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学習で賢くなる小型ヒューマノイド「Unitree G1」登場
2024年5月20日 16:08
電動4脚ロボットやヒューマノイド(人型ロボット)を開発している中国のロボットスタートアップ Unitree Roboticsは、2024年5月13日、子どもサイズのヒューマノイド「Unitree G1」を発表し、同時期に横浜で行なわれていたIEEE(米国電気電子学会)主催のロボティクスの国際会議「ICRA2024」で研究者たち向けに実際に触れられる状態でプロトタイプの公開デモを行なった。
「Unitree G1」は身長約127cm。体重は同社Webサイトの数字は約35kgとされているが、現時点では約37kg。小柄な子どもくらいのサイズだ。手を除く全身の自由度は23(腕5×2、脚6×2、腰1)。最大移動速度は2m/s。
二次開発ができない「G1」と、二次開発(研究開発)が可能な「G1 EDU」という2つのモデルがあり、「G1」の価格は16,000ドルからとされている。「G1 EDU」に適用可能なオプションのハンド「Dex3-1」は力制御も可能で、手首2自由度も追加できる。Unitreeによる動画では簡単な料理動作をする様子などが紹介されている。模倣学習や強化学習などを活用することで、さらに賢くなるという。
「G1 EDU」の膝関節最大トルクは120N・m。アームの最大荷重は約3Kg。関節可動域は腰z軸:±155度、膝:0~165と広く、人間には不可能な動きもできる。一方、コンパクトに折り畳んでスーツケースに入れて持ち運ぶことも可能だ。関節部のエンコーダはデュアルエンコーダで、局所的にエア冷却機構がある。
バッテリは13ストリング・リチウム電池。容量は9,000mAhで、ロボットは2時間の稼働が可能。センサーは頭部に深度カメラ+3D LiDAR(ntel RealSense D435とLIVOX-MID360)。LiDARは水平角が大きく短距離向け、目線から少し上から真下くらいが見えるタイプで、RealSenseは主に手先作業向けだ。
CPUは8コアの「ハイパフォーマンスCPU」とされているが、詳細は分からない。「G1 EDU」ではエッジAI処理用にNVIDIA Jetson Orinを搭載することもできるとされている。
「G1 EDU」では4脚ロボット同様の開発環境(Unitree SDK)が提供される予定だが、Unitreeはさらに、ロボットの世界モデルと、「UnifoLM(Unitree Robot Unified Large Model)」という共創プラットフォームを公開する予定があるとしている。
なお現段階の情報は、あくまでプロトタイプのもの。製品版では仕様が変更される可能性が高い。
日本国内ではTechShareが販売、日本での販売価格は未定
「ICRA2024」終了後の5月20日には、Unitreeの正規日本国内販売代理店のTechShare株式会社が、見込み顧客とメディア向けに実機デモンストレーションを紹介した。TechShareはシングルボードコンピュータなどのほか、近年ではロボットの代理店販売も積極的に行なっている。
TechShare代表取締役の重光貴明氏は「メーカー開発の歩行/動作パターンだけではなく、オリジナルの歩行パターンなどを開発できる点がUnitreeのロボットの特徴だ」と紹介した。ローレベルから、ハイレベルまで独自開発を進めることができるとされている。またUnitreeのロボットはほかメーカーに比べるとかなり頑丈で、自由に機器追加ができる点も特徴となっているので、ヒューマノイドも同様だろうと述べた。
価格はUnitree社は「16,000ドル」と発表しているものの、現時点での製品仕様詳細や代理店への卸価格も分かっておらず、日本国内での販売価格は未定。重光氏はこれまでの経験から「メーカーのプロモーション価格なのではないか。正規代理店としては本当にその価格なのか、怪しい部分もある。我々にもまだ分からないが、おそらく日本で供給できるときにはもっと高くなるのではないか」とコメントした。「少なくともR&Dモデルはだいぶ高くなるのではないか」とし、すでに製品版が出ている大型ヒューマノイド「H1」の価格から類推したほうがより正確なところに近くなるのではと考えているという。
なおUnitree「H1」の国内販売価格は1,580万円だ。重光氏によれば「だいたい、その半分から6割くらいではないか。円安の影響も大きく、まだよく分からない」とのことだった。販売受付は近日開始予定で、出荷開始は2025年1月頃を予定する。「いずれにしても、世界でもっとも安い、開発が自由にできる本格的ヒューマノイドロボットになることは間違いない」という。
大人サイズの「H1」は既に購入可能
上述の、最終製品版の「H1」も合わせて紹介された。大人サイズの「H1」は180cm、47kg。運動能力は3.3m/s(時速11.9km)、階段歩行/昇降は16cm。ただしメーカーでは日々開発/改良を進めている。「日々進化するヒューマノイド」だという。
自由度は全部で19軸。360N・mと独自開発のパワーウェイトレシオ(重量あたりの出力比)が大きいモーターを使っている点をUnitreeではアピールしている。詳細はプロトタイプ公開時の本誌記事やメーカーサイトを参照してほしい。
手はまだ開発中で、2025年リリース予定。TechShare社ではInspire Roboticsの「Dexterous Hand」など、他社製のハンドなどを用途に合わせて選択して使うことを推奨している。
ディープラーニングの活用にも対応し、NVIDIAのISAAC Gymベースのシミュレーション環境がGitHubに追加公開された。先ごろ「H1」がバク宙する動画がUnitreeから公開されたが、これもおそらくシミュレーション環境での学習を重ねたあとに実機で行なったものと推定される。
重光氏は、2023年ごろから多くのメーカーがヒューマノイド開発を進めていることについても触れた。一部メーカーは「既に自動車工場で働かせている」と言っており、最終的にはヒューマノイドで人間作業を代替させることを目指すにしても、現実的には数年はまだR&Dレベルで使われると考えていると述べた。
用途開発にしても、4脚ロボットの多くが実際には手作業を伴わない巡回監視業務に使われていることから、そのような用途から使われていき、数年後にはコスト的にも技術的にも可能なことが増えて、徐々に社会で使われていくのではないかと述べた。「未来は混沌としてまだ分からないが、Unitreeはロボットを歩かせたり走らせたりさせるほうが得意のようなので、そちらから攻めていったほうがいいのではないか」と語った。