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メルコ、外付けHDD事業を大幅に縮小するも増益達成

~2014年度連結決算発表

メルコホールディングスの松尾民男取締役副社長

 バッファローなどを傘下に収めるメルコホールディングスは27日、2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績の説明会を開催した。売上高は前年比18.4%減の825億5,400万円、営業利益は同24.9%増の35億1,200万円、経常利益は同24.6%増の44億7,100万円、当期純利益は同49.6%増の31億6,600万円となった。

 メルコホールディングスの松尾民男取締役副社長は、「連結売上高で1,000億円を割ったもののも、営業利益、経常利益ともに増益となった。周辺機器部門では消費税増税後の個人消費の低迷が影響。海外では低収益製品の販売抑制が影響して減収となった。収益性が悪く、赤字だったコンシューマ向けの外付けHDDでは、国内外で大きくブレーキを踏んだ1年となった。だが、その一方で、高付加価値製品の販売強化などによる粗利率の改善、販売管理費の削減によって増益となった。また、バッファローメモリがメモリカテゴリの収益性改善に貢献したほか、昨年(2014年)夏に産業用ストレージメーカーのバイオスを買収。アパートWi-Fiの導入実績が100棟(約1,000戸)を突破し、本格普及期に入るなど、産業機器市場の開拓と、サービス事業の拡大に乗り出した1年になった」と総括。さらに、「前期より営業開始に向けて準備を進めてきた金融事業が無事に営業を開始。メルコホールディングスが目指す『森の経営』を強化する体制が整った」とした。

 また、「前年度は円高が影響し、外貨建てで調達するものが多い当社の場合、調達コストが上昇し、それが業績悪化に繋がった。2014年度はそれを視野に入れて、さまざまな取り組みを行なった。年初には1ドル109円で想定したが、実際には115円程度。予想よりはるかに円安であったが、それを、コストダウン、価格への転嫁、固定費削減などにより吸収し、増益となった。その点では自信を持っている」とコメント。さらに、「かつては十数社あった国内協力工場が、現在は2社に留まっている。円高の吸収については、この協力工場を活用することも対応策の1つになる」と述べた。

全ての製品セグメントで減収、台数減

 事業別の連結業績は、周辺機器の売上高は前年比19.9%減の790億9,800万円、営業利益は18.4%増の29億1,400万円となった。全ての製品セグメントで減収となっている。

 その内、メモリの売上高は10.4%減の49億5,100万円。PC用の増設メモリ市場が縮小するものの、製品ラインナップの見直しや、産業用組み込みメモリなどの法人向けカスタム製品の販売強化により、利益でも改善。しかし、販売台数が前年比で13.1%減となり、国内個人向け市場においてシェアが減少したという。

 フラッシュメモリは、売上高が23.5%減の55億9,300万円、WindowsとMacにおいて、データを安全に交換できるウイルスチェック機能付きのUSBメモリや、高付加価値製品の販売強化により収益は改善したものの、国内個人市場向けに低収益製品の販売を抑制したことで、シェアが減少。販売台数は前年比45.9%と大幅に減少。売上高が減少した。

 ストレージ製品は、売上高が23.3%減の257億1,000円。TV、レコーダー交換後に録画番組再生を可能にするSeeQVault技術に対応した製品や、法人向けに第三者がHDD内の情報にアクセスすることを防ぐ「かんたんロック」機能を搭載した製品などの高付加価値製品の販売を強化。だが、ここでも低収益品の販売抑制を行なった結果、販売台数は前年比30.5%減となった。

 NAS製品の売上高は前年比16.9%減の130億5,400万円。外出先からスマートフォンやタブレットで自宅にある録画番組を視聴できるDLPAリモートアクセスガイドライン2.0に準拠した製品の販売や、監視カメラに最適化した法人向け製品を販売などのほか、国内個人向け市場ではシェアが向上。しかし、欧州、アジアでの法人向けビジネスが低迷。販売台数は前年比27.0%増となった。

 ネットワーク製品は、売上高が13.9%減の178億8,700万円は、IEEE 802.11ac規格に対応した製品の販売を開始したが、従来の11n規格に対応した製品の価格競争が激しく、収益面では大きな影響を受けたという。「2015年度は、11ac規格に完全集中できるため、収益の改善にも寄与すると考えている」とした。また、無線中継機を新たなカテゴリと捉えて、ラインナップの拡充と利便性追求により、新市場を創出、トップシェアを獲得したという。前年の今頃には月100台程度だったが、現在は月8,000台の規模になっているという。また、有線LAN製品がロングテール型の需要で利益を確保。法人向けの製品販売も拡大している。だが、ネットワーク製品全体では、低収益製品の絞り込みにより、販売台数は18.7%減少した。平均単価は7%ほど上昇している。

 サプライ・アクセサリ製品は、売上高が23.1%減の71億9,600万円。Bluetooth対応製品、急速充電に対応したUSB充電機、モバイルバッテリ、特徴を持った保護ケースや保護フィルムなどのスマートフォンおよびタブレット向け製品をラインナップ。その一方で、円高の影響により低収益となった製品はラインナップの整理を進め、販売台数は30.5%減となった。「スマートフォンのフィルムなど、陳腐化が速いものは絞り込み、マウスやケーブルなどの安定した製品を中心にする」という。

 その他分野では、売上高が前年比28.1%減の47億500万円。ハイレゾオーディオ市場向けのネットワークオーディオ製品を投入。同社創業時のオーディオブランドの「MELCO」を冠した製品として欧州での販売を開始。さらに、第4世代の「おもいでばこ」を投入したものの、地デジチューナー製品の終了などの影響で、全体ではマイナスとなった。

 サービス事業の売上高は前年比5.4%減の23億円1,400万円、営業利益は0.7%増の2億8,800万円。新たに開始した金融事業の売上高は11億4,200万円、営業利益は5億2,200万円となった。

 地域別では、日本での売上高は前年比11.8%減の728億円。海外合計の売上高は前年比47.7%減の97億9,700万円。その内、アジア・オセアニアは、56.5%減の21億1,000万円、北米・中南米は30.1%減の44億8,900万円、欧州は57.1%減の31億9,700万円。アジアでは中国事業の全面的な見直しなどで減収となったが、他の地域では法人向けNASの販売強化などにより増収となっている。

 なお、設備投資が、2013年度が13億8,500万円であったものが、2014年度が4億3,200万円へと大幅に削減しているが、これは東京の開発拠点を、本社がある名古屋に集約したことが影響しているという。「NASに関する技術者の確保においては、東京に拠点を設置する必要があると考えていたが、その効果があまりないことが分かった。約50人の開発者が名古屋に移動し、拠点分散による損失を解消。効率性が高まるとともに、事業部と直結した開発体制が実現する。さまざまな製品の開発が可能な開発者の多能工化にも取り組む」と述べた。

2015年度は増収増益を見込む

 2015年度の連結業績見通しは、売上高は前年比5.4%増の870億円、営業利益は36.7%増の48億円、経常利益は25.2%増の56億円、当期純利益は13.7%増の36億円とした。

 「2015年度は、既存ビジネスの効率化と、法人向けビジネス分野への挑戦により増収増益を見込むほか、前年度に発生した消費増税後の消費の落ち込み、Windows XP特需後の反動減などのマイナス影響は、今期は軽微になると予想。TV本体の需要低迷も底を打ち、録画用外付けHDDの需要が回復すると予測。これが若干の追い風になる。4Kになると加速度的にHDDの容量が増加。これによって買い換え需要が期待できる」とした。

 事業別では、周辺機器が、売上高は前年比5.1%増の832億円、サービスは、8.7%増の25億円、金融が9.1%増の12億円と、全事業部門での増収を見込む。

 ネットワーク分野では、新たに拡大している中継機市場ナンバーワンを維持。この分野における新製品投入を図るほか、NASでは、用途を特定した製品や、マイグレーション機能搭載によるリプレース需要の喚起、産業分野向けに展開するバイオスの売上高の寄与などを見込んでいる。「バイオスは、メルコグループに入ることで調達コストの改善が可能になり、売上高の拡大に加えて、収益性の拡大に期待している。これまで行なっていなかった海外展開もメルコグループとなったことで開始できるようなになった」という。

 地域別の売上高見通しは、日本が前年比5.4%増の768億円、アジア・オセアニアが9.8%増の23億円、北米・中南米が7.3%増の48億円、欧州が2.5%減の31億円としている。「海外事業の構成比は11%であり、ピーク時に比べると半減以下になっている。外付けHDDの販売を抑制したことが影響しているが、その結果、赤字を圧縮できている。また、法人向けの高付加価値製品や、営業体制を強化することで、経営体質の強化が図れており、法人向けシフトには一応の目処がついた」とした。

 現在、同社における法人向けビジネスの比率は約35%。これが2015年度には4割になると予想。さらに将来的には5割近くまで高めていく考えを示した。

 「2014年度は全社における法人比率は35%だが、量販店から購入して法人で利用している例もある。法人向け販売比率はもう少し高いだろう」としている。

(大河原 克行)