富士通とウィルコム、ノートPC盗難対策ソリューションを提供
~リモートでのデータ消去やPCロック機能など

ソリューションに内蔵する専用の通信モジュール(写真左)

2009年第3四半期 提供開始



 富士通株式会社、株式会社富士通研究所、株式会社ウィルコムは、法人向けのノートPC盗難対策ソリューションを、2009年度第3四半期(2009年10月~12月)を目処に提供開始すると発表した。

 これは、富士通製のノートPCに、ウィルコムの通信網を使った専用のW-SIM通信モジュールを組み込むことで、盗難時や紛失時などに、管理者がリモートから通信モジュールを介してHDD内のデータを消去したり、PCをロックしたりできるというもの。

 HDD内データの消去は、暗号化技術対応HDDを利用することで行なう。リモート管理者から消去コマンドが発行されると、1分以内にコマンドを通信モジュールが受信し、数百ms以内にPC内のHDD暗号鍵を消去する。これにより、HDD内のデータを読み取り不可にする。一方PCロックは、専用BIOSにより、コマンドを受信すると起動不可になるというもの。

富士通の盗難対策ソリューションの概要リモートからコマンドを発行してデータ消去やPCロックをする
実際にロックされたPC競合他社とのサービス内容の比較

 W-SIM通信モジュールは消費電力が1mA以下のため常時ONになっており、バッテリなどによる電源供給が行なわれている間、PC電源のON/OFFに関わらず、常時リモートのコマンドを受け取れる。また、モジュールが通信している基地局の位置や、最終ログイン時刻、データ消去時の結果をレポートする機能を備える。

 なお、このW-SIM通信モジュールは、パケット通信を行なう機能などは備えておらず、Windows上からは見えない形となっている。このため通信を行ないたい場合は別途通信端末の購入、およびキャリアとの契約が必要となる。

 今回のソリューションは、富士通製のビジネス向けノートPC製品に、2009年第3四半期より順次、BTOで組み込み提供を開始する。ソリューションは一括して富士通から提供され、ウィルコムとの契約の必要はないが、BTOでモジュールを付加したときの価格や、月額料金などは未定としている。

 5月7日に都内で開かれた記者発表会では、富士通 経営執行役 パーソナルビジネス本部長の五十嵐一浩氏が挨拶。同氏は、現在ノートPCの小型化や低価格化、通信網の整備により、会社外でも仕事できる環境が整い、「ワークスタイルに革新がもたらされようとしている」とする。

 その一方で、2005年以降に施行された個人情報保護法などにより、ノートPCの持ち出しが禁止されるケースが多くなってきており、「持ち運ぶことを前提に設計したモバイルPCが、持ち運ばれなくなっている」という問題を指摘した。

 「これはPCメーカーとしての責任でもある。そこで今回、PCの盗難対策ソリューションを提供することで、この問題を打開していきたい」と語った。

 2009年秋のソリューション提供開始を目処に、富士通グループ内でも10万台規模でノートPCを順次置き換え、社内で実証を行なう。「情報漏洩防止のためにノートPCの持ち出しを制限するのではなく、持ち出したノートPCから情報漏洩を防止できることをこのソリューションで証明し、ノートPCを再び“モバイル”の世界に戻したい」と話した。

富士通 経営執行役 パーソナルビジネス本部長の五十嵐一浩氏モバイルPCによるワークスタイルの革新
情報漏洩事故の原因。盗難や紛失が30%を占めているが、割合が減っている。つまり持ち運び制限が出てきている実際にモバイルPCの運び制限がある会社

ウィルコム 取締役執行役員副社長 土橋匡氏

 ウィルコム 取締役執行役員副社長 土橋匡氏は、「今回富士通にPHSを選択してもらった理由は、W-SIM通信モジュールの小型化に成功したこと、消費電力が少ないこと、そして全国カバー率99.4%の通信エリアをもっていることからである。我々と富士通は今回のソリューションにより、安心できるモバイルノートPCを提供できるようになった」と語った。


(2009年 5月 7日)

[Reported by 劉 尭]