インテル、Xeon E5ファミリを解説

Xeon E5

3月7日 発表



Xeon E5ファミリのウェハ

 インテル株式会社は7日、Sandy Bridge-E(開発コードネーム)がベースとなったサーバー/ワークステーション向けプロセッサ「Xeon E5」ファミリを発表。これに伴い、都内で記者説明会を開催した。

 冒頭では、同社 取締役副社長 宗像義恵氏が挨拶。「我々の予測によると、2015年頃にネットワークに接続する機器が150億台、ユーザーが30億人を超え、コンテンツとデータのトラフィックは現在の3倍に増える。2011年の統計データによれば、1分間に全世界に流れるデータのトラフィックは1分間あたり46万GBと、すでにとてつもない数値となっている。このような環境下において、個々のユーザーニーズにあったサービスそしてデータをいかにスムーズに提供できるかどうかが、クラウドサービスを提供する企業の勝敗を分けると言ってもいいだろう」とした。

 インテルはこのように競争が増す環境下で、企業に対して「クラウド2015ビジョン」を推進している。具体的に、1つ目がパブリッククラウドと、プライベートクラウド間での安全なデータ共有、2つ目がITの集中管理/運用管理の自動化、そして3つ目がスマートフォンやシンクライアントなど、あらゆる接続機器を自動的に認識し、最適なサービスを提供する点だという。

宗像義恵氏インターネットトラフィックの増加
ユーザー数、デバイス、データの増加クラウド2015のビジョン

 このようなビジョンを企業顧客に対して提供し、実現していくためには、独自アーキテクチャではなく、グローバルにおいて通用するオープンな仕様で提供しなければならないと考える。そこで同社は、「Open Data Center Alliance」や「Open Compute Project」、「Open Virtualization Alliance」などに積極的に参加していくことで、この問題を解決するという。また、クラウド・ビルダーズ・プログラムを実施し、多くのパートナーに賛同してもらうことで、オープンなクラウド構築環境を提供していくとした。

 その一方で、このビジョンの実現には半導体も欠かせないとする。特にサーバーやワークステーションの分野においては、I/Oやストレージ/ネットワークのボトルネックを解消すること、セキュリティ性と電力効率を高めることなどが課題になっているという。今回のXeon E5ファミリの投入により、これらの問題に対処でき、次世代データセンターの新基準を築けるとした。

オープン化への取り組みインテルプロセッサの性能向上次世代データセンターの新基準となるXeon E5
土岐英秋氏

 Xeon E5ファミリの特徴については、同社 インテル技術本部長 土岐英秋氏が解説した。従来(Nehalemベース)のCPUから改善したポイントは4つ。1つ目は同じ電力水準で比較すると性能が最大80%向上したこと、2つ目は新たにAVX(アドバンスト・ベクター・エクステンション)をサポートすることで演算処理時間を短縮できること、3つ目はターボ・ブースト テクノロジー2.0により必要に応じて高性能が得られること、4つ目はインテグレーテッドI/Oにより、処理能力と帯域幅を拡大しながらレイテンシを削減できたことを挙げた。

 また、システムインテグレータに対して「ノード・マネージャー 2.0」、「データセンター・マネージャー」を提供する。これまでCPUの消費電力のみが把握可能であったが、それをシステム全体に広げることで、顧客はデータセンター全体の消費電力を管理し、全体の設計を最適化できるようになったとした。

 ターボ・ブーストやAVXなどについては、クライアントPCでもすでに実現されていることだが、説明会では、先述の、今後ますます高まるデータトラフィックに対応するための仕組みとして、インテグレーテッドI/Oについてフォーカスし解説を行なった。

 すでに明らかになっている通り、Sandy Bridge-Eベースのプロセッサでは、40レーンのPCI Express 3.0コントローラを内蔵しており、インテルが言うインテグレーテッドI/Oはこのことを指す。NehalemベースのXeonではノースブリッジ側(I/O Hub)にこの機能を持っていたが、Xeon E5ファミリではそれを取り払いCPUと直結することで、レイテンシを最大30%削減できるとした。また、PCI Express 3.0のサポートにより、2.0対応よりも高速にデータを転送でき、10GbitのEthernetコントローラもフルに性能を発揮できるという。

 ただしXeon E5ファミリではこの改善に留まらず、新たに「データダイレクトI/O」をサポート。従来、10Gbit Ethernetコントローラから来たデータは、すべて一旦メモリに保存する必要があった。CPUはメモリから読み取ったデータを処理し、また書きこむ時も再度メモリに書き込み、それから10Gbit Ethernetコントローラへ転送する仕組みであった。

 一方、データダイレクトI/Oを利用すると、10Gbit Ethernetコントローラとやりとりするデータを、(もちろん場合によってはだが)メモリに書くことなく直接読み書きできるようになるという。この仕組みによりレイテンシをさらに削減するとともに、メモリのボトルネックも解消できるとした。なお、データダイレクトI/Oの利用には、Ethernetコントローラのドライバで対応すればよく、OSやアプリケーションなどには依存しないという。


Xeon E5ファミリの特徴従来製品から特に強化したI/O回りインテグレーテッドI/Oの特徴

 また、従来から消費電力あたりの性能を向上するとともに、ノード・マネージャーとデータセンター・マネージャーの提供により、管理者はシステム全体の消費電力の上限を設定できるようになった。これにより、災害時のバックアップ電源の駆動時間向上と、夏場などのピーク消費電力を抑えられるという。

商品電力あたりの性能を向上ノード・マネージャーとデータセンター・マネージャーの提供

 ゲストとして登壇した株式会社エヌ・ティ・ティ・データ ビジネスソリューション事業本部 データセンタビジネスユニット ITマネジメントソリューション統括部 統括部長の上苙(うえおろ)健氏によれば、同社の検証において、Xeon E5ファミリを採用し、ノード・マネージャーとデータセンター・マネージャーを駆使することで、データセンター全体で16~18%の電力量削減に成功。一方で非常時のバックアップ電源使用時においては、約80%の駆動時間延長に成功したという。

上苙健氏国内におけるデータセンターの事情ノード・マネージャーとデータセンター・マネージャーを駆使することで消費電力を削減
データセンターのピーク時の消費電力を削減できる非常時のバックアップ電源駆動時間を延ばせる

 最後に土岐氏は、DellやCisco、IBM、Oracle、HPなどのシステムメーカーと、redhatやvmware、GREE、SAPなどのソリューション/データセンター/サービス事業者から、Xeon E5ファミリを搭載/対応した製品が多数リリースされるとアピールした。

 XeonシリーズはこのE5ファミリの投入をもって、Xeon E7/E5/E3の全ラインナップが揃ったことになる。クライアントのCore i7/i5/i3や、SSDの710/520/320と同様、「七五三」がそれぞれのグレードを示すことと統一されることがわかった。なお、E5は先立って発売したE7と比較するとI/O回りが強化されているが、これは1P/2Pワークステーション/サーバーにおいて、I/O回りへのニーズが高いためこのようになっているという。

サーバーボード S2600GZサーバーボード S2600WPサーバーボード S2600JF
サーバーボード S2600IPサーバーボード S2600CPワークステーション・ボード W2600CR
CPUソケットはLGA2011W2600CRの拡張スロット部。CPUの豊富なPCI Expressレーンを駆使し、x16レーン形状のスロットを4基、x8レーン形状のスロットを4基装備同社のワークステーション用マザーボードとしては珍しく、リアパネルにサウンドとUSB 3.0ポートを装備
オーディオコーデックはRealtekの「ALC889」USB 3.0コントローラはTIの「TUSB7320」を採用

(2012年 3月 7日)

[Reported by 劉 尭]