けには、米JEDECに準拠するとともに、国内生産によるDDR4製品を投入したものの、PC用メモリ市場の縮小にとともにシェアも減少した。

 フラッシュメモリは、売上高が前年比3.5%減の54億円、販売台数は16.4%増となった。台数拡大の背景には、iPhone向けのLightning端子搭載フラッシュメモリの投入のほか、普及価格帯の製品の販売を再開したことが貢献している。

 ストレージは、売上高が前年並みの257億2,000万円。販売台数は4.3%減となった。信頼性の高いTV録画向けドライブの採用や、TV録画専用設計の新たな筐体デザインの製品を投入。TV録画用途の堅調ぶりに支えられた。

 NASの売上高は前年比11.6%減の115億4,100万円。販売台数は15.8%減となった。グループ会社のバイオスが開発したRAID 6を採用したWindows Storage Server製品を投入。法人向けの販売を強化したが、国内個人向け需要の低迷、海外不採算事業の構造改革などが影響した。

 ネットワークは、売上高が前年比8.4%増の193億9,100万円。販売台数は1.5%減となった。無線LAN中継機においては、IEEE 802.11ac 2×2対応の付加価値モデルが好調。だが海外事業の縮小により、販売台数は縮小した。

 サプライ・アクセサリは、売上高が前年比22.7%減の55億6,300万円。販売台数は7.9%減。iPhoneやAndroidを自動判別するAuto Power Select機能を搭載したUSB充電器やBluetoothヘッドセットなどの技術による差別化が可能な、スマートフォンおよびタブレット向け通電製品の開発、販売に注力。その一方で、スマートフォン市場の縮小に合わせて、ケースやフィルムなどの低収益製品群のラインナップを大幅に縮小。品揃えを整理したという。

 その他の分野では、売上高が前年比6.1%減の44億2,100万円となった。

 デジタルフォトアルバム「おもいでばこ」が個人市場向けに順調に販売を拡大。これを法人向けに展開した「おもいでばこ」サイネージセットの販売を開始したという。また、ハイレゾオーディオブランドとして展開している「MELCO」では、日本と英国での展開に加えて、欧州の主要国や、米国、アジアパシフィック地域への展開も開始した。

アパートWi-Fiの導入が500棟を突破

 サービス事業の売上高は前年比3.8%減の22億2,500万円、営業利益は18.4%増の3億4,200万円。金融事業の売上高は前年比35.7%増の15億5,000万円、営業利益は66.4%増の8億6,900万円となった。

 サービス事業では、アパートオーナー向け無線LANレンタルサービス「アパートWi-Fi」の拡大に取り組み、前年比350%増の導入を達成。累計導入数は500棟5,000戸を超えたという。さらに、建設現場などの短期利用向けのNAS・監視カメラレンタルサービス「BITSレンタル」を開始したという。一方で、「バッファロー訪問設定サービス」に代表される代行設定サポート事業が縮小しているという。

 なお、地域別では、日本の売上高が前年比0.9%増の734億円。海外合計の売上高は前年比32.0%減の66億6,300万円。その内、アジア・オセアニアは、25.3%減の15億7,600万円、北米・中南米は、36.2%減の28億7,000万円、欧州は30.7%減の22億1,500万円となった。

 海外は、2013年度には187億円の売上高があったものが、今年(2016年)度は67億円まで大幅な縮小している。計画的な外付けHDDなどの低収益製品の縮小、販売体制の再構築を目的とした不採算販路の縮小を実行したほか、中国・北京での販売拠点も撤退する考えも明らかにした。

2016年度は積極的な研究開発投資を見込む

 一方、2016年度(2016年4月~2017年3月)の連結業績見通しは、売上高が前年比3.7%増の830億円、営業利益は19.6%減の35億円、経常利益は13.1%減46億円、当期純利益は6.3%減の35億円と増収減益を見込んでいる。

 「2016年度は、市況の厳しいメモリ、ストレージ以外を伸ばして増収を図る一方で、研究開発投資を積極的に行なう考えであり、増収減益の計画。IoT時代を見据えた法人向けネットワーク製品と、アパートWi-Fiなどの利益率が高い自社サービスソリューションの拡大に力を注ぐ」という。

 ネットワークでは、中継機や法人向け製品の拡販により、ナンバーワンのシェアを維持。NASでは法人向け新規モデルを投入。サプライ・アクセサリでは技術力を生かした新製品の投入を計画しているとした。

 2016年度の研究開発費は23億5,500万円を計画。前年度の20億3,100万円から、約3億円拡大する。「2015年度は、名古屋、東京、米国の3つの研究開発拠点を名古屋に集約。そのための費用も含まれており、実質的には、前年比で5億円程度増加することになる。研究開発要員の増加や、リソース確保のためのM&Aも行なっていくことになる。3年後、5年後の利益に繋げたい」と述べた。

 さらに、短納期や為替などの観点から、昨年(2015年)来、香港、深センでの生産を縮小。日本での生産比率を高めていることも明らかにした。

モノ売りからコト売りへの転換図る

 一方、同社では、コーポレートステートメントを「繋ぐ技術で、あなたに喜びを」に刷新し、「誰もが簡単に、安心してインターネットに接続でき、より安全で快適にデジタルデータを保存、再生できる喜びを提供していく」とした。

 「これまでは、ストレージやメモリのように売り切りに近いビジネスで展開してきたが、モノ売りから、コト売りへと転換。今年度以降は、売った後もビジネスとして捉えていくという考え方を、経営の中核に置くことになる。これはデータ復旧サービス事業に乗り出すというものではないが、HDD製品やネットワーク製品のケアや、ルーターの設置サービスのほか、無線LAN技術を活用したIoT関連サービスなどを視野に入れている。今後は、売り上げ、利益の拡大はB2Bに求めることになるが、コト売りでは、B2B以外にもB2C向けの市場もターゲットとなる。今後人口比率が高まる高齢者に対して、ネットワーク機器の設置およびアフターサービスなども考えられる。さまざまなアプローチを考えているところだ。今後は、中期ビジョンを数字に落とし込んだ計画として発表していくことも考えている」とした。

 また、「過去30年間は、PCが伸びれば、それに合わせて事業が成長するビジネスモデルであったが、これが通用しなくなっているのは周知の通り。PCテクノロジを使いながら、PCに依存しない製品を開発していく必要がある。おもいでばこやハイレゾオーディオ製品がそれに当たる」とした。

シマダヤへ出資する理由は?

 なお、同社は、4月15日の取締役会において、麺製造のシマダヤの株式を取得し、持分法適用関連会社とすることを決議している。シマダヤへの出資比率は22.7%となる。

 リリースでは、「当社のネットワーク技術、ストレージ技術を用いた製造プロセスの監視、管理システムの検証実施などにより、より安全で、高品質な食品をお届けするシステムサポートを通じて、食の安全性訴求事業化を目指す」としていた。

 今回の決算会見では、その意図についても説明。メルコホールディングスの松尾民男取締役副社長は、「シマダヤは、当社オーナーである牧誠一族の牧ファミリーが所有する会社の1社である。当社では、過去2年間に渡って、ヘルスケア分野において、同じく牧ファミリーの会社である特別養護老人ホームのケアマキスと協業して、センサー、ネットワーク、ストレージの技術を使って、入居予定の要介護者の自宅で行動ログを取得。これを施設入居時のケアプランの策定に生かしている。この取り組みは、IoT時代に向けた新たな事業展開に向けたものだが、この研究を行なうには現場が必要であり、その点で協業した経緯がある。今回のシマダヤへの出資は、大きなビジネスチャンスとなる食の安全に向けて、検証する現場が必要であるという観点から協業が始まった。また、シマダヤでは工場環境や海外展開における社内ITの強化も課題であり、そこにも協力関係が築くことができる。そうした中で人材のエクスチェンジをするには、資本関係がないままでは手を出しにくい。支配権を取る気はない。出資を決定以降、うどん粉やスープの原料メーカーといった、シマダヤの取引先と話し合いをしたが、食の安全というテーマでの協業に関して高い興味を持ってもらっている。これまで当社の接点がなかった会社との新たな関係構築ができている。ただ、この取り組みは今年や来年(2017年)に実現するものではない」とした。

 シマダヤの売上高は約300億円、営業利益および経常利益は約20億円、当期純利益は約10億円。「当社の業績への影響については、利益面では1~2億円程度」とした。

(大河原 克行)