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2025年の国内PC市場は特需で「4割増」!でもその後は?JEITAが予測
2024年3月1日 15:12
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)AVC 部会は、「AV&IT 機器世界需要動向 ~2028年までの世界需要展望~」を発行。その中で、国内PC市場は、2025年には前年比40.4%増の1,351万台に達すると予想した。だが、2026年以降は減少に転じ、2028年には873万台と、約3分の2の市場規模にまで縮小すると見ている。
Windows 10のサポート終了に伴う買い替えサイクルを背景とした需要の増減が繰り返されるほか、Next GIGAによる端末の買い替え需要が見込まれる。また、クラウドサービスに依存せずにAI機能を利用できる「AI PC」の登場などをプラス要素にあげており、「日本のPC市場は、世界市場と比べても、需要の増減の波が大きい」(JEITA)とみている。
全世界では緩やかに成長
JEIATによる同調査レポートは、表紙が黒いことから「黒本」と呼ばれ、1991年から発行。今年で34回目となる。外部機関による需要予測や、同協会関連事業委員会参加会社を対象としたアンケートおよびヒアリング調査を実施し、推計を取りまとめている。調査は、調査会社である富士キメラ総研が担当した。
PCについては、世界および日本の動向に関してまとめている。
世界のPC需要は、2023年に前年比9.4%減の2億3,700万台、そのうちノートPCは11.2%減の1億6,500万台、デスクトップPCが4.6%減の7,200万台となった。
2024年以降は、市場全体では微増で推移し、ノートPCが増加傾向にある一方で、デスクトップPCの需要が縮小すると予測している。2023年のノートPCの構成比は69.6%だったが、2024年には71.4%と70%台になり、2028年には74.9%にまで増加すると予測している。
2024年の世界PC需要は、前年比0.4%増の2億3,800万台、そのうち、ノートPCは3.0%増の1億7,000万台、デスクトップPCが5.6%減の6,800万台。2025年にはPC全体で前年比1.7%増の2億4,200万台、そのうち、ノートPCは4.1%増の1億7,700万台、デスクトップPCが4.4%減の6,500万台と予測した。
さらに、2028年にはPC全体の出荷が2億4,150万台、そのうちノートPCが1億8,100万台、デスクトップPCが6,050万台と予測している。2023年から2028年までの年平均成長率は0.4%増となっている。
JEITAでは、「従来からノート型への需要シフトが進行してきたが、リモートワークの定着によりノート型への需要シフト傾向が強まっている。2024年以降は、需要反動減が収束に向かい、2025年に控えるWindows10サポート終了に伴う買い替えが喚起されることから、需要は回復に転じると見込まれる。また、2025年から2027年にかけては、2020年から2021年にかけて発生したリモートワーク関連需要増加の買い替えサイクル期にあたることから、需要は微増傾向が続く」との見通しを示した。
また、調査を担当した富士キメラ総研第一部主任の小林秀幸氏は、「Windowsの買い替えサイクルを背景にした需要の増減が繰り返されるほか、2024年はAI PC元年になり、買い替え需要の喚起においてはプラス要因になる」と述べた。
特需のあと、一気に縮小へ
一方、国内のPC需要は、2023年は前年比2.0%減の926万台、そのうちノートPCは1.9%減の706万台、デスクトップPCが2.2%減の220万台となった。
2024年の国内PC需要は、前年比3.9%増の962万台、そのうち、ノートPCは5.8%増の747万台、デスクトップPCが2.3%減の215万台と、ノートPCを中心に増加に転じるのに続き、2025年にはPC全体で前年比40.4%増の1,351万台と、2021年以来の年間1,000万台超の水準に回復すると予測した。
そのうち、ノートPCは52.5%増の1,139万台、デスクトップPCが1.4%減の212万台としている。また、2026年は前年比17.2%減の1,119万台と減少するが、1,000万台超の水準は維持すると予測している。
だが、その後も国内PC市場の縮小は続き、2028年には前年比11.3%減の873万台と、今回発表した2020年から2028年の出荷台数の中では最低の水準となり、再び厳しい市場低迷の時期を迎えることになることを示した。2023年から2028年までの年平均成長率は1.2%減のマイナス成長となっている。
日本では買い替えサイクルが長期化しており、コンシューマPCの需要減少が継続。また、デスクトップPCからノートPCへの買い替えも進展することも予測した。なお、2028年のノートPCは前年比11.5%減の742万台、デスクトップPCが前年比10.4%減の131万台と予測している。
富士キメラ総研の小林氏は、「日本固有の需要動向といえるのがGIGAスクールである。2020年および2021年におけるGIGAスクール特需に続き、2024年および2025年には再びGIGAスクールの特需が想定される」と指摘。さらに、「今後は、有機ELディスプレイの搭載による高画質化が進み、2028年にはノートPCの10%を占めると想定されている。2026年以降、第8世代のマザーガラスで、ノートPC向けの有機ELディスプレイの生産が開始されることから、パネル単価が下がり、搭載率が高まる。また、 GPUやNPUを混載したチップが登場し、エッジAIに対応することが可能になる。PCの高性能化が進展することになる」と述べた。
タブレット需要は減少へ
タブレットの需要動向についてもまとめている。
世界のタブレットの出荷台数は、2023年には1億4,300万台であったが、2028年には1億2,100万台に縮小。年平均成長率は3.4%減を予測している。
日本では、2023年に753万台を出荷したが3年連続の前年割れとなっている。2024年も前年比1.3%減の743万台と減少する。だが、2025年は16.4%増の865万台と増加。だが、2026年以降は減少に転じ、2028年は631万台の規模にまで縮小する。
富士キメラ総研の小林氏は、「スマートフォンや2in1タイプノート型PCとの競合により、タブレット端末の需要が減少する。世界市場は、 2020年から2021年にかけてリモートワークの普及を背景として、一時的な需要増加がみられたが、今後も需要減少傾向が続くと見込まれる。日本では、GIGAスクールの買い替え需要により、2025年には前年比増加になる。2028年に向けて、タブレットへの有機ELディスプレイの搭載が進み、2028年には12.2%になる」とした。