日本AMD、IstanbulやAthlon II X2ほかの製品を発表

Athlon IIのウェハ

6月3日 開催



 既報の通り、米AMDは6コアのOpteron 8400/2400シリーズをすでに発表したほか、デスクトップ向けマーケットにPhenom II X4 905e/Phenom II X3 705e/Phenom II X2 550 Black Edition/Athlon II X2 250の各製品を発表した。これらの正式な発表会は現在台湾で行なわれているCOMPUTEX TAIPEI 2009会場で行なわれるが、日本AMDも3日に記者説明会を開催、同じ内容について説明を行なった。

●IstanbulコアのOpteron 8400/2400の発表と12コアのMagny-Coursデモ

 説明会ではまず日本AMDの山野洋幸氏(マーケティング&ビジネス開発本部 エンタープライズ・プロダクトマーケティング部 部長)がIstanbulというコード名で知られる6コアOpteronの紹介を行なった。従来からも報じられてきた通り、Istanburは現在のShanghaiをベースに、コアを4Pから6Pに増加したモデルとなる。ただし消費電力枠(*1)は従来のShanghaiベースの4P Opteronと同様に収まっているため、同じ消費電力枠であれば最大34%の性能アップが可能となっており、またAMD-V(仮想化支援)/AMD-P(省電力機能拡張)がサポートされるとしている(写真01)。その他の特徴は、基本的にはShanghaiコアと大差は無いが、新たに追加されたものとしてHT Assistが挙げられる(写真02)。これにより、4P以上の環境での不要なトラフィックを削減できるとしてる。

(*1) AMDのDesktop向けとかIntelのプロセッサであれば、TDPを使ってこれを示しているので、「4Pから6PになってもTDPが変わらない」という表現となる。ただAMDはOpteronについてはTDPではなくACPを使っている関係で、本当に同じACPのまま4P→6Pが可能になったか、現時点ではAMDは明確にしていない。

 このOpteron 8400/2400シリーズに続き、2010年には新しいプラットフォームが導入されることはすでにロードマップなどで明らかにされている。Magny-Cours(マニクール)と呼ばれるこの製品は、8コア及び12コアの構成で、DDR3のMemory Controllerを4ch、及びHyperTransport 3.0対応Linkを4本持つ構成となっている(写真03)。こちらは2010年の第1四半期にリリースされる予定であるが(写真04)、この動作デモが行なわれた(写真05)。

【写真01】現在は標準製品(2.2GHz~2.6GHz)のみがリリースされ、より高い動作周波数のSE(Special Edition)とか低消費電力向けのEE(Energy Efficient)/HE(Highly Efficient)向けはやや遅れる事になりそう。ところで“Industry's only Six-Core”とか言ってるが、Xeon 7400シリーズはどういう扱いなのだろう【写真02】HT AssistはL3キャッシュの一部(4Pの場合、1MBを占有するそうである)を使い、各プロセッサ毎のデータのディレクトリを持つことで、不必要にプロセッサ間でBroadcastが発生することを抑制する。丁度IntelのBensley(Intel 5000xチップセット)が内部に16MBのSnoop Filterを搭載するのと同じ効果が期待できる。ただし1Pや2Pでは殆ど効果が無い上に貴重なL3キャッシュを浪費する。そんな訳でこのHT AssistはBIOSレベルでOn/Offの設定が可能であり、後は構成にあわせて使う/使わないをユーザーが決められる様になっているとか【写真03】ちなみにソケットは新しいG34と呼ばれるものに変わる。またこの12コアは6コアのダイ2つをMCMの形でパッケージ上で接続したものとなる
【写真04】チップセットについては「AMD製」としか明らかにされていないが、同社の以前のロードマップからすればSR5690+SP5100あるいはSR5670+SP5100という構成と思われる【写真05】何でも「負荷を掛けた状態を表示してはいけない」とかいうお達しが出ているそうで、そんなわけでMagny-Cours(12コア)のDual CPU構成で合計24のCPUがTask Managerに表示されるだけという、ちょっと間抜けな画面

●Athlon IIやPhenom II X2/X3のアナウンスとUltrathinのUpdate

 続いて同じくAMDの土居憲太郎氏(マーケティング&ビジネス開発本部 PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング部 部長)から、まずAMD Athlon IIを初めとするDesktop向け製品のアップデートと、Ultrathin Mobile向けのアップデートも行なわれた。

 Desktop向け製品の方の詳細はこちらに詳しいので繰り返さないが、Athlon IIとPhenom IIの最大の違いは、Dual CoreかQuad Coreかという事になる。Phenom IIはX2/X3/X4共にDenebコアをそのまま利用し、有効なダイの数を製品に応じて変える形になっており、他方Athlon IIはDual Coreの専用設計となっている(写真06)。会場ではこのAthlon IIのダイも示された(写真07)。

【写真06】土居氏によれば「65nmの世代でKumaというコード名がついていたものの45nm版です」との事。CPUパイプラインなどはDenebと共通だが、L3キャッシュを省いた形になる【写真07】大雑把に縦34個、横20個ということで、ダイの寸法は15×8.8mm≒132平方mmといったところ。Denebが243平方mmだから、45%減といったあたりか

 ちなみにIntelはすでにWestmereベースの6core CPUをDesktopに導入することを明らかにしているが、これに関しては「今の時点ではそういう計画は全く無いが、技術的には(IstanbulをPhenom FXのような形で)出すことは可能。ただ問題はそれがコスト的に見合うかとか、性能的にそれが必要かとか、そういった点になると思う」と語った。

 最後がUltrathin向けの新プラットフォーム関連の話となる。AMDは従来TurionファミリーのMainstream向け製品に加え、Athlon NEOを搭載したYukon Platformをリリースしており、HP Pavilion dv2などに採用されているのは周知の事実だが、こちらも新プラットフォームがまもなく投入される(写真08)。大きな違いはCPUがDual CoreのYukon DCに変わることで、Pavilion dv2もこのYukon DCを搭載したモデルが今月10日に発表される(写真09)。会場では土居氏がこのYukon DCを搭載したモデルを持ち込み(写真10)、動画再生デモを行なった(写真11)。ちなみにPlatformはCongoとなり、CPUは消費電力が15W→18Wと増えるものの、チップセットがM690→M780Gに変更になり、ここで省電力化を図ることで、システム全体としての消費電力は変わらないとの話だった(写真12)。なお、このCongoのリファレンスプラットフォームも公開された(写真13)。

【写真08】性能が上がる分、ちょっとだけ価格も上に上がる模様【写真09】見かけは全く従来のPavilion dv2と変わらないとか【写真10】Task Managerを見ると、ちゃんとCPUが2つあることがわかる
【写真11】土居氏が自分で撮影してYouTubeに上げた動画をHD再生中。CPU負荷率がそれほど高くなっていないのがわかる【写真12】ちなみにYukonもYukon DCもベースは65nmプロセスのAthlon 64/Athlon 64 X2。「基本的にこのセグメントは一世代古いCPUを使う」(土居氏)との事で、将来的には今回発表されたAthlon IIあたりをベースとしたものになるかもしれないが、短期的にはまだ45nmに移行する予定はないとか【写真13】外部GPUを使わず、CPU単体でHD動画の再生を行なっている。ちょっと小さいがTask ManagerのCPU負荷率が非常に小さい値を示しているのがわかる

(2009年 6月 4日)

[Reported by 大原 雄介]