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Intelの新CPU「Lunar Lake」は、「これまでのx86プロセッサであり得なかったような電力効率」

Intelが開発中のLunar Lake、Snapdragon 8cx Gen 3と比較して20%省電力だとIntelはアピール(出典:Intel Tech Tour Preview、Intel)

 米Intelは20日、次世代の薄型・軽量ノートPC向けSoC「Lunar Lake」に関する概要を明らかにした。

 Lunar Lakeは、新しいCPUコアデザインとしてPコアの「Lion Lake」(ライオンレイク)とEコアの「Skymont」(スカイモント)を採用。GPUもXe2と呼ばれる、モバイル向けに特化したAIエンジン「XMX」を内蔵して60TOPSの性能を実現したものへと進化する。また、NPUの大幅な強化がもう1つの大きな強化ポイントで、GPUとNPUとを合わせて100TOPSを超えるAI性能を実現する。

Core Ultraの後継製品はArrow LakeとLunar Lakeに。デスクトップPCなどもカバー

IntelのクライアントPC向けロードマップ、本年後半にLunar Lake、Arrow Lakeの2製品を投入(出典:Intel Tech Tour Preview、Intel)

 Intelは2023年12月に、開発コードネームMetear Lakeこと、インテルCore Ultraプロセッサー(以下Core Ultra)を発表。Core Ultraでは、Foverosと呼ばれる3Dチップレット技術が導入され、CPUタイル、GPUタイル、SoCタイル、IOタイル、ベースタイルという5つのタイルを3D方向にパッケージ内に積載していることが大きな特徴になっている。

 こうした特徴を備えたCore Ultraの後継として、Intelは2つの製品を計画している。1つは「Arrow Lake」であり、もう1つが「Lunar Lake」だ。Arrow Lakeは、ハイエンド向けのHシリーズなどの後継と目されている製品で、現在のCore UltraではカバーされていなかったデスクトップPCなどに向けた製品になる。

2024年1月のCESで公開されたLunar Lakeのパッケージ。上部にはSoMでDRAMが積層されていることが分かる

 そして現在薄型ノートPC向けとして投入している「Uシリーズ」の直接の後継となるのがLunar Lakeだ。Lunar Lakeは、Meteor Lakeの延長線ではなく、完全にゼロから設計された製品となる。引き続きFoverosを利用した3Dチップレット技術を利用し、Intel製品としては初めてオンパッケージメモリ(SoM、System on Memory)を採用していることが製造上の特徴となる。

Lunar Lakeのアーキテクチャ概要(出典:Intel Tech Tour Preview、Intel)

 CPUはPコアの「Lion Lake」、Eコアの「Skymont」。現時点ではIntelは詳細を明らかにしていないが、いずれも電力あたりの性能(電力効率)が大きく改善されているほか、競合となるRyzen 7 8840UやSnapdragon X Eliteよりも高い性能を実現するとIntelは説明する。

 GPUも強化ポイントの1つで、新しい「Xe2」と呼ばれるものを採用。Core UltraのGPUタイルでは、単体GPUである「Arc」からAIエンジン(いわゆるTensorエンジン)であるXMXを外したものを採用していたが、Lunar Lakeは、Tiger Lake(第11世代Core)からRaptor Lake(第13世代Core)までの内蔵GPUだった「Xe Graphics」から発展したとみられるGPUを採用する。

 現時点では名称と、XMXに対応しているということだけが分かっており、Uシリーズ(TDP 15W)のCore Ultraに内蔵されている「Intel Graphics」(ArcのXeコアを8から4にしたバージョン)と比較してグラフィックス性能が1.5倍、そしてXMXの搭載で、AI推論性能は60TOPSと大幅に引き上げられる。

GPUはXMXエンジンを搭載し、NPUは新アーキテクチャで大幅に性能アップ。それぞれ60TOPS以上、45TOPS以上を発揮し、合計で100TOPS以上を実現(出典:Intel Tech Tour Preview、Intel)
Lunar Lakeの性能(出典:Intel Tech Tour Preview、Intel)

 加えてNPUも大幅に強化される。こちらも現時点では詳細が明らかにされていないが、性能は45TOPS以上へと引き上げられる。現行のCore Ultraは、Copilotをローカルで実行するための要件として、MicrosoftがSoCベンダーに求めている40TOPS以上の性能を満たしていないが、Lunar Lakeではそれをクリアすることになる。

 さらに、GPU側の60TOPSと合わせると、SoC全体で100TOPSを超えるAI性能を実現しており、CPU、GPU、NPUといったプロセッサを利用するようなAIアプリケーションでより高い性能で実行することが可能になる。

Web会議時なら対Ryzenで30%、対Snapdragonで20%低消費電力なLunar Lake

Lunar LakeではSnapdragon 8cx Gen 3よりも低い消費電力を実現(出典:Intel Tech Tour Preview、Intel)

 Intelによれば、Lunar Lakeの最大の特徴は、これまでのx86プロセッサではあり得なかったような電力効率を実現していることにあり、アクティブ時の消費電力も、アイドル時の消費電力も改善されているという。

 アクティブ時の消費電力では、Teamsミーティングを行なっている時のSoC全体の消費電力が、Ryzen 7 7840Uと比較して30%、Snapdragon 8cx Gen 3に比べて20%低いという。Intel クライアント・コンピューティング事業本部クライアント・テクノロジー・マーケティング担当シニア・ディレクターのロバート・ハロック氏は「x86プロセッサとしてはかつて見たことがない低消費電力の製品」とその特徴を表現している。

 また、これまでのx86プロセッサは、アイドル時の消費電力がArmプロセッサに比べて高いのが弱点になっていたが、Lunar Lakeでは「x86プロセッサのノートPCではこれまで考えられなかったようなバッテリ駆動時間」(Intelクライアント・コンピューティング事業本部クライアント・パフォーマンス・マーケティング・ラボ副社長兼本部長ダン・ロジャース氏)を実現しており、Lunar Lake搭載ノートPCでは現行製品に比べてより長いバッテリ駆動時間を実現するとした。

Lunar Lakeのまとめ(出典:Intel Tech Tour Preview、Intel)

 Lunar Lakeは2024年第3四半期の導入、年末商戦での搭載製品の販売開始という計画に向けて予定通り進んでおり、すでにウェハの製造などが開始されているという。また、さらなるLunar Lakeの詳細をCOMPUTEXの前後で公開するという。