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マッチョな人ぐらいな力が出せ、自由に2次開発できる汎用ヒューマノイドロボット「Unitree H1」

 シングルボードコンピュータや研究用ロボットの代理店販売や開発・販売を行なっているTechShare株式会社は、2023年11月29日~12月2日の日程で行なわれた「2023国際ロボット展」で、中国・Unitreeが販売している電動4足歩行ロボット「Unitree Go1」、「Go2」、「B1」のほか、新たに販売する予定のヒューマノイド「H1」をデモ公開した。日本で「H1」の実物が紹介されるのは初めて。会期後の12月4日にはメディア向け説明会を開催した。

テスラのロボットよりもパワフルな「Unitree H1」

「Unitree H1」

 「Unitree H1」は、2足歩行が可能な電動2足歩行ロボット。身長は約180.5cm、重量は約47kg。通常の歩行速度は1.5m/sで、最大速度は5m/s。腕の自由度は各腕4、足は各脚5。最大8kgのペイロードをボディに搭載した状態で歩かせることができる。SDKが公開され、追加バッテリやセンサー類、処理用のコンピュータなどを搭載できるので、Techshareでは「購入者が2次開発できるヒューマノイドロボット」としている。

「Unitree H1」の基本仕様
「Unitree H1」のCPUや電源の仕様

 今回、日本で公開されたモデルはプロトタイプ。今はいつも足踏みしてバランスを取っているが、静止した状態でもバランスが取れるように開発中。腕先は今は丸いが、本格的な5指ハンドと手首軸をオプションとして現在開発中とのこと。踵部分に1軸加えた各脚6自由度のモデルも開発中。

「Unitree H1」全身
本格的なハンドは現在開発中
脚部。現在は片足5自由度だが、踵を追加して6自由度化する予定
脚部を後ろから。お尻にあたる。現状は座ることはできない

 各モーターのトルクは、直感的に言うと「すごく力の強いマッチョな人が出せるくらいの力は出せる」とのこと。「H1」に使われているモーターはテスラのヒューマノイド「Tesla bot」に使われているモーターと比較すると、重量出力比で、かなりの性能差があるという。Unitreeセールスディレクターのアーヴィン・チェン(Irving Chen)氏は「4日前に撮影された」というビデオで実験の様子を示し「Boston Dynamicsの『Atlas』に次ぐヒューマノイドだ」と語った。

Unitree セールスディレクター アーヴィン・チェン氏
H1のスペック
各関節トルク等
テスラのロボットのモーターとの比較

 CPUはIntel Core i7-1265Uを2つ内蔵。頭部には3D LIDAR(LIVOX-MID360)と 深度カメラ(インテルRealSence D435i)を搭載。前方障害物や手元を検知している。

頭部
H1のソフトウェア構成

 開発環境はイヌ型の「Unitree Go」シリーズの「Unitree Legged SDK」同様のものが提供される予定。ROSベースの開発にも対応する。ハイレベルだけでなく、モーターの出力制御や歩行パターンなどが活用できるローレベルのコントロールもユーザー側で可能なので、さまざまなアプリケーション開発ができるプラットフォームとして使えるとしている。「最初は研究開発用だろうが、今後、さまざまなヒューマノイドが開発されることを期待している」とTechshare代表取締役 重光貴明氏は語った。

 本格販売開始は12月6日から。価格は日本円で1,580万円を予定。国内出荷開始は2024年2月下旬以降。アフターメンテナンスなどについては、各関節はモジュール化しているので、保守・修理は容易だという。Unitreeのメーカー保証は1年間で、その期間は無償とのこと。

Techshare 代表取締役 重光貴明氏
Techshareが想定するアプリケーション・ユーザー

商用4脚ロボットでほかを引き離す中国Unitree

Unitreeのロボットラインナップ

 Unitree(宇樹科技)は2016年に上海近郊の杭州市で設立された企業。CEOはXingxing Wang氏。現在の社員数は400名以上。「Spot」で知られるBoston Dynamicsよりも早い2018年から4足歩行ロボットの販売を開始しており、この分野でトップの売り上げを誇っているという。

 同社はロボットをモーターから製造している。最初に販売した商品は「Laikago」。これが世界最初の商用4足歩行ロボットだという。その後、「Alien Go」、より小型の「A1」、「Go1」へと開発を進めた。主に研究開発用途として販売されている。

 2021年には、より大きなロボットとして「B1」、2023年には後継機「B2」を販売開始した。これらは警備や巡回監視、エンタメなど本格的な実用に耐える商品だとしている。さらに消防用のモデルなども販売している。

 「H1」はUnitree社初のヒューマノイド。そのほか、自社開発のLiDARやロボットアームだけでなく、エクササイズ用機器の「PUMP」なども販売しており、「消費者の意見を取り入れてさまざまな製品を作っている」とのこと。

 Unitreeのチェン氏は「Unitreeはデザイナーであり、ロボットに関わる全てのパーツやソフトウェアを自前で作っている。製造も自社工場で行なっている。品質管理も自分たちで行なっていて、自信を持っている。問題があったときもすぐに対応できる。アップグレードは毎月行なっており、フレキシブルかつ短時間で対応できる」と語った。

小型4脚「Unitree Go2」は50万円から入手可能

Unitree Go2

 最新の4脚歩行ロボット「Go2」は「Go1」の後継機で、歩行性能やバッテリ駆動時間が大幅に向上。16cmの段差乗り越えが可能で、最大登坂角度は40度。Unitree独自開発の3D LiDARを頭部あご下部分に標準搭載し、低い障害物や落下可能性のある段差などを検知する。頭部には広角RGBカメラも搭載。遠隔操作などに活用できる。パーツはモジュール化されており、ケーブルなどは全て中に収められている。

正面。あご下部分に3D LiDARを標準搭載
Unitree Go2の主な仕様

 バッテリ容量は「Go1」が6,000mAhだったのに対し、研究開発用のR&Dモデルでは15,000mAhへと向上した。自動充電用機器もオプションとして用意される。ペイロードは8kg。Jetson Orin NXを内蔵しI/Oポートが利用できる「ドッキングステーション」を背面につけることで、追加センサー等を搭載できる。

I/Oポートが利用できるドッキングステーションを背中に搭載可能
ドッキングステーション
搭載しているコンピュータ
さまざまなオプションを搭載可能
遠距離から操作可能なコントローラもある
視覚系センサーも強化された

 こちらはTechShareの通販サイト経由で既に販売されている。R&Dモデルの出荷開始は12月下旬見込み。価格は、研究開発ができるモデルと、単にラジコンとして動かせるモデルとで大きく異なる。ラジコンとして動かすだけならTechshare通販価格で52万円(税別)。研究開発ができるモデルは160万円以上の価格となる。

ハイレベル/ローレベルの開発環境を選べる
Unitree Go2の主なモデル。かなり価格差がある

さまざまな状況でも安定踏破できる本格4脚ロボ「Unitree B2」

「Unitree B2」

 本格的4脚歩行ロボットの「Unitree B2」は6m/sで歩けるロボットで、連続走行荷重は40kg、立脚時で最大120kg。登坂可能角度は45度。ライバル機を上回る最大40cmの段差でも乗り越えられる4脚ロボットだ。荷重20kg搭載の場合は連続稼働時間は4時間。20kg以上の荷物を搭載して山道の階段を上がることができる。

 主な想定用途は建設現場やプラント、農園等での巡回監視。そのため自動充電システムを標準で搭載。夜間などでも無人稼働できる。バッテリ交換にも対応する。

階段を登っているときにロープで引っ張っても大丈夫
プラントや工場の傾斜のきつい階段も登れる

 不安定な足場やきつい傾斜の階段で歩行でき、階段を上がり降りしている状態で方向を転換することができる。また1mの高さから飛び降りたりすることもできる。人がかなりの強さで蹴ったりしても転ばない。チェン氏は、きつい階段を登っている途中にロープで引っ張っても転ばない様子や、40kgの荷物を乗せた状態で約8kmの距離を歩けたとビデオで示した。脚の先端を車輪にするモデルも開発中だという。完全にひっくり返った状態からの自動転倒復帰も可能だ。

 Boston Dynamicsの「Spot」と「Unitree B2」を比較すると、重さは「B2」のほうが重いがサイズはほぼ同じ。ペイロードでは「B2」が優っており、稼働時間も長い。スペック上は3時間だが、実際には5時間程度稼働できるという。段差踏破性能も「B2」が上回る。防水防塵性能面でも「Spot」がIP54に対し、「B2」はIP67で、より優れているとアピールした。

「Unitree B2」の主なスペック。搭載計算資源もかなり豊富になった
「Unitree B2」とBoston Dynamics「Spot」の比較

 また、開発環境においてもオープンアクセスで、歩行指示だけのハイレベルだけではなく、関節角度まで対応できるローレベルの開発ができ、ROS、ROS2に対応している。価格は1,040万円。3DLiDAR搭載モデルは1,200万円程度。こちらも12月6日から本格的に予約を受け付ける。

バナナの皮でも転ばない。油で汚れている工場の床でも大丈夫
長時間連続走行可能