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メルコ、2015年度上期の利益は25.1%増の15億6,700万円

2015年度上期決算

 バッファローなどを傘下に収めるメルコホールディングスは29日、2015年度上期(2015年4月~9月)の連結業績について説明した。

 売上高は前年同期比1.1%増の389億3,100万円、営業利益は同39.2%増の18億4,900万円、経常利益は同29.3%増の22億9,300万円、当期純利益は同25.1%増の15億6,700万円となった。

松尾民男取締役副社長

 メルコホールディングスの松尾民男取締役副社長は、「サプライズがない決算内容である」と前置きしながらも、「この上期は、周辺機器事業が4期ぶりの増収となった。1つの山を超えたと判断している。個人消費が冷え込む中、高付加価値製品の投入、販促強化により、ブランド価値向上に注力した成果が表れている。また、光回線の代行設定サポート事業から、アパートWi-Fiなどの高利益率の自社サービス比率が高まったことで増益になった」と総括。だが、「海外事業はNAS製品を中心に展開を試みたものの、競争激化により大幅な戦線縮小を余儀なくされた。売上高は期初見通しの400億円を下回ったが、利益はわずかだが計画を上回った」とした。

 円安による為替影響で29億円の営業利益減少があったが、営業強化、コストダウン、販売管理費の削減などにより、増益に繋げたという。

事業別の連結売上高
事業別の連結損益
カテゴリ別売上高分析
地域別売上高推移
四半期の連結決算
重点の取り組みポイント

 事業別の連結業績は、周辺機器の売上高は前年同期比1.1%増の371億7,900万円、営業利益は87.4%増の15億2,800万円となった。

 その内、メモリの売上高は6.8%減の22億2,300万円。販売台数は11.1%減となった。インテルのSkylakeのリリースにより、PC用増設メモリ市場はわずかに伸張したものの、メモリの需要は市場がシュリンクする一方、競争激化により、シェアは減少したという。

 フラッシュメモリは、売上高が5.4%増の28億4,500万円、販売台数は8.8%増となった。SDカードやSSD製品の販売強化により、市場シェアが微増。産業機器向けカスタム製品の納入実績が増加した。

 ストレージ製品は、売上高が3.2%増の118億3,400万円。販売台数は6.4%減となった。低粗利製品の販売を抑制したこともあり、シェアは微減となったが、トップをシェアは堅持した。「ストレージは、利益貢献に寄与する製品分野になってきた。今では、PCに接続されるものよりも、薄型TVに接続されるものが多くなってきた。日本ではTV録画において、厳しい規制があり、それに対応した製品が当社の強みになっている。言い換えれば、海外メーカーが入りににくい市場であり、参入障壁になっている。薄型TVの4K、8Kへのシフトのほか、タイムシフトによる1週間の6チャンネル録画を行なうと6TBが必要になるといった動きがあるなど、今後数年は、明るい兆しがあると見込んでいる」という。

 NAS製品の売上高は前年比5.8%減の58億7,400万円。販売台数は13.5%減となった。宅外からTV番組が視聴できるLinkStation MyBoxなどの高付加価値製品の拡販に注力。「LinkStation MyBoxは、NASを活用したリモートアクセスによって実現した製品であり、当社の特徴を活かせる」とした。法人向けでは、UPS(無停電電源装置)に対応したファームウェアのリリースなどが成果に繋がっているが、海外向けの販売実績が計画に対して大幅な未達となったことが影響した。

 ネットワーク製品は、売上高が13.4%増の92億4,800万円。販売台数は0.3%減となった。4本の大型アンテナを搭載し、家の隅々まで高速で安定した電波を供給するIEEE 802.11ac 4×4対応のフラッグシップ製品を投入。高付加価値製品の拡販に注力。法人向けには防塵、防水性能に優れた無線アクセスポイントを投入したという。また、「昨年(2014年)から今年(2015年)にかけて、中継機のビジネスが上昇しはじめている。すでに市場シェアを5割以上を確保しており、この分野に力を入れていく」とした。

 サプライ・アクセサリ製品は、売上高が12.6%減の31億1,300万円。販売台数は1.9%減。iPhone 6sやiPhone 6s Plus向けアクセサリの投入成果があったという。だが、サプライでは低収益品の販売抑制も影響している。

 その他分野では、売上高が10.3%減の20億3,700万円となった。ハイエンドオーディオNAS「DELA」およびデジタルフォトアルバム「おもいでばこ」が順調に推移したものの、ほかの販売終了製品の影響により減収となった。「おもいでばこは、発売が4年を経過し、その間、改良を加えてきた。多くの固定ファンがついている」と語った。

 サービス事業の売上高は前年同期比6.4%減の11億3,900万円、営業利益は9.8%増の1億7,700万円。金融事業の売上高は同22.8%増の6億1,300万円、営業利益は32.5%増の3億1,200万円となった。

 賃貸アパート物件をまるごと無線LAN化するアパートWi-Fiについては、「昨年度の通期実績では100棟であったが、この上期だけで150棟の実績となった。通期では300~400棟での導入が見込まれるが、できれば500棟を目指したいと考えている。1棟当たりに何件入居しているのかといった規模の違いもあり、その辺りも事業成長の指標として管理していきたい」と語った。建設現場向けの短期間利用のNAS・監視カメラレンタルサービス「BITSレンタル」の新規サービスにも力を注いだという。

メルコグループの概要
多くの製品でシェアNo.1を獲得
GfK調べでも高いシェアを維持
最優秀テクノロジー部門賞を受賞
ハイレゾのオーディオ向けNAS
おもいでばこ
IEEE 802.11ac 4×4対応のフラッグシップルーターの投入
DLPA対応のNASにより、スマートフォンでいつでもどこでもTV視聴が可能
静音マウスの投入
アパートWi-Fiの展開

 松尾副社長は、「この半年間は、高付加価値製品の投入と市場シェア堅持、カスタム製品による法人市場の深耕、ロスコスト削減活動やサービス事業の強化による収益力強化活動の継続に取り組んできた。バッファローでは9部門、CFD販売では5部門の合計14部門でトップシェアを維持している。また、昨年買収したバイオスによる信頼性、耐障害性に優れたRAID 6搭載NASや、バッファローメモリによる産業機器向けカスタム製品ビジネスが収穫期を迎えている。バッファローはかつてはグループ全体の9割を占めていたが、現在は、シー・エフ・デー販売やバッファロー・IT・ソリューションズ、バッファローメモリー、バイオスといったバッファロー以外の事業が、売上高、利益に貢献している。コピー機メーカーにもメモリを、20年来供給している実績もある。そのため、バッファローブランドの貢献度は、相対的に低下している。今後は、東京オリンピックに向けて、公衆無線LANの整備に向けた需要が想定され、それに向けた地盤作りも進めている」としたほか、「名古屋と東京に分散していた開発拠点を名古屋に集約したことで、研究開発投資の無駄がなくなってきている」などと述べた。

高付加価値製品の投入とポジションの堅持
カスタム製品による法人の強化
コスト削減に取り組んだ
営業利益の分析

 地域別では、日本での売上高は前年同期比4.8%増の353億円。海外合計の売上高は前年同期比24.2%減の36億6,800万円。その内、アジア・オセアニアは、19.2%減の8億7,300万円、北米・中南米は、21.4%減の16億5,000万円、欧州は31.0%減の11億4,200万円。

 「4期ほどまでには、年間1,000億円の全社売上高のうち、20%程度を占めていたが、海外における外付けHDDの販売を意図的に抑制していることもあり、10%を切る比率にまで下がっている。海外でも筋肉質な体質を確立する必要がある。コンシューマ市場向けのHDD事業については、大手2社に太刀打ちできず、正直なところギブアップした。法人向けの高付加価値NASで時間をかけながら海外事業を展開していくことになる。下期には、海外向けの新たなNAS製品の投入も予定しているが、これから拡販のステージにある。この製品の下期業績への貢献は未知数である」と語った。

 一方、2015年度の連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比5.4%増の870億円、営業利益は36.7%増の48億円、経常利益は25.2%増の56億円、当期純利益は13.7%増の36億円としている。

 「当社は、HDD大手のシーゲートおよびウエスタンデジタルとは、均等外交を行なっている。これらのHDDメーカー大手2社において、買収などの動きがある。供給リスクは常についてまわるもの。だが、両社にとっても、当社の存在は見逃せないはず。一方で、今後は、それ以外の小さな規模のメーカーの動きも気になる」とも語った。

2016年3月期の見通し
2016年3月期見通しの数字
事業別連結売上高の見通し
カテゴリ別売上高の予測
地域別売上高の見通し
設備投資や研究開発費など

(大河原 克行)