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東大ら、低電力なエッジAI半導体実現につながる技術

40nm TaOXベースの多値アナログReRAMテストチップ

 東京大学大学院工学系研究科の研究グループはヌヴォトンテクノロジージャパンと共同で、低電力エッジAI半導体であるReRAM CiMの多値記憶による大容量化および10年記憶の両立に成功したと発表した。モバイルやヘルスケアなど、AI半導体の低電力化が求められる分野への応用が期待されるとしている。

 AI推論や処理で必要とされるメモリ容量が増加する中、主流のGPUなどに対し、電力を10分の1以下に抑えられるとされるCiM(Computation-in-Memory)が注目されている。データ処理とメモリを一体化できるため、従来のコンピュータの持つ電力/速度のボトルネックを解消できるとされ、中でもアナログReRAM(抵抗変化型RAM)で構成したReRAM CiMが期待されている。

 AI処理にReRAM CiMを使うには、メモリ大容量化が求められており、ReRAMに2bit以上を記憶する多値記憶を採用することでこれを実現できる。しかし、多値記憶にはメモリ中の伝導バスを構成する酸素欠陥の拡散により、10年ほどの長期動作中にデータエラーが生じてしまう問題があった。

提案する低電力・高信頼・多値記憶ReRAM CiM回路システム

 今回研究グループでは、データ保持時間をモニターする回路を導入。データ保持時間に基づいて、メモリ信頼性の劣化に起因するAI推論時の積和演算の変化を補正する手法を考案した。また、AIパラメータのうち、上位ビットを1bitの2値メモリセル、下位ビットを多値メモリセルに記憶するハイブリッド構造を採用。大容量化と10年間にわたる高いAI推論精度を達成した。

 これらの技術により、ReRAM CiMの多値化によるメモリ容量の増加と10年間の高信頼性を両立できることから、低電力エッジAI半導体が求められるモビリティ、ロボティクス、ヘルスケア、モバイルなどへの応用が期待できるとしている。

多値アナログReRAMのデータ保持中の信頼性の劣化(高温での加速実験による実験結果)および酸素欠陥(VO)拡散の物理モデル
本技術によるAIの積和演算値(MACV)補正の実験結果
本技術によるAIの推論時間の実験結果。高温で加速実験を行ない10年間動作を確認