SanDisk社長、日本でのSSDリテール販売の可能性を示唆
~フラッシュメモリ業界でのさらなる立場強化に強い自信

サンジェイ・メロートラ氏



 米SanDiskの社長兼最高執行責任者である、サンジェイ・メロートラ氏が来日し、報道関係者のインタビューに答えた。限られた時間ではあったが、同社が現在、強力にプッシュしているSSDについて質問をぶつけてきた。

 メロートラ氏は、同社の共同設立者で、これまでメモリの設計および製品エンジニアリング担当役員、製品開発担当副社長、エンジニアリング担当上級副社長などを務めてきた人物。過去には、IntelやAtmelといった半導体企業でも働いていた経歴を持つ。

【Q】SanDiskはこれまで、SSDについては、PC OEMメーカーへの供給を中心にビジネスを勧めてきましたが、今後は小売業にも注力するのでしょうか。

【メロートラ氏】現在でも我々のSSD事業の支柱となるのはOEM事業です。我々が部材として提供し、それをOEMメーカーがPCに組み込み、エンドユーザーに届けられる形です。しかし、将来的には小売りによって、ユーザーに直接製品を販売していく可能性はあります。

【Q】ハイエンドモデルである「G3」はオンラインで直販を行なう予定があるとCOMPUTEXで聞いたのですが、日本での予定はありますか。

【メロートラ氏】G3も我々は現在OEM提供を行なっており、日本のユーザーの皆さんにもそれらのPCを通じてG3をお届けできますが、将来的にはオンラインストアで日本のユーザーの方が直接購入できるようになる可能性はあります。しかし、改めて申し上げますが、我々の現在のSSD事業の主体はOEM提供にあります。小売りを行なうとしても、それは将来の話になります。

【Q】SSDについて欧米と日本のPCメーカーで反応に差はあったりするのでしょうか。

【メロートラ氏】あらゆるメーカーは、高信頼性で、高性能で、魅力的な価格の製品を求めています。つまり、地域を問わず、その要求はおおむね同じだと言うことです。

【Q】現在SanDiskには、ハイエンド向けであるG3のような製品とローエンド向けのpSSDのような製品がありますが、それらの今後の展開を教えてください。

【メロートラ氏】pSSDは、ネットブックをターゲットしており、その容量は8~16GB程度と低容量です。それに対して、それ以外の一般向け製品、ここではSSDと呼びます、は120~240GB程度の容量があります。そのためSSDは通常のノートブックに適しています。両者は価格帯も全く異なります。当社はpSSDシリーズを長い間販売してきました。これに加え2008年からSSDも提供開始しました。これまでのSSDではSLCを採用していますが、今後は価格的な理由からMLCが主流になると考えます。現在、我々はMLC採用のSSDを準備しており、今年後半にも出荷を開始します。

【Q】SSDは近い将来HDDに完全に取って代わると思いますか。

【メロートラ氏】そうは思いません。ちょっと記憶が定かではないのですが、確かGartnerの予測によると、2012年のSSD市場規模は9,500万台と言われており、ネットブック、ノートブック、そしてデスクトップにも幅広く使われると予想されています。しかし、この数はノートブック全体の出荷量の2割程度です。つまり、SSDがHDDに完全に取って代わるのにはまだまだ時間がかかるということです。さらなる普及のためにはさらに価格を押し下げる必要があるでしょう。しかし、SSDは性能や消費電力などの面でHDDよりも優れており、普及が進むことは確実です。

【Q】PC以外では、今後SSDはどのような市場に進出していくと思いますか。

【メロートラ氏】ここではSSDではなく、フラッシュメモリということでお話をさせてください。現在の携帯電話はどんどん高機能になっており、マルチメディアを扱ったり、1つのコンピューティングプラットフォームと呼べるほどにまで進化しています。そういった用途ではより多くのストレージ容量が必要となってきます。しかし、ここに機械的部品を使ったHDDが進出していくことは考えにくいです。つまり、フラッシュメモリが適した分野であると言うことです。現在、携帯電話は世界で毎年12億台が出荷されています。この内、8億台にフラッシュメモリ用のカードスロットがついています。今後数年の内に、この数は10億を超えるでしょう。つまり、市場規模の面でも、非常に大きな機会が存在しているのです。もちろんこれだけでなく、SSDを始め、MP3プレーヤーや、USBメモリ、携帯ゲーム機器もますます伸びていくことでしょう。

【Q】SanDiskは1月に四日市にある生産設備の一部を東芝に売却しました。この理由について教えてください。

【メロートラ氏】我々と東芝は10年以上の提携関係にあり、その関係の強力さは、半導体業界一であると自負しています。我々はこれまでジョイントベンチャーに資本を投資してきました、結果、我々と東芝は四日市に世界最大のNAND製造設備を持つに至りました。しかし、2008年はNANDの供給が過剰になった年でした。それは我々も同じで、供給過多の状態でした。そこで、東芝とのジョイントベンチャーのリストラを行なうことにしました。それは、ウェハ製造ラインの約20%を東芝に売却するというものです。これにより会社をより身軽なものにしたいと考えたのです。もう1つ、我々はこれまで全てのNANDを「キャプティブ」と呼ぶジョイントベンチャーから調達してきましたが、2010年以降は、「ノンキャプティブ」すなわち、Samsungなど他のソースからも調達していく考えです。ノンキャプティブの割合は2~3割程度にする予定です。これにより、製造や在庫の管理などをより柔軟に行なえるようになります。これらにより、我々は業界での地位をさらに強化することができると考えています。

【Q】東芝との協業体制について教えてください。例えば、製品レベルであれ、プロセス技術の研究レベルであれ、常に東芝と共同で作業しているのでしょうか。

【メロートラ氏】最新のプロセス技術などを含め、研究開発は共同で行なっています。また、ウェハの製造も共同で行なっています。個別に行なっているのは、最終製品の製造で、例えばそれぞれのブランドのSDカードは、それぞれが別に製造しています。

【Q】今後、NANDの微細化や多値化は困難になっていくと予想されていますが、SanDiskではどのように解決していくのでしょう。

【メロートラ氏】我々は過去20年、フラッシュメモリ業界の先駆者でした。今後についても、東芝とともに、確固たる先進的なロードマップを持っています。ご指摘の通り、45nmから32nm、そしてさらにその先のプロセスを実現していくのは、これまでより一層困難になっていきます。しかし、我々にはたくさんの優れた技術者がおり、十分な経験もあります。例えば、我々の日本支社には300人超の社員がいますが、そのうち300人程度、すなわちほとんどが技術者なのです。そして彼らは東芝の技術者と非常に近い距離で開発を行なっています。確かに困難にはなりますが、むしろそれは我々にとって、市場でのリーダーシップを維持する意味で、良い機会にすらなると考えています。

 容量の点については、我々はメモリチップだけでなく、コントローラも開発しています。我々は業界で初めて2bitのMLCを量産開始しました。また、2008年にも3bitのMLCを他社に先駆けて生産開始しました。2009年のMLCの50%はこの3bit品になるでしょう。こういったことができるのは、我々がコントローラも手がけているからなのです。今後も、さらなる大容量化を目指していきます。

【Q】ありがとうございました。

(2009年 6月 18日)

[Reported by 若杉 紀彦]